“農泊”を楽しもう とれたての野菜やジビエ 食を楽しむ農泊
古くから若狭国の中心として栄えてきた小浜。海産物や塩を朝廷に献上する「御食国(みけつくに)」として、また江戸時代以降はいわゆる「鯖街道」の起点として、都の食文化を支えてきた歴史ある町です。港町のイメージが強い小浜ですが、海に背を向けて車で10分も走れば山間部の自然を感じることもできます。この山々から流れ出る清らかな水は、土地を潤しながら若狭湾に注ぎます。そんな清流のひとつ、松永川の流域に位置する松永は、豊かな自然と文化遺産に恵まれた地区。ここでは「松永六感-五感の先をひらく-」をコンセプトに、山村で五感を整え、自分の心身の状態を見つめなおす体験を、地域が一体となって提供しています。その核となる施設が、2020年にリニューアルオープンした地区で唯一の旅館「松永六感 藤屋」です。
松永川沿いに民家や寺社が点在する松永地区。時にのどか、時に静謐な雰囲気を醸し出す山里では、天気や季節に応じてさまざまな景観を楽しむことができます。
周囲を木々に囲まれた、全5室の小さな旅館「松永六感 藤屋」。チェックインしたら、まず訪れたいのが専用農園の「藤屋ファーム」。宿の前に広がる農園では、年間200種類を超える野菜やハーブなどが栽培されていて、夕食前には散策が楽しめます。収穫体験もでき、とった野菜をその日のディナーで味わうことができます。
農園散策後は、地元でとれた野菜をふんだんに使用した夕食が楽しめます。約2カ月ごとに更新されるメニューは、地元でとれたその時々の旬の野菜をふんだんに使用。彩りも美しく、目でも味わうことができます。
ディナーコースの人気メニュー「今日の畑」。農園散策で見たり、実際に収穫したりした野菜が用いられています。焼いたり蒸したり、少量ずつ調理法を変えているので飽きずにじっくり楽しめます。
地元産の大豆を使った豆腐を手作りしています。
メインディッシュの「焼き茄子きのこソース菊花散らし」と「さつま芋と無花果(いちじく)の天ぷら」。素材の味を生かした華やかな料理を楽しめます。
翌朝は早朝の清々しい空気を感じながら国宝「明通寺(みょうつうじ)」で瞑想体験を。806年、征夷大将軍の坂上田村麻呂が平和を祈願して創建したとされるこの寺は、本堂と三重塔が国宝に指定されています。
本堂で瞑想。事前に中嶌(なかじま)一心副住職による説明があり、手や足の組み方などから教えてもらえます。瞑想は約20分間ですが、しんと静まりかえったなか、聞こえてくるのは風や川の音だけで、どこか別の世界にいるような感覚が味わえます。
瞑想後は、寺の客間で松永六感 藤屋特製の朝食をいただきます。白粥と白味噌仕立ての味噌汁、そしてとれたての野菜を使用した弁当は、素材本来のおいしさが体に染みわたるかのようです。
藤屋ファームでは、10時からアグリアクティビティ体験に参加できます。専属ガーデナーのサポートのもと、苗の植付けや畝作り、収穫などの農作業を体験します。
農園の摘みたてハーブを使用したハーブティーを味わったり、ハーブ石けんやアロマスプレー、ポプリなどのハーブクラフトを作ったりと、いろいろな体験ができます。
松永六感 藤屋ではさまざまなプランを用意していますが、「おすすめなのは、国宝明通寺での瞑想体験とディナーコースがセットになった、1泊朝食付のプランです。ディナーには、地域の農産物をふんだんに取り入れた創作料理を提供しています」と語る、マネージャーの小堂準也さん。京都とニューヨークを拠点に食の魅力を発信している中東篤志氏が監修する料理は、従来のイメージを覆す新しい精進料理です。「命に感謝していただくという根本は同じながら、華やかで食べごたえのあるものになっています。多忙な都会の生活からしばし離れ、精進料理、そして農園体験や瞑想体験を通じて五感を整え、自分を見つめなおしてみませんか」
外部リンク
徳島県北西部の美馬市、三好市、つるぎ町、東みよし町にまたがるエリア、通称「にし阿波」。日本最大級の断層「中央構造線」の上にあり、過去の造山活動によって生じた阿讃山脈や四国山地の急峻な山々と、その間を縫って流れる“四国三郎”こと吉野川による、美しく雄大な自然が魅力です。にし阿波は平野が吉野川沿いのごくわずかな部分に限られるため、標高100メートルから900メートルの山間地域に点在する集落で、自給自足の暮らしが営まれてきました。傾斜地での農業は棚田や段々畑のように造成されるのが一般的ですが、この地域ではさまざまな工夫を凝らしながら斜面のままで農耕が行われ、独自の文化や景観が維持されています。この「にし阿波の傾斜地農耕システム」は、2017年に日本農業遺産に、2018年には世界農業遺産に認定されました。「ソラ」とも呼ばれる高地性集落は200近くに及びますが、「民宿 うり坊」のある内野もそのひとつ。兼業農家をしていた木下正雄さんが定年後の2014年に夫婦で開業したこの民宿では、ソラでの暮らしを体験しながら、季節に応じた食を楽しむことができます。
山の斜面に貼り付くように民家と畑が立地するソラの集落。内野は標高300メートルの位置にある16世帯ほどの集落で、木下正雄さんは築100年の自宅の一部を利用して民宿 うり坊を営んでいます。周囲の山は春は山桜、秋は紅葉に彩られ、新緑の時期に木々の葉が増えると、まるで山が近づいてくるように感じられます。
斜面につくられた木下さんの畑。畝を等高線に沿う形で作ることで上から流れ落ちる水を逃がし、土壌の流失を防ぐ工夫が見られます。
徳島の古名「阿波」の語源は「粟(アワ)」という説もあるほど、この地方では昔から雑穀文化が根付いています。木下さんの畑でもアワやヒエ、ソバなどを栽培していて、蕎麦打ちの体験もできます。
正月が近づくと、餅米に赤と白のトウキビ(コーリャン)を混ぜて丸餅をつくります。餅はそのまま焼いて食べるほか、味噌汁に入れたりします。
この地域は、寒暖の差が激しく水はけのよい土地であるため、みかんなどの果実が甘くなるのだそうです。また売るためのものではないので、完熟したものを食べたいときにとって食べられます。
目玉料理である「猪のしゃぶしゃぶ風鍋」。地元でとれた野菜がたっぷり入った鍋に猪肉をくぐらせ、自家製スダチポン酢につけていただきます。
猪肉と鹿肉のハンバーグが並んでいて、どちらがどの肉か当てる楽しみも。そのほかに地元の畑や山でとれた旬の食材を活かした料理がたっぷり。
“阿波地美栄(あわじびえ)”と名付け、ジビエ料理の普及と消費拡大に取り組んでいる徳島県。食肉の処理加工において“阿波地美栄処理衛生管理ガイドライン”を策定し、これを満たした肉を使った料理を提供する飲食店41店舗を「うまいよ!ジビエ料理店」に認定しています。農家レストランでもある民宿 うり坊もそのうちの1軒です。
お客さんと一緒に鹿のポーズを取る木下さん。木下家の先祖がこの地に住むようになったのは1700年前後で、正雄さんで12代目になるそうです。「食べたいものを育てる生活をしつつ、外から人がやってきてくれる。民宿を始めてからは人生で一番楽しい毎日を過ごしていると感じています」
民宿 うり坊では、猟師でもある木下さんが捕獲した猪や鹿の肉をジビエ料理としていただくことができます。木下さんが狩猟を始めたのは約20年前。そのころから猪が畑を荒らすようになり、地域を守るために免許を取ったそうです。今では11月末から2月ごろの猟期に20頭から30頭ほどが罠にかかります。「罠の前に木の枝を1本置くだけでかかり具合が異なるなど、猪との駆け引きがおもしろい」と語る木下さん。滞在中、希望すれば罠の見回りに連れていってくれます。猪や鹿の肉は敷地内にある食肉処理施設で丁寧に処理しているので鮮度もよく、味も抜群。猪肉の鍋は味噌仕立てのいわゆるぼたん鍋が一般的ですが、木下さんが処理した肉は臭みがないのでしゃぶしゃぶにしています。それ以外に猪肉ハムを作って提供したり、猪肉や鹿肉の角煮やハンバーグなども楽しめます。「山で自給自足の暮らしをすると、旬のものが一番おいしいとわかる。正直、私は旬以外のものは食べる気がせんです」と笑う木下さん。四季を通して山の幸を味わいつつ、自然との共存を体験できるのが、この宿の魅力なのです。
外部リンク
農泊に関する情報サイト
のんびり農旅(楽天トラベル)
「プライベート」、「グルメ」、「体験」、「海・山」の4つのテーマで、全国の農泊地域を紹介しています。2022年7月に開設されたばかりで、宿泊施設のほか、地域ならではのグルメや体験の情報が紹介されています。各記事から宿泊予約も可能。
外部リンク
今週のまとめ
地域ならではの食に
触れられるのも農泊の魅力。
自分で収穫した新鮮な野菜や、
その土地の気候や文化のなかで
育まれた味を堪能することができます。
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