冷蔵庫にカメラ機能は必須。中国家電「スマート化」に日本惨敗。健康・高級・ペットの3大トレンドで市場急成長=牧野武文 | マネーボイス

冷蔵庫にカメラ機能は必須。中国家電「スマート化」に日本惨敗。健康・高級・ペットの3大トレンドで市場急成長=牧野武文

中国家電市場はすでにコロナ禍から完全復活、「健康・高級・ペット」という3つのトレンドで成長軌道に乗っています。なかでも重要なキーワードは「スマート化(高級化)」。いまや家電製品の機能・デザインの両面で日本企業は遅れを取っていますが、中国家電の流行を知ることで日本メーカーにも活路が生まれます。(『知らなかった!中国ITを深く理解するためのキーワード』牧野武文)

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※本記事は有料メルマガ『知らなかった!中国ITを深く理解するためのキーワード』2021年9月27日号の一部抜粋です。ご興味をお持ちの方はぜひこの機会にバックナンバー含め今月分すべて無料のお試し購読をどうぞ。

プロフィール:牧野武文(まきの たけふみ)
ITジャーナリスト、フリーライター。著書に『Googleの正体』『論語なう』『任天堂ノスタルジー横井軍平とその時代』など。中国のIT事情を解説するブログ「中華IT最新事情」の発行人を務める。

中国家電のトレンドは「高級化」「健康機能」「ペット家電」

2020年の家電市場は、コロナ禍の影響により、空気清浄機など特需製品以外は軒並み総崩れとなりました。標準品であればEC「京東」などで購入してしまう人が増えていましたが、高級家電となるとやっぱり店頭で現物を自分で確かめたい。こういう人たちが外出を控えた影響です。

しかし、2021年上半期はほぼすべてのジャンルで、2020年を上回り、コロナ前の2019年の水準を超えた製品が多く、再び成長軌道に乗りました。

今、中国の家電で起きているトレンドは3つあります。

1. 健康家電
マッサージ機、空気洗浄機だけでなく、洗濯機やエアコンまで健康関連機能を搭載するようになっています。

2. ペット家電
ペットのブームは根強く、ペットにお金を使う傾向が続いています。ペット用の自動給餌器、ウォームシートなどが好調です。

3. スマート機能
これが最も大きなトレンドで、スマートフォンに対応するのは当たり前になり、さまざまなAI、IoT機能が搭載されるようになっています。

おもしろいのは、スマート機能の方向性では、日本の場合は冷蔵庫の温度管理をして、食材の鮮度をより保つとか、消費電力を抑えるという基本性能に関わる使われ方をします。

中国では、冷蔵庫にカメラを搭載して食材を画像認識し、スマホに食材リストを送信するなどのユーザー体験に関わる使われ方をします。たいへんに興味深い違いだと思います。

そこで今回は、家電市場の現場と、スマート家電の実例をご紹介します。

家電販売を回復させた3つのトレンド

まずは、中国の白物家電の状況についてご紹介します。

2020年はコロナ禍で、家電製品の売れ行きは大きく落ち込みました。例外は、空気清浄機や衛生家電などのコロナ特需のあったものだけでした。しかし、2021年の上半期の統計が出てみると、軒並み回復をしています。テレビとエアコンはコロナ前の2019年の水準にまで回復することはできませんでしたが、冷蔵庫、洗濯機、調理家電、生活家電は2019年の水準を上回りました。

この回復に大きく寄与したのが、家電の3つのトレンドです。

1. スマート家電化、高付加価値、高級化
2. ECと店舗の販売チャンネルの棲み分け
3. ECの浸透による地方市場拡大

同様の傾向は日本でも進んでいますが、中国の方がより早くより強く進んでいると思います。

そのため、日本の家電市場のトレンドを予測するときの参考になるのではないかと思い、ご紹介をしたいと思います。

スマホ接続は当たり前。ECと店舗の棲み分けにも成功

スマート家電化では、今、一定グレード以上の家電製品はBluetoothなどでスマートフォンとつながるのが常識になっています。

ほぼ「スマート化=高付加価値化・高級化」と考えて間違いありません。もちろん、豪華な化粧板を使った冷蔵庫など、古いタイプの高級化もありますが、多くの人が求めているのがスマート化です。どのようなスマート化が行われているのかは、後ほど個々の事例をご紹介します。

もうひとつは、ECと店舗の棲み分けです。いわゆるオンライン販売とオフライン販売です。

現在、家電のEC化率は50%+程度で、コロナ禍の2020年に大きく伸びましたが、2021年はやや伸びが鈍化しました。店舗も意外に頑張っているのです。

店舗では、品揃えを大きく変え、高価格帯の家電が中心になっています。量販店のイメージのように、大量の段ボールに入った家電製品が山積みになっている店舗は減少し、高級さを前面に出したショールーム的な店舗が増えています。

理由は明らかで、低価格帯から中価格帯の家電は店舗では売れなくなったからです。店頭に並べて、販売員が説明しても、すぐにスマホを取り出されて、ECでの販売価格を調べ、そちらで買われてしまうからです。

特に低価格帯の家電製品の利益率は非常に小さくなっており、ECがキャンペーンなどでクーポンを配布した場合、量販店は実売価格でまったく太刀打ちできません。

一方、高級家電はある程度の利幅がある上、テレビラックやケーブル、交換フィルターなどの関連製品も売れます。このような関連製品は、単価が安いため、多少価格を上乗せしても、多くの消費者が“ついで買い”をするために、販売店にとっては貴重な利益源になっています。

また、高級家電は価格もそれなりになるので、消費者にも見比べてから買いたい、プロの意見を聞きたいというニーズがあるため、販売店に足を運び、自分の目で見て比較をします。販売スタッフは、家電コンシェルジュの役割をするようになっています。

さらに、地方都市、農村での家電の伸びが顕著です。このメルマガをご購読されている方にはおなじみの下沈市場です。EC「京東」(ジンドン)の全国配送、ソーシャルECの「ピンドードー」、日用食料品の社区団購など、近年、下沈市場へのECの浸透が進んでいます。これにつれて、下沈市場でも家電が売れるようになっています。

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