17の目標と食品産業とのつながり:目標15に対する取組
17の目標と食品産業とのつながり
この目標は、持続可能な形で森林を管理し、劣化した土地を回復し、砂漠化対策を成功させ、自然の生息地の劣化を食い止め、生物多様性の損失に終止符を打つことに注力するものです。これらの取組をすべて組み合わせれば、森林その他の生態系に直接依存する人々の生計を守り、生物多様性を豊かにし、これら天然資源の恩恵を将来の世代に与えることに役立つと考えられます。
- 上記の目標の訳は、どなたにでもわかりやすいよう、公益財団法人 日本ユニセフ協会の広報資料から引用しています。
- 各企業の取組の多くは、SDGsの複数の目標に関連しています。
この目標をめぐる状況
【日本では】
日本では、依然として長期的には生物多様性の状況は悪化している傾向にあります。自然性の高い森林、農地、湿原、干潟といった生態系の規模が著しく縮小し、人為的に改変されていない植生は国土の20%に達していません。外来種の影響が増大することに加え、気候変動による生物多様性への影響が、より明確に現れてきています。(環境省2016年3月「生物多様性および生態系サービスの総合評価(JB02)」より)
日本の森林面積はほぼ横ばいで推移し、2017年3月末現在で2,505万haで、国土面積3,780万haのうち約3分の2が森林となっています。森林面積のうち約4割に相当する1,020万haは人工林で、戦後造成されたものを中心にその資源を循環利用していくことができる時期に入っているものの、林業経営に適した森林を経済ベースで十分に活用できていない状況にあります。(平成30年度森林・林業白書より)
【世界では】
現代は「第6の大量絶滅時代」とも言われます。生命が地球に誕生して以来、これまでに生物が大量に絶滅する、いわゆる大絶滅が5回あったと言われていますが、現代の大絶滅は、過去の大絶滅と比べて種の絶滅速度が速く、その主な原因は人間活動による影響であると考えられています。
2017年12月の国際自然保護連合(IUCN)の世界の絶滅のおそれのある野生生物のリスト(レッドリスト)では、絶滅のおそれのある野生生物は2万5,821種に達しています。また、世界の野生生物の分類群ごとの絶滅のおそれの状況を表す「レッドリストインデックス」では、鳥類、哺乳類、両生類及びサンゴ類の統合指標について、絶滅に向かう方向に数値が大幅に悪化しています。
世界の森林面積は約40億haで、世界の陸上面積の約3割が森林で占められています。国連食糧農業機関(FAO)によると、1990年から2015年までの25年間で、日本の国土面積の3.4倍に当たる約1億2,900万haの森林が世界で減少しています。森林減少は、南米やアフリカで大きくなっており、人口増加や貧困、商品作物の生産拡大等を背景として、森林から農地への転用等が主な原因とされています。(平成30年版環境白書より)
世界の土地の5分の1が劣化し、10億人の生活に影響しています。(国連SDGsレポート2019より)
この目標と食品産業
豊かな森林は水源涵養やCO2 の吸収に大きな役割を果たすだけでなく、そこで暮らして農林漁業を営む人々の生活を支えるものであり、食品産業の持続性にとってきわめて重要です。また、多様な生物資源は、将来の資源不足を解決するイノベーションの核となるものでもあります。
各社の取組
キリンホールディングス株式会社
キリングループでは、CSVの重点課題について、事業を通じて中長期的に目指す姿を明らかにするコミットメントと、その達成に向けた具体的なアプローチ及び成果指標を定めています。この目標に関連するコミットメントとして「原料生産地と事業地域における自然環境を守り、生態系を保全します」を掲げ、成果指標として、スリランカの農園の持続性向上、日本の農地における生物多様性の確保をあげています。https://www.kirinholdings.com/jp/impact/[外部リンク]
- キリンライブラリー設立
- レインフォレスト・アライアンス認証取得支援
椀子ヴィンヤードは遊休荒廃地を2003年から日本ワインのための垣根栽培・草生栽培のブドウ畑に開墾をした場所です。草生栽培では下草を生やせますが、これが壮大な草原を構成し、多様な生きものが生息できるようになったと考えられています。つまり、遊休荒廃地を草生栽培のブドウ畑にしていくことは、里地里山を再生することに繋がるのです。
2016年からは、農研機構の専門家の指導を受けて、植生再生活動も行っています。また、山梨県の天狗沢ヴィンヤードでは、世界でも珍しい遊休荒廃地から収穫が可能なブドウ畑に変わっていく過程での生態系の変化を調査する共同研究を、農研機構とキリングループで実施しています。
株式会社 明治
明治では、カカオ、パーム油、紙について、調達方針や調達ガイドラインに基づき、人権や環境に配慮した調達活動に取り組んでいます。さらに、自然の恵みの上に成り立っている企業として、環境との調和を意識することが大切であると考え、生物多様性の保全活動に力を入れています。https://www.meiji.co.jp/sustainability/[外部リンク]
この(株)明治自然環境保全区には、タンチョウ、セイタカシギ、オジロワシ、オオワシなどをはじめとする、絶滅のおそれのある野生生物の種が掲載されたレッドリストにある野鳥が生息しています。
2017年には協定締結、保護区設立10周年を迎えました。企業とNGO/NPOの協働の広がりのきっかけになるモデルケースとなったこともあり、これからもさらに取組を進めていきたいと考えています。
また、子どものたちの環境学習として、根室市の小学生とその保護者を対象とした自然観察会や根室市などが主催の野鳥をテーマにしたイベント(ねむろバードランドフェスティバル)にも積極的に参加しています。
UCCホールディングス株式会社
UCCでは、経済的豊かさと森林環境の保護を両立するためのプロジェクトに参加し、コーヒーの生産国とともに活動しています。https://www.ucc.co.jp/company/sustainability/action/ethiopia/[外部リンク]
JICA(国際協力機構)「ベレテ・ゲラ参加型森林管理プロジェクト」は、森林で収穫できる宝石のようなコーヒーの本当の価値を引き出し、高付加価値製品として認知度を上げるため、品質の改善に取り組むプロジェクトです。
UCCは2014年から品質向上のため技術指導に係ってきました。現在特に力をいれているのが、生産管理方法や物流体制のレベルアップです。そのために森林公社では初めてコーヒー専任担当が選出され、日々熱心に取り組まれています。また、このプロジェクトは、元々の目的である「森林保全」にも非常に効果が高いと認められました。
株式会社ニップン
ニップンでは、企業として持続的な成長が図れるよう、消費者のニーズに対応する商品の開発・販売を進めています。包装資材においても、プラスチックごみ削減のために包材の厚みを薄くしたり、廃棄処理が容易な材質を選択したりしています。https://www.nippn.co.jp/csr/[外部リンク]
また、冷凍パスタをはじめとした商品(一部除く)で、環境に配慮し、PEFC認証紙2を使用した紙トレー、紙カップを使用している他、社内報やCSR報告書、株主さまへお送りしている事業報告誌などの定期刊行物にFSC認証紙3を使用しています。
2 PEFC認証紙:国際NGOのPEFC(Programme for the Endorsement of Forest Certification)評議会が適切に管理された木材・木材製品であると認証した紙
3 FSC認証:国際的な会員制非営利組織のFSC(Forest Stewardship Council:森林管理協議会)が、適切に管理された木材・木材製品であると認証した紙
株式会社不二家
不二家ファミリー文化研究所(※1)は、自然環境保護活動の一環として荒廃した森を購入し、その森を整備・保護していただける団体にトラスト活動(※2)として寄贈しています。https://www.fujiya-peko.co.jp/company/about_fujiya/csr/[外部リンク]
不二家ファミリー文化研究所は、「伝えていきたい自然 伝えていきたい家族の絆」をテーマに2003年4月に誕生しました。自然から生み出される食材を扱う私たちにとって、言うまでもなく大切な「自然」を守っていくこと。そして、「ファミリーの不二家」という理念のもと、お菓子を通じて家族の幸せな時間を作るお手伝いをしてきたこと。それらのことを、今後も具体的に行動し伝えていくための研究所です。
※2 「トラスト活動」とは
大切な自然環境という資産を寄付や買い取りなどで入手し守っていく。等の自然環境保全活動です。
この2,000坪強の小さな森は、熊笹や潅木の覆い茂った藪そのものでしたが、数年の手入れを経て徐々に明るさを取り戻してきました。2012年にはブナやミズナラを植樹。今後も定期的に不要な下草を伐採して地面に日光を導き、ブナやミズナラをはじめとする木や草が生い茂る明るい森を作っていくのが目標です。
自然に手を加えることによって、森にどのような変化が生じるのかを観察するのも、森作りの仕事のひとつです。私たちは、徐々に変化している「ペコちゃんの森」の様子を、定期的にウェブサイト内にてご報告しています。この森を通して、自然の力と人間の営みについて学びながら、森林の再生と保護、環境教育活動を継続して行っていきます。
CSR報告書2022「不二家ファミリー文化研究所の活動」[PDF(6MB)|外部リンク]
お問合せ先
大臣官房 新事業・食品産業部 企画グループ
代表:03-3502-8111(内線4139)
ダイヤルイン:03-6744-2065