冷蔵庫にカメラ機能は必須。中国家電「スマート化」に日本惨敗。健康・高級・ペットの3大トレンドで市場急成長=牧野武文 | ページ 6 / 6 | マネーボイス

冷蔵庫にカメラ機能は必須。中国家電「スマート化」に日本惨敗。健康・高級・ペットの3大トレンドで市場急成長=牧野武文

日本の「おどり炊き」の開発者がヒット商品を生み出した

この米家の開発責任者は、元三洋電機の内藤毅さんです。この方は、三洋電機の炊飯器部門で初めてIH炊飯方式を前面に打ち出し「おどり炊き」炊飯器を開発しました。このおどり炊き炊飯器は、当初、家庭よりも飲食店のプロから愛好されたことで火がつきヒット商品となりました。

三洋電機を退職後、小米傘下の家電開発企業「純米電子科技」に誘われ、IH炊飯器の開発責任者となりました。そのストーリーは、内藤毅さんが日経ビジネスの取材に応え詳しく語っています。
※参考:三洋出身の私がなぜシャオミで炊飯器を作るのか:日経ビジネス電子版(2016年8月26日配信)

その中でショックだったのは、「外観のデザインや操作性に関しては日本よりも厳しいのではないかと思います」という発言です。開発段階から小米による細かいチェックが入るそうです。つまり、中国あるいは小米の家電製品の考え方は、基本性能が第一であるのは当然として、次に操作性、外観デザインなどがくるということです。

機能競争だけになり落日した日本の家電業界

日本の家電は、考え方が違います。日本の家電が成長をしたのは1960年代です。1953年が家電元年と呼ばれ、1956年に三種の神器(テレビ、洗濯機、冷蔵庫)という言葉が生まれました。つまり、人口が大幅に増え、高度経済成長に伴って成長しました。

この状況で起きたのが、機能競争でした。炊飯器であれば、こちらはおかゆも炊ける、あちらは松茸ご飯も炊けるというような付加機能の競争が始まりました。さらに大手と呼ばれる家電メーカーだけでも、松下、東芝、日立、三菱、シャープ、三洋電機があり、それぞれの分野での専業家電メーカー、ダイキン工業(エアコン)、象印(調理家電)も強く、激しい競争をしています。

当時の買い方は、町の電気店に行って、店舗スタッフの意見を聞きながら店頭で決めるというものです。そして、次々と新しい機能が生まれてくるので、たくさん機能がついている家電製品が売れます。

たくさんの機能がついているということを店頭でアピールする優れた方法は、機能ごとにボタンをつけることです。電子レンジであれば、「調理」ボタンひとつにするのではなく、「解凍(肉)」「解凍(魚)」「ミルク」「ヘルシーフライ」というボタンをつけていった方が店頭でアピールできるのです。これにより、日本の家電はボタンが異常なほどついている「外観のデザインと操作性」を犠牲にするものになってしまいました。

当時はこの考え方は正解でした。ボタンの数が多い家電ほどよく売れたのです。しかし、今は時代が変わりました。家電を買うのに予備知識なく店頭に行って決めるという人は少なく、事前にネットやSNSである程度調べます。詳しいカタログも見られますし、取扱説明書も見られるので、細かい操作性も確かめることができます。ボタンをたくさんつける理由はもはやないのです。

ある家電プロダクトデザイナーの方が、私にこう語ったことがあります。「変える勇気がない」というのです。今、日本の家電市場は完全に頭打ちで、買い替え需要のみに頼っている状況です。しかも、人口が減少し、若い世代では家電製品に関心をもたなくなる傾向があるため、その買い替え需要も減少傾向にあります。

そのような縮小する市場で、今までと異なる挑戦をして、失敗をしたら致命的なことになります。

スマホとの連動やスマート家電機能は、今の家電にとって必須の機能だと思いますが、それにも日本の家電メーカーは消極的です。なぜなら――

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・日本の家電メーカーが「スマート化」できない理由
・中国家電は今が成長期、「高級化」でさらに世界シェア拡大へ
・日本の家電は◯◯◯◯◯をすれば成長できる
・小米物語その9
・アリババ物語その9
・先週の中華IT最新事情
・Q&Aコーナー
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※本記事は、知らなかった!中国ITを深く理解するためのキーワード 2021年9月27日号の一部抜粋です。続きは2021年9月のバックナンバーをご購読ください。ご興味をお持ちの方は、今月分すべて無料のお試し購読をどうぞ。

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2021年9月配信分
  • vol.091:スマート化により成長市場となっている中国家電。トレンドは「高級化」「健康機能」「ペット家電」(9/27)
  • vol.090:今どきの子どもたちのネット事情。ゲーム規制、教育改革をしたたかかに生きる子どもたち(9/20)
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2021年8月配信分
  • vol.087:洗脳神曲「密雪氷城」の背後に隠されたプロモーションロジック(8/30)
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  • vol.084:テンセント帝国の終わりの始まり。ゲーム業界に起きている大きな地殻変動(8/9)
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  • vol.080:中国主要スーパーが軒並み減収減益の危険水域。もはや店頭販売だけでは生き残れない(7/12)
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  • vol078:ECがビジネスモデルの変革期に突入。ライブコマースによる「興味EC」「アルゴリズムEC」とは(6/28)
  • vol.077:あらゆる商品を1時間以内にお届け。即時配送が拡大する理由とその難しさ(6/21)
  • vol.076:無人カート配送が普及前夜。なぜ、テック企業は無人カートを自社開発するのか?(6/14)
  • vol.075:アリババをユーザー数で抜いて第1位のECとなったピンドードー。そのビジネスモデルのどこがすごいのか?(6/7)

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  • vol.074:アリババはテンセントの軍門に降ったのか。アリババのサービスがWeChatミニプログラムに続々対応(5/31)
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  • vol.072:中国の消費者保護はどうなっているのか。三包とテスラ問題、iPhone問題の関係(5/17)
  • vol.071:コロナ終息後にも定着した5つのトレンド。ライブコマース、社区団購、リモートワークなど(5/10)
  • vol.070:アリババに巨額罰金。独占を防ぐことで、市場は停滞をするのか、それともさらに成長するのか(5/3)

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  • vol.067:ビジネスとして成立をし始めたeスポーツ。老舗企業も注目する新たなコンテンツ産業(4/12)
  • vol.066:ネットの中心はテキストからショートムービーへ。始まりつつある大変化(4/5)

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  • vol.065:中国で始まった海外渡航。日本へのインバウンド旅行客はいつ戻ってくるのか(3/29)
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  • vol.063:テック企業にとっての春節。テックサービスを地方と高齢者に伝播をさせる重要な時期(3/15)
  • vol.062:突如として売れ始めた電気自動車(EV)。中国のEVシフトが本格化(3/8)
  • vol.061:再び注目を集める無人小売テクノロジー。非接触と人材採用がキーワードに(3/1)

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2021年2月配信分
  • vol.060:ショッピングモールの不振から見える小売業の変革。人と商品の関係性が変わる(2/22)
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  • vol.058:再び成長を始めたTik Tok。テンセントのWeChatと正面から激突(2/8)
  • vol.057:テック企業に蔓延する996。社会問題化する長時間労働問題(2/1)

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2021年1月配信分
  • vol.056:広告のコンテンツ化が進むビリビリとTik Tok(1/25)
  • vol.055:中国のAI開発体制と2020年のAI応用例(1/18)
  • vol.054:中国最後の巨大市場「銀髪族」。テック企業が注目をする4.7億人市場(1/11)
  • vol.053:保険金の支払いは投票で決める。加入者1億人を突破した「わりかん保険」(1/4)

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2020年12月配信分
  • vol.052:定着をする新中国茶カフェ。鍵は「品質」「ネット」「アート」(12/28)
  • vol.051:限界に達している独身の日セール。それでも記録更新をするアリババ(12/21)
  • vol.050:系列化が進む中国主要テック企業(12/14)
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2020年11月配信分
  • vol.048:中国電子産業の原点「山寨機」とは何だったのか?(11/30)
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  • vol.046:デジタル人民元の仕組みとその狙い(11/16)
  • vol.045:SARS禍で生まれたEC。SARSで成長したアリババと京東(11/9)
  • vol.044:貧困を撲滅するタオバオ村の成功例と失敗例(11/2)

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2020年10月配信分
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  • vol.041:休日消費に起きている変化。キーワードは即時配送、到家サービス、家族(10/12)
  • vol.040:進化が止まらないライブコマース。自動車、マンション、ザリガニまでも(10/5)

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2020年9月配信分
  • vol.039:すべての小売業は新小売になる。既存小売はどこまで新小売化を進めているか?(9/28)
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2020年8月配信分
  • vol.035:新中華圏が構築されつつある東南アジアITビジネス(8/31)
  • vol.034:中国の人工知能産業は、米国にどこまで迫っているのか(8/24)
  • vol.033:BATがBATである理由。トラフィック制御からの視点(8/17)
  • vol.032:ソーシャルEC。次世代ECなのか、それとも中国独特のECなのか(8/10)
  • vol.031:大量導入前夜になった中国の自動運転車(8/3)

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2020年7月配信分
  • vol.030:コロナ終息後、中国経済に起きている5つの変化(7/27)
  • vol.029:店舗、ECに続く第3の販売チャンネル「ライブEC」(7/20)
  • vol.028:MaaSにいちばん近い企業。滴滴出行の現在(7/13)
  • vol.027:中国に残された個人消費フロンティア「下沈市場」とは何か?(7/6)

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  • vol.025:ポイント還元をむしゃぶりつくす羊毛党とその産業構造(6/22)
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  • vol.022 OPPO、vivoを生んだ歩歩高とその創業者段永平(6/1)

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2020年5月配信分
  • vol.021 感染拡大で実戦投入された人工知能テクノロジーの数々(5/25)
  • vol.020 経済復活の鍵は「ライブEC」。感染拡大から広がる新たな販売手法(5/18)
  • vol.019 生き残りを賭ける飲食業。鍵は「外売」(デリバリー)(5/11)
  • vol.018 ニューノーマル。終息後の新日常は、以前とどう変わるのか?(5/4)

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2020年4月配信分
  • vol.017 アリババとテンセント。ECビジネスをめぐる衝突(4/27)
  • vol.016 敗走するアマゾン、カルフール。理由はグローバルとローカルの衝突(4/20)
  • vol.015 中高年にスマホ決済を浸透させた台湾庶民派スーパー「PX Mart」の取り組み(4/13)
  • vol.014 1日で4.1兆円売り上げる「独身の日」は、どのように生まれたのか?(4/6)

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2020年3月配信分
  • vol.013 1日で420億円の商品を売る。網紅の桁外れの販売力の仕組み(3/30)
  • vol.012 広告メディアとしてのTik Tok。その驚異のコンバージョンの秘密(3/23)
  • vol.011 人口ボーナス消失とZ世代。経済縮小が始まる(3/16)
  • vol.010 中国テック企業は、新型コロナとどう戦っているか(3/9)
  • vol.009 潜在顧客を掘り起こし、リピーターを育成するモバイルオーダー(3/2)

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2020年2月配信分
  • vol.008 新小売戦略の要となったフードデリバリー「外売」(2/24)
  • vol.007 ミニプログラム活用で新規顧客を獲得する店舗小売(2/17)
  • vol.006 中国のEVシフトは成功なのか。それとも失敗なのか?(2/10)
  • vol.005 第2位のECに浮上した拼多多とは何ものか?(2/3)

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2020年1月配信分
  • vol.004 ファーウェイと創業者、任正非(1/27)
  • vol.003 シェアリング自転車は投資バブルだったのか(1/20)
  • vol.002 アリペイとWeChatペイはなぜ普及をしたのか(1/13)
  • vol.001 生鮮ECの背後にある前置倉と店倉合一の発想(1/6)

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image by:aslysun / Shutterstock.com
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知らなかった!中国ITを深く理解するためのキーワード』(2021年9月27日号)より一部抜粋
※タイトル・見出しはMONEY VOICE編集部による

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