「楽しさは2倍に、苦しさは半分に」

山で最高のパートナーシップを築くための重要な要素とは何でしょうか？

“アクティビティの共通性”、または、“同レベルの技術や経験値”、あるいは、“似た行動スタイルと柔軟なスケジューリング”などなど、さまざまな意見があるかもしれません。

しかし、最高のパートナーシップを築くために本当に重要なのは、類似点よりもお互いの繋がりなのです。

マムートプロチームのアスリートである、カロ・ノースとナディーネ・ウォルナ−は、2年前の偶然の出会いをきっかけに、ずば抜けたパートナーシップを生み出しました。

この2人の女性はそれぞれ違うバックグランドを持っています。ウォルナーはオーストリア出身のプロのフリーライドスキーヤー、ノースはスイス出身でプロのアルピニストであり、有名なクライマーでもあります。にも関わらずこの2年間、このペアはオーストリアからパキスタンまでのあらゆる場所で、スキー、登山、パラグライダーを共にしました。

これは、予期しない出会いの力が生み出す注目すべき例であり、最もマッチし難いパートナーシップがしばしば最良であることを証明する事例です。

この二人の女性は、経歴ではほとんど共通点を持っていませんが、パートナーシップに必要なのは共有されたスキルや経験ではない、むしろ、それは単純な人間同志のつながりであるという確固とした信念をもっています。

「私はコーヒーを飲みにいく仲間と山にいるのが好きです。だけどそれはあまり現実的ではありませんね。」とウォルナーは言います。

「パートナーが単純にプロジェクトやスポーツに集中しているだけの場合もあります。私は山のパートナーとしてだけでなく、人としてその人のことを知りたいのです。それはカロとの関係において実現したのです。」

「このパートナーシップの違いは、人間同士の対峙レベルです。私たちは、スキルやその他すべてを備えた登山家としてだけでなく、リアルな人間としてお互いと向き合い、そして楽しんでいます。」

2021年にウォルナーと一緒にスイスのPetit Clocher du Portaletで神話にでてくるAve Caesar（7c）ルートを登るプロジェクトに強く刺激を受けたノースが、パートナーの印象について語っています。

「最もクールなのは、ナディーネが常にやる気をもっていることだと思います。彼女とならなんでも一緒に達成できると確信できるパートナーです。だから、一緒にスキーにも行きますし、クライミングにも行きます。そしてアルパインクライミングにも行きます。しかし、私たちが一緒に過ごすのは、クライミングの時だけではありません。」

「私たちはお互いのことをなんでも話せます。そしてこのことは私にとって本当に重要なことです。クライミングだけでなく、はるかにそれ以上の関係なのです。一緒にクライミングをしていなくても、お互いに電話をかけ、何時間もおしゃべりしたりもします。」

比較的短期間で構築した友情にも関わらず、ウォルナーとノースは強い信頼関係を築いてきました。それが、山での成功の基盤であると二人は共に確信しています。

「パートナーを信頼できないと、自分の限界まで力を発揮することはできません。」とノースは言います。

「一緒に登れば登るほど、必要な言葉が少なくなり、一緒に取り組めば取り組むほど、融合が生まれるのです。」

「そして、ナディーネと私は、言葉なしでコミュニケーションをとることができる瞬間、お互いの目を見るだけで、何を考えているかをわかる実感があります。本当に素晴らしいです。こんなにいいパートナーは久しぶり。なんでもできるし、それもとても簡単にね。」

「私たちはお互いに上を目指していますが、二人の間に競争心はありません。私たちは一緒に強いチームになりたいのです。だから、彼女が何かに到達したとき、私たちはチームとして到達するのです。」

マウンテンスポーツにおいて、完璧なパートナーを見つけることは極めて難しい作業です。特に名高い山に挑む際の精神的および肉体的な挑戦は、同じレベルで融合できるチームメイトを見つける仕事をより難しく挑戦的にします。しかし、こぐ稀に星が一直線に整列するように完全に一致する場合もあります。

「チームとして機能しなくては、何も生み出せません。」とウォルナーは語ります。

「それをまとめてさらに良いものを引き出すことができれば、それこそが私にとっての真のゴールです。このルートをただ攻めるだけでなく、スキーを使ってみたいこともあります。一人で行くこともできますが、あまり楽しくはありません。信頼するパートナーと融合するとき、あなたの楽しみは2倍になる。そして、あなたがパートナーと共に苦しむとき、その苦しみは半分になります。私はカロとこれを実感することができます。」