事業者へのインタビュー:一般社団法人エンジェルガーデン南国
事業者へのインタビュー
ゼネラルマネージャー 西川きよさん
一般社団法人エンジェルガーデン南国は、“就労継続支援B型事業所”である南国にしがわ農園を運営しており、農園で育てたグアバを活用した化粧品と農産品の販売を通して、障がいをお持ちの方に就労機会を提供しながら、工賃の向上を目指しています。
この度、企業のSDGsの取組について、一般社団法人エンジェルガーデン南国 ゼネラルマネージャーの西川きよさんにお話を伺いましたので、その内容を紹介いたします。
ゼネラルマネージャー 西川きよさん
私たちは自然に感謝し地球環境に優しい農法で人と自然の調和を学びます。
私たちは高品質なものづくりを通して人々の健康と美容に貢献します。
創業と沿革 ~ グアバとの出会い
南国にしがわ農園は、グアバを定植した2011年6月を始まりとしています。
施設利用者が24名、パートが4名、支援員(正社員)が6名の計34名の福祉事務所で、農業、商品開発・製造・卸販売を行っています。施設利用者というのは、この会社の施設を利用して職業訓練を受けている、障がい者といわれる方々のことで、当社では「メンバーさん」と呼んでいます。
元々は、私が無添加化粧品メーカーを起業したのが始まりです。長男が生後間もなくアトピー性皮膚炎と診断されて、それまでの衣食住を全て見直すことになりました。私も子供の頃から肌が弱かったので、肌にやさしい化粧品を探したのですが、当時はそういう商品はなかったため、それなら自分で作ろうと思い、1999年に無添加化粧品をつくる会社を設立しました。
それから11年が経って、スキンケア以上に体内美容の大切さを痛感していた頃に、ダイエットに成功して高血圧症を克服したある病院の看護師長さんを通じて、南国市の隣の香南市にあるグアバ農園と出会いました。その農園では、半世紀も前からグアバを栽培していました。長男はその農園で、1年間インターンシップとしてグアバの栽培を習いながら、高知大学土佐フードビジネスクリエーター人材創出事業(土佐FBC)を受講して、グアバの機能性について研究をしました。
はじめは、その農園からグアバの葉を買い、静岡に送ってティーバッグに加工し、返ってきたものを全国の美容サロンに卸販売していたのですが、原料が足りなくなったことから、2011年に耕作放棄地を取得し、101本のグアバを植えて南国にしがわ農園を開園しました。ちなみに、その年には、ハスモンヨトウの幼虫に苗の葉をほぼ全て食べられるという事件もありました。
高知大学土佐FBCでの研究により、グアバが肌に良いことが分かったので、2013年には、私も土佐FBCを受講するとともに、農園の有機JAS認証を取得しました。2015年には、私の夫で当法人の代表の西川一司も、32年間勤務した特別支援学校を早期退職して土佐FBCを受講し、果実の研究を行いました。有機栽培のグアバの葉を使ったオーガニックコスメもこの年に完成し、第30回高知県地場産業大賞では奨励賞を受賞しました。2017年4月には、高知県から認可を受けて、障がい者といわれている方々が利用する就労継続支援B型事業所として開所し、幼少時より自閉傾向があった次男も支援員として加わりました。その時に加工場を作り、農林水産省から六次産業化・地産地消法に基づく「総合化事業計画」の認定を受けて焙煎機を導入しました。この加工場も農産加工の有機JAS認証を取得しています。2019年には、私が代表をつとめる化粧品事業も当法人の一部門となり、現在に至ります。
自然と共生する農法や
商品づくりへの想い
グアバは南アメリカのアマゾン原産で、大航海時代にスペイン人が広めたと言われています。高知県内では、1978年ごろから漢方薬として糖尿病や高血圧の方に飲まれてきました。
熱帯果樹であり、寒さには弱く、マイナス3~4度で枯れてしまうので、冬季の12月~3月位まではビニールハウスのビニールを3重にしています。それ以外の夏季は、ビニールハウスのビニールをすべて剥がしオープンにしています。今年のように暑い夏にはむしろ収穫量が増えます。
農園では、無農薬、無肥料で栽培する有機農法に加えて、除草剤も一切使用しません。グアバ果樹がまだ小さい頃は、カイガラムシやヨトウムシなどが大発生して大変でした。また寒さにやられて、グアバ果樹の4分の1程度が枯れた時には、申し訳ない気持ちでいっぱいでした。しかし、虫の被害が減ったころにカエルが増え、次にヘビ、鳥、ハクビシンやイタチと捕食者にあたる生き物が順番に見られるようになり、最終的には農園の中に生態系が形作られて、大きな被害が出ることはなくなりました。
私達が農薬や肥料を一切使用しない自然農法で栽培したグアバを余すことなく活かすことは、太陽・水・土など自然の恩恵へのお返しだと考えています。グアバ茶などの製品を通して、皆様の健康づくりを助けるとともに、この自然への感謝の気持ちを知っていただけると嬉しく思います。
https://www.nishigawa-nouen.com/farm/#s10[外部リンク]
農福連携で6次産業化をめざす
代表は、教員として特別支援学校にて32年間勤務し、障がい者といわれる子供たちと一緒に毎日を過ごしていた経験があります。子供たちは、15~18歳で卒業して就職するのですが、彼らにとって社会は非常に厳しく、退職したり、引きこもったりする子たちが多くいるのが現状です。このため、社会に送り出すまでの訓練の場として働ける場所があるといいなと思い、当法人に障がい者を迎えて就労支援をすることにしました。
引きこもっていた子などは、入所したばかりの時は言葉も出ず暗い印象でしたが、農薬や肥料を使わない、自然の生態系のままの農園で仕事をする中で、表情も明るく声も大きくなり、いきいきと働くようになります。このように、障がい者といわれているメンバーさんたちが、一緒に働く中で、仕事を通して成長していく様子を見ると、とても嬉しく思います。
個性あふれる方が多いため、その人に合った仕事を見つけるのに苦労することもありますが、6次産業化により多様な商品を作っていることで、個性や成長に合わせた様々な仕事を提供することができていると思います。例えば、グアバ茶づくりでは、剪定した枝から葉を取り、葉を丁寧に洗って干して、加工場に運んで乾燥・焙煎して、パックに詰めてシールを貼るといった様々な作業がありますし、グアバソース、クッキー、フルーツティーなどにおいてはまた異なる作業があります。
私たちの商品の売上利益は、すべてメンバーさんの工賃になります。その工賃は、2017年に全国平均の16,000円/月でスタートし、おかげさまで現在は36,000円/月となっています。今後は2030年までに70,000円/月を目標に、障害年金(約6~7万円/月)と合わせて、メンバーさんが経済的に自立できる環境を目指して、工賃向上に全員で取り組んでいきます。
地元高知に根差したSDGsの取組
当法人は、高知県が令和3(2021)年度に創設した「こうちSDGs推進企業登録制度」の登録企業になっています。この事業では、SDGsの達成に向けた取組を行っている県内事業者を県が登録し、県のホームページ等で取組内容を紹介するほか、県の入札参加資格者登録名簿に登録企業であることを明記することができ、ビジネスチャンスにつながる可能性があります。
当法人は、これまでSDGsを意識して取組をしてきたわけではなかったのですが、こうちSDGs推進企業登録制度に登録するにあたって今までやってきた取組のSDGsへの貢献を調べたところ、17項目中13項目のSDGsに当てはまっていて驚きました。今では、事業を通じて一緒にSDGsに貢献してくれるパートナー企業を見つけるため、当法人のホームページにおいてSDGsの取組を積極的にPRしています。
https://kochi-sdgs.pref.kochi.lg.jp/company/21/detail/info[外部リンク]
SDGsの中でも南国にしがわ農園の理念と共通する項目には、特に積極的に取り組んでいます。障がい者といわれる方にとって働きがいのある職場を作ることを通して、微力ながらも社会に貢献出来るのではないかと考えているからです。また、日照時間と日照量が全国でもトップクラスで、機能性に優れたグアバが育つ自然豊かな高知を誇りに思っており、高知県産グアバを地域ブランド化することで高知に恩返しをしたいと考えており、ふるさと納税にも参加しています。
「人間らしい働きがいのある仕事」
を目指して
私たちは農福連携によりグアバを自然農法で栽培しています。グアバの果実は、白、ピンク、オレンジの3色で、それぞれ味や香りに特徴があります。はじめは3色を別々に加工していましたが、ある時それらを一緒に加工したところ、酸味と甘み、香りのバランスが良く、それぞれの特徴が引き立つ現在のピューレの味に仕上がったのです。このことは、人間社会にも通じるところがあると思います。つまり、様々な個性のある人々が各々の特徴を生かして能力を発揮することで、やりがいを持って助け合い学び合うバランスの良い社会となります。このことに気づかせてもらったことから、グアバを育てているというよりも、グアバやそれを取り巻く自然に育てられていると感じています。
農園の主な働き手は、障がい者といわれているメンバーさんたちですが、私たちスタッフが一緒に取り組むことで、個性を引きだし、皆がひとつになり協力することで工賃向上につながっています。
また、新規就農による有機自然栽培の普及や移住を促進するため、高知の美しい大自然の中で、人と地球に優しいグアバの自然栽培のノウハウをお伝えする「エンジェルガーデンアカデミー」を開講し、グアバの葉や果実の加工、販路の確保についての相談に乗り、移住者の経済的安定も図っていきたいと思っています。
なお、当社の商品を取り扱うことで、SDGsを達成する事に繋がることとなり、お客様への訴求効果が高まり、企業イメージの向上にもつながることから、取引先からの引き合いも増えています。
今後も、メンバーやパートナー企業の皆様とともに、科学的データに裏打ちされた機能性の高いグアバ商品や有機JAS認証製品の開発をすすめ、有機自然栽培のグアバ商品を、皆様の健康と美容に役立てて欲しいと心から願っています。
最後に、当社は地方の小さな団体ですが「人間らしい働きがいのある仕事」の実現を目指して、限られた資源を活用しながら自社の強みを活かし、心豊かで幸せな日本の未来モデルを創造し、農福連携で幸福な暮らしの輪が広がるよう、SDGsの達成に貢献して参ります。
インタビューのご協力ありがとうございました
企業が取り組むSDGsの一部です。
お問合せ先
大臣官房 新事業・食品産業部 企画グループ
代表:03-3502-8111(内線4139)
ダイヤルイン:03-6744-2065