厚生労働8月号 特集|厚生労働省

特集

SNS時代の自殺対策
若者・子どもの"SOS"を見逃さない



 先進国において、若者・子どもの死因の1位が「自殺」なのは日本のみです。若者・子どもにとって身近なSNSを活用した、自殺を減らすための取り組みを紹介します。








Part1 解説

自殺対策はみんなの仕事

 若者・子どもの自殺の特徴や、自殺を減らすために周囲ができることを、国の自殺対策の中核機関である自殺総合対策推進センターのセンター長の本橋豊さんに伺いました。

◎大事なのはSOSを出せる相手の多様化
本橋 豊/自殺総合対策推進センター長

 自殺者数の推移を見ると、若者・子どもは横ばいが続いています。中高年の自殺は、社会的・経済的な影響による失業や借金などが原因である場合が多いので、失業者対策などにより自殺者数を減らすことができているのです。一方、若者・子どもの自殺の半数以上は原因が不明です。大人ほど、社会的・経済的な影響を大きく受けません。そのため、原因を見つけて対策を立てるのが難しいと言えます。

 特に子どもは悩みを抱えていても、一人で抱え込んでしまいがちです。自殺を減らすには、東京都や足立区が学校で行っているように、悩んだら信頼できる大人にSOSを出していいと、子どもに教えることが大切です。

 もし、子どもから悩みを打ち明けられたら、しっかり耳を傾けること。頭ごなしに叱らず、その子が抱えている問題をきちんと受け止めましょう。対応が難しければ、学校や児童相談所などの社会的な資源につなげてください。

 私は、自殺対策は専門家の仕事ではなく、みんなの仕事だと考えています。抱える問題のなかには、精神科医などの専門家でなければ対応できないものもあります。でも、子どものSOSに早めに気づき、それを受け止めることは誰でもできます。学校や地域など、さまざまなところでSOSを受け止められるように、子どもがSOSを出せる相手を多様化すること。そして、家庭や学校、地域など、それぞれの立場の人が、自分が受けた相談を必要なところにつなぐこと。これを一つひとつ行っていくことが、自殺対策には大切だと思います。








 
出  典 : 広報誌『厚生労働』2019年8月号 
発行・発売: (株)日本医療企画(外部サイト)
編集協力 : 厚生労働省