広報誌「厚生労働」2024年7月号 未来のつぼみ|厚生労働省

未来(あした)のつぼみ

「共生社会の実現を推進するための認知症基本法」成立の裏側で

大きな制度改正に限らず、日々の地道な積み重ねが厚労行政の可能性を広げています。ここでは、厚生労働省の若手職員たちの取り組みや気づきを紹介します。


今回の執筆者

石野瑠花
老健局 認知症施策・地域介護推進課 企画法令係


昨年度は、G7長崎保健大臣会合開催記念認知症シンポジウムの開催やレカネマブの薬事承認、認知症基本法の成立など、認知症関連の動きが目白押しとなりました。

2040年には高齢者のおよそ3人に1人が認知症または軽度認知障害となると推計され、「誰もが認知症になり得る」なかで、認知症施策の推進は必須であり、その施策を取りまとめているのが、現在所属している老健局認知症施策・地域介護推進課です。

かつては「痴呆」と呼ばれ、身体的拘束などの対応も一般的に行われていましたが、2004年に「認知症」へと用語が変更され、翌年には認知症サポーターの養成を開始。2019年の認知症施策推進大綱などに基づき、「共生」と「予防」を車の両輪として認知症施策が進められてきました。

昨年6月には、認知症の人が尊厳を保持しつつ希望を持って暮らすことができるよう、認知症施策を総合的かつ計画的に推進することを目的として、「共生社会の実現を推進するための認知症基本法」が成立し、本年1月から施行されています。基本法においては、認知症施策の立案などにあたって、認知症の人や家族などの意見を聴く仕組みが設けられており、本人を起点に共生社会のあり方を考えるところに、認知症施策の前進を見ることができるでしょう。

基本法は、超党派の「共生社会の実現に向けた認知症施策推進議員連盟」において議論されてきたものであり、認知症の人や家族などの団体との丁寧な協議を踏まえて作成されました。厚労省も議員連盟の議論に参加し、衆議院法制局とともに、それらの団体の方々からいただいたご意見をどう案文に組み込んでいくか、また、今回の法案で実現したい内容をいかに端的かつ法令的に正しい法案名で表現するか、一言一句吟味しながら何時間もひざ詰めの議論を行いました。さまざまな方の想いを伺い、議論の下地をつくるところに、一若手職員として仕事の醍醐味を感じました。

基本法に基づき、総理を本部長とする認知症施策推進本部が設置され、その下に設けられた関係者会議の意見を聴きながら、今後、認知症施策推進基本計画が策定されることとなっています。基本計画を踏まえて地方公共団体は、都道府県および市町村計画を認知症の人や家族などの意見を聴きながら策定することが努力義務とされています。

基本法の理念に掲げられた本人起点の共生社会づくりが今後、各地域に根付いていくよう、日々の業務により一層邁進していきたいと考えています。


G7長崎保健大臣会合開催記念認知症シンポジウム。筆者は最後尾の左端
 

 


 

出典: 広報誌『厚生労働』2024年月7月号 
発行・発売: (株)日本医療企画(外部サイト)
編集協力 : 厚生労働省