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新型コロナウイルス最前線
第22回
熱中症の予防と対策
~マスクの着脱も上手に取り入れて~
世界で大流行している新型コロナウイルス感染症。本連載では、その動向や対策などを取り上げています。今回は、コロナ禍の熱中症対策について、厚生労働省健康局健康課の担当者に聞きました。
●高齢者や子どもなどは周囲が気にかけるように
――熱中症とは、どのような状態を指すのでしょうか。近年の傾向とあわせて教えてください。
熱中症は高温多湿の環境に長くいることで、徐々に体内の水分や塩分のバランスが崩れ、体温調節機能がうまく働かなくなり、体内に熱がこもった状態を指します。
屋外だけでなく屋内で何もしていないときにも発症し、救急搬送されたり場合によっては死亡することもあるので、注意が必要です。
近年の傾向としては、熱中症による救急搬送(消防庁)や死亡数(厚生労働省「人口動態統計」)は、年次により変動がありますが、昨年は、その前の3年間と比べ減少しました。しかしながら、今年は例年よりも梅雨明けが早く、6月下旬から記録的暑さの日が続いていることに加えて、気温が高くなる予報がありますので、引き続き熱中症への注意が必要です。
――特に注意が必要な年代などはありますか。
熱中症の救急搬送者の半数以上が65歳以上の高齢者です。高齢者は体内の水分が不足しがちになってしまうこと、暑さに対する感覚機能や調整機能が低下することから、一般成人に比べると熱中症を発症するリスクが高くなり注意が必要です。
子どもや障害をお持ちの方についても熱中症を発症するリスクが低くないことを念頭に置いていただきたいです。子どもは体温調節機能が発達過程であり、障害をお持ちの方も、自ら症状を訴えられない場合があることを周囲が認識しておくと、早期に気づいたり対応したりすることができるかもしれません。
もちろん、熱中症は誰もがなってしまう可能性があるので、世代や性別を問わず気をつけましょう。
――熱中症は、具体的にはどのような症状が見られますか。
比較的に軽症な場合は、めまいや立ちくらみ、生あくび、筋肉のこむら返り、筋肉痛、大量の発汗などの症状が現れます。症状が進むと、頭痛や嘔吐、倦怠感、虚脱感、集中力・判断力の低下などが起こります。
●屋内ではエアコンなどの適切な活用を
――熱中症が疑われる場合にはどのようにするのがよいでしょうか。
屋外では、日陰や涼しい場所を探して暑さを避ける行動をしてください。早めにエアコンが効いている場所や室内の風通しの良い涼しい場所に移るのがよいでしょう。
また、衣服を緩めたり、首の周りやわきの下、足の付け根など身体を冷やすことも大切です。水分補給も必要ですが、症状がひどい場合には、塩分や経口補水液を補給することも効果的です。
症状が改善されない場合は、医療機関を受診してください。
なお、熱中症は屋外でなると思いがちですが、屋内でも発症する方が多くいます。特に、高齢者は半数以上がご自宅で発症しています。
屋内での熱中症対策としては、こまめに水分補給をしつつ、エアコンなどを適切に使っていただくことが重要です。また、高齢者の場合は寒がりな方やエアコンが苦手な方が多いことに加え、体温の調節機能が低下していることで「自分は大丈夫だ」と思い込んでしまう傾向にあり、自覚のないうちに熱中症で倒れることがあります。ご自身では気づきにくいので、できれば周りの方に見守っていただきたいです。
●暑さを避けることに加え自らの体調管理も大切
――最後に、効果的な熱中症予防策を教えてください。
こまめな水分補給と暑さを避けることが一番です。エアコンや扇風機を使って温度を調節したり、遮光カーテンやすだれ、打ち水を利用して暑さを軽減してください。また、外出の際は涼しい服装で、日傘や帽子を着用し、なるべく涼しい日陰などで、こまめな休憩と水分補給を行いましょう。
現在、厚生労働省でも、基本的な感染対策としてマスク着用の位置づけに変更はありませんが、近距離(2m以内を目安)で会話するときを除いて、屋外ではマスクを外していただくことを推奨しています。たとえば、徒歩や自転車での通勤・通学時や、散歩やランニングといった運動時にはマスクの着用は必要ありません。特に散歩やランニングなどの運動時にマスクを着用すると危険な場合もありますので、状況によってマスクを外す判断をしてください。
室温は28℃以下を推奨しております。エアコンの設定温度ではなく、部屋のなかの温度計で確認していただくと良いと思います。
そして、日頃からご自身の体調を知っておいていただくことも重要です。たとえば、平熱を知っていると、感覚だけではなくて実際に体温を測ることで、ご自身の不調を認識できます。
熱中症は、適切な予防対策を実施していただければ、防ぐことができますので、天気予報や、その時々の体調もみながら、暑さを避ける行動やこまめな水分補給をお願いいたします。
●詳しい情報はこちら
https://www.mhlw.go.jp/seisakunitsuite/bunya/kenkou_iryou/kenkou/nettyuu/nettyuu_taisaku/pamph.html
解説者
健康局 健康課 地域保健室 室長補佐 村田美智恵 (写真左)
健康局 健康課 地域保健室 地域保健推進係 山口有紀 (写真右)
広報誌『厚生労働』2022年8月号
発行・発売:(株)日本医療企画