事業者へのインタビュー:株式会社セブン&アイ・ホールディングス
事業者へのインタビュー
執行役員 シニアオフィサー 釣流まゆみさん
伊藤豊記さん
株式会社セブン&アイ・ホールディングスは、国内コンビニエンスストア事業、海外コンビニエンスストア事業、スーパーストア事業、専門店事業、金融関連事業、IT/サービスなど多様なサービスを展開している世界有数の小売グループです。
この度、企業のサステナビリティ推進とSDGsの取組について、同社サステナビリティ推進部の釣流まゆみさん、鈴木彩子さん、伊藤豊記さんにお話を伺いましたので、その内容を紹介いたします。
株式会社 セブン&アイ・ホールディングス本社にて
重点課題の改定
~7つの重点課題を決定~
当社は、2014年、ステークホルダーの期待や要請にグループが一体となって応えていくために、取り組むべき「5つの重点課題」を特定しましたが、その後、事業活動と関係する社会課題や社会からの要請が多様化してきました。これらに適切に対応するために、2022年3月に「7つの重点課題」へ改定しました。
ステークホルダーとの対話
改定に当たっては、グローバルな視点を重視して、検討すべき社会課題の抽出を行った後、北米の7-Eleven, Inc.を含む9つの事業会社、セブン‐イレブン・ジャパンの加盟店オーナー様、お客様など、様々なステークホルダーに広くアンケートを実施し、5,000件を超える回答をいただきました。また、自由記載の欄には想いを書いてくれる人が多く、1,000件を超えるコメントをいただきました。
これらのアンケートの結果をもとに、ステークホルダーにとっての優先度を検討し、[1]地域社会の発展への貢献、[2]働きやすさの実現、[3]地球環境への配慮等の課題を抽出しました。[1]により地域住民に受け入れられ、[2]により従業員のモチベーションが上がり、[3]により事業活動にも好影響があるなど、ステークホルダーの要望を解決することは事業の成長にもつながります。この考え方は、現在では「ステークホルダー経営」と言われていますが、当社が1972年に制定した社是そのものであり、また人的資本経営にも通ずると思います。
私たちは、取引先、株主、地域社会に信頼される、誠実な企業でありたい。
私たちは、社員に信頼される、誠実な企業でありたい。
また、セブン&アイグループを代表する事業会社3社および当社において、幅広い知見を持つ有識者の方々とダイアログを実施し、アンケートの回答をもとに忌憚のないご意見をいただきました。
ステークホルダーとグループの意見を考慮した新しい重点課題の決定
ステークホルダーへのアンケ―トの結果をもとに、ステークホルダーにとっての重要度と当社の経営にとっての重要度を分析するとともに、アンケートのコメントや有識者とのダイアログなどで挙がったご意見を考慮し、「7つの重点課題」を決定しました。
新しい重点課題は、グループ従業員が「自分事」として取組めるよう、具体的な取組みとの関連が分かりやすい文言を採用しました。
地域・コミュニティとともに住みやすい社会を実現する
重点課題の1つ目に設定したのは、「お客様とのあらゆる接点を通じて、地域・コミュニティとともに住みやすい社会を実現する」ことです。
2万店の小売店舗を抱える当社は、宅配や外商など多様なお客様との接点を有するグループの特性を活かし、店舗をはじめとするあらゆる顧客接点を通じて地域・コミュニティとともに住みやすい社会を提供していくことも、フロントラインである当社の社会的責任だと考えています。
一方で、お客様の困りごとを解決することが当社の成長にもつながるとも考えております。例えば、行政手続きやATMの利用などがコンビニでできることで生活者のインフラとしての役割を果たすことができます。さらに、外国人のお客様向けの金融サービスや視覚障がいのあるお客様でも操作しやすいATMの開発など、より便利に使っていただける環境を整えることで、社会課題の解決と同時に当社の顧客満足度の向上を目指しています。
脱炭素・循環経済・自然と共生する社会を実現する
重点課題の3つ目には、「地球環境に配慮し、脱炭素・循環経済・自然と共生する社会を実現する」ことを設定しました。事業の発展が環境負荷の増大につながらないように、エネルギー消費によるCO2排出量の削減や廃棄物の削減、リサイクルの推進などに取り組んでいます。
また、2019年5月には、環境宣言「GREEN CHALLENGE 2050」を策定し、テーマ別に目標を定めました。
2050年の目指す姿
これらの目標達成のためには、グループ横断で連携して取り組むことが必要であることから、各事業会社の執行役員以上からリーダーを選出し、テーマ別に4つのイノベーションチームを設置しました。チーム間で競い合い、責任感を持って取り組む雰囲気が出来ていることが、各テーマの目標達成に向けた進捗に結びついていると感じています。
このうち、CO2排出量削減については、日本のエネルギー政策など、世の中の動きに合わせて目標値を修正しつつ取組を進めています。セブン&アイグループの排出するCO2は日本国内の小売業では最大であることから、特に冷凍・冷蔵庫に使われている電力などについて、店舗における省エネ設備の導入とともに、非化石燃料由来のいわゆるグリーン電力の導入にも積極的に取り組んでいます。
また、2万店の小売店舗を抱える当社は、店舗を利用する地域のお客様や従業員に対して、社会課題について直接伝えることができます。店舗看板や一部商品棚の電気を消すなど、小さな行動の積み重ねですが、意識を変えるきっかけになればと思います。さらに従業員に向けては、教育ツールとしてeラーニングやDVDを作成し、お店でできる環境対策を伝えるようにしています。
- 国内初オフサイトPPAを含むグリーン電力を一部店舗に導入
- 当社と日本電信電話株式会社(以下「NTT」という。)は、2021年4月から順次、国内初のオフサイトPPA(
)による電力調達とNTTグループが所有するグリーン発電所からの電力を一部店舗に導入しています。この取り組みによって、セブン&アイグループのセブン‐イレブン40店舗とアリオ亀有の店舗運営に伴う電力の100%再生可能エネルギー使用を目指します。 オフサイトPPAとは、需要場所から離れた場所に発電設備を設置し、発電電力を需要場所に供給するモデルです。
https://www.maff.go.jp/j/shokusan/sdgs/goal_13.html#com_12
- 食品ロス削減にむけた啓発活動
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セブン&アイグループ各社は、食品廃棄物削減のために販売方法・商品などでさまざまな工夫を図っています。例えば、セブン‐イレブン・ジャパンでは、日本フランチャイズチェーン協会や他のコンビニ大手3社と合同で「てまえどり(
)」を推進しています。また、セブン&アイ・フードシステムズのデニーズでは、食べ切れるサイズの小盛のメニューや食べ残しのお持ち帰りを推進する「mottECO(モッテコ)」に取り組んでいます。 「てまえどり」とは、すぐに召し上がる予定で食品を購入されるお客様に対し、手前に置いてある商品から選んで購入していただくことを促すことで食品ロスの削減を目指そうという取り組みです。
https://www.maff.go.jp/j/shokusan/sdgs/goal_12.html#com_23
地域社会とともに~サステナビリティ・コミュニケーション
お客様やお取引先様に取組の価値を伝える
売上の約6割を食が占めている当社は、お客様の生活を支える役割を担っていると考えておりますが、ウクライナ情勢等による燃料や原材料の高騰が続いており、商品価格にもその影響が出ています。このような中で環境課題への対応を行うことにより、さらに負担が増えるのではないかという見方もあるとは思いますが、コストの構造というのはそれほど単純ではありません。当社としては、コストを細かく分解・分析し、省エネ、物流の効率化、国産原材料の活用などにより環境課題の解決と調和したコスト削減を進めながら、納得できる価格で販売することが重要だと考えております。
一方、セブンファームでは、J-GAP取得を進めたり、店舗で発生した食品残差を堆肥にすることにより環境循環型のリサイクルループを構築したりと、付加価値を生み出す活動を契約農家とともに行っています。
今後も地域と連携して省エネや資源循環の取組を進め、お客様にその価値を伝えることで、選ばれる会社になることを目指してまいります。
- セブンファームの取り組み
- イトーヨーカドーは、2008年8月に食品リサイクル率の向上と地域農業の活性化を目的として、農業生産法人「セブンファーム富里」(千葉県富里市)を設立し、「環境循環型農業」を小売業で初めて開始しました。
2023年2月末現在、セブンファームの取り組みは全国12カ所に拡大しています。また、セブンファームは農業生産工程管理手法のひとつであるJGAP認証(Japan Good Agricultural Practice) の取得を積極的に進めており、セブンファーム内の11カ所(2023年2月末)の農場でJGAP認証を取得しています。
https://www.maff.go.jp/j/shokusan/sdgs/goal_12.html#com_24
インタビューのご協力ありがとうございました。
企業が取り組むSDGsの一部です。
お問合せ先
大臣官房 新事業・食品産業部 企画グループ
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