2023年10月26日
同時発表:消費者庁、(独)製品評価技術基盤機構
部屋を暖かく快適にしてくれる石油ストーブ及び石油ファンヒーター(以下、「石油ストーブ等」という。)ですが、事故がシーズン初めの毎年11月頃から多く発生しています。使い始めのこの季節こそ、使用前の5つのチェックポイントを確認し、正しい使い方を身に付けて事故を防ぎましょう。
NITEに通知があった製品事故情報※1では、2018年度から2022年度※2の5年間における石油ストーブ等の事故は269件あり、調査が終了した事故233件のうち、原因別では誤使用・不注意による事故が115件と最も多くなっています。また、70歳以上の高齢者が被害者となる事故が131件と、年代が上がると事故件数も増加する傾向があり、死亡事故47件のうち当該年代が31件と多数を占めています。
※2 2018年4月1日から2023年3月31日に発生した事故を対象とします。
石油ストーブ等を使用する前の5つのチェックポイント
ポイント1 ほこりがたまっていれば取り除く。
ポイント2 対震自動消火装置が正しく作動することを確認する。さらに、石油ストーブの場合は、燃焼筒が正しく取り付けられていることを確認する。
ポイント3 燃料は新しい灯油を使い、昨シーズンの灯油は使わない。ガソリンの誤給油を防ぐための対策を徹底する。
ポイント4 カートリッジタンクの給油口蓋が確実に閉まっていること、漏れがないことを 確認する。
ポイント5 機器と周囲の壁や可燃物との十分な距離が確保できていることを確認する。
高齢者による石油ストーブ等の事故を防ぐために
長年使い慣れていても、今一度、正しい使い方を確認しましょう。御家族や周囲の方は機器の状態と使い方の確認等の見守りをお願いします。
対象製品および製品分類対象製品および製品分類
石油ストーブ 部位名称
1.事故発生状況
NITEに通知のあった製品事故情報のうち、2018年度から2022年度に発生した石油ストーブ等の事故269件について、発生状況を示します。
1-1.年度ごとの事故発生件数
図1に「年度ごとの事故発生件数」を示します。石油ストーブ等の事故は、過去5年間では、全体の事故発生件数が横ばいとなっている一方で、人的被害が発生した事故の増加が続いています。
図1:年度ごとの事故発生件数※3
※4 製品本体のみの被害(製品破損)にとどまらず、周囲の製品や建物などにも被害を及ぼすこと。
1-2.月別の事故発生件数
図2にNITEに通知のあった2018年度から2022年度に発生した石油ストーブ等の事故269件の「月別の事故発生件数」を示します。11月頃から事故が多く発生しており、利用機会の増加に伴って事故も多く発生しています。
図2:月別の事故発生件数
1-3.事故原因別の事故発生件数
図3にNITEに通知のあった2018年度から2022年度に発生した石油ストーブ等の事故269件のうち、調査の終了した事故233件について、「事故原因別の事故発生件数」を示します。115件(49%)が誤使用や不注意により事故が発生しています。
図3:事故原因別の事故発生件数
1-4.事象別の被害件数
表1にNITEに通知のあった2018年度から2022年度に発生した石油ストーブ等の事故269件のうち、誤使用・不注意による事故115件における「事象別の被害件数」を示します。
事故の多い「給油口からの灯油漏れ」「ガソリンの誤給油」「可燃物の接触」は事故が発生した場合、大きな火災に至るおそれがあるため、特に注意が必要です。
表1:誤使用・不注意による事故における事象別の被害件数
1-5.年代別の被害件数
図4にNITEに通知のあった2018年度から2022年度に発生した石油ストーブ等の事故269件のうち、被害者の年代が判明した206件における「被害者年代別の事故発生件数」を示します。70歳以上の被害者の事故だけで計131件と過半数を超えており、死亡事故も計31件と、高齢者の事故が多くなっています。加齢に伴う判断力や身体機能の低下、長期使用での慣れによる油断などが理由として考えられます。
図4:被害者年代別の事故発生件数
2.事故事例
2-1.手入れ不足による異常燃焼や堆積物への引火
事故発生年月 2022年11月 (神奈川県、50歳代・男性、重傷)事故の内容
石油ストーブを使用中、石油ストーブから出火して周辺を焼損し、1人が重傷を負った。
事故の原因
石油ストーブの空気取入口の下に炭化物の堆積があったほか、置台の表面に焦げつきや変色が確認されたことから、置台に堆積したほこり等によって空気の流入が阻害され、吹き返し現象※5が発生し、ほこり等に引火し燃え広がったと考えられる。
SAFE-Lite検索キーワード※6
石油ストーブ、ほこり2-2.ずれた燃焼筒による異常燃焼
事故発生年月 2019年2月 (徳島県、年齢不明・男性、拡大被害)
事故の内容
石油ストーブを使用中、石油ストーブを焼損し、周辺を汚損する火災が発生した。
事故の原因
燃焼筒がずれて置かれていたことにより異常燃焼が発生し、炎が高く上がったことで事故に至ったと考えられる。
SAFE-Lite検索キーワード
石油ストーブ、燃焼筒、ずれ
2-3.ガソリンの誤給油
事故発生年月 2022年2月 (千葉県、70歳代・女性、拡大被害)
事故の内容
石油ストーブを使用中、建物2棟を全焼する火災が発生した。
事故の原因
カートリッジタンク及びストーブ内部からガソリン成分が検出されたことから、カートリッジタンクにガソリンが混入したため事故に至ったと考えられる。ガソリンが混入した経緯は不明であったが、灯油の入った容器はガソリン携行缶と同じ建物で保管され、事故発生現場からは給油口蓋が外れている膨張したガソリン携行缶が発見された。
SAFE-Lite検索キーワード
石油ストーブ、ガソリン2-4.給油口蓋の閉め忘れ及び締め付け不良などによりこぼれた灯油に引火
事故発生年月 2022年4月 (京都府、70歳代・女性、拡大被害)
事故の内容
石油ストーブを使用中、建物1棟を全焼、2棟を類焼する火災が発生した。
事故の原因
給油口蓋の閉め方が不十分であったため、給油後のカートリッジタンクを石油ストーブ本体へ戻す際に給油口蓋が外れて灯油がこぼれ、こぼれた灯油がストーブ天板から燃焼筒にかかって発火し周囲へ拡大したものと考えられる。
SAFE-Lite検索キーワード
石油ストーブ、タンク、こぼれ
2-5.可燃物の近接
事故発生年月 2021年12月(宮城県、80歳以上・男性、軽傷)
事故の内容
石油ファンヒーターを使用中、建物を全焼する火災が発生し、1名が軽傷を負った。事故の原因
石油ファンヒーターの吹き出し口とこたつが近接した位置に設置されていたため、こたつ布団が過熱されて出火したものと考えられる。なお、被害者は視力が弱く、石油ファンヒーターとこたつ布団の間隔がよく見えていなかった。
SAFE-Lite検索キーワード
石油ファンヒーター、近接、接触
3.使い始めのチェックポイント
石油ストーブ等のチェックポイント1
ほこりがたまっていたら取り除く
石油ストーブにほこりなどが堆積すると、燃焼状態が悪くなったり、炎が逆流して石油ストーブの下からあふれる吹き返し現象が生じてほこりに引火したりするおそれがあります。
また石油ファンヒーターも空気取込口にほこりが閉塞することで異常燃焼が生じる事故が発生しています。
使用を始める前に掃除を行い、シーズン中も定期的に掃除をしてください。特に石油ストーブの置台や、燃焼部位の近くなどにほこりがたまらないようにしてください。
石油ストーブ等のチェックポイント2
対震自動消火装置の状態を確認する
対震自動消火装置が正しく動作することを確認してください。石油ストーブでは、芯の動きが悪くなると、対震自動消火装置が作動しても芯が下がりきらずに、消火不良となるおそれがあります。
確認方法は、機器本体を前後に揺らしたときに、石油ストーブの場合、芯を上げた状態から芯が下がりきること、石油ファンヒーターでは使用状態から停止することを確認します。確認方法の詳細は取扱説明書を確認してください。
燃焼筒が正しくセットされていることを確認する(石油ストーブの場合)
燃焼筒をセットした時や、点火操作後には、燃焼筒のつまみを2から3回ほど動かして燃焼筒が正しくセットされているか確認してください。燃焼筒が正しくセットされていないと異常燃焼によって炎があふれて火災が発生するおそれや、一酸化炭素が多く排出されてしまうおそれがあります。
石油ストーブ等のチェックポイント3
燃料は新しい灯油を使い、昨シーズンの灯油は使わない。ガソリンの誤給油を防ぐための対策を徹底する
石油ストーブ等には新しい灯油を給油してください。灯油は劣化するため、昨シーズンの燃料を持ち越して使用することは異常燃焼や一酸化炭素の排出を促進させるおそれがあります。もし昨シーズンの灯油が残っていた場合は、タンクや機器本体から灯油を抜いてください。灯油の処分については、灯油を購入した販売店に相談してください。
また、誤ってガソリンや混合燃料を給油すると、たとえ少量の混入であっても火災に至るおそれがあり、大変危険です。灯油とガソリンを類似した容器で保管していたために誤ってガソリンが混入していた灯油の給油や、同じ場所で保管していたガソリンを取り違えて給油したこと等による事故が発生しています。灯油は灯油用ポリタンクなどの専用容器※7に、ガソリンは消防法に適合した金属製のガソリン携行缶に入れて保管し、別の場所で保管する、ラベル表示で区別するなど、誤給油を防ぐための対策を徹底してください。
灯油とガソリンの見分け方として、以下の方法があります。
※ 確認後は、すぐに多量の水とせっけんで手を洗い流してください。
石油ストーブ等のチェックポイント4
給油後は、給油口蓋をしっかりと閉め、灯油がこぼれないことを確認してから本体にセットする
カートリッジタンクの給油口蓋の閉め方が不十分だったなどで、灯油がこぼれて引火した事例があります。給油後は、給油口蓋がしっかり閉まっていることを必ず確認してから本体にセットしてください。また、給油する際は、必ず先に消火してください。
灯油が機器本体にこぼれた際は、機器内部に浸入しているおそれがありますので、使用を中止し、販売事業者や製造事業者に相談してください。
安全機能で給油口蓋が閉まっていることを確認する
PSCマークの付いた製品は、閉止音や目視又は感触などで給油口蓋が閉まっていることが確認できる機能を有しています。
石油ストーブをはじめとする石油燃焼機器は、2009年に消費生活用製品安全法の「特定製品」に指定され、2011年からはPSCマーク
の無い製品は販売することができなくなりました。
石油ストーブ等のチェックポイント5
周囲の物や天井、壁などと十分な距離を確保する
石油ストーブ等を使用するときは、壁や周囲の家具、衣類などから指定された距離をとりましょう。カーテンや布団など燃えやすく動くものにも注意が必要です。石油ストーブ等に可燃物が近接していたり接触していると、放射熱※8による過熱や高温部への接触によって、火災になるおそれがあります。
距離表示の記載例
取扱説明書に周囲の物や天井、壁などとの距離について記載があります。※ 距離は製品によって異なります。
4.高齢者による事故【高齢者による石油ストーブ等の事故を防ぐために】
長年使い慣れていても、今一度、正しい使い方を確認しましょう。御家族や周囲の方は機器の状態と使い方の確認等の見守りをお願いします
高齢者の事故が特に多く発生しています。カートリッジタンクの給油口蓋を十分に閉じられていなかったものやガソリンの誤給油などが多い背景には、例えば、握力が弱く給油口蓋を閉める力が不十分になる、確実に蓋が閉まったことの確認ができない、ガソリンの臭いが分かりづらいなど、加齢に伴う身体機能や認知機能の低下などが関係していると思われます。今まで大丈夫だったからと油断せず、今一度、正しい使い方を確認してください。
また、使用者による注意だけでは限界がある場合もあります。御家族や周囲の方も、誤った使い方をされていないかチェックポイントで確認して伝える等、注意を払っていただきますようお願いします。長期使用している古い製品については特に注意し、破損や変形、異常動作などの不具合や、リコール対象製品※9であればすぐに使用を止めましょう。
動画で石油ストーブ等のチェックポイントを確認
一般社団法人日本ガス石油機器工業会(JGKA)と連携し、石油ストーブの使用開始時の流れに沿ってポイントをチェックできる注意喚起動画を作成しました。
担当
産業保安グループ 製品安全課 製品事故対策室長 望月
担当者:伊藤、佐々木
電話:03-3501-1511(内線 4311~3)
メール:bzl-seihin-anzen★meti.go.jp
※[★]を[@]に置き換えてください。- 消費者庁 消費者安全課長 阪口
担当者:尾崎、丁畑
電話:03-3507-9200
URL:https://www.caa.go.jp/
独立行政法人製品評価技術基盤機構 製品安全センター所長 大下
担当者 製品安全広報課 山﨑、宮川、岡田(有)
電話:06-6612-2066
メール:ps★nite.go.jp
※[★]を[@]に置き換えてください。