広報誌「厚生労働」2021年8月号 特集1|厚生労働省

健康管理のパートナー持っていますか? “かかりつけ医”の見つけ方


健康長寿を実現するうえで欠かせないのが、身近に相談できるかかりつけ医。疾患の早期発見・治療、重症化予防という点でも非常に貴重な存在です。本特集では、その重要性を伝えるとともに、その見つけ方やかかわり方について紹介します。


かかりつけ医を持つ人は50%超

 現在日本は、超高齢社会を迎え、さらには新型コロナウイルス感染症の流行など、私たちは自分の健康を自分自身で維持しなくてはならない状況にあります。国民の健康長寿を実現するうえで、身近にいて気軽に相談できるかかりつけ医は重要な存在です。

 しかし、日本医師会総合政策研究機構の「日本の医療に関する意識調査」では、かかりつけ医を持つ人は50%超で、いまだにかかりつけ医を持っていない人も多くいます。

 同調査では、「かかりつけ医がいたほうがよい」という人が増えていることもわかりました。そうした思いを持っていながらかかりつけ医を持っていない理由には、探し方がわからない、どのような医師が適しているのかわからない、情報不足などが挙げられています。どのように見つけ、かかわればよいのかを解説します。


 

<Part2:国の体制 最適な医療体制とは>

超高齢社会のなかでの、かかりつけ医を活用した医療提供体制のあるべき姿について、厚生労働省医政局の職員に聞きました。


梅田直暉
医政局 総務課主査
 

医療情報ネットを活用し適切な医療機関を選択

 日本の医療提供体制では、医療機関へのフリーアクセスが保障されています。

 ただ、医療機関の役割や専門性は多様なので、必ずしも自分の状態に適した医療機関を探すことは容易ではないかもしれません。

 かかりつけ医には健康に関する相談を受けたり、日常診療のなかで小さな変化に気づき、必要なときには専門の医療機関に紹介するなどの役割が期待されています。いつも同じ医師に診てもらうことで、生活習慣病などの重症化予防や、合併症などの早期発見も期待されます。

 すぐに大きな病院にかかることを希望する方もいますが、大きな病院に集中しすぎると、患者さんの待ち時間が増えたり、緊急性の高い患者さんへの対応に遅れが出たりする可能性もあります。

 また、患者さんによる医療機関の適切な選択を支援することを目的として、医療機能情報提供制度(医療情報ネット)も運用しています。医療情報ネットを確認すれば、医療機関の診療科目や診療日、診療時間、対応可能な疾患・治療内容などがわかりますので、かかりつけ医を見つける一助としていただければと思います。
 

医療と介護の橋渡し役を期待されるかかりつけ医

 2040年ころをピークとする超高齢社会の進展に対応するために、医療と介護を一体的に提供する地域包括ケアシステムの構築が進められています。医療だけでなく介護も必要になる患者さんの急増が予測されているからですが、同システムのなかでかかりつけ医は医療に加え、介護の入り口の部分にもかかわっていくことが見込まれています。

 たとえば、要介護認定のための主治医意見書を作成する、ケアマネジャーと連携したり、在宅スタッフに指示を出す、などです。実際に居宅介護支援事業所や訪問看護ステーションなどと連携して在宅医療を提供しているかかりつけ医もいます。

 患者さんの元々の状態を把握しているかかりつけ医に、医療と介護の橋渡し的な役割が期待されているのは、軽症の段階から継続的に診ているため、病気の重症化や他疾患の併発、介護が必要になる状態の見極めが早期にできると考えるからです。したがって、健康なときからかかりつけ医を決めておくことによって得られる安心感は大きいでしょう。

 反対に、かかりつけ医がいない状態で、いろいろな医療機関を受診するとしたら、必要な医療や介護を受けるのに時間がかかる可能性があります。また、高齢者が増加していくなか、ポリファーマシーといった課題への対応を図っていくうえで、地域の医療機関や薬局に精通しているかかりつけ医は、重要な役割を担っています。

 フリーアクセスのメリットは担保しながら、どの医療機関や診療科を受診していいかわからないときも、迷うことなく安心して受診できることが、最適な医療体制といえるでしょう。かかりつけ医を持つことは、そのための一つの有効な手段だと思います。

 

医療機能情報提供制度について(医療情報ネット)

 医療機能情報提供制度は、医療機関等に対して、医療を受ける者が医療機関等の選択を適切に行うために必要な情報(医療機能情報)について、都道府県への報告を義務付け、都道府県がその情報を集約し、わかりやすく提供するための制度です。医療情報ネットを確認すれば、診療科目、診療日、診療時間や対応可能な疾患治療内容等の医療機関の詳細がわかります。



 

 
出  典 : 広報誌『厚生労働』2021年8月号 
発行・発売: (株)日本医療企画(外部サイト)
編集協力 : 厚生労働省