事業者へのインタビュー:ネスレ日本株式会社:農林水産省
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農林水産省

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事業者へのインタビュー:ネスレ日本株式会社

sdgのロゴ 事業者へのインタビュー

ネスレ日本株式会社
ネスレ・嘉納さん
ネスレ日本株式会社 執行役員
コーポレートアフェアーズ統括部長の嘉納未來さん
インタビューで取り上げたSDGs
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   ネスレ日本株式会社は、スイスに本社を置く世界最大の総合食品飲料企業ネスレの日本法人で、1913 年(大正2年)に創業。
   ネスレは、創業者アンリ・ネスレの精神を受け継ぎ、栄養を中心としたネスレの価値観に導かれ、「食の持つ力で、現在そしてこれからの世代のすべての人々の生活の質を高めていきます」をPurpose (存在意義) とし、安全で、美味しく、環境にも配慮された製品やサービスを皆さまにお届けできるよう、日々努めています。
   この度企業のSDGsの取り組みについて、ネスレ日本株式会社 執行役員 コーポレートアフェアーズ統括部長 嘉納未來さんにお話を伺いましたので、その内容を紹介いたします。

取材日:2021年10月1日 ネスレ日本株式会社本社にて

ネスレが影響を与える社会分野

ネスレの存在意義

   ネスレは「食の持つ力で、現在そしてこれからの世代のすべての人々の生活の質を高めていきます」という「 Purpose (存在意義) 」を掲げ、個人と家族、コミュニティ、地球という3つの影響分野にわたる長期的な目標に向けて取り組んでいます。

ネスレのロゴマーク

   ネスレは1867年の創業当初から、製品を通じて社会問題を解決することを目指していました。創業者であるアンリ・ネスレは薬剤師の助手をしており、当時ヨーロッパで社会問題となっていた乳幼児の死亡率の高さに心を痛めていました。
   外で働く女性が増加する中、病気や栄養不足が原因で、母乳育児ができない女性がいましたが、信頼できる母乳代替品がなかったことがその要因の一つでした。そこで、母乳代替製品となる乳児用乳製品を開発し、多くの命を救うことができました。
   その製品にはネスレ家の家紋である、親鳥がひな鳥を見守る「鳥の巣」のマークがついており、それが現在に至るまでネスレのロゴマークとされており、世界中のネスレ製品にはこのロゴマークがつけられています。

現在のロゴ現在のロゴ
創業当時のロゴ創業当時のロゴ

共通価値の創造とSDGs

   製品を通じて社会問題を解決するという考えが後にCSV(Creating Shared Value:共通価値の創造) となり、現在のネスレの事業活動の根幹となっています。共通価値の創造とは、社会に価値を創造し、環境を保護する方法で長期的な価値を創造することです。気候変動、感染症の世界的流行、経済の低迷が世界中の人々に影響を及ぼしている今、人々のニーズを満たし、社会の課題に対応し、経済的価値を創出する解決策を生み出すことがかつてなく重要になっています。
   ネスレはその存在意義を指針として、国連の持続可能な開発目標(SDGs)に合致し、それを支援する各分野にわたる長期的な目標とコミットメントの達成を目指しています。特に、大人も子どももさらに健康な生活を送れるように支援すること、ネスレが事業活動を行うコミュニティに暮らす人々の生活を改善すること、そして環境を保護し回復することに、取り組みの重点を置いています。

【外部リンク】https://www.nestle.co.jp/csv/whatiscsv

ネスレ日本の取り組み「イノベーションアワード」

   日本におけるCSVの浸透には、ネスレ日本の取り組みである「イノベーションアワード」が寄与しています。これは社員全員が、新しい現実から自分の顧客は誰か、顧客が抱える問題は何かについて考え、その問題を解決するためのアイデア、そしてそれを実行した結果を応募するものです。「イノベーションアワード」のプロセス自体がCSVやSDGsの考え方と通じており、社員一人ひとりの取り組みに繋がり、CSVや顧客の問題解決を通じて社会問題の解決に貢献することが、SDGsの取り組みにもつながると考えています。

共通価値の創造

   ネスレグローバルでは、年に一度発行する報告書「共通価値の創造と私たちのコミットメント」にて、「個人と家族のために」「コミュニティのために」「地球のために」の各分野に紐づく取り組みとその進捗を報告しています。

【外部リンク】CSVReport-2020_global-j.pdf(nestle.co.jp)

「個人と家族のために:さらに健康で幸せな生活を実現します」

ネスレ日本が取り組む共通価値の創造[1]
グローバルの取り組み
「微量栄養素の強化、糖類、食塩、飽和脂肪酸をさらに減らす」
「パッケージ上で栄養情報を表示、説明」
   エネルギーとなる栄養素の過剰摂取による肥満や、微量栄養素の摂取不足を原因とする栄養不良は世界的な課題となっています。そのため食品飲料メーカーとして、おいしさを損なわずに摂りすぎに配慮の必要な栄養素を減らした製品を提供することや、食べすぎを防止するための消費者コミュニケーションはとても大切であると考えています。ネスレでは製品に含まれる栄養素の独自基準を設定し製品に含まれる量をコントロールし、世界中で微量栄養素の強化や、糖類、食塩、飽和脂肪酸の含有量を減らしていく取り組みを続けています。
   また、健康的な食生活に役立つ情報を提供し、製品に対する理解を深めてもらうために、ネスレでは製品、パッケージ表面で1食分当たりのエネルギー、脂質、飽和脂肪酸、糖類や食塩の量と、それらが1日の目安に対して占める割合(%)をアイコン化し、わかりやすく表示しています。
日本の取り組み
「健康的なコーヒー飲用習慣の推奨」
   日本人にとって最大のポリフェノール摂取源であるコーヒー。「1日3杯以上飲んでいる人は、身体的、精神的、社会的に健康である」という考えに基づき、「3 Coffee a Day(1日3杯のコーヒーによる健康習慣の推奨)」の啓発活動を行っています。リモートワークなど新しい働き方を選択する機会が増えた2020年には、[コーヒーとGood Lifeに関する調査2020]を実施し、仕事中のパフォーマンスを応援するコーヒーの飲用方法を提案しました。
   また、社会的に大きな問題となっている日本人の睡眠不足に注目し、カフェインを含むコーヒーとカフェインレスコーヒーの飲み分けを通じて新しい睡眠スタイルを提案する体験型カフェ「ネスカフェ 睡眠カフェ」を運営しています。加えて、午後のパフォーマンスを考え、カフェインの入ったコーヒーを飲んでから短い昼寝をする「コーヒーナップ」も提案しています。
会話する二人
コーヒーの飲み方
「健康的な選択肢の提供」
   ネスレ ヘルスサイエンスは、日本では30年以上の歴史がある「アイソカル」をはじめとした栄養補助食品を全国1万軒以上の医療機関・介護施設の現場にお届けしています。少量高カロリーのコンパクト栄養食「アイソカル 100」や「アイソカルゼリー ハイカロリー」は、食事量が気になる時や飲み込みが気になる時などにも栄養を手軽に補給できるため、高齢者の健康維持に役立てられています。
   2020年9月には、65歳以上の方を対象とした、“低栄養”や“フレイル”対策のための、栄養アセスメント(栄養チェック)を行うツール・アプリ「MNA プラス」の提供を開始しています。また、子どもだけでなく大人にとっても大切な栄養素(カルシウム、鉄、ビタミンDなど)が美味しく摂れる「ミロ」も提供しています。
アイソカル
ネスレ商品
MNAプラス
ツール・アプリ「MNA プラス」
「製品パッケージ上の栄養表示」
   健康的な食生活に役立つ情報を提供し、製品に対する理解を深めてもらうために、ネスレでは製品パッケージ表面で1食分当たりのエネルギー、脂質、飽和脂肪酸、糖類や食塩の量と、それらが1日の目安に対して占める割合(%)をアイコン化し、わかりやすく表示しています。さらにパッケージ裏面の「ネスレ ニュートリショナルコンパス」の栄養成分表示と連動し、詳しい栄養情報をガイドします。

キットカット

「コミュニティのために:困難に負けない活力あるコミュニティを育成します」

ネスレ日本が取り組む共通価値の創造[2]
グローバルの取り組み
「ネスカフェ プラン」「ネスレ カカオプラン」の実施
   ネスレはコーヒー生豆のサプライチェーンを継続的に改善することを目的としたプログラム「ネスカフェ プラン」に世界中で取り組んでいます。苗木の配布や技術支援、コーヒー豆の買い付けなど、栽培から製品の製造・流通・消費まで全ての工程に関与しながら持続可能なコーヒー栽培の実現をサポートしています。
   また、「ネスレ カカオプラン」では、農業従事者と彼らのコミュニティの生活向上を目指しており、より良い農業、より良い生活、より良いカカオを活動の3つの柱としています。この活動を通じて、農作業改善のための農業従事者の研修、男女平等の促進、児童労働問題への対応、農業従事者グループとの長期的な関係の構築に取り組んでいます。
日本の取り組み
沖縄コーヒープロジェクト
   「沖縄コーヒープロジェクト」とは、ネスレ日本と沖縄SV株式会社が、沖縄県名護市、琉球大学と連携して沖縄県内の耕作放棄地などを活用し、これまで限定された量にとどまってきた沖縄県産のコーヒー豆の生産量を拡大することで、コーヒー豆やコーヒー製品を新たな特産品とすることを目指すプロジェクトです。これは、農業就業者の高齢化や後継者不足、耕作放棄地への対応など、沖縄県の一次産業における問題解決に貢献することにもつながると考えています。
   ネスレ日本は沖縄でのコーヒー栽培に適したコーヒー苗木の種の提供や、コーヒーを栽培する上で必要となる技術支援などを行い、沖縄SV株式会社はコーヒー栽培に関わる農作業に従事。沖縄県の気候・土壌に精通する琉球大学は、農学的見地からコーヒー栽培を行う上で必要となるノウハウ・情報の提供を行い、三者が協力し合ってプロジェクトを進めています。
   また、2021年からは、「沖縄コーヒープロジェクト」の新たな取り組みとして、沖縄県立北部農林高等学校(名護市)と連携したコーヒー豆の栽培がスタートしました。同校熱帯農業科の授業・実習で、コーヒーの苗木を高校の農場に移植・育成する取り組みや、コーヒーの種子の発芽実験や生育調査を実施しています。将来、沖縄県の一次産業の担い手となる高校生の皆さんにコーヒー栽培の技術や魅力を伝えていくことで、サステナビリティの実現を目指します。 沖縄コーヒー
沖縄のコーヒー農園

「地球のために:資源と環境を守ります」

ネスレ日本が取り組む共通価値の創造[3]
グローバルの取り組み
未来のためにパッケージを刷新する
   2025年までにネスレ製品のパッケージを100パーセントリサイクル可能、あるいはリユース可能にし、未使用(バージン)プラスチックの使用を3分の1削減するという目標に向けて、研究と技術革新を推進、次の5項目に取り組みの重点を置いています。
  • パッケージサイズの縮小と未使用プラスチックの使用削減
  • リユース可能、詰め替え可能システムの拡大
  • 代替素材の開発
  • ごみのない未来の形成
  • 新たな行動の推進
日本の取り組み
製品パッケージの改善
   グローバルの一員としてグローバル目標に向けた取り組みを行う一方、日本独自の活動として、「ネスカフェ」や「キットカット」「アイソカル」等の製品パッケージの改善に取り組んでいます。
   2019年から始めた「キットカット」大袋製品の外袋素材をプラスチックから紙に変更する取り組みは、2020年にはほぼすべての「キットカット」大袋製品へと拡大、取り組み開始以来累積420トン(2020年末時点)のプラスチックを削減しました。2020年10月には、この「キットカット」大袋タイプ製品の外袋を紙パッケージ化する取り組みにより、公益社団法人日本包装技術協会が主催する「第44回木下賞 包装技術賞」を受賞しました。 キットカット    また、「ネスカフェ エコ&システムパック」では、2008年の発売以降、継続的にパッケージ素材の改良に取り組んでおり、さらに2021年1月には、ネスレ ヘルスサイエンス「アイソカル」製品のストローの材質を業界で初めてプラスチックから紙に変更しました。紙ストロー採用により、年間5.5トンのプラスチック削減効果を見込んでいます。
経緯
アイソカル製品
   それでもまだまだ課題は多く、例えば「キットカット」の個包装パッケージは直接食品と接するため安全と品質が最優先であり、品質保持の観点からプラスチックを使用しています。今後は素材の改善と並行してパッケージの回収・リサイクルといったサーキュラーエコノミーの構築に向けた取り組みを推進していきます。

パートナーシップを大切に
~業界初の「食品ロス
削減ボックス」の運用~

   SDGsで定義する社会問題が多岐に渡っているように、取り組むべき課題は非常に多く、一社で解決することは困難です。ネスレではそれぞれの分野においてパートナーシップを大切にしながら課題解決に向けて取り組んでいます。

   2021年6月にスタートした「食品ロス削減ボックス」は、「ネスカフェ」の担当者の食品ロスをなくしたいという想いから、みなとく株式会社と協働して実現した取り組みです。
   ネスレ日本株式会社とみなとく株式会社は、納品期限を超過したことで出荷される流通先が限定され、場合によっては廃棄される可能性がある「ネスカフェ」や「キットカット」などのネスレ製品を販売する無人販売機の運用を全国5か所で行っています。
   この取り組みでは、飲食が可能でありながら、通常の流通ルートでの販売が困難になっている商品を消費者に販売する新たなチャネルを構築し、食品ロス削減に向けた取り組みとすることを目指しています。
   また、食品ロスを削減することで、農業従事者が生産するコーヒー豆やカカオ豆などの原材料をできる限り無駄にせず、持続可能な形で消費者に商品をお届けする仕組みを作りたいと考えています。

食ロスボックス
みんなが笑顔になる食品ロス削減ボックス

キーワードは
re-generation(環境再生)

   これからは、re-generation (環境再生)が重要なキーワードと考えています。ネスレは、再生可能なフードシステムの構築に取り組むことにより、環境を保護、回復し、農業従事者の生活向上、農業コミュニティのウェルビーイング(※)を高めることを目指しています。
   50万以上の農業従事者、15万以上のサプライヤーのネットワークをはじめフードシステムのパートナーと協力し、フードシステムの核となる再生農業(※)を推進し、この活動の一環として、社会的、経済的な課題への取り組みを支援する新たなプログラムを開始するなど、今後もCSVを通じて社会問題の解決に貢献する取り組みを続けてまいります。

ウェルビーイング(Well-being)とは、心身と社会的な健康を意味する概念。定訳はなく、満足した生活を送れている状態、幸福な状態、充実した状態などの多面的な幸せを表す言葉。瞬間的な幸せを表す英語Happinessとは異なり、「持続的な」幸せを意味します。

再生農業とは、農地とその生態系を保全、回復することを目的とした農業システムです。過去に劣化したものを維持、持続、改善、回復させることを目的とします。再生農業の成果は、持続可能な食料生産の基盤を形成します。
ネスレ日本株式会社の皆様、
インタビューのご協力ありがとうございました。
※インタビューで扱った内容は
企業が取り組むSDGsの一部です。

お問合せ先

大臣官房 新事業・食品産業部 企画グループ

代表:03-3502-8111(内線4139)
ダイヤルイン:03-6744-2065