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厚生行政を最前線で支える 地方厚生(支)局探検隊
第2回:四国厚生支局 医療指導部門
厚生行政の政策実施機関として、全国8(支)局で「健康・福祉」「医療」「年金」「麻薬取締」の業務をこなす「地方厚生(支)局」の仕事とそこで働く人を紹介する新連載。第2回は、四国厚生支局医療指導部門(香川県高松市)にスポットを当てます。
保険医療機関などの 保険診療・調剤の理解のために
「新規個別指導」の様子。手前の保険医療機関の医師と事務員に対し、中川指導医療官(左側)と多田羅医療指導監視監査官が指導中(イメージ)
●4課+各県事務所がそれぞれの役割を担う
「保険診療」とは、保険医療機関などが、健康保険などの公的医療保険制度に加入している人に対して、一定のルールに基づいて行う診療のことであり、公的医療保険制度に加入しているすべての人は、全国どの保険医療機関でも同じ内容の診療が同じ金額で受けられます。
保険診療を行った保険医療機関などには、診療の内容や薬の種類などに応じて個別に定められた費用が公的医療保険制度から支払われており、この費用のことを「診療報酬」といいます。
この保険診療のルールや診療報酬の請求が適切に行われているかどうかについて、指導監督や調査を担うのが地方厚生(支)局の「医療指導部門」です。
まず、「管理課」は、部門が行う業務の総合調整役。部門内の業務の進捗管理やスケジュール調整、本省との連絡調整を担います。また、国民健康保険などの保険者に対する指導、社会保険診療報酬支払基金の監督なども重要な業務です。
2つ目の「医療課」は、実際に保険医療機関などの指導や調査を行う「指導監査課・各県事務所」(後述)を統括する部署であり、それぞれが担う業務に関する事務の指導監督を行います。
指導監査課の相談窓口で、保険医療機関からの相談に増田係員(上)が対応
さらに、保険医療機関の医師などを指導する指導担当の職員や、保険医療機関などから提出される各種届け出を審査する担当の職員へのアドバイスやバックアップなどの対応も行います。
3つ目の「調査課」は、医療指導部門が保有する行政文書の開示請求、保険医療機関などの届け出の内容を登録するシステムに関する業務および訴訟に関する事務や調整などを担当します。
●担当職員が活躍する「指導監査課・各県事務所」
4つ目の課は、先述した指導担当や審査担当の職員が所属する「指導監査課(香川)」と「各県事務所(徳島・愛媛・高知)」です。
「指導監査課と各県事務所が行う業務は同じです。『指導・審査』の業務のうち、『指導』は主に保険診療の適正化のために、新規に開設した保険医療機関の医師などに個別面談方式で保険診療のルールの指導を行う新規個別指導や、複数の保険医療機関の医師などに参集いただいて講習会方式で保険診療のルールの説明を行う集団指導(現在はeラーニングが主流)。
『審査』は、施設基準の届け出の審査のほかに、たとえばCT(コンピュータ断層撮影)装置の導入を届け出た保険医療機関があれば、届け出されている機種と実機が同じかを保険医療機関へ赴き調査・確認する適時調査を行います。それぞれの病気によって必要とされるCT装置の能力は異なり、扱うCT装置によって診療報酬が違ってくるため、適時調査による確認は重要です」と、指導監査課長の平さんは話します。
保険医療機関の実務者の思い違いなどで診療報酬が過大・過少に請求されるケースはあり得ます。日頃から保険診療のルールや診療報酬の請求が適切に行われているかどうかについての指導監督や調査に、指導監査課と各県事務所は最前線で取り組んでいます。
●厚生労働技官と事務官で医療行政に取り組む
以上、指導監査課と各県事務所について紹介してきましたが、保険診療のルールに関して保険医療機関などを指導する医師免許や歯科医師免許を持つ「指導医療官」の存在をご存じでしょうか。
指導監査課や各県事務所には、医科または歯科の医師が最低一人は常勤しており、保険医療機関などに対して保険診療のルールの指導を行う際には、事務官と連携して行います。
「医師資格を持つ行政の指導医療官という立ち位置の人材が必要なのは、たとえば手術で、『こういう疾患のこういう術式の場合、保険診療ではどうなるのか』というような細かい内容などについて、やはり医師や歯科医師の専門知識がないと指導ができないからです」と平さん。
指導監査課 課長:平 和也
幸い、四国厚生支局管内の指導医療官の定員は満たされていますが、ほかの厚生局では指導医療官は不足しているのが実状。それは裏返せば、医師免許保有者にとって、医療行政に貢献できる機会があるということです。
また、指導医療官に限らず、地方厚生(支)局職員の募集は全国の地方厚生(支)局ごとに行われ、たとえば四国以外の在住者が四国厚生支局配属を希望して応募することも可能です。
四国厚生支局に入局した先輩職員からは、「採用に関する業務説明会の雰囲気が良かったから」との意見が複数出ており、同局の職場の風通しの良さが伝わってきます。
【医療指導監視監査官が語る「この仕事のやりがいと適性」】
健康保険法の一つの分野のなかに、保険診療のルールの「広さ」と「深さ」あり!
多田羅敦史
医療指導監視監査官は、いわゆるベテランの役職になるかと思います。やりがいと責任のある役職。「やりがい」では保険診療は健康保険法等の法律のなかの一つの分野なのですが、そこに広さと深さが存在します。
さまざまな種類の診療ルールや施設基準があり、それに連なる通知、QAがある。理解した知識も2年に一度診療ルールが改定されるため、日々勉強が必要です。つまり大変であり面白い。「責任」では役職的に後輩を導く立場でもあり、精度を高め、できればお手本にという意識はありますね。
公務員全般にいえると思いますが、法律を正しく理解し、正しい情報を国民の皆さまへわかりやすく伝える力、いわゆる伝達力に長けているほうがよいのでしょうね。もちろん、それだけではないですが。一つひとつの通知などに対し、趣旨を含め正しく理解し、どう伝えれば理解いただけるか熟考する。そうやって伝えた答えについて、保険医療機関の方から、「ありがとう」「なるほど、スッキリした」と感謝されることがあります。そういうときはやっぱり、うれしいですね。
【指導監査課審査係長が語る「この仕事の難しさと職場環境」】
個々が抱える仕事について 周りも一緒になって考える雰囲気
渡邊勇也
私は2015年に四国厚生支局に入局しました。志望動機は、市民の生活に一番身近で直結する仕事だと思ったからです。
審査係の仕事の面白さは、届け出された施設基準の調査・確認のために病院へ適時調査に行くのですが、患者の立場では見ることができなかった場所まで見ることができるところでしょうか。
ただし、まれに調査の段階で、病院の方と見解が相違することがあります。法に則って職務を遂行しに来ているわけですから、上司の意見も聞きながら、病院の方には懇切丁寧に趣旨を説明して理解いただこうという姿勢で対応しています。そういうときはコミュニケーション能力が大事です。
そんな場面もありながら私が辞めずにこの仕事を続けてこられたのは、チームで動く仕事なので、個々人が抱えている仕事について自然に周りが一緒になって考える雰囲気があるから。
行動は最低でも2人1組。一人で行動することはありません。心強い限りです。
【指導医療官(医科担当)とは】
厚生労働省の地方支分部局である地方厚生(支)局で、医学上の専門的知見から、保険診療の取り扱いや診療報酬請求の内容について、保険医療機関に対する指導・監査などを行う医師。身分は国家公務員(厚生労働技官)。
四国厚生支局の職場は和やかな雰囲気で、職員の方々とも話しやすく、相談・協力しながら業務に当たれています。そのなかで、実際に指導の現場に立ってみると、医学上の専門的知見から意見を述べることの重要性に気づかされます。
もちろん、今までの働き方との違いに戸惑うこともありますが、緊急呼び出しの電話で真夜中に起こされることもなく、オンオフが明確で精神的に落ち着いて仕事ができる。そんな環境が何よりありがたいと思っています。
四国厚生支局 指導医療官 中川真希
多田羅医療指導監視監査官と業務の相談中の中川指導医療官(右)
<四国厚生支局の概要>
四国厚生支局は、四国4県(徳島県、香川県、愛媛県、高知県)における厚生行政を管轄する地方機関。管内人口は約370万人で、日本の全人口約1.2億人の約3%に相当する。
香川県高松市にある本局のほか、徳島(徳島市)、愛媛(松山市)、高知(高知市)の3県に各県内の保険医療機関、保険薬局などに対する指導監督や施設基準の届け出の審査業務などを行う各県事務所を1カ所ずつ設置している。
職員は非常勤を含めて約100人。事務職のほか、医師、歯科医師、薬剤師、看護師など、多くの職種の職員がいる。
出典 : 広報誌『厚生労働』2023年9月号 発行・発売: (株)日本医療企画(外部サイト) 編集協力 : 厚生労働省 |