広報誌「厚生労働」2024年9月号 連載|厚生労働省

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第2回 結核・呼吸器感染症ってなぁに?

今回は「結核・呼吸器感染症」をテーマに、それぞれの症状や治療、予防について紹介します。

【theme】Q.呼吸器とは
呼吸器には酸素を外から取り込む働きがあります。酸素は気道を通って肺に届き、血流に乗って体中の細胞に行きわたり、生きるためのエネルギーをつくり出す燃料になります。エネルギー生成に伴い身体に不要な二酸化炭素がつくり出され、今度は血流に乗って肺に戻され外界へ排出されます。また、呼吸器には腎臓と協力して、体液のpH※を調整し、細胞が生きていける環境を維持する機能もあります。
呼吸器は生きていくためになくてはならない存在なのです。

※pH:血液を含むあらゆる水溶液の性質(酸性・アルカリ性)の程度を示すもの

●呼吸器感染症は世界中で大流行

――結核・呼吸器感染症とはどんな病気ですか?

結核・呼吸器感染症は、病気を引き起こす病原体(結核菌などの細菌やウイルス、寄生虫など)への感染により、のどや肺などの呼吸器に炎症を起こす病気です。
今までに大流行した呼吸器感染症は、結核、スペインかぜ、アジアかぜや新型コロナウイルス感染症(COVID-19)などがあります。

――結核の感染経路を教えてください。

結核は、発病者も初期には症状も感染性もないのですが、進行して症状が出現するとともに感染性も出現します。結核が進行すると咳やくしゃみなどによって、空気中に結核菌を含んだ飛沫が飛び散るようになり、その結核菌を吸い込むことにより周りの人に感染が拡がります(空気感染)。

【PickUp】

●高齢者の結核は気づかぬうちに進行
 薬は適切に服用しないと効かなくなる

結核の典型的な症状は咳、たん、微熱、倦怠感、食欲・体重減少などです。特徴的なものがなく、初期には目立たないことが多いため、特に高齢者は気づかないうちに進行してしまうことがあります。咳やたん、微熱や体のだるさが2週間以上続いている場合は、早めに医療機関を受診しましょう。

結核は通常、薬(複数の抗結核薬等)を医師の指示どおりに飲むことで治療できます。標準的な治療期間は6~9カ月です。治療途中で薬を飲むのをやめてしまったり、指示どおりに薬を飲まなかったりすると、結核菌が薬に対して抵抗力(耐性)を持ってしまい、薬の効かない結核菌(耐性菌)になってしまう可能性があります。医師の指示を守って、定められた期間、きちんと薬を飲み続けることが最も重要です。

呼吸器感染症は、病原体(細菌やウイルス、寄生虫など)への感染により、かぜや咽頭炎、気管支炎、肺炎等の形で発病します。多くは、感染した人が咳やくしゃみをすることで飛び散った病原体を含む飛沫を吸い込むことで感染します。

結核について詳しくは、結核予防会作成の「結核の常識」もご参照ください。


●普段から予防することが大切!

結核も呼吸器感染症も、予防対策の基本は「手洗い」や「マスクの着用を含む咳エチケット」、そして日常的な健康管理です。感染を拡げないために、咳やくしゃみをするときにはマスク、ティッシュ、ハンカチ、袖などで鼻と口を覆いましょう。

★結核の場合
免疫力が下がる病気にかかっている人、高齢者や乳幼児は発病しやすいので注意が必要です。早期に発見できれば重症化を防げるだけではなく、家族や友人などへの感染拡大を防ぐことができます。有症状時の早期受診や定期的な健康診断(胸部エックス線検査など)が重要です。

★呼吸器感染症の場合
呼吸器感染症には、ワクチンを接種することで発病や重症化を防ぐことが期待できるものがあります。


 

●9月24~30日は「結核・呼吸器感染症予防週間」へ

毎年9月24~30日までの1週間を「結核予防週間」と定め、結核に対する意識の向上を図っているところです。今年度から、これを「結核・呼吸器感染症予防週間」として実施することで、社会全体で感染対策に取り組むこととしています。

呼吸器感染症が例年流行する秋・冬前だからこそ、マスク着用を含む咳エチケット、手洗い・手指消毒、換気など基本的な感染対策を心がけましょう。
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令和5年度ポスター


 

出典 : 広報誌『厚生労働』2024年9月号 
発行・発売: (株)日本医療企画(外部サイト)
編集協力 : 厚生労働省