農業物価統計調査の概要
調査の目的
農業物価統計調査は、農業における投入・産出の物価変動を測定するため、農業経営に直接関係のある物価を把握し、その結果を総合して農業物価指数を作成することにより、生産対策・経営安定対策等の各種行政施策の推進等のための資料を整備することを目的としている。
調査の沿革
- 農業物価統計調査の前身となる農村物価調査は、昭和12年に帝国農会で開始され、全国農業会での実施を経て、昭和23年に農林省(当時)に移管された。
現行の農業物価指数に接続しうる調査体系が整備されたのは昭和26年度結果からである。
その後、指数の基準年次を更新する「基準改定」を昭和32年度に行い、昭和35年度以降は5年ごとに行っている。
基準改定時には、農業の生産構造の変化等を的確に指数に反映させるため、指数採用品目やウエイトの見直しを行っている。
なお、最近の基準改定における主な改定内容は次のとおりである。
(1)平成7年基準改定では、指数の算出期間を年度(当年4月から翌年3月まで)から暦年(1月から12月まで)に変更した。
(2)平成12年基準改定では、生活資材価格指数を廃止し、指数の概念を「農村における景気及び物価水準の変動を測定する物価指数」から「農業における投入・産出の物価変動を測定する物価指数」に改め、「農村物価指数」の名称は「農業物価指数」へ改称した。また、農産物価格指数の月別の総合指数及び類別指数の算出に当たっては、類別ウエイト及び品目別ウエイトを月別に変動させず固定して算出する方式から、類別ウエイトを固定し、類内の品目別ウエイトを月別に変動させて算出する方式に変更した。
(3)平成17年基準改定では、農業臨時雇賃金指数を廃止した。また、農業生産資材価格指数のガソリン、灯油、ホース、パーソナルコンピューター及び塗料については、消費者物価指数(総務省)の公表値を利用することとした。
(4)平成22年基準改定及び平成27年基準改定では、調査体系の見直しは行わず、これまでの基準改定に準じて、指数の基準時の変更、指数採用品目の見直し及びウエイトの変更を行った。なお、平成27年基準改定においてホースの指数を再作成するとともに、塗料を調査品目から削除した。
(5)令和2年基準改定では、指数の基準時の変更、調査品目の見直しに加え、類別ウエイトの基礎データを農業経営統計調査経営形態別経営統計の個別経営体の平均値から全農業経営体の平均値に変更した。詳細は基準改定の概要(令和2年基準)(PDF:357KB)を参照されたい。 - 平成22年1月分の調査から、「競争の導入による公共サービスの改革に関する法律」(平成18年法律第51号)に基づく民間競争入札による民間事業者を通じて実施している。
調査の根拠法令
調査は、統計法(平成19年法律第53号)第19条第1項の規定に基づく総務大臣の承認を受けて実施した一般統計調査である。
調査体系
調査の対象
- 農産物生産者価格調査
農産物出荷団体等(農業協同組合、出荷組合、集出荷業者又はその団体、食肉卸売市場等) - 農業生産資材価格調査
農業生産資材を販売する小売店等
抽出方法
- 農産物生産者価格調査
(1)調査都道府県
調査都道府県は、調査品目ごとに令和元年及び令和2年の作物統計調査、畜産物流通調査等の結果を用い、当該品目の出荷量の多い都道府県から順次加算し、その累積出荷量が全国総出荷量の80%以上となる都道府県とした。
(2)調査市町村
調査市町村は、調査品目ごとに令和元年及び令和2年の作物統計調査結果等を用い、調査都道府県別に当該品目の出荷量の多い市町村から順次加算し、その累積出荷量が当該都道府県の総出荷量のおおむね80%までの市町村を選定した。ただし、市町村別の出荷量を把握することが困難な調査品目については、関係団体への聞き取りによる情報を参考に、都道府県内の当該調査品目の農産物価格を最も正確に調査しうる市町村を有意に選定した。なお、選定される市町村が7市町村以上となる場合は、出荷量の多い順に6市町村を選定した。
(3)調査対象
調査対象は、調査品目ごとに各調査市町村に所在する農産物出荷団体等(農業協同組合、出荷組合、集出荷業者又はその団体、食肉卸売市場等)の中から、当該品目の取扱量が多いなど価格形成に主導力を持ち、当該市町村における代表的な農産物の価格を最も正確に調査しうる農産物出荷団体等を有意に選定した。ただし、都道府県内の当該調査品目の流通実態を反映した割合となるように出荷団体等を選定した。 - 農業生産資材価格調査
(1)調査都道府県
調査都道府県は、調査品目ごとに出回りがある都道府県とした。
(2)調査対象
調査対象は、調査品目ごとに各調査都道府県に所在する農業生産資材を販売する小売店等の中から、当該品目の取扱量が多いなど価格形成に主導力を持ち、当該都道府県における代表的な農業生産資材の価格を最も正確に調査しうる小売店等を有意に選定した。ただし、全国の当該調査品目の流通実態を反映した割合となるように事業所を選定した。
調査事項
- 農産物生産者価格調査
(1)調査品目
調査品目は、令和2年農業総産出額に占める当該品目の産出額が1,000分の1以上の品目及び行政施策上重要な品目(計122品目)とした。
(2)調査銘柄及び調査単位
調査銘柄及び調査単位は、「1(3) 月別年次別全国平均販売価格」の「銘柄等級」欄及び「単位」欄とした。
(3)調査価格
調査価格は、農業経営体が生産した農産物の販売価格(消費税を含む。)から出荷・販売に要した経費(消費税を含む。)を控除した価格である。また、分離が困難な生乳等一部の品目については、補給金等を含めている。 - 農業生産資材価格調査
(1)調査品目
調査品目は、農業経営において使用割合が高い品目及び行政施策上重要な品目(計169品目)とし、このうち、ガソリン、灯油及びパーソナルコンピューターの3品目については、消費者物価指数(総務省)の公表値を利用した。
(2)調査銘柄及び調査単位
調査銘柄及び調査単位は、「2(3) 月別年次別全国平均小売価格」の「銘柄等級」欄及び「単位」欄とした。
(3)調査価格
調査価格は、農業経営体が購入する農業生産資材を販売する小売店等で実際に販売される平常の価格(消費税を含む。)である。したがって、大量購入等による値引きを対象としない価格とする。
調査の時期
- 調査期日
(1)農産物生産者価格調査
ア 調査月
調査月は、原則、毎年1月から12月までとし、出回り月が限られている調査品目(以下「季節調査品目」という。)については、調査品目ごとに令和元年及び令和2年の出荷量の多い月から順次加算し、累積出荷量が年間出荷量の80%以上となるまでの月とした。
イ 調査日
調査日は、野菜については、毎月5日及び15日現在、野菜以外の農産物については、毎月15日現在とした。ただし、各調査日において調査不可能な場合には、各調査日になるべく接近した調査が可能な日を調査日とした。
(2)農業生産資材価格調査
ア 調査月
調査月は、原則、毎年1月から12月までとし、季節調査品目については、基準時(令和2年)の当該品目の出回り期間を考慮し定めた。
イ 調査日
調査日は、毎月15日現在とした。ただし、調査日において調査不可能な場合には、調査日になるべく接近した調査が可能な日を調査日とした。 - 調査票の配布・回収
(1)調査票の配布
年1回又は数回に分けて調査期日前に配布した。
(2)調査票の回収
調査対象日が属する月の末日までに回収した。
なお、農産物生産者価格調査のうち米、麦、大豆等の販売価格については、調査日が属する月の15日までに概算払いの金額を把握するとともに、調査翌年の6月末日までにその後の精算払いの金額を把握する。
また、調査日が属する月の翌月末までに公表している概数値においては、回収できなかった調査票について、調査票が回収できた同一都道府県等における他の調査対象の前年同月比等を用いて調査価格を補完しているが、調査翌年の6月末までに当該調査票を回収し、当該月の報告値に組み入れて再計算を行った。
調査の方法
本調査は、農林水産省-民間事業者-調査対象の実施系統で実施している。
農林水産省の委託した民間事業者(以下「民間事業者」という。)及び民間事業者が確保した調査員(以下「調査員」という。)が調査対象に聞き取りを行う他計調査又は調査対象が記入した調査票を調査員が回収する若しくは郵送、オンライン若しくはFAXにより回収する自計調査の方法により行った。
なお、精算払いの金額を把握する必要がある調査品目にあっては、民間事業者又は調査員が電話等の方法により把握を行った。
集計・推計方法
本調査の集計は、調査都道府県別平均価格にあっては、民間事業者において集計し、全国平均価格及び価格指数にあっては、農林水産省大臣官房統計部経営・構造統計課において集計した。詳細は次のとおりである。
- 平均価格の算出方法
平均価格の算出方法は次のとおりである。
なお、調査票を回収できなかった場合は、調査票が回収できた同一都道府県等における他の調査対象の前年同月比等を用いて補完した。
(1)農産物生産者価格調査
指数採用品目の平均価格は、月別及び年別にそれぞれ次の方法により算出した。また、指数採用品目以外で行政施策上重要な品目の平均価格は単純平均により算出した。
ア 全国月平均価格
全国月平均価格は、調査都道府県別月平均価格(単純平均)に令和元年及び令和2年の該当月の都道府県別出荷量をウエイトとした加重平均により算出した。
イ 全国年平均価格
全国年平均価格は、全国月平均価格に令和元年及び令和2年の全国の月別出荷量をウエイトとした加重平均により算出した。
(2)農業生産資材価格調査
ア 全国月平均価格
全国月平均価格は、調査都道府県別月平均価格の単純平均により算出した。
イ 全国年平均価格
全国年平均価格は、全国月平均価格の単純平均により算出した。 - 指数の作成方法
(1)指数の編成
指数の編成は、次のとおりである。
(2)類区分
類区分は、農産物価格指数を10大分類、農業生産資材価格指数を12大分類とした。
(3)指数採用品目
指数に採用する品目は、農産物112品目、農業生産資材150品目とした。
(4)ウエイト
総合(類別)価格指数の算出に用いるウエイトは、次のとおりである。
ア 年平均価格指数の算出に用いるウエイト
年平均価格指数の算出に用いる類別のウエイトは、令和2年農業経営統計調査経営形態別経営統計(全農業経営体)結果による全国の1農業経営体当たり平均を用いて、農産物については農業粗収益から作成し、農業生産資材については農業経営費から作成した。
類内の個々の品目のウエイトについては、令和2年農業産出額における品目別の産出額等を補完情報として類内の品目別構成割合を用いて類別のウエイトを配分して算出した。
イ 月別価格指数の算出に用いるウエイト
(ア)農産物
農産物の月別価格指数の算出に用いるウエイトは、次の方法により作成した。
a 類別ウエイトは、年平均価格指数の算出に用いるウエイトを年間を通じて固定したものとした。
b 品目別ウエイトは、年平均価格指数の算出に用いる品目別のウエイトを全国年平均価格の算出に用いる月別出荷量ウエイトの比率に応じて月別に配分した値を基に、月ごとの類別ウエイトを品目別に配分して算出した。
なお、「麦」、「雑穀」及び「豆」については、それぞれの類に属する全ての品目で調査を行わない(出回りのない)期間があるが、その期間も類別価格指数を算出する必要があるため、当該期間の品目別ウエイトには年平均価格指数の算出に用いるウエイトを使用した。
(イ)農業生産資材
農業生産資材の月別価格指数の算出に用いるウエイトは、季節調査品目を含め年平均価格指数の算出に用いるウエイトを年間を通じ固定して使用した。
(5)基準時及び基準時価格
ア 基準時
基準時は、令和2年(暦年)の1か年とした。
イ 基準時価格
基準時価格は、農業物価統計調査による令和2年の年平均価格とした。
(6)算式
指数の算式は、ラスパイレス式(基準時加重相対法算式)とした。
ア 月別価格指数(全国)
(ア)品目別価格指数
注:調査対象等の変更があった場合は、その影響を踏まえ基準時価格を変更し指数を算出している。
(イ)総合(類別)価格指数
イ 年平均価格指数(全国)
(ア)品目別価格指数
(イ)総合(類別)価格指数
(7)月別総合(類別)価格指数の算出における季節調査品目の取扱い
季節調査品目については、調査品目ごとに出回り期間内の月の価格のみを調査することとし、出回りのない月は次のように一部の品目で保合処理を行った。
ア 農産物価格指数
調査品目ごとに出回りのない月はウエイトが0となるため指数計算から除外した。
ただし、「麦」、「雑穀」及び「豆」は、調査品目ごとに、直近の出回り期間の月別価格指数を年平均価格の算出に用いる月別出荷量ウエイトの加重平均により算出した価格指数を、それぞれ出回りのない期間(麦:11月から5月まで、雑穀:1月から8月まで、豆:8月から9月まで)に当てはめて、保合することとした。
イ 農業生産資材価格指数
「種苗及び苗木」に属する品目については、品目ごとに直近の出回り期間の月別価格指数を単純平均した指数、「賃借料及び料金」に属する品目については、直近の出回り期間の最終月の指数を、それぞれ出回りのない期間に当てはめて、保合することとした。 - 基準年の異なる指数の接続
(1)接続の基本的な考え方
基準年の異なる指数の接続は、時系列比較が可能となるように基準改定の度に、総合、類及び品目ごとに、各基準年を100とする指数を次の基準年に当たる年の年平均価格指数で除することにより行った。
したがって、令和2年基準以前の各基準年を100とする指数については、その後の基準改定の度に、このような接続を繰り返すことが必要になる。
接続の度に端数処理を行うと誤差が大きくなることから、令和2年を100とした指数になるまで端数処理せずに計算し、最後の段階で端数処理を行う。
(例)平成27年基準指数を令和2年基準指数に接続する場合
(例)平成22年基準指数を令和2年基準指数に接続する場合
(2)品目別の接続対象年次
令和2年基準以前の品目別については令和2年基準の品目と接続する場合のみ接続を行った。詳細は令和2年基準以前の品目別接続対象年次一覧(PDF:205KB)を参照されたい。
(3)総合(類別)指数の月別の接続方法
当該基準の月別指数を上記(1)で算出したリンク係数で除して算出した。
(4)接続した指数の利用上の注意
一部の品目(小麦、はだか麦等)については、交付金制度等の変更に伴う調査価格への交付金等の算入の有無等により、変動が生じている場合があるため利用に当たっては留意されたい。 - 目標(実績)精度
本調査は、有意選定による調査であるため、実績精度の算出は行っていない。
用語の解説
- 農産物価格指数
農業経営体が販売する個々の農産物の価格を指数化したものであり、類似した商品群ごとに10の類別にまとめて作成している。 - 農業生産資材価格指数
農業経営体が購入する農業生産に必要な個々の資材の小売価格を指数化したものであり、類似した商品群ごとに12の類別にまとめて作成している。 - 騰落率
当月の指数が前月又は前年同月に比べて、当年の指数が前年に比べて、どれだけ変動したかを表すものである。計算式は次のとおりである。 - 寄与度
価格指数(総合)の動きに対して、内訳項目がどれだけ影響したかを表すものである。計算式は、次のとおりである。 - 農業交易条件指数
農産物と農業生産資材の相対的な関係の変化を示すものとして使用されており、農業生産資材価格指数(総合)に対する農産物価格指数(総合)の比率として算出する。
調査票
利用上の注意
- 記号について
統計表に使用した記号は、次のとおりである。
「0.0」:増減がないもの
「-」:事実のないもの
「…」:事実不詳又は調査を欠くもの
「‥」:未発表のもの
「nc」:計算不能 - 全国平均価格及び価格指数について
全国平均価格(消費税を含む。)は、指数算定上の基礎資料として作成しているもので、調査銘柄の変更に伴い価格の連続性が保てないこともあるため、利用に当たっては十分留意されたい。
なお、本調査の価格指数を算定する際も、消費税を含んだ価格を用いている。 - 遅延調査票について
提出期限後に提出された過月分調査票(遅延調査票)については、毎月の概数値の公表の集計に間に合わない場合は、確定値として公表する際に、集計に含める。
利活用事例
1. 農畜産物の生産者に支払う補給金等の算定
2. 食料自給率(生産額ベース)の算定
3. 農業総産出額の算出
4. 農業・食料関連産業の経済計算における農業生産額算出
5. 国民経済計算(内閣府)において実質額を求めるためのデフレーター
に活用
Q&A
- 結果の公表について
Q. 調査の結果はいつ頃公表されるのですか?
A. 公表日時については、こちらを確認してください。 - プライバシーの保護について
Q. 調査票に記入されたプライバシーは保護されるのでしょうか?
A. この調査は、「統計法」(平成19年法律第53号)に基づく統計調査として行われます。
統計調査に従事する者には統計法により守秘義務が課せられており、違反した場合には罰則(2年以下の懲役又は100万円以下の罰金)が科せられます。また、過去に統計調査に従事していた者に対しても、同様の義務と罰則が規定されています(統計法第41条、第57条第1項第2号)。
このように、統計調査の業務に従事する者、あるいは過去に従事していた者に対して守秘義務と厳しい罰則が設けられているのは、調査対象となる方々に、調査項目全てについて、安心して回答いただくためです。
この調査でいただいた回答(調査票)は、外部の人の目に触れないよう厳重に保管され、統計法で認められている統計の作成・分析の目的にのみ使用されます。統計以外の目的に使うことや、外部に出されることは一切ありませんので、安心してご記入ください。
お問合せ先
大臣官房統計部経営・構造統計課
担当者:分析班
代表:03-3502-8111(内線3633)
ダイヤルイン:03-3502-5653