筋肉を速筋タイプにする転写因子を同定
〜加齢や病気で低下した筋機能の改善方法開発に期待〜
これまで、遅筋線維を誘導する強力な因子はいくつか同定されていましたが、速筋線維を誘導する
因子はほとんど知られていませんでした。このため、本研究チームは、特に速筋線維を作り出す機構の
解明を目指しています。
宇宙環境下でマウスを約1カ月飼育すると、筋肉の萎縮と速筋化が生じることは古くから知られて
いました。本研究チームは今回、宇宙飼育マウスの骨格筋で発現している遺伝子を解析し、大 Maf 群
転写因子 (Mafa,Mafb,Maf) と呼ばれる3種類の遺伝子の発現が顕著に上昇していることを発見し
ました。次に、その働きを調べるため、骨格筋に発現する大 Maf 群転写因子をすべて欠損させたノッ
クアウトマウスを作製しました。すると、このマウスの筋肉は、速筋タイプの中でも最も速筋線維の特
性が強い IIb タイプが消失し、IIa と IIb だけで構成されるようになりました。また、それとは反対に、
大 Maf 群転写因子を筋肉で過剰に発現させると、本来は IIb 線維を持たない筋肉で IIb 線維を作出で
きることを明らかにしました。
今回の研究成果を踏まえ、大 Maf 群転写因子を創薬のターゲットにすれば、加齢や病気によって変
化した筋線維のタイプを再プログラム化し、筋肉の質を改善させる方法の開発が期待できます。また、
将来的には、肉質制御による食肉産業への応用、さらにはアスリート向けなどのトレーニングプログ
ラムの開発にもつながると考えられます。
→ 研究プレスリリース PDF
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Large Maf transcription factor family is a major regulator of fast type IIb myofiber
determination.
(大 Maf 群転写因子は骨格筋を速筋線維タイプ IIb に決定する主要な因子で
ある)