農泊実施による効果・満足度分析:農林水産省
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農林水産省

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農泊実施による効果・満足度分析

分析の目的

農林水産省では、農山漁村地域に宿泊し、滞在中に豊かな地域資源を活用した食事や体験等を楽しむ「農泊」の推進に取り組んでいます(「農泊」の推進について)。
本分析は、携帯端末の位置情報やSNSの投稿データ等をはじめとした代替データ(近年の技術革新やデジタル化の進展に伴って、従来とは異なる情報源や入手経路を通じて新たに利用可能となったビッグデータ)を活用して、農泊実施による農山漁村地域への効果や農泊の満足度及びその効果や満足度に影響する要因を明らかにすることで、農泊を推進するための施策検討へ活用することを目的とします。
なお、今回の分析は、農林水産省統計部と東京大学大学院工学系研究科和泉研究室との間で連携協定を締結した上で、東京大学エコノミックコンサルティング株式会社への委託事業として実施し、学官の連携を行いました。

分析のテーマ

  1. 農泊地域の類型化
  2. 人流と地域経済への影響分析
  3. 農泊の満足度への影響分析

使用データ及び分析方法

  1. 使用データ
     ・2015年・2020年農林業センサス
     ・農泊地域の採択履歴データ・農泊地域の属性情報(農村振興局提供)
     ・「プロファイルパスポートSDK」から提供された位置情報データ(ブログウォッチャー社)
     ・令和2年国勢調査
     ・「TSR企業情報ファイル」(飲食業、宿泊業)(東京商工リサーチ社)
     ・「楽天トラベル」のレビューデータ(2004年9月~2019年12月)
    本分析では、国立情報学研究所のIDRデータセット提供サービスにより楽天グループ株式会社から提供を受けた「楽天データセット〔外部リンク〕」を利用した。
     ・「地球の歩き方web」の投稿データ(2007年11月~2022年2月)
    本分析では、国立情報学研究所のIDRデータセット提供サービスにより株式会社地球の歩き方から提供を受けた「地球の歩き方旅行記データセット」を利用した。
     ・Twitter投稿データ(2011年11月~2022年9月)

  2. 分析方法
     ・クラスター分析(Ward法)
     ・多項ロジスティック回帰分析
     ・差の差分析、PSM-DID(傾向スコアマッチング法-差の差分析)
     ・テキストマイニング(単語共起分析、トピックモデル)
     ※留意点
     農泊地域に採択された地域は、今回の分析では市町村単位で定義していますが、実際の農泊地域は、市町村の一部や複数の市町村で構成される場合など、多様な形態があることに留意が必要です。

分析結果の概要

  1. 農泊地域の類型化
    農泊地域に関する複数の属性情報を用いてクラスター分析を行い、農泊地域が含まれる市町村を以下の4類型に分類し、その分類に対する特徴づけを行いました。

     ・類型1:豊かな自然を背景に農業関連資源を備えた市区町村
     ・類型2:歴史的な建造物や街並みを備えた市区町村
     -特徴:自治体や旅行会社との連携が強い
     ・類型3:豊かな自然を背景に食体験やジオパークなど非農業関連資源を備えた市区町村
     -特徴:自治体(補助金交付)や金融機関との連携が強く、人材活用事業が盛んである
     ・類型4:ベースケース
     -特徴:類型1~4の中で最も市区町村数が多い

  2. 人流と地域経済への影響分析
    (A)農泊事業の人流への影響に関する分析
    農泊地域に採択されることで首都圏からの宿泊者数や訪問者数の増加にどの程度影響を及ぼしたかを把握するため、その効果について携帯電話アプリから取得される位置情報データを用いてPSM-DID分析により推定を行いました。全市町村を対象とした分析結果から、農泊地域に採択後18~23カ月で宿泊量及び訪問量への効果が最も大きいことが分かりました。

    宿泊量’(全市町村を対象とした分析結果)
    訪問量(全市町村を対象とした分析結果)
     ※各プロット図   推定係数と95%信頼区間を示す。

    また、農泊地域の体験プログラムの有無により、宿泊量及び訪問量に及ぼす効果に差があるかを検証したところ、食体験及び農林漁業体験プログラムがある場合では、農泊地域採択による正の効果が大きいことが示されました。
    宿泊量
    訪問量

    (B)農泊事業の農家売上金額への影響に関する分析
    農泊地域に採択されることで、農泊地域が含まれる市町村に所在する農家に対する農業生産関連事業の売上金額の伸び率に及ぼした影響について分析を行いました。
    農業生産関連事業の売上金額全体及びその内訳(海外への輸出、観光農園、貸農園体験農園等、農家レストラン、農家民宿、農産物の加工、その他)の「売上金額の伸び率」を対象にした差の差分析を実施した結果、対照群を農泊地域が含まれない市町村に所在する農家にした場合は、農泊地域への採択による有意な効果を確認できませんでしたが、対照群の条件1~3を指定して比較した結果、農泊事業が農業生産関連事業に対して正の影響を及ぼしている可能性が認められました。
    農泊事業の農家売上金額への影響に関する分析(条件1)
    農泊事業の農家売上金額への影響に関する分析(条件2、3)

                                      
  3. 農泊の満足度への影響分析
    旅行者や宿泊者が農泊の何に価値を見いだしているのか把握するため、SNS投稿等のテキストデータを用いてテキストマイニングにより、満足度に影響を及ぼしている要素を分析しました。
    「楽天トラベル」にて、宿泊者が高評価※をつけたレビューとそれ以外の評価のレビューで単語の出現回数を算出したところ、「食事」、「受入施設」、「体験イベント」に関する単語のほか、「さん」という人に関わる単語が高満足度に大きく貢献していることが分かりました。

    農泊の満足度への影響分析
     ※5段階評価の内、4か5がついたものを高評価、1~3がついたものを「それ以外」と定義しました。

    農泊に関する関心の時間的変化を分析するため、農泊に関連するTwitter投稿のトピックを分類したところ、3つのトピック及び各トピックとの関連性の高さがある単語が分類されました。
    その内容を基に、(ア)体験・経験トピック(体験への興味)、(イ)地域振興・広報トピック(受入れ側の興味)、(ウ)観光・宿泊トピック(旅行への興味)と定義し、3トピック別の投稿数の時系列変化を分析したところ、2017年以降から体験・経験トピックと観光・宿泊トピックへの関心が高まっていることが分かりました。また、コロナ禍では、体験と観光の関心が横ばいとなり、地域振興・広報の関心が急増していました。

    農泊の満足度への影響分析

 ・分析結果資料詳細版(PDF:2,333KB)

お問合せ先

大臣官房統計部統計企画管理官

担当者:統計データ分析支援チーム
代表:03-3502-8111(内線3591,3580)
ダイヤルイン:03-6744-2229