そのタネ、ほんとに大丈夫?~育成者権侵害について~
そのタネ、ほんとに大丈夫?
育成者権者からの許諾を得ずに登録品種の種苗を増殖する行為は、育成者権の侵害に当たります。
- 故意に育成者権を侵害した場合には、10年以下の懲役若しくは 1,000万円以下の罰金、又はその両方が科せられます。
- また、育成者権者から損害賠償や不当利得返還請求、侵害物の廃棄の請求、業務上の信用を回復するのに必要な謝罪広告の掲載等、民事上の請求を受ける可能性があります。
- 無断増殖した種苗等を購入後、利用した人も損害賠償請求の対象となる可能性があります。
- 育成者権の侵害にお気づきの方は、当該品種の育成者権者までお知らせください。
種苗を販売する際の注意点
種苗を販売される皆様へ、御一読ください。種苗を販売される皆様へ(PDF : 321KB)フリマサイトでの出品により刑罰が科された事例
種苗法に基づく種苗の増殖又は売買に関するQ&A
種苗の増殖や売買を行う前に、以下のQ&Aを御確認ください。- Q&A目次
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種苗を販売する方向け
Q1 登録品種とは何ですか。
Q2 登録品種であるかどうかはどのように確認するのですか。
Q3 登録品種の場合は、購入した種苗であっても、育成者権者の許諾がないと利用できないのですか。
Q4 どのような行為が育成者権の侵害に当たりますか。
Q5 正規購入した種苗にもかかわらず、増殖して利用する場合には、なぜ育成者権者の再許諾が必要なのですか。
Q6 育成者権を侵害した場合、どのような罰則がありますか。
Q7 登録品種の種苗を自ら増殖した上で販売したい場合は、どうすればよいですか。
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種苗を購入する方向け
Q1 登録品種の種苗が無断で増殖・販売されていた場合、無断増殖された種苗とは知らずに購入した者も罪に問われますか。
Q2 種苗店ではなく、インターネットのフリマサイトなどから種苗を入手する場合、リスクはありますか。
【種苗を販売する方】
Q1 登録品種とは何ですか。
A.種苗法に基づき、新たに開発された品種として、農林水産省に登録された品種をいいます。品種登録を受けた者には「育成者権」が付与され、育成者権者として登録品種の種苗、収穫物及び一定の加工品を独占的に利用することができます。
このため、育成者権者以外の者は育成者権者の許諾を得なければ登録品種を利用することができません。
なお、登録品種以外の在来種やこれまで品種登録されたことがない品種、登録期限が切れた品種は一般品種と呼ばれ、誰でも自由に利用することができます。
Q2 登録品種であるかどうかはどのように確認するのですか。
A.登録品種の販売にあたっては、包装やラベル等に、「登録品種」等といった登録品種である旨の表示が義務づけられていますので、これにより確認することができます。また、品種名が分かれば、流通品種データベースでも 、登録品種か一般品種かが検索できます。また、登録品種の詳しい情報は、農林水産省ホームページの品種登録ホームページから確認できます。
Q3 登録品種の場合は、購入した種苗であっても、育成者権者の許諾がないと利用できないのですか。
A.正規購入した登録品種の種苗については、育成者権者の許諾を受けて販売されていますので自由に利用することができます。ただし、当該種苗を増殖して利用する場合には育成者権者の許諾が必要となります※。無断で増殖すると育成者権侵害として種苗法違反となり、処罰の対象となる可能性があります。
※販売・譲渡を行わない、個人の趣味や家庭菜園での利用については、許諾は必要ありません。
Q4 どのような行為が育成者権の侵害に当たりますか。
A.育成者権者の許諾を得ずに行う、登録品種の種苗の生産(増殖)や販売・譲渡などといった行為が育成者権の侵害に当たります。リンゴの苗木を例にとると、枝を切って挿し木により新たに苗木を育てたり、その苗木を第三者に販売したりする行為は育成者権の侵害にあたります。また、無断増殖された種苗から得られた収穫物についても育成者権が及ぶため、その販売・譲渡には育成者権者の許諾が必要となります。
なお、「種苗の生産」とは、単なる種苗の栽培ではなく、種苗を増殖する行為をいいます。種苗を栽培して得た収穫物を種苗に転用する行為は、「種苗の生産」に当たります。バレイショを例にとると、種苗を栽培して得られた収穫物としてのバレイショを次期作において種イモとして植える行為は収穫物を種苗に転用する行為であり、種苗の増殖に当たるため、育成者権者の許諾が必要です。
例1
例2
Q5 正規購入した種苗にもかかわらず、増殖して利用する場合には、なぜ育成者権者の再許諾が必要なのですか。
A.品種は、開発者が長い年月とコストをかけて開発されたものです。開発者は、種苗を販売する際に得る許諾料や種苗を増殖する事業者から得る許諾料によって投資したコストを回収し、次の品種開発に再投資しています。
このため、一度購入した種苗から無断で種苗を増殖されてしまえば、開発者は投資したコストを回収できず、品種開発の停滞につながり、優良な新品種という我が国農業の強みを失ってしまいます。
よって、利用許諾を得た種苗であっても、増殖については再度育成者権者の許諾を受けることを必要としています。
Q6 育成者権を侵害した場合、どのような罰則がありますか。
A.種苗法により、育成者権を故意に侵害した者に対しては、特許法や商標法などと同様に、10年以下の懲役若しくは1千万円以下の罰金(又はその両方)が課せられる可能性があります。また、育成者権者からは損害賠償など、民事上の請求を受ける可能性があります。
Q7 登録品種の種苗を自ら増殖した上で販売したい場合は、どうすればよいですか。
A.登録品種を増殖して販売したい場合は、育成者権者の許諾が必要になりますので、品種ごとに育成者権者にお問い合わせください。また、その他に種苗を販売する際に以下の注意事項がありますので、御注意ください。
〈販売に際してのその他の注意事項〉
1.登録品種の種苗を販売譲渡する際には、種苗又はその種苗の包装に以下の事項について表示する必要があります。また、インターネットなど非対面で販売する際には、サイトの説明文やカタログなどにも以下の事項の表示が必要です。
〈表示が義務付けられている事項〉
(1)登録品種である旨の表示(以下のいずれかを表示)
(ア) 「登録品種」の文字
(イ) 「品種登録」の文字及びその品種登録の番号
(ウ)
(2)海外持ち出し制限や栽培指定地域の制限がある場合には、当該制限がある旨の表示
また、登録品種を販売する際には、当該品種名を使用する必要があります。
登録品種に関する必要な表示について、詳細はこちら(PDF:680KB)
2.登録品種に限らず、食用作物や一部の果樹・花きなど指定種苗を販売する際には、種苗業者届の提出及び必要な表示事項があります。
指定種苗制度に関する詳細はこちら
指定種苗とは:種苗法の規定に基づき指定種苗を定める等の件(PDF : 83KB)
指定種苗に関する表示のパンフレット:指定種苗制度チラシ(PDF : 494KB)
【種苗を購入する方】
Q1 登録品種の種苗が無断で増殖・販売されていた場合、無断増殖された種苗とは知らずに購入した者も罪に問われますか。
A.通常、無断で増殖された種苗であることを知らない第三者がその種苗を入手した場合、育成者権の侵害で処罰されることはありません。しかしながら、無断増殖された種苗は、育成者権を侵害した物品であることから、損害賠償請求の対象となる可能性があると考えられます。
このため、販売されている種苗が無断増殖されたものかどうか不明な場合は、販売者に育成者権者の許諾の有無を確認してください。来歴が不明な種苗の利用は、育成者権の侵害による損害賠償請求等のリスクや、病害を拡大させるリスクもあることから、正規の種苗販売店での購入が好ましいと考えます。
Q2 種苗店ではなく、インターネットのフリマサイトなどから種苗を入手する場合、リスクはありますか。
A.近年、罹病した種いも・苗を通じサツマイモ基腐病(もとぐされびょう)の発生地域が拡大したり、イチゴの炭疽病やうどんこ病などが、罹病したランナー苗からイチゴほ場全体に広がるなど、罹病した種苗による生産現場への多大な被害が発生しています。
このため、適切に作物を栽培するためには、自身のほ場の土壌消毒を行いつつ、健全な種イモ・苗を利用することが重要であり、各種苗会社は、ウイルスフリー苗を農業現場へ供給しています。また、公的機関においても、生産者に定期的な種苗更新を求めるなど、健全な種苗の流通・農業経営に努めています。
一方で、近年、フリマサイトにおいて販売されているサツマイモやイチゴの苗については、その価格水準から、種苗店などから正規購入したウイルスフリー苗を単に転売しているわけではなく、家庭菜園等で無断増殖したものを販売していることが疑われるものが見受けられます。こうした苗を自身のほ場に定植した場合、自身のほ場で病害虫がまん延するのみならず、近隣農地へも拡散させるおそれがあります。
さらに、無断で増殖された種苗を購入し、利用することは、育成者権の侵害による損害賠償請求の対象となる可能性があります。
なお、上記の病害虫の発生・まん延は、サツマイモやイチゴに限らず、果樹や花きなど全ての植物にあてはまるリスクです。
お問合せ先
輸出・国際局知的財産課種苗室
代表:03-3502-8111(内線4288)
ダイヤルイン:03-6738-6443