林業経営体等の動向分析
分析の目的
2020年の農林業センサスの調査結果では、前回調査時(2015年)と比べて林業経営体に該当する者の数が大きく減少(2015年比:39%)していますが、単純な年次比較だけではその動向を把握することは困難です。
このため、2010~2020年の農林業センサスデータを利用し、林業経営体に該当または非該当となる経営体の特徴など、その詳細な動向を分析しました。
【農林業センサスにおける林業経営体の定義】
次の1⼜は2のいずれかに該当するものをいう。
1.保有⼭林⾯積が3ha以上で、かつ、調査期⽇前5年間に林業経営(育林・伐採)を⾏った者、⼜は、調査実施年をその計画期間に含む「森林経営計画」を作成している者。
2.委託を受けて素材⽣産⼜は⽴⽊を購⼊して素材⽣産を⾏っている者(調査期⽇前1年間に200m3以上の素材⽣産した者に限る。)。または、素材⽣産以外の林業サービス(育林作業)を⾏っている全ての者。
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使用データ及び分析方法
- 使用データ
農林業センサス(2010~2020) 農林業経営体調査(客体候補名簿を含む。)
農林業センサス - 分析方法
2010~2020年センサスデータを基にしたTableauによるクロス集計・可視化
分析結果の概要
- 2015年から2020年の林業経営体等の推移
林業経営体の数(オレンジ枠)は、2015年:8.7万→2020年:3.4万(△5.3万、39%)に減少しています。一方で、保有山林面積が3ha以上であるものの、林業経営体に該当しなかった者(青枠)が30万程度存在し、これらの者は、施業の実施又は森林経営計画の作成が行われていれば、林業経営体に該当し得たと考えられます。
また、農林業センサス(客体候補名簿)で把握している林家・法人等の総数(赤枠)は、2015年:176.0万→2020年:157.0万(△19.0万)に減少しています。この一因として、相続・転居等により山林の所有者を把握しきれていない場合があることも影響していると考えられます。
林業経営体等の推移(2015年→2020年)
林業経営体:定義を満たす者(林家・地方自治体等も含む。)
(林業経営体に該当しない者)
林家A:保有山林1~3ha未満
林家B:保有山林3ha以上、5年間施業なし、森林経営計画なし
法人等A:保有山林3ha未満
法人等B:保有山林3ha以上、5年間施業なし、森林経営計画なし
非林家世帯:保有山林1ha未満の世帯(客体候補名簿に記載のある者) - 2020年で非該当となった経営体の属性分析
2015年の調査で林業経営体に該当した8.7万のうち、2020年では非該当となった経営体(青枠)は6.0万で、2015年当時の林業経営体に該当するための要件を見ると「育林・伐採のみ」が67.8%と最も多く、次いで「森林経営計画のみ」(15.6%)、「両方(育林&計画)」(12.9%)となり、これらの合計(赤枠)は、2020年で非該当となった経営体の96%を占めます。
一方、「受託(造林・保育、素材生産)」の要件に該当していた経営体(赤枠以外)は、全体の4%程度と少なくなっています。
このことから、「育林・伐採」の要件は施業が必要な時だけ該当する要件(この要件のみ該当する経営体の大半が林家)であり、次回調査で非該当となる経営体の割合が高い要件であるのに対し、「受託」は事業としての継続性が高く、次回調査で非該当となる経営体の割合が比較的低い要件であると推察されます。
林業経営体の属性分析(青枠:2020年で非該当の経営体) - 林業経営体の属性別に継続該当の割合を見ると、林業経営体の要件では「受託」の有無の影響が大きく、保有山林面積規模では規模階層が上がるほど継続該当率が増加し、経営形態では会社・森林組合(生産森林組合を含む。)の継続該当率が高いことがわかります。
【林業経営体の要件】2015年林業経営体(87,284)の該当要件別の5年後(2020年)継続該当割合
【保有山林面積規模】2015年林業経営体(87,284)の保有山林規模別の5年後(2020年)継続該当割合
【経営形態】2015年林業経営体(87,284)の経営形態別の5年後(2020年)継続該当割合
- 分析結果資料詳細版(PDF : 1,574KB)
- 林野庁で毎月公表している「モクレポ~林産物に関するマンスリーレポート~」(令和4年12月号)にも本分析を抜粋して掲載しています。
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