令和5年3月14日更新
食品のかび毒に関する情報
目次
かびとかび毒
かびとかび毒についての基礎的な情報
いろいろなかび毒
米の生産に携わる方へ
米のカビ汚染防止のための管理ガイドライン(平成24年2月29日公表)
収穫直後の籾米を気温と湿度の高い場所で長時間かけて自然乾燥したり、汚れた建物や設備で籾米や玄米を乾燥・貯蔵したりするなどの誤った管理をすると、米にかびを生育させてしまう可能性があります。米の乾燥調製や貯蔵の段階で生育するかびの仲間には、人の健康に悪影響を与えるかび毒を作るものがあるので、米にかびが生えると米がかび毒に汚染されてしまうかもしれません。
実際に、日本でも、2011(平成23)年に、国内で生産された米が毒性の強いかび毒であるアフラトキシン類(アフラトキシンB1)によって汚染された事例が確認されています。農林水産省が実施した中小規模の穀類乾燥調製施設の真菌類(かび)の実態調査では、乾燥調製施設の塵や埃の中に、アフラトキシン類などの毒性の強いかび毒を作るかびを含むかびが広く存在していること、塵や埃の量が多いほどかびの量も多いことを確認しており、米や施設の管理を誤れば、米にかびが生えたり、かび毒汚染が起きたりする可能性があることが判明しています。
このようなことが起きないよう、農林水産省は、主として自ら米の乾燥調製、貯蔵、出荷を行っている小中規模の生産者に向けて、乾燥調製や貯蔵段階で、米に「かびを生育させない」ための管理点をまとめた「米のカビ汚染防止のための管理ガイドライン」を作りました。
このガイドラインは、国内の営農実態及び国際的に定められたかび汚染低減の実施規範の取組を元にしています。米の生産に携わる方は、ご自身の施設の状況に合わせて、現在実施している管理方法をもう一度確かめ、適切な管理方法を検討してください。また、ご自身の取組を確かめるためのチェックシートも併せて作成しましたので、ご活用ください。
麦の生産に携わる方へ
麦類のデオキシニバレノール、ニバレノール汚染の予防及び低減のための指針(令和5年3月14日公表)
日本は、麦類(小麦及び大麦)の生育後期に降雨が多く、赤かび病が発生しやすいため、赤かび病の病原菌が産生するかび毒であるデオキシニバレノールやニバレノール赤かび病が発生しやすいため、このため、麦類の生産段階(栽培、乾燥調製、貯蔵)において、赤かび病防除、赤かび病被害粒の選別等により、かび毒汚染の予防、低減を図ることが重要です。
農林水産省は、麦の生産に携わる農業者を指導する立場の方に向けて、生産現場で実施する取組を「麦類のデオキシニバレノール、ニバレノール汚染の予防及び低減のための指針」としてとりまとめました。
また、指針の根拠となる具体的な科学的データを盛り込んだ「指針活用のための技術情報」を作成しましたので、併せてご活用下さい。
- 麦類のかび毒汚染低減のための生産工程管理マニュアル改訂版 (2016年3月31日農研機構発行)
なお、農林水産省による国産麦類の実態調査結果から、麦類の赤かび病の発生と麦類中のデオキシニバレノール(DON)やニバレノール(NIV)の濃度には、著しい年次変動があることが示されています。このことから、指導者の皆様が指針に基づく対策の普及や技術指導を行う際には、次の事項にも留意をお願いします。
- 外観上は健全な穀粒のかび毒汚染
麦類赤かび病菌感染による穀粒の白化、萎縮等の外観の病徴は、感染が進展した状態で観察されます。感染初期や、麦類の抵抗性や殺菌剤によって菌の伸展が抑制された状態では、外観による判別はできません。麦類に感染した赤かび病菌は、生育に適した条件下では速やかにDONやNIVを産生するため、外観上、健全な穀粒であっても無視できない濃度のDONやNIVが蓄積する場合があります。 - かび毒検査の実施と結果の活用
麦類のかび毒汚染の程度は、外観では判断できず、把握には理化学検査が不可欠です。指針等に基づく対策の効果の検証には、小麦、大麦のDON及びNIVを測定し、その合計濃度でかび毒汚染の程度を評価することが必要です。各産地において、かび毒検査のデータを蓄積し、過去の結果や農林水産省の調査結果等とも比較することにより、当該年のかび毒を低減するための対策が適切であったかどうかを検証し、その結果を営農指導や営農改善に活用することが重要です。 - 適期防除に向けた情報の提供
赤かび病菌が産生した穀粒中のかび毒は、発病が確認されてから防除しても、減らすことはできません。かび毒の産生を防ぐためには、赤かび病の防除適期である、小麦及び六条大麦であれば開花期、二条大麦であれば葯殻抽出期に予防的に殺菌剤を散布し、菌の感染を防止、抑制する必要があります。そのため、開花期前の気象調査及び赤かび病菌の胞子飛散状況調査等に基づき、本病の発病を予察するとともに、防除適期を捉えた農薬散布が行えるよう、生産者等に発生予察情報等を提供することが重要です。また、本病が多発することが予測される場合には、注意報等の発出についても検討する必要があります。 - 薬剤耐性菌の発生防止
国内では、過去に、赤かび病の防除効果が高い農薬成分のうち、チオファネートメチルやクレソキシムメチルに耐性のある赤かび病菌の発生がありました。同一有効成分薬剤の連続使用は、薬剤の感受性を低下させ、赤かび病発生及びかび毒産生のリスクを高めます。農薬ラベルに記載された使用方法や注意事項を遵守の上、作用機構等が異なる農薬のローテーション散布による防除が必要です。
消費者の方へ
新鮮でおいしい食品も、食べるまでの扱いがきちんとしていなかったら、その食品の安全性やおいしさを保つことはできません。腐ったり、かびが生えたりしないよう、冷蔵するなど食品を適切に扱うことはとても大切です。 ご家庭での食品の保存方法や扱いかたのコツは「安全で健やかな食生活を送るために」のウェブサイトで紹介していますので、そちらを参考にしてください。
(参考) 安全で健やかな食生活を送るために
それでも、もしも食べ物にかびが生えてしまったら、「もったいない」と思っても食べずに、思い切って捨てましょう。 例えば、餅にかびが生えたときに、かびの部分を取り除いて食べる方もいるようですが、見えるかびがなくなったに過ぎません。見えないかびが餅の内部や表面にまだ残っている可能性が十分あります。
(参考)餅に生えたかび
かびの中には、かび毒のような人の健康に悪影響を及ぼす物質を作るものや品質を悪くするものがあります。かび毒は熱に強いものが多く、ゆでる、焼くなどの通常の調理条件では分解しません。食品を通して体内に取り込むかび毒はごくわずかであっても、長い間、何度もとり続けた場合には、健康に悪影響を及ぼす可能性があることがわかっています。 したがって、これまで健康上の問題が発生していない場合でも、かびが生えた食品は食べないようにしましょう。
なお、食品の製造に利用されている有用なかびが多数あるように、食品に生えるすべての種類のかびが有害なかび毒を作るわけではありません。しかし、日本にもアフラトキシンなど毒性の強いかび毒を作る種類のかびが環境中にいることが確認されています。
かび毒含有実態調査の結果
- 食品の安全性に関するサーベイランス・モニタリングの結果【有害化学物質】
- 穀類のかび毒(平成14年度~)
- りんご果汁及びなし果汁のパツリン (平成14~17年度、平成28~30年度)
- 麦類加工品のかび毒(平成19・20年度)
- 落花生加工品のアフラトキシン類(令和元年度)
お問合せ先
消費・安全局農産安全管理課
担当者:生産安全班
代表:03-3502-8111(内線4507)
ダイヤルイン:03-3592-0306