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新型コロナウイルス最前線
新型コロナウイルス最前線 第2回
感染対策の基本は3密回避?
年末年始と受診時の心得
世界中で大問題となっている新型コロナウイルス感染症。本連載では、その動向や対策などを紹介します。
第2回目は、感染拡大が懸念される年末年始の感染予防対策を国際医療福祉大学医学部の和田耕治教授に、新型コロナおよびインフルエンザ受診時の注意点を厚生労働省健康局結核感染課の加藤拓馬エイズ対策推進室長に聞きました。
感染リスクの高い「5つの場面」
年末年始はとりわけご注意を
和田耕治さん
国際医療福祉大学 医学部 公衆衛生学 教授/医学系研究科 教授/国際医療協力部長
わだ・こうじ●2000年、産業医科大学医学部卒業。臨床研修医、専属産業医(3年間)を経て、カナダのマギル大学大学院産業保健学修士課程、北里大学大学院労働衛生学博士課程を修了。北里大学医学部衛生学公衆衛生学准教授を経て、WHOとILOのコンサルタント、厚生労働省新型インフルエンザ専門家会議委員を経験。2018年4月より国際医療福祉大学医学部公衆衛生学・医学研究科教授を務めている。
年末年始の感染リスク
——年末年始にかけて新型コロナウイルスの感染拡大が懸念されています。なぜですか?
クリスマスや忘年会、お正月、新年会などの人が集まるイベントが多いからです。新型コロナウイルスは飛沫感染(マイクロ飛沫)と接触感染によって感染します。簡単に説明すると飛沫感染とは感染者の咳、唾などと一緒に放出された飛沫や会話や大声により放出された小さな飛沫を口や鼻から吸い込むことによる感染です。接触感染は感染者が放出したウイルスが付着したものを触った手で口や鼻を触ることで感染するケースを言います。新型コロナウイルスについてはどちらかというと飛沫感染(マイクロ飛沫)の方が接触感染よりも感染経路は主といわれています。端的に言うと“食べるところ”と“話すところ”、つまり大勢の人が集まって食事や会話を楽しむイベントでの感染リスクが高いのです。
こうした新型コロナウイルスの感染リスクを高める行動や場面として、新型コロナウイルス感染症対策分科会では感染リスクを高める「5つの場面」としてまとめています(図1)。クリスマスパーティーや忘年会、お正月など、▷飲酒を伴う懇親会等、▷大人数や長時間におよぶ飲食、▷マスクなしでの会話——といった感染リスクを高める場面になりがちなので、そこでの飲食や会話については注意していただきたいと思います。
なお、年末年始の帰省等に関して誤解しないでいただきたいのですが、密閉した空間での会話や飲食などがリスクを高める要因であり、飛行機や新幹線などでの移動そのものが悪いわけではありません。
——年末年始のイベントへの参加や帰省は避けるべきですか?
飛沫感染・接触感染のリスクを避けるには、控えたほうがいいでしょうが、生活を彩る行事やイベントは、心を豊かにするかけがえのないものです。ですので、感染予防の対策をきちんとして臨むことが望ましいといえます。
たとえば、参加したいイベントがあったら、①その1週間前からほかの会合には参加しない、②検温などの体調確認を毎日行う、③咳、喉の痛み、発熱などの症状があったら参加しない——などの対策をとることが感染しない・させないことにつながります。③に関して、少しでも「心配だな」と思ったら参加を止めるという勇気をもつことも大事です。そのほか、集まる人数を減らす、時間を短縮する、事前に互いの体調を確認し合うといったことも有効です。こうした工夫をしながら豊かな時間を送ってください。
「3密」を再確認する
——感染予防に必要な「3密」について、改めて教えてください。
「3密」とは、密閉・密集・密接の3つの密を指します。具体的には、「換気の悪い密閉空間」「多数が集まる密集場所」「間近で会話や発声をする密接場面」です。こういった密の場で集団感染(クラスター)が起こっているため、3密を避けるよう呼びかけがなされたのです。「自分を守ること=相手を守ること」だと理解し、3密となる場所や環境は避けるようにしましょう。
感染者を責めるべきではない
——感染したら責められると思う人もいるようです。感染と向き合うにはどうしたらいいでしょうか。
皆さんに理解していただきたいのは、感染自体は決して悪ではなく、責められるべきではないということです。感染者が責められるような社会だと、陽性と診断されたくないために検査を受けなくなります。そうなると、感染は地域に徐々に拡がりやがて爆発的に拡大してしまいます。
PCR検査を受けることや、検査結果が陽性となった感染者を隔離することは、感染拡大を予防する重要な対策の1つです。つまり検査を受け、隔離に応じることは、感染予防に協力していることと同義なのです。それが理解できれば、感染者への偏見はなくなるでしょう。ある意味、隔離に応じて下さっている方に感謝すべきです。
今冬は新型コロナと共に過ごす初めての冬となります。欧州のようなロックダウンとならないよう、感染予防を地域で行ない、支え合っていかなければなりません。
今冬を乗り越えるためにも、感染対策を講じながら助け合い、支え合える社会をみんなでつくっていきましょう。
発熱時の最良の対応は
かかりつけ医への電話相談である
健康局結核感染症課エイズ対策推進室長
加藤拓馬
かとう・たくま●2011年、厚生労働省に医系技官として入省。平成24・26年度診療報酬改定や環境保健等に携わる。2017年からイギリスのインペリアル・カレッジ・ロンドンへ留学。2019年8月から結核感染症課で感染症対策を担当。本年1月からは新型コロナウイルス感染症の治療薬やワクチンの開発支援、検査実施の手順など技術分野の対応を担当している。
受診前に電話で相談する
――発熱した場合、新型コロナか、インフルエンザか、ただの風邪かどう判断すればいいでしょうか。
新型コロナか、インフルエンザかは検査をしなければ判断はできません。ただし「熱があるからすぐに医療機関を受診する」ということは避けてください。仮に新型コロナに感染していた場合、受診した医療機関内あるいは公共交通機関などでの移動中に、感染を拡大させてしまうリスクがあるからです。
発熱した場合は、まずかかりつけ医、あるいは近隣の医療機関に電話で相談し、指示に従ってください。休日等で医療機関に電話がつながらないという場合は、各自治体が設置している「発熱相談センター」でも構いません。医療機関を受診する前にまず電話で相談する。一人ひとりがこれを徹底することが感染の拡大防止につながります。
なお電話相談の上で医療機関を受診する場合は、なるべく公共交通機関の利用は避けて、徒歩や自動車などを使ってください。どうしても公共交通機関を利用する場合は、マスク着用のうえ、混雑する時間帯をずらすなどの工夫をしてください。
体温測定で体調変化の兆しを掴む
――医療機関において新型コロナに関する検査を受けて「陰性」という結果がでた場合、すぐに通勤・通学することはできますか。
検査は100%ではありませんし、基本的には体調がよくなるまでは自宅できちんと療養するようにしてください。これは新型コロナに限ったことではありませんが、感染の疑いがある場合はきちんと休むことが大切です。どうしても仕事をしなければならないという場合でも、出社は控えて自宅でテレワークを行うなど感染拡大を防ぐための工夫が必要です。
なお体調管理の指標としては発熱や咳、喉の痛みなどが一般的ですが、このうち発熱は最もわかりやすい指標と言えます。ここでいう発熱とは、平熱よりも高い体温を指します。体温測定によって自分の健康状態をこまめに確認し、体調変化の兆しをいち早くつかみましょう。もちろん体温は個人差があり、平熱も一人ひとり違います。そのため、体温を測定し体調の変化の兆しを把握することが大切であり、日ごろから検温して自分の平熱が何度くらいなのかを把握しておくことも大切です。
感染疑いのある家族は隔離する
――一緒に住む家族に感染の疑いがある場合、どのように対応したらいいのでしょうか。
感染を広げないということを第一に考えて対応する必要があります。発熱など感染疑いのある家族と同居している場合、家の中であってもマスクを着用し、こまめに換気をするようにしましょう。そして感染疑いのある家族には特定の部屋だけで過ごしてもらい、その看病にあたる人も限定するなど、距離をとって最小限の接触に抑えましょう。
家族内での感染拡大を防ぐために感染疑いのある人のケアを行った後は、必ず手洗いなど衛生を行うことも大事です。また、消毒は、家庭内に感染者がいる場合にドアノブ等の共有部分を定期的に拭いていただき、日常では通常の清掃で問題ありません。
(囲み記事)
新型コロナウイルス感染症対策推進本部 広報班より
#広がれありがとうの輪
いつも感染対策ありがとうございます。
ひとりでも多くの国民のみなさまに情報をお届けするため、新型コロナウイルス感染症特設サイトでの情報開示やコンテンツ制作を進めております。
コロナと迎えるはじめての冬、「感染リスクが高まる『5つの場面』」にもある懇親会や飲食の場面では、会話の際はマスクをつけて、「静かなマスク会食」へのご協力をお願いいたします。
自分のため、大切な人のため、みんなのために、日々感染対策をしてくださっている身近な方々に感謝を伝え、私たち一人ひとりが、できることをしっかりやっていく、そうすることが私たちの未来を作ります。
広報誌『厚生労働』2020年12月号
発行・発売:(株)日本医療企画
出 典 : 広報誌『厚生労働』2020年12月号 発行・発売: (株)日本医療企画(外部サイト) 編集協力 : 厚生労働省 |