農業支援サービスの普及に向けた要因分析
分析の目的
農業の担い手不足や高齢化が深刻化する中、農業の現場では従来のような地域内での農業者間の農作業の受託が困難になりつつあります。農林水産省では、農業現場における作業代行やスマート農業技術の有効活用による生産性向上支援等、農業者に対してサービスを提供する農業支援サービスの推進・普及に取り組んでいます(参考:農業支援サービス関連施策パンフレット(PDF:1,931KB))。
そこで、農業支援サービスの現在の利用状況や今後の利用意向を明らかにするとともに、現在サービスを利用しておらず、今後も利用する意向がない農業者の特徴や農業支援サービスを利用していない理由を明らかにし、普及対策のための知見を得ることを目的としています。
使用データ
- 令和4年度農業支援サービスに関する意識・意向調査(PDF:1,391KB)
- 2020年度農林業センサス農林業経営体調査
分析方針
- 令和4年度農業支援サービスに関する意識・意向調査の質問項目の概観は以下のとおりです(問1は過去1年間の販売金額1位の部門についての質問)。
- 回答状況により回答者を1~4の4グループに分け、
(1)利用者グループの特徴
(2)サービスの特徴
(3)(1)(2)を踏まえて考えられるアプローチ
を考察しました。 - 分析は、耕種(問1における水田作・畑作・露地野菜・施設野菜・果樹・その他作物(花きなど)の6部門)と畜種(問1における酪農・肉用牛・その他畜産(養豚や養鶏など)の3部門)に分けて行いましたが、ここでは耕種についてその概要を説明します。
*1 耕種の詳細な分析結果については分析資料詳細版(耕種)をご参照ください。(PDF:1,161KB)
*2 畜種の詳細な分析結果については分析資料詳細版(畜種)をご参照ください。(PDF:1,131KB)
分析結果の概要
(1) 利用者グループの特徴
- 耕種について、グループ1~4ごとに、問1で回答した部門別、経営体別、販売金額規模別、農業経営主年齢別、農業雇用者人数規模別、農業投下労働規模*別の構成割合をみた結果、特徴的なものを下図のとおり表しました。
*年間農業労働時間1,800時間(1日8時間換算で225日)を1単位の農業労働単位とし、農業経営に投下された総労働日数を225日で除した値により分類。 - 下図は、耕種におけるグループ1~4の構成割合(円の大きさ、%)、各グループの農業雇用者人数1人以上の割合(縦軸、%)、各グループの投下労働規模3.0単位以上の割合(横軸、%)の関係性を表します。
- 特にグループ4は他のグループと比べて、労働コスト(農業雇用者人数1人以上の割合及び投下労働規模3.0単位以上の割合)は比較的低くなっています。
(2) サービスの特徴
- 耕種について、グループ1~3ごとの、各々の個別のサービスに対する、現在の利用状況(%)及び将来の利用意向(%)を下図のとおり表しました。
- グループ1での回答率が50%以上のサービスを「普及度が高いサービス」とし、それ以外のサービスでグループ2又は3の将来の利用意向が35%以上のサービスを「ニーズが大きいサービス」としました。
- その結果、「耕うん、育苗、定植、草刈、選定、収穫など」及び「農薬散布・施肥」は普及度が高いサービスに分類され、その他のサービス(「年間を通しての人材派遣」は除く。)は「ニーズが大きいサービス」に分類されました。
(3) 考えられるアプローチ
- 耕種について、グループ2~4ごとの、各々の個別のサービスに対する「サービスを利用できていない理由」等を整理し、考えられるアプローチをまとめた結果は下表のとおりです。
- 今回の分析により、農業支援サービスの利用状況は、そのサービスの内容や利用者がどれだけサービスの利用意向があるか(サービス受容段階)により異なっていることがわかりました。
- 今後農業支援サービスを普及させていくためには、利用者のニーズをきめ細やかに捉え、利用者のサービス受容段階に応じた適切なアプローチを行っていくことが重要であると考えられます。
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