支持率低下に苦しむ安倍政権は、起死回生策として衆議院の解散・総選挙で国民の信を問う準備をしていると言います。生活に困っている国民はいつも後回しです。(『マンさんの経済あらかると』斎藤満)
※本記事は有料メルマガ『マンさんの経済あらかると』2020年6月26日の抜粋です。ご興味を持たれた方はぜひこの機会にバックナンバー含め今月すべて無料のお試し購読をどうぞ。
プロフィール:斎藤満(さいとうみつる)
1951年、東京生まれ。グローバル・エコノミスト。一橋大学卒業後、三和銀行に入行。資金為替部時代にニューヨークへ赴任、シニアエコノミストとしてワシントンの動き、とくにFRBの金融政策を探る。その後、三和銀行資金為替部チーフエコノミスト、三和証券調査部長、UFJつばさ証券投資調査部長・チーフエコノミスト、東海東京証券チーフエコノミストを経て2014年6月より独立して現職。為替や金利が動く裏で何が起こっているかを分析している。
護身解散に強い逆風
支持率低下に苦しむ安倍政権は、起死回生策として衆議院の解散・総選挙で国民の信を問う準備をしていると言います。
自民党の甘利税調会長はロイター通信のインタビューで、秋の解散を匂わしていました。追加の景気対策を打ったうえで憲法改正を大義とする解散のようです。
しかし、これは明らかに安倍総理の護身策で、今回ばかりは政権幹部がこれを阻止する構えです。
菅官房長官は22日の会見で、解散風について問われ、「私にはまったく感じられない」とそっけなく否定しました。通常なら、官房長官の立場を考えると「総理が決めることですから」とさらっとかわすところ。今回はそうした配慮も見られず、総理との関係が冷めている可能性を示唆しました。
また公明党の山口代表も23日には「コロナ感染の第2波、第3波に備えるのが最優先」と言い、解散どころではないとの考えを示しました。総理がそれでも無理に解散に踏み切るようなら、公明党は選挙協力はしない、との強い姿勢を匂わしています。
そうなると、とても選挙にならないと自民党幹部は震え上がります。総理もさすがに解散カードを切りにくくなりました。
憲法の本質を知らない改憲姿勢
そもそも、解散の大義に利用されようとしていた憲法改正が、ご都合主義丸出しで、憲法の本質と逆行する無謀なものです。
本来、憲法とは国のトップが国民の利益に反する勝手な行動をとらないよう、政府の行動を制限し、国民の自由を守るために制定されたものです。従って、改憲が必要となれば、国民が発議するべきもので、いやしくも政権側が言い出すようなものではありません。
憲法の本質を理解するためには、その基本となった「マグナ・カルタ(大憲章)」を理解する必要があります。これは1215年6月、英国で時の支配者、ジョン王の無謀な行為によって国民の生命、財産、自由が脅かされないよう、諸侯と都市の上層市民が立ち上がり、王への忠誠破棄を宣言して立ち上がりました。
そして勝ち得たのが「国王の徴税権の制限」「都市の自由」「不当な逮捕の禁止」などです。
当時、英国はフィリップ2世が率いるフランスと戦っていて、ジョン王はフランスに出兵するため、都市に莫大な軍役や税金を科していました。その横暴を制限するために、ジョン王に飲ませたのが「マグナ・カルタ」で、後の憲法の基礎となります。