広報誌「厚生労働」2023年5月号 新型コロナウイルス最前線|厚生労働省

新型コロナウイルス最前線

第30回 新型コロナウイルス感染症の5類移行後の対応

5月8日に、新型コロナウイルス感染症の位置づけが「新型インフルエンザ等感染症(2類相当)」から「5類」へと変更になります。5類とは、どのような位置づけなのでしょうか。厚生労働省新型コロナウイルス感染症対策推進本部戦略班の南総括調整官に聞きました。

南 孝徳
厚生労働省 大臣官房 総括調整官(医政局・健康局併任)
新型コロナウイルス感染症 対策推進本部 戦略班




●行政が関与する仕組みから自主的な取り組みに転換

——感染症の分類について教えてください。
感染症は、感染症法(※正式名称は「感染症の予防及び感染症の患者に対する医療に関する法律」)で感染力および罹患した場合の重篤性などを総合的に勘案し、1~5類感染症の類型に位置づけられ、講ずることができる措置も定められています。たとえば、「2類」には結核、SARSなどがあり、「5類」には季節性インフルエンザなどがあります。
新型コロナウイルス感染症の位置づけはこれまで「2類相当」としていましたが、今年5月8日に「5類」になります。

——どのような理由から、5類に変更することになったのでしょうか。
新型コロナウイルス感染症は、オミクロン株が主流になってからは、発生初期と比較して重症度が低下しています。これまでも、その特徴に応じて柔軟に対策の見直しを行ってきていましたが、陽性の方への自宅待機や入院の勧告といった強力な措置を行うほど国民の生命および健康に重大な影響を与えるおそれがある状態とは考えられないと判断し、「5類」に変更することとしました。

——具体的に何が変わるのでしょう。
新型コロナウイルス感染症が確認されてからこの3年間、法律に基づき行政がさまざまな要請・関与をしながら対応してきましたが、今後は個人の選択を尊重し、国民の皆さんの自主的な取り組みを基本とする対応に大きく転換します。
これまで行政が法律に基づいて感染者や濃厚接触者の外出自粛などを要請してきましたが、これらはなくなります。なお、先行して3月13日から、マスクの着用は個人の判断となっています。また、学校生活最後の卒業式についても、先行してマスク着用は個人の判断で決めていただく形で実施されました。

5月8日以降、新型コロナウイルスに感染した場合には、政府から一律に外出自粛を要請することはありませんが、国立感染症研究所が示したデータや諸外国の取り扱いも踏まえ、感染した場合の参考となるよう、発症後5日を経過し、かつ、症状軽快から24時間を経過するまでの間は外出を控えていただくことなどを推奨しています。いろいろな事情でその間も外出せざるを得ないこともあると思いますが、その際にはマスク着用などの感染対策をお願いします。
今後は、マスクも含めて、感染対策は個人の判断を基本とし、その判断が尊重されるようご配慮をお願いします。



●一般の医療機関で幅広く受診できるような体制に

——今後、医療のかかり方についても変更があるのでしょうか。
これまで発熱された方は、新型コロナウイルス感染症専門の医療機関を受診していましたが、今後は一般の医療機関でも幅広く受診できるような医療体制に移行していきます。
これまで新型コロナウイルス感染症に関する医療費は公費で全額支援していました。これが5月8日以降は、季節性インフルエンザなどと同様に健康保険が適用されて、1割から3割を自身で負担していただくことが基本となります。
ただし、急激な負担の増加を避けるため、引き続き、新型コロナウイルス感染症の治療薬や入院される方の医療費は、9月末まで軽減されます。その後の取り扱いについては、感染状況を踏まえて改めて検討することにしています。

——ワクチン接種については、どのような対応になりますか。
ワクチン接種は、65歳以上の高齢者や、基礎疾患をお持ちの方、医療や介護の従事者などは1年に2度、そのほかの方は1年に1度となり、費用は今年度末まではこれまでどおり自己負担なしで受けることができます。

——感染防止のために、今後どのように対応すればよいでしょうか。
新型コロナウイルス感染症が確認されてから、3年以上が経過しました。これまで医療機関・高齢者施設等の従事者、自治体関係者の皆さまには新型コロナウイルス対応に献身的にご尽力いただき、改めて感謝を申し上げます。
また、お子さんを含む国民の皆さまには、3年という長きにわたり、新型コロナウイルス感染症への対応にあたり、さまざまな面でご理解・ご協力をいただき、ありがとうございます。
5類に移行したからといって、新型コロナウイルスの感染力などの性質が変わるわけではありませんが、諸外国においても対策の切り替えが行われており、日本にとっても大きな転換点になります。今後は国からの情報などを参考に、それぞれの事情も踏まえつつ、持続可能な対策を考えていただければと思います。


新型コロナウイルス感染症について
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000164708_00001.html

 

出  典 : 広報誌『厚生労働』2023年5月号 
発行・発売: (株)日本医療企画(外部サイト)
編集協力 : 厚生労働省