大分県日田市 株式会社モリショウグループ・森山代表に聞く:農林水産省
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農林水産省

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大分県日田市 株式会社モリショウグループ・森山代表に聞く

再エネインタビュー
森山社長お話をいただいた森山代表

大分県の西部に位置する日田市は、周囲を阿蘇・くじゅう山系や英彦山系の山々に囲まれ、古くから林業の町として栄えてきました。

国内林業は、原木価格の低迷や森林整備の遅れ、作業従事者の高齢化など厳しい状況が続いていますが、日田市では先人から受け継いだ山や森林資源を活かし、林業、製材業、木工業の振興に努めています。

平成25年から、地域の山林の未利用材を原料とする木質バイオマス発電を行っている(株)グリーン発電大分を統括する(株)モリショウグループの森山代表取締役にお話を伺いました。

(聞き手:再生可能エネルギー室、九州農政局経営・事業支援部食品企業課)

グリーン発電大分のバイオマス発電所は、地元の日田市から農山漁村再生可能エネルギー法に基づく設備整備計画の認定を受けています。
同法について、詳しくはこちらで紹介しています

ふるさとの林業再生への思いを描く

バイオマス発電は、森林再生と資源循環を生み出し、地域社会に貢献する事業です。森林資源に恵まれた大分県日田市では木材産業が古くから営まれており、現在も市内に7カ所の原木市場があり、林業やその加工業は主要産業のひとつです。ただ、林業従事者の減少、建築用木材への需要の低迷などに伴い、山では根曲がり材や間伐材といった未利用材は放置されるようになっていました。

そこで、間伐時に生じる未利用材や製材過程で発生する木くずを発電の原料として利用することにより、山が積極的に手入れされ、地域材の安定供給、持続的な林業経営を確立することで地域の活力を高めたいと考えるに至り、木質バイオマス発電事業を行うこととしました。

山を育てる思いを形に。発電開始

発電プラント発電プラント(左)とイチゴハウス(右)

会社の利益を追求するだけなら、輸入材に頼った大規模な発電をすればいいですが、当社では電気を作るだけではなく、地域の山を育む思いで事業を行っています。

平成25年11月に、地域の山林未利用材を主な燃料とする木質バイオマス発電の稼働を始めました。山で原料を林業従事者に収集していただくことで、間伐や伐採などが適切に行き届き、山林の維持管理に大きく寄与するだけでなく、災害に強い山づくりに貢献できていると考えています。当発電所では、約200トン/日、年間で約7万トンもの未利用材を使用しています。 地域の未利用材を購入することで、林業や燃料チップ化施設、木質バイオマス発電所の運営など、地域に雇用が生み出されます。現在のFIT制度のもとでは、木質バイオマス発電の取組を通じて、地元の森林組合や企業へ6億円強/年を還元できていると試算しています。

発電開始以来、日田の木質バイオマス発電所の原料は地域の山林未利用材に限っていました。ただ、平成29年の九州北部豪雨では県内に多量の災害流木が生じました。運搬等の手間を考えれば、地域内で受け入れることも頭を過ぎりましたが、これまでの地元の林業従事者の方々との関係もあるため、選択肢とはなり得ませんでした。地域が災害流木で困っているのは看過できるわけではありませんでしたので、当社グループでその全量を受け入れ、地域外の関連会社の施設で処理することとしました。

再エネ発電と農業の連携による、可能性の探究

イチゴの栽培イチゴの栽培風景

木質バイオマス発電所の隣接地で、地元農家((株)ビヘクトファーム)と連携し、発電時に発生する温排水を利用したイチゴ栽培を行っています。

当社の発電事業は、平成28年に日田市から農山漁村再生可能エネルギー法に基づく設備整備計画の認定を受けていますが、このイチゴ栽培の取組は、市の基本計画の内容に沿ったもので、温排水は安価供給し、使い終えた水は再びバイオマス発電所に返す循環システムです。

温排水の活用によって、一般的な園芸ハウスでの栽培に比べて重油使用量を3分の1程度に抑えることができ、コスト低減に加え温室効果ガスの発生抑制による低炭素型農業の実現に繋がっており、県内外から注目されています。

地産地消型の木質バイオマス発電と持続可能な社会へ

環境教育日田市内での環境教育

当社グループの地域新電力「日田グリーン電力」では、平成29年から地域のバイオマス発電をはじめとする再生可能エネルギー電気を、市役所や市内の小中学校、公共施設に供給する電気の地産地消の仕組みを構築し運用しています。

また、当社グループでは、将来を担う子ども達への環境教育に力を入れており、地元小中学校に出向き、バイオマス発電の取組や、この取組が日田市の主産業である林業に大きく関わっていること、地域活性化や山林の健全な保全に繋がることを説明しています。社員の中には生み出される電気は目に見えないため、取組を進めることに悩んでいる者もいましたが、環境教育などの学校訪問を通じて、仕事へのモチベーション向上に繋がっている面もあると思います。

なお、農山漁村再生可能エネルギー法に基づく設備整備計画の認定を受けたことにより九州電力の出力制御ルールの優遇措置などのメリットを受けることができ、また、会社のブランド価値向上にもつながっていると感じています。

再エネ100%宣言と、森林再生に向けて

貯木場地域材の貯木場

当社グループ全体において、環境負荷を低減し将来によりよい環境を残すことを社是として、SDGsの理念に沿った取組を実施しています。未利用材を原料とするバイオマス発電事業が地域にもたらす効果として「地域産エネルギーの創出」「子供たちの環境教育」「林業の持続的かつ健全な発展」「低炭素社会の実現」「関連産業の創出や雇用拡大」の5つを掲げ、その効果達成に向けて絶え間なく取り組んでいます。

令和元年9月からは当グループで発電した木質バイオマス発電の電気を、日田グリーン電力を通じてグループ会社がそれぞれ調達することで電気の100%再エネ化をするとともに、「非化石証書」を活用して環境価値を高める取組として「再エネ100宣言 RE Action」に加盟して、再生可能エネルギーのさらなる活用に力を入れています。

また、将来の森林資源の安定調達を目指して、新たな燃料としての早生樹の可能性や、発電の副産物である焼却灰の活用方法を研究し、木質バイオマス発電事業の更なる可能性を追求していきます。

「再エネ100宣言 RE Action」とは企業、自治体、教育機関、医療機関等の団体が使用電力を100%再生可能エネルギーに転換する意思と行動を示し、再エネ100%利用を促進する民間主導の枠組みです。 

森山社長、インタビューのご協力
ありがとうございました。

お問合せ先

大臣官房環境バイオマス政策課再生可能エネルギー室

担当者:再生可能エネルギー地域普及班
代表:03-3502-8111(内線4340)
ダイヤルイン:03-6744-1507