17の目標と食品産業とのつながり:目標2に対する取組
17の目標と食品産業とのつながり
地球の環境を守り続けながら農業を進めよう
この目標は2030年までに、飢餓とあらゆる栄養不良に終止符を打ち、持続可能な食料生産を達成することを目指しています。また、誰もが栄養のある食料を十分得られるようにするためには、環境と調和した持続可能な農業を推進し、生産者の所得を確保し、農業生産性を高めるための研究・投資を行う必要があります。
- 上記の目標の訳は、どなたにでもわかりやすいよう、公益財団法人 日本ユニセフ協会の広報資料から引用しています。
- 各企業の取組の多くは、SDGsの複数の目標に関連しています。
この目標をめぐる状況
【日本では】
主食・主菜・副菜を組み合わせた食事に関する状況は悪化しており、特に20~30 歳代ではこれらを組み合わせた食事を食べている割合が低くなっています。さらに20~30 歳代の女性では、たんぱく質、カルシウム、食物繊維及びカリウムなどの摂取量が60 歳代よりも少ない傾向にあります。また、所得の低い世帯では、所得の高い世帯と比較して、穀類の摂取量が多く野菜類や肉類の摂取量が少なくなっています。65歳以上の高齢者では、低栄養傾向の者の割合が、男性で12.5%、女性で19.6%です。特に、80歳以上の高齢者では、男女とも約2割が低栄養傾向となっています。(平成26・27・29年度「国民健康・栄養調査」より)
2018年度の日本の食料自給率は、供給熱量ベースで37%です。農林水産省では、食料の潜在生産能力の大きさを数値で示すため、その時点における農地と平均単収等を基に「食料自給力指標」を試算していますが、農地面積の減少や単収の伸び悩み等により低下傾向で推移しています。
【世界では】
世界の食料需給は、世界人口の増加や開発途上国の経済発展による所得向上に伴う畜産物等の需要増加に加え、異常気象の頻発、水資源の制約による生産量の減少等、様々な要因によって逼迫する可能性があります。世界の栄養不足人口は、2017年には8億2,100万人と3年連続で増加し、2010年の水準に逆戻りしました。(令和元年度食料・農業・農村白書より)
極度の貧困にある雇用者の3分の2が農業従事者です。
世界の栄養不良人口の3分の2がサブサハラ・アフリカと南アジアに暮らしています。5歳以下の子供の22%(1億4900万人)が発育阻害状態にあり、7.3%(4900万人)が低体重で、5.9%(4000万人)が肥満です。(国連SDGsレポート2019より)
この目標と食品産業
食品産業は多様な栄養素を含む食品の安定供給を通じて、この目標の達成に中心的な役割を果たすことができます。
一方で、どんな食品でも極端に食べ過ぎれば栄養バランスは崩れることから、正しい知識とともに食品を提供することも重要です。
国内外の原料生産者との連携により、持続可能な農業に貢献している事例も多く見られます。
各社の取組
味の素株式会社
味の素株式会社は、各国・地域によって異なる多様な要素を考慮し、料理の栄養価値を評価する栄養プロファイリングシステム(ANPS-Dish)を開発しました。ar2023jp_074-083.pdf(ajinomoto.co.jp)[外部リンク:PDF1,742 KB]
株式会社伊藤園
伊藤園では「コミュニティと産業育成」をESG重要課題に掲げ、調達の一部で茶農家や行政と協働で取り組む「茶産地育成事業」を展開しています。この事業は個々の茶農家との契約栽培と、耕作放棄地などを利用して大規模な茶園で畑づくりから茶葉を育成する新産地育成事業で構成され、継続的に面積が拡大しています。https://www.itoen.co.jp/csr/[外部リンク]
また、調達先の農業法人・契約農家には、伊藤園グループ調達方針に即して食の安全や環境保全の規格であるJGAP認証の取得を推進しています。
茶産地育成事業(新産地事業)では、伊藤園には高品質原料の安定調達とコスト削減という事業効果があります。茶農家や農業生産法人には、全量買取による農家経営の安定や後継者不足の解消のほか、労働時間の削減や雇用創出効果が生まれます。地域では荒茶工場の建設や試験研究機関、農業資材企業などの集積効果もあり、雇用創出につながっています。また、耕作放棄地の解消や食料自給率の向上など日本農業の課題解決につながり、IT化や最適施肥技術での環境保全型農業、持続可能な農業を実現します。
キユーピー株式会社
キユーピー株式会社は、栄養価の高いマヨネーズを普及させて、日本人の体位向上に貢献したいという想いで「キユーピーマヨネーズ」を1925年に発売しました。それ以降、国内外のあらゆるお客様の食と健康に配慮した商品開発を行っています。また、サステナビリティ目標である健康寿命延伸への貢献に向け、さまざまな取り組みを通じて豊かで健康的な食生活をサポートしています。https://www.kewpie.com/company/policy/2030vision/longevity/[外部リンク]
キユーピー株式会社ウェブサイト(外部リンク)
不二製油グループ本社株式会社
不二製油グループでは、「大豆事業の成長」を中期経営計画に位置づけ、環境負荷が少ない植物性たん白質で食資源不足の課題解決に貢献することを目指しています。植物性たん白源を普及する上で課題となる「おいしさの提供」を実現できる商品を開発するとともに、消費者に植物性たん白源を選択する意義を理解していただくための活動を行っています。https://www.fujioilholdings.com/sustainability/[外部リンク]
これからは大豆の価値そのものを活かすだけでなく、さらに植物性油脂事業、業務用チョコレート事業、乳化・発酵素材事業で培ってきたおいしさに関する技術と知見、顧客網を活用し、おいしさと健康によって社会課題を解決できる事業へと、ソイツリーの先端へ向けさらに枝葉を伸ばしていきたいと考えています。
カゴメ株式会社
カゴメは、加工用トマトの持続可能な調達をはかるため、創業当初からの契約栽培という仕組みと、大規模化・機械化を進めた農業のノウハウを活用して農業振興・地方創生に取り組んでいます。また、海外では新たな産地の開拓を進めています。https://www.kagome.co.jp/company/csr/[外部リンク]
カゴメでは、農業機械メーカーと共同で加工用トマト収穫機「Kagome Tomato Harvester」(以下、KTH)を約6年の歳月をかけて開発しました。KTHの作業効率は人手による作業の約3倍に達し、1人1日あたり1.8トンの収穫が可能となります。2017年にはトマトの運送委託業者に収穫機の運転、運搬などの作業を委託してKTHと作業者をセットで派遣する取り組みを茨城県でテスト導入しました。今後も既存生産者の継続栽培と新たな生産者を増やす取り組みを推進していきます。
三井製糖株式会社
三井製糖では、タイや日本の離島において基幹産業となっているサトウキビ農業の安定化、高収益化を目指し、2013年からタイ東北地方にて、サトウキビの単収向上・安定化を目標にした栽培改善技術開発である「サトウキビ増産プロジェクト」を実施しています。さらに進んだ価値創造のため「サトウキビを使い尽くす」をテーマに、研究開発を進めています。https://www.mitsui-sugar.co.jp/csr/[外部リンク]
また、サトウキビは、砂糖という食資源として生活を豊かにするだけでなく、その製造過程で出る副産物が燃料に有効利用されたり、さまざまな機能性素材に姿を変えたりと、大きな可能性を秘めています。
サトウキビ農業の安定化、高収益化による、農家の所得安定、増加はもちろん、多くの活用方法があるサトウキビのさらなる価値創造を目指して、「サトウキビを使い尽くす」をテーマに研究開発を進めています。
ハウス食品グループ本社株式会社
ハウス食品グループは、食べることの大切さ、作ることの楽しさを伝え、「より良く食べる力」を育むための食育活動を行っています。ハウス食育プロジェクトとして、幼稚園・保育園の子どもたちを対象にした「はじめてクッキング」や、小中学生への出張事業、作物の生産や周辺環境の体験学習などを実施し、社員の参加も促進しています。https://housefoods-group.com/csr/[外部リンク]
「はじめてクッキング」教室では、「リンゴキッドとなかまたち」の紙芝居を読んだり、カレークイズを出題したりして子ども達のカレークッキングへの興味と関心を高めました。これからも、子どもたちの健やかな心と体の成長を応援するこの活動を、大切な食育活動として取り組んで参ります。
敷島製パン株式会社(Pasco)
Pascoは日本の食料自給率の向上に貢献していくため、小麦生産者をはじめとするパートナーと連携しながら、国産小麦の小麦粉を使用したパンづくりに取り組んでいます。https://www.pasconet.co.jp/csr/[外部リンク]
国産小麦の小麦粉を使用したパンづくりを進めるためには、小麦の生産者をはじめ、国や地域の行政、流通関係者、研究者の方々とのパートナーシップが重要と考えています。
盛田社長は定期的に北海道を訪問し、パートナーのみなさまとの対話を続けています。また、帯広畜産大学と包括連携協定を結び、国産の原材料を使ったパンの研究・開発を協働で行うほか、人材の育成や交流を図っています。
株式会社ニップン
株式会社ニップンでは、食品工場で排出される副産物や粕から機能性食品素材を製品化する活動を行っています。https://www.nippn.co.jp/csr/[外部リンク]
「潤つやセラミド」
食品工場副産物や粕が機能性食品素材の原料となり得ることを証明することで、それらの価値をさらに向上させることが可能になります。副産物の有効活用になるとともに、地域産業の収益向上にも貢献し、健康食品メーカー等に安全な機能性食品素材を提供することを可能にしています。
この取組は、公益財団法人 食品等流通合理化促進機構主催の「第9回食品産業もったいない大賞」において農林水産省 大臣官房長賞を受賞しました。
素材 | 由来 | 健康機能 |
セラミド | トウモロコシ、米 | 肌の健康維持 |
オリーブ果実マスリン酸 | オリーブ | 筋肉、関節、疲労感軽減のサポート |
パミスエキス | ブドウ | 歯や口腔内の健康維持 |
アマニリグナン | アマニ | メタボリックシンドローム改善 |
ブランエース | 小麦 | お腹の調子を整える |
- ニュースリリース No.43(2021年12月24日)(PDF:329KB)【外部リンク】
株式会社ニップンは、「食の安全・安心」の確保を第一としながら、おいしさや機能性も同時に追求し、幅広い世代とニーズに答える商品を安定的に提供し続けることをめざしています。
また、家畜の飼育に必要な牧草地確保のための森林伐採や大量の水等が不要であることから、持続可能な食料供給に貢献する食材です。今後も、すべてのお客様に安全で高品質な食品を提供しつづけられるよう取り組んでいきます。
ワタミ株式会社
ワタミグループは、自然共生社会の実現に向け、有機農業を通じて、生態系サービスを守る活動を推進しています。https://www.watami.co.jp/csr/[外部リンク]
日本一の有機生産法人である(有)ワタミファームは、農薬や化学肥料を使用しないオーガニック野菜を安定的にお客様にお届けするために、2001年から有機農業に取り組み、2020年3月時点では管理面積630haにまで拡大しました。
現在、有機・特別栽培農産物の活用比率は27%ですが、2024年には60%を目指しています。多くのお客様にオーガニック料理を食べて頂くことで、お客様にSDGsに協力いただくプロジェクトを推進しています。
ナガセヴィータ株式会社【旧社名:株式会社林原】
ナガセヴィータ株式会社は、自社が開発した自然由来の多機能糖質の製品・技術を環境への負荷をかけずに農薬や化学肥料の役割を補う「バイオスティミュラント」として活用し、持続可能な農業の実現に貢献しています。https://group.nagase.com/viita/sustainability/partnership/03/[外部リンク]
トレハロースは、植物に与えることで植物本来のストレス耐性能を誘導するBSとしての機能があるほか、根粒菌製剤のようなBSを安定化する機能もあります。不安定な根粒菌製剤の保存性が上がり広く普及されることで、化学肥料の低減につながり、地力の低下を防ぐとともに農家の経済状況が改善されるなど、大きなメリットがあります。
当社のトレハロースは、トウモロコシなどのでん粉に土中の微生物を利用して作られた酵素を作用させて作られており、農業に利用することは“土からもらったものをまた土に還す”自然な使い方といえます。これからの農業において、化学農薬や化学肥料の使用を減らしていくことが求められており、BSの活用は欠かせないものとなります。林原においても、トレハロースなどの製品・技術を通じてこの分野に広く貢献できるよう、さらに研究開発に注力していきたいと考えています。
お問合せ先
大臣官房 新事業・食品産業部 企画グループ
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