広報誌「厚生労働」2021年7月号 Close Up|厚生労働省

未来(あした)のつぼみ


大きな制度改正でなくとも、日々の地道な積み重ねが厚労行政の可能性を広げています。
ここでは、厚生労働省の若手職員たちの取り組みや気づきをご紹介します。





厚生労働省におけるEBPMの実践に向けて

 EBPM(エビデンス・ベースト・ポリシー・メイキング。証拠に基づく政策立案)という言葉は、昨今、さまざまなところで用いられています。

 私自身、学生時代から施策の効果検証には強い関心を持っていました。厚生労働省を志望した理由も、「国民に最も広く活用される、注目度の高い施策を多く抱えている省だからこそ、誰々が言っていたというような不十分な話のみに基づいて判断するのはよくないのではないか。適切な手法を用いて検証された、根拠を踏まえた施策を実施すべきだし、実際に行った施策についても効果を適切に評価し改善していくべきであるはず。そうした取り組みを実践していきたい」という思いからでした。

 そうしたモチベーションを持つ自分にとって、「EBPMの推進に係る若手・中堅プロジェクトチーム」に声をかけられたのは、非常に幸運でした。このチームは、省内の施策の効果検証を若手・中堅の有志職員によって実施することを目的に設置され、自分の問題意識にも合致するものです。

 チームでは、テーマ設定や分析モデルの検討などをゼロから自分で行うことができ、今回私は障害者雇用促進施策の、特に法定雇用率の引き上げと納付金制度の効果の分析を行いました。分析の要であるデータは障害者雇用対策課より提供いただき、また、分析に当たって必要となった制度の内容についても貴重なアドバイスをいただきました。

 長時間の残業が恒常的に続くなか、通常業務に加えて、こうした活動を両立させることは大変でした。しかし、周囲の支援もあり、今回検証した二つの取り組みは障害者雇用の促進に貢献していることがわかり、なんとか公表することができました。

 この経験を通じて得た一番の学びは、EBPMを実現するには、データの分析者と制度を所管している担当者が密に連携することが不可欠だということです。担当者がどのようなところに課題を感じているのかを、制度の仕組みも含めて丁寧に把握することで初めて、有用な分析を行うスタートラインに立てるのではないかと思いました。

 今後、こうした分析を行う機会は徐々に増えていくと思いますが、今回得た学びを踏まえ、単なるデータ遊びにならない価値のある分析を行うことで、政策立案・運営に貢献していきたいと考えています。







 
出  典 : 広報誌『厚生労働』2021年7月号 
発行・発売: (株)日本医療企画(外部サイト)
編集協力 : 厚生労働省