- ホーム >
- 報道・広報 >
- 広報・出版 >
- 広報誌「厚生労働」 案内 >
- いのち支える自殺対策 悩んでいる“あなた”に届けたい
いのち支える自殺対策 悩んでいる“あなた”に届けたい
さまざまな悩みを抱えるなかで、自殺に追い込まれてしまう人たちがいます。コロナ禍という、ストレスがかかる環境もリスク要因の一つとなっています。どうすれば、自分自身や身近な人たちの「大切ないのち」を守ることができるのでしょうか。毎年3月は「自殺対策強化月間」。この機会に、自殺防止に向けて一人ひとりができることを考えるためにも、国の対策と自治体や民間団体の取り組みについて紹介します。
●コロナ禍の影響などから自殺者数が増加
日本の自殺者数は1998年に初めて3万人を超えた後、2003年には、統計を取り始めた1978年以降で最多の3万4,427人となりました。2010年以降は10年連続減少。2019年には2万169人となり、統計開始以来最少を記録しました。
しかし、2020年に新型コロナウイルス感染症が流行すると、多くの人がさまざまな不安やストレスを抱える状態になりました。世界全体が危機的状況に陥り、その終息にめどが立たないなかで、2020年7月以降は自殺者数が増加傾向となり、2万1,077人となりました。特に女性や若者の自殺者数が増加している状況となっています。
---------------------------------------------
<国の対策>
不安や悩みへの適切な相談対応がカギ
自殺防止に必要なこと
これまで国が講じてきた自殺対策について、コロナ禍で強化している対策も含めて解説します。
●相談体制の整備で具体的な支援につなぐ
自殺対策は2006年に自殺対策基本法ができるまでは、うつ病対策がその中心でした。なぜなら、自殺する人がうつ病など精神疾患を患っている場合も多いからです。
しかし、民間の支援団体が調査をしていくなかで、自殺の背景には経済的な問題や労働問題、家庭問題など、いろいろな要因が複雑に絡まって生じることがわかってきており、そうした背景となる問題を解決しなければ、自殺を減らせないのではないかということになりました。
社会的に問題を解決していこう、包括的に当事者を支援していこうという考えの下で自殺対策基本法ができたのです。
国としては、自殺につながってしまう不安や悩みを一人で抱えずに相談できるように、都道府県や市区町村の相談窓口や、全国規模で電話相談やSNS相談を行う民間団体に支援を行っています。そこに寄せられた相談は、内容に合わせて児童相談所や婦人相談所、生活困窮者支援機関、ハローワーク、地域の民間支援団体などにつなぎ、解決を図ります。
また、地域の自殺対策の推進役として都道府県と政令指定都市に「地域自殺対策推進センター」を設置しています。ここでは、都道府県や市区町村ごとの自殺対策計画の策定や自殺対策に関する支援・助言などを行います。都道府県や市区町村は、その自殺対策計画に基づいて電話相談や啓発、遺族支援などを実施しています。
そのほか、自殺の現状分析や自殺対策に関する調査研究、自治体の自殺対策担当職員を対象とした研修などを行っている厚生労働大臣指定法人「いのち支える自殺対策推進センター(JSCP)」に対して、国として補助をしています。
●相談の質を保ちつつ相談員の増員をめざす
昨年は夏から自殺者が増えてきたことを受け、第一次補正予算、第二次補正予算を使って、自治体と民間支援団体に相談員を増やして相談体制の拡充をしてもらう取り組みや、相談員が安心して相談ができるような感染予防の環境整備にも支援をしてきました。
現在、電話相談もSNS相談も、寄せられた相談のすべてに対応ができていないのが実情です。そのネックとなっているのが相談員不足です。「相談員の数を増やせばいいのでは?」との声もありますが、誰でも簡単に相談員になれるわけではありません。
相談者の悩みを傾聴し、「死にたい」という相談に対して避けたり逃げたりせずに真剣に向かい合う必要があります。そのためには、しっかりと研修をしなければなりません。1年半くらい時間をかけて相談員の育成を行っている団体もあります。
相談対応の質を保ちつつ相談員を増やしていくというのが課題です。
しかし、現に悩みを抱えている人はたくさんいます。
そのため、「支援情報検索サイト」などの周知も進めています。ここには、各地域の相談窓口が全部で6,000件くらい登録されています。
必ずしも自殺対策に特化した窓口とは限らないですが、いろいろな相談窓口があり、そこに相談してもらえれば、内容によってほかの相談先につないでくれるようになっています。
1人でも多くの人の命を救うことができるよう、今後も、自殺対策を推進していきます。
出 典 : 広報誌『厚生労働』2021年3月号 発行・発売: (株)日本医療企画(外部サイト) 編集協力 : 厚生労働省 |