みどりの食料システム戦略関連施策への提案分析
分析の目的
本分析は、令和3年度に統計部で実施した「農業分野の地球温暖化緩和策に関する意識・意向調査」を起点として、堆肥の施用、水田からのメタンの排出削減等に関する農業者の意識・意向を中心に様々な手法で分析を行うことで、既存の統計表のみでは把握することが困難である知見を見出し、 2030年の地球温暖化対策計画目標を達成するための施策検討の基礎資料とすることを目的としました。
分析のテーマ
- 農業者の堆肥の施用に関する都道府県別分析による特徴把握
- 農業者の地球温暖化に対する意識・意向と取組状況に関する特徴把握
- 市区町村と農業者の認知状況の整合把握
使用データ及び分析方法
- 使用データ
令和3年度農業分野の地球温暖化緩和策に関する意識・意向調査結果(令和4年4月20日)
2020年農林業センサス - 分析方法
意識・意向調査結果の回答状況を基にしたクラスター分析及びクロス集計
分析結果の概要
- 農業者の堆肥の施用に関する都道府県別分析による特徴把握
堆肥の施用状況及び施用に関する意識・意向を都道府県別に集計し、クラスター分析による類型化を実施しました。各都道府県は以下の3つのクラスターに分類されました。
※回答者数が15人以下である2都道府県は除外
クラスターID:1の都道府県では、作物の収量向上や生産コストの削減が期待できることから堆肥を積極的に施用しているという回答者が高い割合を示しました。一方で、数は多くないものの、堆肥を施用していない(できない)という農業者にその理由を尋ねると、堆肥が手に入らないという回答者の割合が高い状況でした。このため、いま堆肥を施用していない農業者が堆肥を施用できるよう、堆肥を広域的に流通しやすくすることが有効であり、ペレット堆肥の普及を図ることも方策の1つと考えられます。
クラスターID:2の都道府県では、作物の品質向上が期待できるなどから堆肥を積極的に施用しているという回答者が高い割合を示しました。一方で、数は多くないものの、堆肥を施用していないという農業者にその理由を尋ねると、堆肥を施用しなくても安定した収量が確保できているなどから、施用したいとは思わないという回答者の割合が高い状況でした。堆肥を施用しないと長期的には地力の低下につながることから、堆肥を施用したいとは思わない農業者に対して、地道な土づくりの必要性を周知することが重要と考えられます。
クラスターID:3の都道府県では、そもそも堆肥が手に入らないことや散布に労力がかかることから堆肥を施用していないという回答者が高い割合を示しました。このため、農業者全体に対して、堆肥による土づくりの重要性を周知するとともに、広域的に流通しやすいことから畜産農家が近くにいない農業者でも入手しやすく、肥料散布機での散布が可能となるペレット堆肥等を普及することが有効と考えられます。 - 農業者の地球温暖化に対する意識・意向と取組状況に関する特徴把握
農業者の堆肥や緑肥の施用状況ごとに、堆肥や緑肥等の施用による温室効果ガス吸収の効果の認知状況をクロス集計しました。
堆肥については、堆肥を施用している者の温室効果ガス吸収の認知率は20~33%であったのに対し、施用していない者の認知率は13%と低い結果でした。
緑肥については、緑肥を施用している者の温室効果ガス吸収の認知率は34%であったのに対し、施用していない者の認知率は18%と低い結果でした。
この結果より、堆肥や緑肥の施用状況と温室効果ガス吸収の効果の認知状況には有意な関係があると認められました。
(※)独立性の検定において、p値は0.01以下であったため、有意水準1%で堆肥及び緑肥の施用状況と認知状況に関係があると言える。 - 市区町村と農業者の認知状況の整合把握
農地で温室効果ガス排出・吸収が起きていることについて、市区町村の担当者の認知状況とそこに居住する農業者の認知状況をクロス集計しました。
農地で温室効果ガス排出・吸収が起きていることを担当者が知っていた市区町村に居住する農業者の認知率は36.0%であったのに対し、農地で温室効果ガス排出・吸収が起きていることを担当者が知らなかった市区町村に居住する農業者の認知率は30.7%であり、市区町村の担当者が農地で温室効果ガス排出・吸収が起きていることを知っていた方が、農業者の認知率も高い傾向が認められました。
このことから、農業者の認知率を高めていくにあたっては、市区町村にも農地で温室効果ガス排出・吸収が起きていることを認知してもらえるよう、普及啓発に努めることが重要と考えられます。
(※)独立性の検定において、p値は0.049であったため、有意水準5%で農業者の認知状況と市区町村の認知状況に関係があると言える。
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