事業者へのインタビュー:日清食品ホールディングス株式会社
事業者へのインタビュー
経営企画部 課長 斉藤 圭さん
広報部CSR推進室 課長 岡林大祐さん
広報部CSR推進室 係長 赤塚千春さん
広報部 部長 大口真永さん
経営企画部 係長 酒井卓爾さん
日清食品グループは、さまざまな「食」の可能性を追求し、夢のあるおいしさを創造していきます。
さらに、人類を「食」の楽しみや喜びで満たすことを通じて、社会や地球に貢献する、「EARTH FOOD CREATOR」を目指しています。
このたび、CSR活動とSDGs達成に向けた取り組みについて、日清食品ホールディングス株式会社の広報部部長・大口真永さん、広報部CSR推進室課長・岡林大祐さん、経営企画部課長・斉藤圭さん、経営企画部係長・酒井卓爾さん、広報部CSR推進室係長・赤塚千春さんにお話を伺いましたので、その内容を紹介いたします。
安藤百福が掲げた4つの言葉
この創業者精神は、日清食品グループの変わることのない価値観です。
食創為世…… 世の中のために食を創造する
美健賢食…… 美しく健康な体は賢い食生活から
食為聖職…… 食の仕事は聖職である
創業者の安藤百福は、終戦後、食糧難となった日本の悲惨な状況を目の当たりにし、「衣食住というが、やっぱり食が大事。食がなければ、衣も住も芸術もあったものではない」と食の大切さを痛感しました。
その頃、寒空のもと、闇市の屋台で1杯の温かいラーメンを食べるために並ぶ長い行列を目にし、日本人は麺好きであるということ、そしてこの長い行列に大きな需要が隠されていることを感じ取り、「お湯さえあれば家庭ですぐに食べられるラーメン」を作ろうと決意しました。試行錯誤の末1958年に世界初のインスタントラーメン「チキンラーメン」を発明しました。お湯を注ぐとたった2分で食べられる「チキンラーメン」は、魔法のラーメンと呼ばれ、またたく間に大ヒット商品となりました。
1971年には、世界初のカップ麺「カップヌードル」を発明、インスタントラーメンが世界中で食べられるきっかけとなりました。さらに無重力状態でも食べられる世界初の宇宙食ラーメン「スペース・ラム」を開発し、2005年にスペースシャトル・ディスカバリー号に搭載されました。
日本で生まれたインスタントラーメンは、いまや世界で年間総需要が1,000億食以上の「世界食」に成長しています。
日清食品グループは、創業者精神を受け継ぎ、事業を通じてさまざまな環境・社会問題を解決していくことでSDGsの達成に貢献します。自社の製品を消費者においしく、安心して食べていただくのはもちろんのこと、健康や地球環境に配慮した製品開発を進めていくことで、100周年を迎える際にも幸福を創造できる企業でありたいと考えています。
世界初のインスタントラーメン
通常のカップヌードルよりもコッテリ濃厚な味わいなのに糖質・脂質ともに50%off。さらにカロリーは176Kcalを実現。
サステナビリティに対する考え方
日清食品グループは、人類を「食」の楽しみや喜びで満たすことを通じて社会や地球に貢献する「EARTH FOOD CREATOR」という理念のもと、気候変動や高齢化、人口増といったESG課題/SDGsを成長の機会と位置付け、事業を通じて環境・社会問題を解決していくことで、社会により貢献できる企業を目指しています。
また、環境配慮型容器の開発や健康志向に応える商品の提供等、創業者精神を具現化する当社グループのCSV (Creating Shared Value、共有価値の創造) 経営に取り組むことで、社会価値と経済価値の双方を追求し、持続的な企業価値の向上に努めています。
そうした取り組みが評価され、世界的なESG投資の株価指数「Dow Jones Sustainability Indices」における「Asia/Pacific index」の構成銘柄に2年連続で選ばれています。
日清食品グループにおけるサステナビリティのとらえ方
当社グループ理念の実現を可能にする価値創造プロセス
選定した13()のSDGs目標と当社グループの事業との関係を示した価値創造プロセスを紹介します。
適切なガバナンスの下にグループが持つ資本(財務資本、知的資本、人的資本など)を投入し、「安価でおいしい食品」を「持続可能な容器」で世の中に送り出しています。これにより社会的価値を生み出し続けていくことで、「食足世平(食が足りてこそ、世の中が平和になる)」という創業者精神が具現化されていきます。
そして、このプロセスを積み重ねていくことで、当グループの事業における持続可能性と地球・社会における持続可能性とが両立します。
(自社で活用する資本)
(自社事業によるイノベーション)
(製品・サービス)
(製品・サービスの直接的な影響)
(OUTCOMEの積み重ねにより
実現する社会への価値)
環境戦略「EARTH FOOD CHALLENGE 2030」
日清食品グループは、2020年4月に、2030年までの環境戦略「EARTH FOOD CHALLENGE 2030」を策定し、持続可能な社会の実現と企業価値の向上を目指したさまざまな取り組みを開始しました。なかでも「気候変動問題への対策」を最重要課題の一つに位置付け、省エネルギーの推進や再生可能エネルギー使用比率の向上などに取り組んでいます。
この戦略では、2030年度までのCO2排出量の削減目標として、Scope1(※1)とScope2(※2)の合計で30%削減 (2018年度比)、Scope 3(※3)で15%削減 (2018年度比)を掲げています。ここに掲げた削減目標は、国際的なイニシアチブである「Science Based Targets (SBT) イニシアチブ」により、「パリ協定」と整合し、世界の平均気温の上昇を産業革命前に比べ2℃を十分に下回る水準に抑える、科学的根拠に基づいた目標であると認定されています。
- 「EARTH FOOD CHALLENGE 2030」特設サイト:https://www.nissin.com/jp/about/csr/efc2030/[外部リンク]
2 Scope2:主に自社が購入した電気や蒸気の使用によって排出される温室効果ガス(間接排出)
3 Scope3:主に自社のバリューチェーン(原料調達、輸送、廃棄など)で排出される温室効果ガス( Scope 1、2除く)
SDGs達成に向けた
さまざまな取り組み
カップヌードルで「バイオマスECOカップ」を採用
現在75億人の人口が、2050年には97億人になると予測されています。私たちの活動にともなって発生する温室効果ガスも大幅に増加し、地球温暖化問題が深刻化していきます。
そこで、「カップヌードル」ブランドの商品で使用する容器に、プラスチック使用量とLCA(ライフサイクルアセスメント)でのCO2排出量を削減した「バイオマスECOカップ」を採用します。2019年12月から順次開始し、2021年度中には全量の切り替えが完了予定です。
これは、従来の「ECOカップ」が持つ断熱性や保香性を維持しながら、容器に使用している石化由来のプラスチックを植物由来のバイオマスプラスチックに一部置き換えることで、バイオマス度を81%に引き上げた容器です。「ECOカップ」に比べて1カップあたりの石化由来プラスチック使用量をほぼ半減、LCAでのCO2排出量を約16%削減しています。
培養肉の開発
培養肉とは、動物の個体からではなく、細胞を体外で組織培養することによって得られた肉のことで、家畜を肥育するのと比べて地球環境への負担が低いことや、畜産のように広い土地を必要とせず、厳密な衛生管理が可能等の利点があるため、従来の食肉に変わるものとして期待されています。
近年、世界中で培養肉の研究が行われていますが、そのほとんどが、ミンチ肉を作製する研究です。日清食品ホールディングスと東京大学生産技術研究所との研究グループは、肉本来の食感を持つステーキ肉を培養肉で実現する目標に向け、筋組織の立体構造を人工的に作製する研究に取り組み、世界で初めてサイコロステーキ状の大型立体筋組織の作製に成功しました。
災害支援および飢餓支援
日清食品グループの主力製品であるインスタントラーメンは、常温で長期間保存でき、お湯さえあればすぐに食べられることから、災害時の食事としても大変優れています。そこで日本や世界で大規模な自然災害が発生した際には、被災地にインスタントラーメンを無償で提供しています。
また、国連WFPを支援しており、災害や紛争時の緊急支援、栄養状態の改善、学校給食の提供などを行っています。
(国連WFP:飢餓と貧困をなくすことを使命とする国連の食糧支援機関)
資源有効活用に向けて、焼却施設から生まれた「ごみ発電電力」を東京本社で使用
食べ終わった後の油汚れなどがついたカップ麺の容器はリサイクルが困難なことから、一般的に可燃ごみとして焼却処理されています。そこで当社は、容器そのものをリサイクルするのではなく、焼却に伴うエネルギーを熱回収することで、資源有効活用に取り組んでいく方針です。
その第一歩として、日清食品ホールディングス株式会社の東京本社(東京都新宿区)で使用する電力の一部について、ごみ焼却発電施設で廃棄物から作られた「ごみ発電電力」の使用を2019年12月より開始しました。
日々発電量は変動するため一概には言えませんが、現在、東京本社の電力使用量の50%~100%を「ごみ発電電力」により賄っています。
未来のために百のいいこと
社員による社会貢献活動「百福士(ひゃくふくし)プロジェクト」
日清食品グループは、社会貢献活動への取り組みに熱心だった創業者・安藤百福の志を受け継ぎ、創業50周年にあたる2008年に「百福士プロジェクト」をスタートさせました。これは、2058年までの50年間に、100の「未来のためにできること」を社員自ら実行していく社会貢献活動です。 ユニークなネーミングを付けるなどさまざまな工夫を凝らしながら、多くの社員が参加してプロジェクトを進めており、これまでに25のプロジェクトを実施しました。
- アフリカ事業化自立支援Oishii(おいしい)プロジェクト
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このプロジェクトはインスタントラーメンで空腹を満たすだけの単なる食糧支援ではなく、アフリカの人々が、1つの「食産業」として、自分たちでインスタントラーメンを供給し流通してもらえるよう、事業化を支援していくための取り組みです。「チキンラーメン」の学校給食から始まった支援は、最終的に現地工場を建設し、生産設備はケニアの大学に譲渡することで、現地の自立に繋げました。
- 日清スピードランニングプロジェクト
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日清食品グループ陸上競技部のケニア人選手と日本人選手が、東日本大震災の際に甚大な被害を受けた地域の小学校を訪問し、英語を使った交流教室を行うことで、子どもたちの異文化に対する理解を深めるきっかけを作るとともに、スポーツの基本である正しい走り方を教えました。
- もしものときに、いつものおいしさを 災害備蓄・ローリングストッカーズ
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「ローリングストック」とは、災害備蓄食を日常的に消費しながら、使った分だけ定期的に買い足していくことで、常に一定の食品を家庭に備蓄しておく方法です。
近年の日本は、地震や豪雨など大規模な自然災害に数多く見舞われています。こうした中「ローリングストック」はいざという時でも日常生活に近い食生活を送ることができる備蓄方法として注目されています。
このプロジェクトでは、「ローリングストック」を実践し、周囲にも実践を促す人々を「ローリングストッカーズ」と名付け、日清食品グループの役員および社員が「ローリングストッカーズ」の一員として全国のスーパーや防災イベントなどで啓発活動を行い、消費者の災害備蓄に対する意識を高めていく活動です。「カップヌードル ローリングストックセット」
一度申し込めば3ヶ月ごとに新しい商品が届き一定量の食品を備蓄できる。
日清食品グループにとって、
SDGsは
「未来を考えるキーワード」
SDGsは一つ一つの目標が高いため、目標に向かって何か取り組みを始めるフォアキャスティングではなく、この目標を達成するためにどのような取り組みが必要かを考えるバックキャスティングの考え方が必要です。また、この考え方がイノベーションの種を作り出すきっかけにもなることから、当社は、環境・社会課題に関する社員教育に力を入れています。
予測される未来の課題をバックキャスティングし、社員一人ひとりの通常業務の延長線上にその課題を位置付け解決に取り組むことで、グループ理念の実行とともにSDGs達成にも貢献できると考えています。
インタビューのご協力ありがとうございました
企業が取り組むSDGsの一部です。
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大臣官房 新事業・食品産業部 企画グループ
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