事業者へのインタビュー:フィード・ワン株式会社
事業者へのインタビュー
経営企画部 経営企画室 | 小西恵さん |
経営企画部 経営企画室 | 斎藤佳乃さん |
フィード・ワン株式会社は、「Feedをはじめの一歩として、畜・水産業界の持続的発展に貢献し、食の未来を創造します。」という経営理念のもと、配合飼料の製造・販売、畜水産物の仕入・販売・生産・加工等や、農場の経営及び指導などを行う企業です。
この度、CSR活動とSDGs達成に向けた取組について、経営企画室の小西さん、斎藤さんにお話を伺いましたので、その内容を紹介いたします。
経営企画部 経営企画室 | 斎藤佳乃さん |
経営企画部 経営企画室 | 小西 恵さん |
安全安心な食の提供に向けて
当社は、牛、豚、鶏に与える家畜用配合飼料や養殖魚に与える水産飼料など、飼料の製造・販売を主たる事業としています。これに加え、飼料メーカ-ならではのノウハウやネットワークを活かし、生産から食卓までの一連のサプライチェーンをトータルコーディネートしています。
食肉事業では、飼料・生産・品種といった食肉商品を構成する様々な要素の最適な組み合わせを見つけ出し、ご満足いただける商品の提供をしています。
鶏卵事業では、全国の養鶏場と連携し、安全安心な美味しいたまご(生卵・加工卵)を販売しています。
水産物事業では、養殖魚を中心として国内外の良質な水産物を、販売先のニーズに合わせフィーレやロインから寿司ネタまで様々な加工形態で販売し、飼料や漁場、生産者にこだわった特長ある商品を数多く取り扱っています。
加工・販売している畜水産物の一例
こうしたことから、当社は、「畜・水産業の持続的発展への貢献、食の未来の創造」をMissionとして位置付け、食の安心と感動を与え続ける企業を目指しています。
経営理念
- Mission
- Feed をはじめの一歩として、畜・水産業界の持続的発展に貢献し、食の未来を創造します。
- Vision
- 食の安心と感動を与え続ける企業を目指します。
- Value
- 常に顧客・消費者の目線でニーズ・課題を捉え、問題解決に取り組みます。安全安心な食の提供に向けて、コンプライアンス経営を徹底します。高い専門性を持ち、時代の変化を捉えて常にチャレンジする人材を育成します。「思いやりを持つこと」「Fair であること」「謙虚であること」を常として、社会の信頼に真摯に応えます。
(北九州市若松区)
図中右:北九州水産工場
事業を通じたSDGsへの貢献
当社の飼料事業は、畜産業及び水産養殖による食料の安定供給を支えるものです。また、大豆や菜種などから油を製造する際に発生する「油かす」や⼩⻨粉やでんぷんを製造する際に発生する「ふすま」、「グルテンフィード」といった「副産物」を原料として利用しています。日々発生する売れ残りや食べ残しなどの食品ロスも積極的に活用します。
また、近年では、地域の小・中・高校生を対象として、実際に当社の飼料を与えた畜水産物を調理し食べながら、「食の正しい知識」と「食の大切さ」を楽しく学ぶ食育講習会にも取り組んでいます。
これらの取組は、2015年にSDGsが採択される以前から行っていましたが、近年のSDGsに対する世界的な注目度、重要性の高まりに連動する形で、SDGs達成に貢献する活動として発展させています。
SDGs への貢献は、当社が最大の課題とする「食を通じてすべての人を幸せにすること」を叶えるために不可欠だと考えています。
資源循環型社会の実現をめざして
日本では、事業系・一般家庭合わせて年間2,550 万トンの食品廃棄物等が排出され、このうち、まだ食べられるのに廃棄される「食品ロス」は約600万トンと推計されています。この削減は大きな課題です。
飼料業界として、事業系食品廃棄物の飼料へのリサイクルに貢献する一方で、家庭から排出される食品ロスへの対応は進んでおらず、今後、業界として取り組むべき課題と言えます。
当社は、既にコンビニエンスストア等で発生する食品ロスを乾燥加工した「エコフィード」を業界に先駆けて飼料原料として使用していますが、物流及びコスト面で使用量が限られており、それを如何に拡大するかが課題です。
また、食品ロスの低減には企業と消費者双方の協力が必要であり、「食品ロス」の配合飼料への組み込み促進とともに、当社食品グループ会社におけるパッケージ変更による賞味期限延⻑の実現や、食育においても消費促進を呼びかけるなど積極的な活動を検討しています。
また、同業他社である食品会社とのパートナーシップにより、目標達成に取り組みたいと考えます。
持続可能性を追求することで
未来に資源を繋げる
世界的な食糧需要の高まりを背景に、乱獲や違法な操業などにより、世界的に水産資源の確保は年々厳しくなっていることから、水産資源を適切に保全し、有効利用するため、漁業のあり方が問われています。
当社は、クロマグロ事業を通じ天然資源に対する負担を軽減し、持続可能性を追求することで未来に資源を繋げていくことを目標としています。
クロマグロの完全養殖は、1986 年に研究を開始し、2014 年に完全養殖に成功しました。そして、2017 年11 月から関連会社である「極洋フィードワンマリン」より完全養殖したクロマグロの出荷を行っています。
成果 ~完全養殖の実現~
クロマグロの養殖は「蓄養養殖」と「完全養殖」の2 つに分類されます。「蓄養養殖」は、天然の幼魚や未成魚を生きたまま捕獲し、生簀で成魚になるまで育て出荷する方法です。
「完全養殖」は、人工ふ化させたクロマグロを親魚にまで育て、これが産んだ受精卵をもとに再び人工ふ化させ、成魚まで育てる養殖方法です。
このことから、クロマグロの完全養殖は、天然の幼魚や未成魚の漁獲に依存せず、同種の資源量に影響を及ぼさない形で推進することが可能となります。
課題 ~完全養殖のコスト改善・飼料開発~
完全養殖は実現したものの、「稚魚の生残率の低さ」「生餌から配合飼料への切り替え」等の課題があります。
従来「餌」として給与していた生餌(冷凍魚のミンチ)では栄養成分の偏りなどから、海上生簀に移せるほどの大きさの「沖出し稚魚」に育つまでに生存率は1%未満となっていました。
そこで当社は、クロマグロ仔稚魚の嗜好性を高めるホタテウロエキスを原料に使用し、かつ栄養バランスの優れた種苗生産用飼料を開発、2018年から販売を開始し、稚魚の生残率向上に貢献しています。
また、育成ステージにおいても配合飼料化の研究を進めています。クロマグロは1kg 大きくなるのに、13~14kg 生餌が必要になると言われています。
餌に対しても生態系への配慮や水産資源の保全、食べ残しによる海洋汚染の回避という観点から、生餌への依存を減少させることが課題となっています。
このため、クロマグロの配合飼料化を進める目的で、更なる飼料開発に取り組んでいます。
限りある資源や人材のために
ゲノム解析サービス
2018 年7 月より乳牛のゲノム解析サービスを開始しました。乳牛のDNA を解析することで、雌牛の「繁殖能力」、「乳質」、「疾病耐性」、「体型」といった遺伝的能力を数値化することが出来ます。今まで3 年以上かかっていた各個体の能力評価が、生後すぐに判明し、育種改良スピードを飛躍的に向上させることが可能となりました。
また、解析結果に基づき牛に適した飼料給与メニューを提案することが可能になり、生産者の更なる生産成績・経営の改善に寄与する取組となっています。このような最新技術のツールを拡充して、生産者の潜在ニーズを発掘し、持続的な国内の酪農業の発展に貢献してまいります。
搾乳ロボット専用飼料の開発・販売
酪農業における人材不足は深刻となっており、機械化・自動化やデータ化に大きな期待が寄せられていることから、この問題を解消するために全国で搾乳ロボットの導入が進んでいます。
当社では、2015年に搾乳ロボット プロジェクトチームを結成し、搾乳ロボットの普及から導入後データ解析による管理アドバイスをはじめとした農家支援や、搾乳ロボット専用飼料の開発に取り組みました。搾乳ロボット専用飼料は2016年に特許を取得し、生産者の方々からも好評を得ています。
今後の取組~事業を通じた
積極的な取組とパートナーシップ~
当社は、食のバリューチェーンである「原料」、「配合飼料」、「農場」、「食品」、「消費者」のすべてに携わることができます。この強みを活かし、川上の⼩さな取組が川下では大きな波へ成⻑できるように、グループ会社一丸となって事業を通じたSDGsの達成に向けて取り組みたいと考えています。
食品企業、食品以外の企業、国や県および市町村とのパートナーシップにより、既存概念にとらわれない様々な取組にチャレンジしたいと考えています。
今後は、SDGs に関する各種イベントにも積極的に参画し、SNS 等も活用を検討しながら当社の取組を発信し、社会全体のSDGs の取組の活性化に貢献します。
併せて、「FEED ONE」が何をしている会社なのか、ということも消費者の方々にも広く知ってもらえるような取組も検討していきます。
インタビューのご協力ありがとうございました
企業が取り組むSDGsの一部です。
お問合せ先
大臣官房 新事業・食品産業部 企画グループ
代表:03-3502-8111(内線4139)
ダイヤルイン:03-6744-2065