緊急事態宣言が発出されましたが、コロナ感染拡大が止まる見込みはまったくありません。コロナ長期化の最大の犠牲者は、債務を抱えてしまった人々や企業です。(『マンさんの経済あらかると』斎藤満)
※有料メルマガ『マンさんの経済あらかると』2021年4月26日号の一部抜粋です。ご興味を持たれた方はぜひこの機会にバックナンバー含め今月すべて無料のお試し購読をどうぞ。
プロフィール:斎藤満(さいとうみつる)
1951年、東京生まれ。グローバル・エコノミスト。一橋大学卒業後、三和銀行に入行。資金為替部時代にニューヨークへ赴任、シニアエコノミストとしてワシントンの動き、とくにFRBの金融政策を探る。その後、三和銀行資金為替部チーフエコノミスト、三和証券調査部長、UFJつばさ証券投資調査部長・チーフエコノミスト、東海東京証券チーフエコノミストを経て2014年6月より独立して現職。為替や金利が動く裏で何が起こっているかを分析している。
終わりが見えぬ日本のコロナ
東京・大阪など4都府県において、5月11日までの予定で3回目の緊急事態宣言が発出されました。
それでも宣言が延長される可能性や、感染は第4波にとどまらず、その後また第5波がやってくるとの専門家の見方が提示されています。
イスラエルや英国がワクチンの普及で経済の正常化を取り戻しつつある一方で、日本はいつ終わるかわからないコロナの感染不安が続きます。
そこでの最大の犠牲者は、債務を抱えてしまった人々や企業です。
マネーストックの増加を喜べない
金融当局の間では、やっと大規模緩和がマネーの増加につながるようになったと、安どの声が聞かれます。
以前は日銀が国債の買い入れを増やして、銀行の日銀当座預金を増やして「マネタリーベース」を増やしても、結果的にM2(現預金の合計:市場全体に供給される通貨の量を測る指標)など市中のマネー流通量を増やすことはできませんでした。
しかも「マネタリーベースを2桁の伸びに高めれば名目GDPが増える」との一部学者の主張はとうに破綻しています。
結局、マネタリーベースを増やしても、マネーは日銀の当座預金の中で増えているだけで、マネーストックなどの市中のマネーが増えなければ意味がない、ということが分かりました。
しかし民間部門に資金需要がなければ、貸出などの信用創造を源とするM2やM3などのマネーストックは増えません。ここに日銀の焦りがあり、限界がありました。
これを救ってくれたのが皮肉にもコロナ禍でした。
コロナの感染拡大、緊急事態宣言などで時短や休業を余儀なくされた企業は、収入の大幅減となり、従業員の給料も払えないところが出てきました。持続化給付金、雇用調整助成金などの支援策はありましたが、基準に満たないケースや、手続きが煩雑でなかなか実行されないケースも見られました。
そこへ救いの手に見えたのが、無担保無利息融資による支援策です。
目先の資金が必要な企業にとっては、とりあえず資金が借りられるのは助けになります。担保もいらず、無利息ですから、感染が一服して商売が再開したら返せばよい、ということで最初の緊急事態宣言後に借入が大きく増えました。それまで、代表的なマネーストックの指標と見られているM2(現預金の合計)が、大規模緩和を何年も続けながら、2%台の増加にとどまっていましたが、コロナ以降急増しました。
例えば、M2の伸びは2018年度が2.7%、19年度が2.6%でした。ところが、昨年4月以降、コロナ支援融資が増えたことからこれが急増し、4月の3.7%から月を追って伸びが高まり、今年2月には9.6%に達しました。
コロナで困った企業が借り入れをし、その資金が企業の口座に振り込まれた結果です。その資金で仕入代金や賃金を支払いました。
ここまでは良いのですが、これを喜べない事情があります。