令和6年度第3回畜産部会議事録
1. 日時及び場所
日時:令和6年6月25日(火曜日) 14時00分~16時20分
会場:農林水産省 第2特別会議室(web併催)
2. 議事
〇新井畜産総合推進室長それでは、定刻になりますので、ただいまより令和6年度第3回食料・農業・農村政策審議会畜産部会を開催いたします。
委員の皆様におかれましては、御多忙中にもかかわらず御出席を賜り、誠にありがとうございます。
それでは、小針部会長に議事を進めていただければと思いますので、どうぞよろしくお願いいたします。
〇小針部会長
部会長の小針でございます。本日もどうぞよろしくお願いいたします。
それでは、初めに渡邉畜産局長に御挨拶を頂きたいと思います。渡邉局長、お願いいたします。
〇渡邉畜産局長
今日はお集まりいただきまして、誠にありがとうございます。
この後、出張の予定があり、3時20分頃に中座させていただきますけれども、冒頭御挨拶を申し上げます。
委員の皆様方におかれましては、食料・農業・農村政策審議会の畜産部会に御出席、誠にありがとうございます。また、今日御発表いただく方々にも、御参加していただいておりまして、誠にありがとうございます。
先日、通常国会が閉会いたしました、食料・農業・農村基本法の改正法が成立いたしましたし、また、それに関連する3法、食料供給困難事態対策法ですとか、スマート農業の促進法、またそれから、食料安定供給のための農地の確保などに関連する農地法制、新たな農政に向けた重要な法案が成立したところでございます。特に改正基本法におきましては、食料安全保障、それから環境と調和の取れた食料システム、正にこの部会でも御議論いただいている論点が盛り込まれているところでございます。
このような中で畜産部会は、これまで3回にわたりまして、畜産物の生産・加工・流通の各段階に関わる方々から現状や課題について御意見を聴取してまいりました。今回は、畜産物の小売、輸出、また畜産の環境負荷軽減に造詣の深い方々にお集まり頂いております。各発言者の取組内容について発表していただくということと、それから委員の皆様からの質疑ということで、現場目線での御指導いただきたいと考えております。
引き続き、我が国畜産・酪農の発展に向けまして、御支援、御協力をお願い申し上げまして挨拶とさせていただきます。本日もどうぞよろしくお願いいたします。
〇小針部会長
ありがとうございました。
報道の方はここで終了といたしますので、御退室ください。
(報道退室)
〇小針部会長
それでは、議事を進めます。
まず、本日の配付資料の確認、委員の出欠状況の報告などについて、事務局からお願いいたします。
〇新井畜産総合推進室長
では、まず、本日配付しております資料について確認させていただきます。
会場の委員の方におかれましては、お手元のパソコンに資料1から8と参考資料、計9個のシートが表示されているかと思いますので、これらがタブで開かれておりますことを御確認いただければと思います。
パソコンの使用などで不明点がございましたら、近くにいる職員に遠慮なくお問合せいただければと思いますので、よろしくお願いいたします。
次に、出欠でございますが、本日、14名の委員の皆様に御出席を頂いております。このうち椛木委員、二村委員、宮島委員、石田委員、川田委員、里井委員、庄司委員、馬場委員、彦坂委員がリモートにて参加いただいております。このうち、椛木委員、二村委員、宮島委員、馬場委員、彦坂委員におかれましては、途中退席される予定でございます。また、小椋委員ですが、途中参加される予定となっております。また、本日は、井上委員、駒井委員、畠中委員、羽田委員、松田委員におかれては、御都合により欠席との連絡を受けております。
審議会に関する規定では、委員及び議事に関係のある臨時委員の3分の1以上の出席がなければ会議を開き議決することができないと定められておりますが、本日、規定数を満たしておりますことを御報告いたします。
以上です。
〇小針部会長
ありがとうございました。
今回は畜産物の小売や輸出、環境関係に知見をお持ちの方からヒアリングを実施することとしております。本日お招きした皆様を御紹介します。資料3を御覧ください。
お一人目は、株式会社イトーヨーカ堂精肉部精肉総括マネジャーの川田様です。川田様には、食肉の小売段階における現状や課題について御紹介いただきます。
お二人目は、イオンリテール株式会社デイリーフーズ商品部部長の青木様です。青木様には、牛乳・乳製品の小売段階における現状や課題について御紹介いただきます。
続きまして、伊藤ハム米久ホールディングス株式会社食肉事業本部国内食肉本部輸出推進部部長の宮城様です。宮城様には、食肉輸出の取組と課題について御紹介いただきます。
続きまして、株式会社前田牧場取締役・管理獣医師の齋藤様です。齋藤様には、生産現場における温室効果ガスなどの環境負荷低減の取組について御紹介いただきます。
ヒアリングは以上ですが、最後に牛乳乳製品課より、現在省内で開催している生乳の需給等に係る情報交換会に関し、議論の進捗について報告いただきます。
皆様、本日はよろしくお願いいたします。
それでは、議事に入ります。
発表者の皆様におかれましては、事務局から御発表者を御紹介した後、10分から15分程度で御説明をお願いいたします。御説明の後、15分程度の質疑応答時間を設けますので、御意見や御質問がある委員の方は挙手又は挙手ボタンを押していただければと思います。
それでは、まず初めに、株式会社イトーヨーカ堂の川田様より発表を頂きますので、事務局より紹介をお願いいたします。
〇新井畜産総合推進室長
それでは、川田様の紹介させていただきます。資料4を御覧いただければと思います。
株式会社イトーヨーカ堂様ですけれども、首都圏を中心に119店舗を展開されております。品質・価格にこだわった小売業に取り組むことで、消費者へより良い商品の提供に努められております。食肉に関しての発表を頂きますけれども、食肉に関しては、地域に寄り添ったお肉屋さんを目指し、原料品質から商品化までこだわった精肉販売に努められております。
なお、発表者である川田様ですが、畜産部会の委員も務めていただいているところです。
それでは、川田様、御発表をよろしくお願いいたします。
〇川田様
皆さん、こんにちは。イトーヨーカ堂の川田といいます。
今日は、「小売から見た精肉業界の現状について」ということで発表をさせていただきたいと思います。
今回の発表に関しては小売各社共通とも限らない部分もございますので、御了承の方をお願いいたします。
次、お願いいたします。
本日は、五つの項目について話をさせていただきたいと思います。
次、お願いいたします。
まず、世界の影響を受ける日本の状況について、皆さんこの内容に関しては、新聞等々含めて、いろいろ把握しているところかと思います。世界人口の増加や気候変動、情勢の不安から世界全体の食料不足という中ですけれども、やはりその足元で小売業として一番厳しいところで考えますと、昨今の円安による原材料の高騰であったり、世界全体の話になるかもしれませんが、人員不足による人件費の高騰、それらを踏まえて、全体的に日本の物価高騰が加速しつつあるというところが、世界の中における日本の情勢になっていると思います。
こういった中でお客様のマインドに関しては、経済的な不安が後押ししている状況の中で、やはり経済性を求めた消費行動に移っているというのが小売業で感じる現状です。
次、お願いいたします。
その中で、日本の市場と小売価格というところで、左側が市場の相場価格の年度別の状況になります。輸入牛、国産豚、国産牛を見ていただくと、やはり先ほど前段で申し上げた状況から、20年度と比較すると全体的に相場が上がっているのが見て取れると思います。
ただ、右側の精肉の店頭価格のグラフを見ていただくと分かりますが、もちろん輸入牛は20年度に比べ120%強に売価を上げているという話にはなりますが、この左側の市場価格に対して、なかなか売価を上げ切れないということが実際に現場で起きております。
野菜や魚と比べると、肉は固定生産といいますか、常に肉があるとお客さんはイメージしておりますので、相場の上昇があまりピックアップされない中で、小売業ではすぐに店頭価格をあげられない。そうすると、粗利が取れなくなってしまいまして、なかなか価格転嫁が難しいというのが現状です。
背景として、特に主婦の方々にとって、野菜もそうですが、頻度の高い牛や豚の細切れや、鶏のもも肉が、各競合各社と比較しても値段が分かりやすいというか、すごくお客さんの意識が高いというところが、なかなか値段に転嫁できない要因でもあり、ここが一つの課題であるという状況です。
次、お願いします。
先ほど、輸入牛の市場価格が大きく高騰している中で、輸入牛の精肉店頭価格が一番上がってきているというグラフがありました。そうした中で現在、価格への意識の高さから、輸入牛の売上げが、精肉の小売業界で大きく落ちているというような現状です。
その中で、何が伸びているかといったら、和牛、交雑含めて国内産の牛肉が、売上構成も含めても大きく上がってきているというのが現在の状況です。お客様の心理から考えると、やはり輸入牛はどうしてもバジェット商品ですので、輸入牛を買うに当たって、現在の売価が、お客様が求めている価値に合っていないというところが、国内産牛肉に消費が移っている大きな要因ではないかと捉えているような状況です。
次、お願いいたします。
先ほど言ったように牛肉においては輸入牛から国内産牛肉に消費が移っていますが、一番初めに言ったように、お客様の評価が経済性商品に移っている中で、このグラフでは、各社の4月の畜種別精肉売上状況を、昨年比で比較しています。競合各社から聞き取りしたものですので、整合性は若干ずれることがありますが、ここで見てもらうと分かるように、全体に鶏肉が昨年の売上げをある程度維持しています。逆に、牛肉・豚肉という、鶏肉よりは若干価格が高い畜種に関しては、昨年を割っているか、ぎりぎり昨年と同程度というのがマーケットの状況です。競合各社を含めたマーケットの状況になっていること考えると、やはり安いもの、経済性のあるものにお客様志向、消費マインドが向いているというような状況になっています。
次、お願いいたします。
それを踏まえた小売業の対応ということになります。
これも先ほど言ったように、競合各社いろいろ施策はあると思うんですけれども、一般的に鶏肉はあまり輸入は使っていないと思いますので大きな変化はありませんが、最近では、輸入牛肉・輸入豚肉などの輸入商材のフェイスを少なくして、国内産牛肉や国内産豚肉の売場スペースを変更して、国内産の方に売場の販促や売場の面出をしているのが現状です。
あと一つ大きな特徴ですが、これからシーズンである焼肉が精肉の中では伸びてくる分類になりますが、焼肉もやはり輸入牛肉が今まで中心になっていたのが、なかなか輸入牛肉では価格が取れないということで、牛の焼肉の中に豚肉や鶏肉など、畜種を越えた売場を作ることで、その分類が全体的に高いというイメージを持たせないような売場作りをしているなど、小売では現在、売場作りに変化を与えているような状況です。
次、お願いします。
また、施策の二つ目としては、コロナ禍から始まっていることでもありますが、大型大容量パックの拡充です。こちらに関しては、まとめ買いやストックという形で冷凍肉もありますが、今のお客様の心理から考えると、ディスカウント施策とよく言いますが、大型サイズを通常のサイズに比べて安い形で売り出して、大きな売上げを稼ぐというのが各競合各社で出てくると思います。
また、やはりロングライフということで、なかなか価格に転嫁できずに粗利が取れないのであれば、ロスを削減するということもありますので、こういったロングパックや冷凍肉に力を入れているのも一つの方法です。
また、価値商材のところでいくと、時短・簡便商品です。ここに関しては、弊社もそうですが、各社力を入れて少しでも精肉以外の部分で価値を伝えて粗利を取っていくような施策で儲けているのが現状の状況です。
次、お願いいたします。
その中で、価値という話はしましたが、小売の抱える課題について、鶏肉にしても豚肉にしても牛肉にしても、やはり生産者の方々の知恵や力、生産力によって、日本のお肉が本当にいい商品になってきているのは実際あります。なかなか原料の差別化ができない中で、各社は安心安全や持続可能性への取組を徐々に強化しております。
ただ、その価値をどう伝えるかというのが難しい点があります。こちらのA、Bの商品ですが、右側はJGAP認証の原料でJGAPシールが貼ってあります。右側のJGAPシールを貼っているBの商品を、Aの商品よりも100グラム当たり100円高く設定しておりますが、どちらを購入するかお客さんに問うと、やはりBを買うお客様は多々いらっしゃいます。JGAPや他の持続可能な認証の商品で、どちらを買うかといったときに、Bを選ぶお客様は多いですが、なかなか生産者の思いをお客様に伝え切れていないというところが、自分の中の課題ですし、やはり業界の課題なのかと、私は捉えております。
次、お願いいたします。
イトーヨーカ堂の取組ということで2つくらい紹介させていただきます。国内産の肉に絞って、「顔が見えるお肉。」というものを自社ブランドとして展開しております。これに関しては後段で説明します。
持続可能な取組について、イトーヨーカ堂では、2050年までにホールディングス全体でオリジナル商品で使用する食品原材料に関しては持続可能性が担保された原料を100%にしていくことを考えており、このような形で何らかの商品に付加価値を付けてオリジナリティーを出していく取組もしております。
次、お願いします。
それでは続いて、「顔が見えるお肉。」についてです。やはり安心安全というところもありますが、日本のお肉が安心安全であることはお客様が分かっている中で、そのお客様にほかの価値を伝えるためにどうしたらよいかというところから始まった取組になります。
イトーヨーカ堂では、野菜、果物、肉、魚、米の五つでオリジナルブランドとして、訴求しているような状況です。
内容的には、ホームページ等を使い、生産者さんのこだわりや思い、生産している中での苦労、そういうところをお客様に情報として提供して、生産者の思いを分かってもらう。そうしてお肉の価値を支えていくという取組をしているんですけれども、やはりなかなか伝え切れていないというのが課題になっております。お客様と生産者の距離を少しでも近づけていきたいというところから始まっておりますが、ここを伝え切れていないのが課題になっております。
次、お願いします。
その中で、少しでもそれを伝えていく取組として、2つの好例をご紹介します。右側が顔が見えるチャレンジですね。お客様に「顔が見えるお肉。」の生産者の事を知っていただくイベントを開催しています。あと、JGAPについては、JGAP協会の方にもご協力していただき、お肉だけではなく野菜でも、クイズ形式でJGAPの理解を深めていただくような取組をしております。大体イトーヨーカ堂で扱っている商品は、生活者さんの協力を得て、このようにしっかりとした価値のある商品を売っているという事をお客様に伝えていくことを現在やっております。
あともう一つ、売上げを拡大する施策として、例えば魚や野菜に関しては旬がありますが、肉に関しては2シーズン制、要するに、焼くか煮るのがメインであるとよく小売業界で言われます。その中で、お客様に訴求していくために、このレシピ提案がすごく大事になってきています。若いお客様の話を聞くと、やはり毎晩のレシピを考える、メニューを考えるのが面倒くさいという声をよく聞きます。こういう現状がありまして、メニュー・レシピの提案という売場作りをしています。
昔だと紙のメニューレシピなどを現場に置いていましたが、なかなかお客様が持っていかなかったので、現在はQRコードを使ったり、ホームページやSNSというところから、このお肉を使って、こういう調味料でというメニュー提案をしております。
あと、売場作りにおいても、タレや野菜を一緒に精肉の売場に置くことによって、メニュー提案型の売場を作ることで、価格以外の価値の訴求ができるような形で取り組んでおります。
次、お願いします。
ここで最後になります。いろいろお話ししましたが、施策というのは、やはり日本の小売業だけ、生産者だけ、加工者だけが頑張ってもというのはあるんですけれども、精肉で考えても、生産者がいて、加工者の方がいて、小売があって、お客様がいて、もちろん国にも入っていただいて、全体でこの情報等をオープンしていただいて、肉屋を含む全体を盛り上げていくような構図にしていきたいなと思っています。今回、畜産部会でいろいろ皆さんとお話しさせてもらったり聞いたりしている中で、様々な知恵などをここで学んでいきたいと思っていますので、是非よろしくお願いしたいと思います。
発表は以上になります。ありがとうございました。
〇小針部会長
ありがとうございました。
それでは、御質問等ある方は挙手にてお願いいたします。
前田委員、お願いいたします。
〇前田委員
御説明ありがとうございました。
私は、九州のおへその熊本で養豚をしている前田と申します。よろしくお願いします。
私たちの生産工場でもコストの方は努力はしておりますけれども、本日お話いただいた、小売の抱える課題について御質問がございます。
様々な取組をされていて、ここではJGAPのことが例に挙げられておりますが、私たちはやはり将来を見据えて、様々なことに取り組んで付加価値を付けていく、あるいは消費者のニーズを捉えていったらいいかなと思います。このように、仮に売価が10%上がっても消費者の方に手を伸ばしていただくためには、どういったことに取り組めばよいでしょうか。Z世代が増えていく中で、2、3年後あるいは5年後のトレンドも変わってくるのではないかと思っております。その中で、率直な御意見でいいので、どういうトレンドが来るだろうかということを、参考にお聞きしたいと思います。
また、SDGsであるとか地産地消、アニマルウェルフェア、国産飼料、そのようなものについて、お考えのところで御意見をいただければありがたいなと思います。
以上です。
〇小針部会長
川田委員、お願いいたします。
〇川田様
ありがとうございました。
参考になるかは分からないですが、先ほどお話のあったZ世代を含めて、現在、年配の方や30代、40代の方々より、小学生・中学生の方がやはりSDGsにすごく興味があり、お母さんやお父さんよりも内容を知っているんですね。それを考えると、やはりJGAPなどに取り組んでいった方が、Z世代の人たちが買物する時代になったときに影響してくるのかな思っています。
アニマルウェルフェアはすごく大事なところかなとは思っていますが、小売業、生産者の方も、アニマルウェルフェアに載っているような方法で生産がうまく回るのかというと、やはりなかなか難しいかなと思っているので、地産地消であったり、JGAPやISOなどのHACCP系にしっかりと取り組んでいただければ、小売としても、このお肉に関してはこういうところに生産者の方はこだわっています、取り組んでいますという形で伝えることができるのではないかなと私は思っています。
以上です。
〇小針部会長
ありがとうございました。
ほかに御意見、御質問ある方、挙手をお願いします。
大山委員、お願いいたします。
〇大山委員
神戸大学の大山と申します。御発表ありがとうございました。
小売では特にその持続可能性への意識が高くなっている一方で、生産現場ではまだまだそういうところに意識がいっていないのが現状かなと思っており、非常に参考になるお話だと思いました。
いずれにせよ価値をつけていくことが非常に大事だというお話でしたが、SDGsに限らず色々な方面についても考える中で、今、生産現場においては、牛肉に関しては脂の量はもう十分だということで、いかに質を改良していくか、上げていくかという取組に特に機運が高まっているところです。そういう話は小売のところまでどの程度届いているのか、あるいは、それが小売において訴求ポイントになっていくのかどうかということについて、御意見を頂ければと思います。
〇小針部会長
川田様、よろしくお願いいたします。
〇川田様
現状、牛肉の特に和牛に関しては、A4、A5が多く、マーブリングなんかも良くなっております。実際小売の話を聞くと、お客さんからはやはり赤身志向という声が非常に多く、小売でサーロインなどはなかなか売りづらく、値段の割にはお客さんが買わない。だから、サーロインに関しては値段を下げて売らなければならない状況が若干出てきたのは事実です。
逆に、適度なサシが入っているモモの商品がすごく売れています。生産者さんとしてはやはり4等級、5等級の肉を作った方が価格的にもよい面があるとは思いますが、消費者の方、特に女性の方からは、お肉は食べたいけれども、やはりサシが強過ぎるのは食べられないとか、高齢者の方からは、やはり脂が濃過ぎて胸焼けがしてしまうという声をよく聞きます。
だから、原価の高騰などもありますが、現在おそらく小売業界でお客様に人気がある商品でいうと、肩ロースの人気が出ているとすごく感じています。サシが少し入っていて、赤身もあることが理由かと思っていますが、ただ生産者の方々が4番、5番の等級でBMS10番以上を目指して生産する一方で、お客様からは赤身の需要が高いというところに、実際販売をしている中でギャップを感じることがあります。
以上です。
〇大山委員
その中で、脂の質を高めるという事、つまり、いわゆるしつこくない脂に変えていくという取組を生産現場の方では取り組み出しているんですけれども、そういうものが価値になっていくか、小売においてそういうものに価値が置かれていく可能性については、いかがでしょうか。
〇川田様
そこはかなり価値が出てくると思います。しかし、やはり見た目がいいというか、もちろん真っ赤っ赤よりはサシがきれいに入っているというのは、お客さんにとっては肉の価値だと思っておりますので、脂の質を高めていただく分に関しては、小売としても、お客様にとっても、その需要はかなり高いのかなと、今の話を聞いて思います。
〇小針部会長
ありがとうございました。
馬場委員、よろしくお願いします。
〇馬場委員
JA全中の馬場でございます。御説明ありがとうございました。
今、国産牛肉の中でも特に和牛肉の消費が厳しいと認識しております。生産者の手取りを確保しつつ、和牛肉の消費拡大をするには、先ほど顔が見える販売やJGAP、赤身志向等のお話もありましたが、それらも含めて、どのような方策が有効なのかお聞きしたいと思います。そして、生産者に求められる取組について、御助言を頂ければと思います。
また、輸入牛肉から国産牛肉への移行をすすめられているとお聞きしました。輸入牛肉の高騰もあるかと思いますが、そのほか、輸入牛肉と比べて国産牛肉のどのような点が優位であると感じておられるのか、小売業界のお考えをお聞かせいただければと思います。
以上です。
〇川田様
答えになるかはちょっと分からないですけれども、和牛をどうやって売っていくかということについて、小売業として売上げも粗利も欲しいことを考えると、今、弊社では、和牛に関しては週末やイベントでの仕掛けを強化しております。日本のお客様で考えると、やはりイベントや週末の家族団らんでは和牛の需要がかなり高いのが現状ですが、平日には、和牛をどう売ろうとしてもやはりその価格から、交雑だったり、ほかの企業さんだと、ホルスタインに売りを作るための施策を取っているような状況なので、どこで和牛を使うか、交雑を使うかというところの、めり張りが利いた売場作りを弊社では施策として行っております。
あと、生産者へのお願いということですが、今の自分の立場から生産者の方へこうしてほしい、ああしてほしいというところは特にあまりなく、もっと言えば、現在頂いている質のいいお肉にはとても感謝しています。ただ、生産者さんのこだわりというところに関しては、今卸していただいている生産者さんにもよく話をするんですが、何にこだわっているかを教えていただきたいです。そのこだわりを聞いた上で、弊社もその生産者さんの思いを伝えていきたい。各生産者さんで、しっかりとこだわりを持っているかと思いますので、そこを生産者さんの方に明確に言っていただきたいなというのがお願いになります。
あと、輸入牛に対する国産牛の優位性について、日本人はやはり、地産地消や、それこそ国産に関して、思いがとても強い。人それぞれあるかとは思いますが、味で考えたときに、目隠しして食べると、国産のホルスタイン種よりも、例えば輸入牛のブラックアンガスの方が味が濃くておいしいのが一般的ですが、それを商品名を出して、こっちはホルスタインの国内産の牛肉です、こっちは輸入牛です、と伝えてお客さんに目隠しして食べていただくと、国内産の牛肉をすごくおいしいと言うんですね。全く目隠しして普通に食べて頂くとやはりアメリカ産牛肉の方がおいしいと言うんですけれども。
国内産に関しては、それだけ日本人の思いや安心・安全という面での強さがあるので、輸入牛に比べて、100円、200円ぐらい高い程度であれば国産牛を買うお客さんはやはり圧倒的に多い。先ほど言ったように、今、原価が上がって輸入牛の売価も少し上がっていますので、国産のホルスタイン牛肉と輸入牛、アメリカ産牛肉の売価差がなくなってきており、競合を含めて、国内産に移行しているというのが現状なんですけれども、それほどやはり国産牛の強さ、日本の強さというのがあるのかなと思っています。
以上です。
〇馬場委員
ありがとうございました。
〇小針部会長
それでは、里井委員、お願いいたします。
〇里井委員
とても分かりやすく御丁寧なプレゼン、どうもありがとうございました。
フードジャーナリストの里井真由美と申します。ふだんは食の情報を発信しながら、生産者さんはもちろん、作り手の方や食べ手の立場として分析しながら情報発信する仕事をしています。
すごく単純な質問で大変恐縮ですが、7ページの消費者の精肉購買行動の変化について、購入が牛肉から豚肉、豚肉から鶏肉へ移行した背景には、単純に値段や健康志向など様々な要因があるかと思いますが、どのようにお考えかなというのをまず一つ伺ってもいいでしょうか。例えば鶏肉でしたらどういう部位がすごく人気になっているとかという消費者の行動の変化があれば教えていただきたいと思います。
〇小針部会長
川田様、お願いします。
〇川田様
これも一つの予測になりますが、去年からですが、今年になって特に顕著に表れているのが、輸入牛の相場が上がり、その売価を上げたところから、豚肉の売上げがすごく好調に伸びたんですね。その前に鳥インフルエンザ等々もあり、鶏肉の売価が上がってしまったこともあったと思うんですけれども、顕著に去年の9月ぐらいから、最初、牛肉の売価が上がりました。すぐに影響が出て、豚肉が昨年より110%ほどの価格に伸びまして、豚肉もしゃぶしゃぶとは別に高い商品が売れていきました。今年も豚肉はこのまま調子良くいくのかなと業界的には思っていましたが、3月以降に豚熱などそういった様々な状況もあり、若干豚肉の相場も上がり、次に移ったのが鶏肉でした。なので、先ほど話したように、マーケット的に売価というのは、お客様の活動を見ていますので、売価の上がり方によって、やはり少しでも食費を抑えたいというお客様の背景が多分あるのかなと捉えているような状況です。
鶏肉に関しては、やはり一番人気があり、特にもも肉が一番人気で、売上構成が高いです。その次にムネが人気ですが、モモは圧倒的で、弊社では構成60%ぐらいをモモが占めています。
〇里井委員
なるほど。パッケージ的には例えば鶏肉では400グラムぐらいの大きめのものが売れる感じでしょうか。それとも小さめのパックの方が売れる傾向があるなど、世帯数の変化に伴う大きさの変化もありますか。
〇川田様
もちろん世帯数や店の立地、お店の大きさによるものもありますが、コロナ終息に伴い、まとめ買いの傾向は終わったかと思いましたが、最近では、大型サイズを普通のサイズより10円安くすると、それを買って帰るお客さんがやはり多いです。
〇里井委員
価値観という点でイトーヨーカ堂さんの魅力というのは、もちろん品質も重要ですが、例えば値打ちや家族構成に伴ったパッケージなど、日々お買物される方の生活に合ったものを購入していただけるような対応なのかなと思い、やはり部位やパッケージなど各店舗で様々な売り方が必要になってくるのではないかと思いました。もちろん品質も重要だと思いますが、そういう利便性とか毎日の生活に密着した、みたいなことも重要なのかなと思っています。
あと、余談にはなりますが、私はメディア関係の仕事をしている中で、やはり鶏ムネ肉のレシピ本やヘルシーさに非常に人気が高まっているのを感じます。料理をするとパサついてしまうがヘルシーに食べたいという声から、レシピ本の中では鶏ムネ肉の人気がすごく伸びている状況です。あと、シンプルにモモ肉のソテーというのを、いかに皮をパリッと中をジューシーに焼くみたいなYouTubeが、600万回以上再生されています。メディアの方では、鶏肉について、その二つが非常に大きな動きが背景にあるというのも、一つ情報としてお伝えさせていただければと思いました。
以上です。
〇川田様
ありがとうございます。参考にさせていただきます。
〇小針部会長
里井委員、ありがとうございました。
川田様、今日はありがとうございました。
続きまして、イオンリテール株式会社の青木様より発表いただきますので、事務局より御紹介をお願いいたします。
〇新井畜産総合推進室長
それでは、資料5を御覧いただければと思います。
青木様に発表いただきますイオングループですが、総合スーパーとスーパーマーケットを370店舗展開されております。変化する市場や環境に素早く対応し、新しい価値ある商品を提案することで、お客様の期待を超える満足の提供を目指しておられます。牛乳・乳製品について発表いただきますけれども、牛乳・乳製品においては、北海道牛乳、オーガニック牛乳など、多くの自社のプライベートブランドを展開されております。
それでは、青木様、発表をよろしくお願いいたします。
〇青木様
よろしくお願いします。
イオンリテールの青木といいます。改めて、よろしくお願いします。
本日は、「小売から見た牛乳乳製品の現状」ということで、簡単に説明させていただきます。
次、お願いします。
今日私は初めて出席させていただきますので、簡単に、イオングループについて紹介させていただきます。
私の所属するイオンリテールはイオングループの中に入っております。もう既に御存じだと思いますが、小売業を中心とした企業グループで、イオン株式会社の純粋持ち株会社であり、本社は千葉の幕張の方にあります。
ここに主要なお店の看板を示しております。皆さん御存じだと思いますけれども、ダイエーさんや、まいばすけっと等がグループに入っています。ドラッグ業界の方ではウエルシアさんなどがイオングループに入っているというところです。
次、お願いします。
左側がイオングループの9つの事業です。
私が所属するのは一番上のGMS事業で、総合スーパーと呼んでいますけれども、この中の一つで、衣料、住居余暇、食品、フルラインで置いております。
私が所属するイオンリテールというのは、エリアとしては関東から中四国が担当になっております。営業収益としては1兆9,000億円ということで、イオングループの中の大体20%ぐらいの構成比を占める中核企業です。
北海道や東北、九州にもイオンはあるんですけれども、こちらは一応別会社でやっているような状況になります。
次、お願いします。
小売業、特に私が所属するイオンリテールが取り組んでいる改革について、簡単に説明させていただきます。
商品、サプライチェーン改革ということで、小売業も現在非常に収益が厳しくなってきておりますので、この収益の向上のための取組をしております。
今日は簡単に4つ説明させていただきますけれども、1つは、どの小売業も一緒ですが、プライベートブランド、弊社の場合はトップバリュというブランドですが、こちらの育成を図っております。
それから、2つ目が諸効率の改善ということで、光熱費の削減など、そういうことを今一生懸命会社として取り組んでおります。
3つ目がEC事業です。これもどの小売業も一緒だと思いますけれども、アマゾンさん等店舗を持たない企業が台頭してきておりますので、このEC事業、特にうちの場合はネットスーパーに今力を入れております。
それから、デジタルシフトということで、最近セルフレジが増えてきていると思います。レジ周りや発注、そういうところのAI化を小売業も今進めているところです。
次、お願いします。
ここから、商品の話をさせていただきます。
先ほど説明させていただいたように、弊社は衣食住フルラインで置いている小売業になります。左の方に衣料品、住居余暇、食品、H&BCと書いておりますが、弊社の場合はこの4つの商品ラインに分類をしております。
私が所属するのはそのうち食品で、農産、水産、畜産、デリカーつまり惣菜ですね。あとはデイリーつまり日配品になります。あとグロサリーが加工食品、リカーがお酒という形で、7つのグループに分類して商品管理をしております。
私が所属するデイリーですが、4つのグループに分かれています。
1つが、和日配と呼ばれる豆腐や漬物、こんにゃく、納豆。2つ目が洋日配で、今日説明させていただくヨーグルト、牛乳・乳製品はここに分類されております。それから、今非常に伸びているのが冷凍食品です。アイスクリーム、冷凍食品。これは温度帯が異なるために分けております。それからベーカリー。パン、和洋菓子、常温商品ですね。こういうところが私の担当の商品になります。
下の方に購入率と書いています。2013年と、直近5年間の19年から23年まで示しています。購入率というのは大まかに1,000人来たら何個売れるかということだと思ってください。
ざっくり言うと、和日配は2013年のときに820ぐらい指数があったものが今は680後半となっており、長期的なトレンドとしては非常に落ちております。
乳製品のところです。ヨーグルトはほぼ横ばいという状況です。牛乳はこの10年でやや下がっているというような状況です。生クリーム、バター、チーズ、この辺は横ばい、若しくはチーズは若干上昇しているというような状況です。
それからマーガリンは非常に落ち込みが大きくて、約10年間で購入率が半分に下がっています。
冷凍食品です。皆さんも買われる機会が増えてきていると思うんですけれども、ここ10年で約1.5倍に伸びています。
それからパンはほぼ一緒というような状況です。
長期的なトレンドでいうと、冷凍食品が非常に伸びているというような状況になります。
次、お願いをします。
こちらは乳製品・チルド飲料の自社と市場の動向の数字なんですけれども、左側が売上げで、真ん中が点数、右側が単価になります。
これは、どの商品分類もほとんど一緒なんですが、単価が上がっていますので売上は非常に好調で、前年を大きくクリアできています。問題は真ん中の点数です。右側の単価がやはり1割から1割以上上がっている中で、やはり点数が軒並み下がっているという状況です。ただ、下から二つ目の乳酸菌飲料に関しては、ヤクルトさんのヒット商品が今ありますので、今年も含めて非常に伸びている状況ですが、ざっくり言うと、単価が上がったことによって売上げは数字が取れていますけれども、点数の伸び悩みが小売業の課題というような状況です。
次、お願いします。
こちらは消費者物価指数ですが、私が担当している商品を消費者物価指数で見ると、大体110ちょっとから120ぐらい。やはり原料やコストなど、いろいろな面で上がっていますので、それを売価に転嫁している状況です。
次、お願いします。
こちらは牛乳の点数です。直近1年半ぐらいを月別に示していますけれども、牛乳では直近で2回の価格改定がありました。去年の8月と、その前の年の11月に約10円ずつ、売価でいくと20円ぐらい上がっておりますが、やはり点数という面では、価格を上げた後に落ちております。
ただ、2回目の価格改定である去年の2023年8月の後は、点数が落ち込んではいるんですけれども、1回目ほどの急激な落ち込みはなかったので、ある程度、コストが上がっている分は価格転嫁しなければならないということが、消費者の方にも理解していただいていたのかなと私は思っております。
次、お願いします。
これは、弊社の分類の中なので申し訳ないんですけれども、もう少し細かく牛乳の中でもどのような牛乳が伸びているのかを示したものですが、やはりここ1年ぐらいずっと調子がいいのは、ヘルシー意識もあるとは思いますが、無脂肪の牛乳。牛乳全体が若干落ちている中でも、堅調に推移している傾向が続いています。
次、お願いします。
これはもう少し細かく見たものですが、左上が牛乳の種類別に分けたものです。無調整牛乳が一番価格的には上がっていますが、19年と比較すると、数量も若干ですが伸びています。逆に、乳飲料や低脂肪・無脂肪、先ほど無脂肪は伸びていると言いましたが、これは構成比が低いので、低脂肪の数字に引っ張られてしまいますが、低脂肪乳は落ちている状況です。
左側の真ん中が容量別です。大容量はほぼ1リットルだと思ってください。中容量が500、小容量が200ミリリットルぐらいと思っていただいて結構なんですが、やはり中容量が伸びております。
それから、左下が産地別です。北海道とその他で分けていますけれども、弊社は戦略的に北海道の牛乳を伸ばしていますので、北海道の牛乳は2桁の伸びというような状況です。
それから、右側がさまざまな乳飲料です。これは機能性をうたっている商品が非常に増えておりますが、それを更に細かく分類で分けると、伸びているのは整腸作用をうたっているものや、たんぱく、あと血圧・血糖値、下から三つ目の貧血、こういうところが伸びていて、逆に、上から五つ目の脂肪は直近では少し落ち込んでいるというような状況になります。
次、お願いします。
自社の取組です。先ほど説明させていただいたように、弊社は意図的に北海道の牛乳を伸ばす取組をしております。グラフには2016年から入れていますけれども、弊社のプライベートブランド、トップバリュでも北海道牛乳を作らせていただいて、これを一生懸命販売しているということで、消費者の支持も非常に高く、ここ数年ずっと伸び続けているというような状況になります。
次、お願いします。
それから、最近店頭で見かけるようになったと思いますけれども、A2ミルクや、オーガニック牛乳、こういうものを弊社プライベートブランド等で発売させていただいています。こちらの方も、非常に価格は高いんですけれども、一定のお客様の支持をしっかり得ていて、点数が伸びております。
次、お願いします。
消費拡大策ですが、弊社もいろいろと取組をさせていただいていますので、簡単に紹介させていただきます。
一つが北海道の牛乳を伸ばすということで、ホクレンさんとマストバイキャンペーンやホクレンフェア等々させていただいて、コロナのときはできなかったんですけれども、対面販売をすることによって、北海道の乳製品・牛乳を意図的に拡販する取組をさせていただいています。
それから、電子クーポンとしてアプリクーポンの配信を特に夏場や冬場、消費の落ち込む夏休みなどに、行うことで点数を伸ばす取組で、需給になるべく対応するということもさせていただいております。
それから、牛乳の消費拡大策として、飲用だけではなくて、料理フェアということでレシピをQRコードで紹介して、先ほど川田委員からもありましたけれども、今日の献立をどうしたらいいのか困っている主婦が非常に多いと聞いておりますので、料理提案等の取組も弊社でもさせていただいているところです。
次、お願いします。
それから、コラボ商品です。パン屋さんと牛乳メーカー、乳業メーカーさんなどとコラボをしたりしていますけれども、弊社としてもそういう取組をしっかり応援しようということで、マネキンさんに来てもらって試食をしていただくというような宣伝販売の取組も、メーカーさんと一緒になってさせていただいています。
それから、北海道フェアということで、年4回程度、北海道の乳製品を中心にしっかり売場を作って、お客様に提案するという取組も定期的にさせていただいております。
それから、「従業員のおすすめベスト50」ということで、トップバリュの北海道牛乳、これが売上げ的には私の担当の中でも一番大きい商品になりますが、こちらをこのような取組で紹介させていただいています。
あと7番目、これは大型店でしかできていませんが、特に夏休み等に酪農家の方に来ていただいてイベントをさせていただいています。これは去年ぐらいからまた再開させていただいきまして、非常にお子様に人気で、御家族の方がこれを目当てにわざわざ来ていただくということも聞いております。
こういう取組をしっかり行って牛乳の消費拡大に取り組んでいるということで、7つほど簡単にご紹介させていただきました。
私の方からは、非常に簡単で恐縮ですけれども、以上になります。
〇小針部会長
ありがとうございました。
それでは、御質問等ある方は挙手にてお願いいたします。
馬場委員、お願いいたします。
〇馬場委員
全中の馬場です。御説明ありがとうございました。
イオンリテールで伸長している商品として無調整牛乳、中容量、北海道と挙げていただきましたが、その伸長している要因についてどのように分析されているのか、改めて教えて頂ければと思います。北海道についてはしっかりブランドを推し進められているのが要因かと思いますが、無調整や中容量がなぜ伸びているのか教えてほしいと思います。
もう1点、北海道と併せて都府県も、しっかりと牛乳の販売を拡大して、生産基盤の拡大を図ることが重要だと考えておりますが、都府県を産地とする牛乳の伸長に向けてはどのような方策が有効なのか、小売業界の立場から御助言を頂ければと思います。
以上です。
〇青木様
ありがとうございます。
無調整牛乳が伸びているのは、やはり味がしっかりと支持されているのかと思います。私の会社でもやはり調整牛乳や乳飲料も販売しており、そちらよりもやはり価格は高いですが、無調整牛乳が支持されているというのは紛れもない事実ですので、今後も点数的には少し厳しいのかもしれませんが、売上げは伸びていくのかなと考えています。
それから、中容量が伸びているのは、やはり単身の方が人口的にも増えているというところと、牛乳を1リットル買うと200円を超える時代も来ていますので、買いやすい中容量が伸びているのかなと考えています。
それから、、2019年でしょうか、都道府県で牛乳が一時なくなった後に、やはり北海道産牛乳をしっかり売らないといけないということで、意図的に北海道を伸ばしてきましたが、決してそれ以外の牛乳を売っていないわけではなくて、弊社の売場を見ていただければ分かると思いますが、しっかり今は地元のメーカーのものも並べさせていただいております。都府県の牛乳をどのように売り込むのがいいのかというところですが、やはり差別化していただけると一番いいのかなと思います。あとは、先ほどもお話しいただきましたが、地産地消をうたうというのも非常に重要なのかなと思います。今日、机に「べこの乳」があります。殺菌法を少し差別化されていると思いますが、このように差別化されたところも含めて、地産地消であるとか、ほかの牛乳とは違うよというところを、お客様にパッケージも含めてアピールしていかないとやはり厳しいのかなと感じております。
すみません、ちょっと答えになっていないかもしれないですけれども、以上です。
〇馬場委員
ありがとうございました。
〇小針部会長
石田委員、お願いいたします。
〇石田委員
ありがとうございます。神奈川で酪農やっております石田と申します。御説明ありがとうございました。
御質問なんですけれども、先ほどA2ミルクが近年伸び始めているといったことが御説明にありました。弊社もA2ミルクの可能性は感じておりまして、遺伝子レベルでの改良については、A2の遺伝子を持つ飼養牛を優先的につけている最中で、チャンスがあればオリジナルのA2牛乳の生産ができればと思っています。一方で、疑問に思っているところとしては、おなかに優しいA2ミルクだよということで、果たしてそれによって、牛乳が苦手な人が、購入するお客様のニーズがどれぐらいあるのかなというと思っています。おなかが緩くなった経験が過去にある方がじゃあ大丈夫そうだから牛乳を飲もうかなというようなインセンティブを与えられるほどA2ミルクのブランド力があるのか。購入するお客様についても、牛乳が苦手だけれども買って飲みたいな、おいしくて大丈夫だったから飲み続けようという方がターゲットなのか、もともと牛乳が好きで、A2ミルクはよく知らないけれど体に良さそうだなというニーズで人気が出ているのか。どのようなイメージでしょうか。
〇青木様
ありがとうございます。
弊社も3月から取扱いをさせていただいており、私ども以外のスーパーでも大分見かけるようになってきておりますが、私の実感としては、やはり牛乳を飲みたかったけれども、ちょっとおなかの体調で不安のある方がトライアルで一度飲んでみて、それで実感をして、もう一度購入しているという傾向が見られるのかなと考えています。
私も気になって、このA2ミルクの実績を拾ってみたんですけれども、単価的にはかなり高いですが、点数は伸びてきています。先ほど説明した購入率、PI値と私たちは呼んでいますけれども、この数字も月を追うごとに伸びてきていますので、リピーターの方がついてきているのかなと感じております。
ただ、薬事法の関係とかで、効果をうたいたいけれどもうたえないという面がありますので、消費者の方に少しずつでもいいので浸透していけば、もう少しパイも大きくなってくるのかなと考えています。
ただ最近、テレビでもNHKさんとかでも応援していただいていますので、少しずつ消費者の認知が広がってきているのかなという実感は私の方も感じております。
〇石田委員
よく分かりました。ありがとうございます。
〇小針部会長
椛木委員、お願いいたします。
〇椛木委員
北海道の十勝で酪農家をしています椛木と申します。今日はいろいろとお話をありがとうございました。
生産者として普段生産していると、ここ数年でやはり消費が落ちているのかなと自分たちの認識の中で思っていたんですけれども、今日の御説明で、そこまででもないのかなというところを実感できたのは、自分の中でもすごく励みになるなと思いました。
そして、販促の活動をイオンさん自らたくさんやられているということで、私としても、生産者の声を聞いてほしいだったり、現場を見てほしいというのはよく思っておりますので、そういった活動を積極的にしていただきたいし、北海道に行ってみるような、何かそういったことを企画していただけたら私も御協力したいなという気持ちになりました。
こんな質問をしていいかどうか、少し失礼な質問かもしれないんですが、私たちもふだんスーパーに行って牛乳の売場に行くと、いつもたくさんの牛乳が並べられていますが、全部売り切れているのかというところが、少し気になるというか、いつも常に品物があるのはいいなとは思いますが、それを売り切れているのかなというのが気になり、質問させていただきます。
〇青木様
ありがとうございます。
牛乳のロス率というか、値引き率は、正直それほど高くないです。これは乳業メーカーさんの頑張りももちろんあり、賞味期限も少しずつ長くなってきていますし、小売業でも、先ほどご紹介したようにEC化、デジタル化などいろいろやっておりますが、発注の方法においてもAIを使ってAIオーダーという事もしており、発注の精度も少しずつ上がってきています。牛乳は決してロス率が非常に高いカテゴリーではありませんので、御安心していただきたいなと思います。
〇椛木委員
ありがとうございます。
〇小針部会長
小椋委員、お願いします。
〇小椋委員
北海道の小椋です。よろしくお願いいたします。遅れてきて申し訳ございません。
青木部長の方からイオンさんの取組、また牛乳・乳製品の独自販売を含めて、お話しいただきましたが、昨年、一昨年と原料乳の値上げをさせていただきました。それに伴い売価、店頭価額も値上げされたというお話が先ほどありましたが、やはり生産者からすると経費が上がっております。当然経費が上がった分、販売価格に転嫁をしなければ我々生産者は生活、経営ができませんので、現在このような状況になっております。この値上げをすることによって、先ほどの図にもありましたが、消費者の皆さんがこの価格転嫁を現実に認めていただけるのか、理解されているのか、そのことについて、まずお伺いしたいと思います。
〇青木様
先ほど乳価が2回上がったというグラフを出させていただきましたが、やはり1回目のときは点数がかなり落ち込みました。一方で、2回目のときは、言い方が悪いかもしれませんが、消費者が値上げ慣れしてきたのもあると思いますし、実際に様々なコストが上がっているということを、消費者も理解していただいたのかと思うんですけれども、さほど点数が落ちませんでした。これはやはり、乳業メーカーさん等々の協力ももちろんありましたが、消費者の理解が得られたのは事実かなと考えています。
ただ、牛乳にもライバルの飲物が多くありますので、余り上げ過ぎてしまうとそちらに取られてしまうということも事実だと思います。やはり適正価格で、上昇した分は適正な形で転嫁していただき、それを消費者の人にしっかり理解していただくということ、小売業は一番消費者と接点を持っていますので、そういうところで丁寧に伝えていけばいいのかなと考えています。
〇小椋委員
適正な価格というお話が出ましたが、適正な価格というのはどの辺のラインを指すのでしょうか。
〇青木様
難しいです。
うちで一番高い牛乳はオーガニック牛乳で、498円で売らせていただいていますが、それはそれで一定のお客さんはついています。先ほどのA2ミルクも300円台で売っていますけれども、これも一定のお客様に買い続けていただいています。
一方で、ディスカウントストアへ行くと、まだ100円台の牛乳を見かけることがあります。それはそれでお客さんは、安いのが良くて買っていると思うんですよね。
だから、適正な価格を一概に説明するのは非常に難しくて、いろんな消費者の方がいますので、そのお客様に向けて正しい情報を正直に発信していくということが必要なのかなと考えています。
すみません、ちょっと答えになっていないんですけれども、以上です。
〇小針部会長
青木様、ありがとうございました。
続きまして、伊藤ハム米久ホールディングス株式会社の宮城様より発表を頂きますので、事務局より御紹介をお願いいたします。
〇新井畜産総合推進室長
それでは、資料6を御覧いただければと思います。
伊藤ハム米久ホールディングス株式会社様ですけれども、食肉や食肉加工品の製造、加工、販売などを行っております。食肉輸出に関しましても、1998年の香港向け和牛を始めとして、世界各国への輸出に取り組んでおられます。2015年には海外輸出部専門部門として輸出推進部を設置されるなど、牛肉輸出拡大の取組に積極的に取り組んでおられます。
それでは、宮城様、御発表をよろしくお願いいたします。
〇宮城様
御紹介あずかりました伊藤ハム米久ホールディングスの宮城です。発表させていただきます。
本日は、我が社における牛肉輸出の現状と課題というテーマで発表させていただきます。
次、お願いいたします。
まず、弊社の簡単な概要ですが、数字的なところはこちらに書いているとおりで、本日は輸出という部分に特化して説明させていただきます。弊社の名前に伊藤ハム若しくは米久という名前が付いておりますので、どうしても皆様はハム・ソーセージメーカーというイメージはぬぐえないと思いますし、実際ハム・ソーセージメーカーをそれぞれ子会社に持っている会社ですが、こちらの事業内容に書いておりますとおり、そのハム・ソーセージメーカーも含めて、食肉の加工品の製造及び販売、食肉の製造及び販売、その他のものの販売を行うグループ会社全体を管理して、一切の業務を行っているのがホールディングス会社でございます。
ただし、例えば伊藤ハムにおきましても、こちらに書いています、「食肉の製造及び販売」、いわゆる食肉のインテグレーション、牛や豚を育てるところから、それらの牛や豚をお肉にして販売する、若しくは輸出まで行うという一連の食肉に携わるインテグレーションの方も弊社の方で展開しております。
その中で、牛肉の輸出に本日は特化しておりますが、こちらに輸出の実績を書いておりますとおり、23年度で600トン強となっており、主に和牛を世界各国に輸出しているのが現状でございます。
次、お願いいたします。
我が社グループにとっての輸出ビジネスの重要性というところで、まず、牛肉輸出の出発点に至るまでの簡単な経過ですが、随分昔から日本の人口というのは、2010年頃をピークに、それ以降どんどん人口が減っており、それと同時に、高齢化率が反比例して上がっていくというところで、弊社が主力として扱っている食肉及び食肉加工品においては、単純に製品が売れなくなっていく国内市場の規模の縮小と、高齢化率が増加することによって動物性たんぱく由来の製品がやはり売れなくなっていくという、この二重の危機感が輸出ビジネスへの取り掛かりであり、それをやっていかないと弊社グループは生き残っていけないという危機感が、輸出ビジネスのスタートでございました。その中で、やはり食肉の加工品よりも食肉自体の輸出の方がハードルが低いということもございまして、まず、先駆けとして牛肉の輸出からスタートしております。
2015年、今から9年前ですが、輸出の専門部局も立ち上げ、同時に弊社でインテグレーションで生産した和牛をオリジナルブランドとして付加価値を付けて世界各国に売っていくというところで、約20年の歴史を積み重ねてきました。その中で、輸出部門は、当初の予定をはるかに超え、食肉部門の中でも大きなビジネス規模及び影響を及ぼす一翼を担う部署に発展したということで、我々が輸出に取り組んだことは間違いではなかったなという結論に現状はなっております。
次のページ、お願いいたします。
今まで取り組んできた中で、本年、2024年度時点での更なる牛肉の輸出拡大に向けての我々の取組の一例を御説明させていただきます。
まず1点目ですが、数年かけて我々、次なる牛肉輸出の製造工場拠点を青森県の方に建設してまいりました。おかげさまで、本年の3月に完成、稼働開始という形になりまして、現在、こちらの工場で各国への輸出認可の申請をさせていただいております。
弊社は、鹿児島県に既に20年近い実績を持つ輸出の工場があり、南日本の輸出の拠点であるとともに、南日本の畜産の振興には大きく貢献してきた実績もある一方で、やはり鹿児島まで生きた牛を運ぶというのは非現実的でございますので、なかなか北日本・東日本の牛肉を輸出するにはハードルが高いということございました。しかし、現在輸出認可を申請しております青森県の十和田ビーフプラントが輸出可能になれば、北日本の和牛も世界に向けてどんどん販売できるということで、日本全体の和牛の畜産の振興に貢献できる、そして、日本全体の牛肉輸出の拡大にも貢献できると。加えて、その地域の雇用にも貢献していくということで、新しい我々の工場が全ての面において経済的な歯車を回していくことを期待しております。
ただし、牛肉輸出に関しても課題がたくさんございます。その中で、大きな課題の一つは、やはり外国に売れる牛肉の種類が、今まで、いわゆるステーキによく使われますロースというお肉に偏っていることでした。ただし、日本全体の輸出量を伸ばしていくこと、輸出金額を伸ばしていくことは日本全体の課題でもございますので、我々はこの課題に果敢に取り組むべく、ロース肉以外の部位を販売拡大していくために、様々なPR活動を行ってまいりました。ただやはり、これはこの先のことにも関わっていきますが、外国のお客様に日本の価値観をそのままぶつける、啓蒙していくだけでは販売輸出の増加にはつながりにくい面も多々ございます。そういう意味合いで、やはりお客様目線で、使いやすい商品にまで落とし込んだ形での輸出というものは必要不可欠になってまいりました。
そちらを実現するために、既に輸出実績のある鹿児島県の工場の中に、ポーションカットといいまして、焼肉カットや薄切りに加工し、トレーの真空パックにした商品として輸出することが可能なパックセンターを、輸出認可も含めて建設申請し、稼働を開始しております。こちらの商品を輸出拡大することによって、更なる輸出金額の増大を図ってまいります。
あと、これは海外における輸出の和牛の市場の課題ですが、弊社も含め、日本の企業が和牛を各国で売る際に当たって、まずは現地に在住されている日本人の方々が経営される会社に販売をお願いして売り込むということが一番ハードルが低いです。ただし、その企業数、ネットワーク等々は限界がございます。そういう意味合いでは、我々の和牛が本当に各国に浸透できていないマーケットというのはまだまだたくさんございます。
ただし、そのマーケットに入り込むためには、現地のマーケットをよく知る現地の卸、現地の流通等々の会社に入り込むことが必須でございます。そのために我々としては、日本人ではなく、そういう市場に精通した現地の営業マン、現地の販売員を積極的に雇用して、現地での販売の深みに入っていく、面を広げていくというような活動を昨今スタートさせております。そういう形で、現地での販売ネットワーク、販売チェーンを広げていくことも、拡大のための大きな取組の一つとして掲げております。
あと、そのためには、行政の皆様から毎年支援をいただいています輸出拡大支援事業にも積極的に参加しまして、現地のお客様とのネットワークを構築・強化することに有効利用させていただいております。
次、お願いいたします。
現在我々が抱えている牛肉輸出での課題というところですが、まず、畜産業界全体において、弊社も同様に、現場での生産・製造を持っておりますので、その現場施設で働いていただく労働者や後継者不足というのはやはり深刻な問題になっていて、なかなか簡単には解決しない課題となっております。この辺りはもう既に一企業の努力では限界に達しているかなというところがございますので、皆様の御協力も改めてお願いしたいなというところでございます。
あと、先ほども述べましたが、今まで牛肉輸出というのは確実に拡大してまいりましたが、やはり数々の課題が出てきていて、少し踊り場といいますか、新しいことをしなければ次のステップに進めないような段階に来ているかと思います。我々も今までの牛肉輸出のビジネスモデルは、維持はしつつも依存はせずに、今までになかった新しい牛肉の輸出ビジネスモデルを創造・拡大して定着させることが必要だと思っています。
そのためにも、海外販売での営業マンの雇用と現地での販売チェーンの構築の確立ということも一つですし、新しい商品、普通の塊のお肉ではなく、封を開けたらすぐ食べられるようなポーションカット製品などといった海外の顧客目線に立った商品の開発提案も必要だと思っています。
あと、商品だけでなくブランド、こちらの方も海外のお客様に魅力を感じていただけるように日本の目線ではなくて、海外のお客様に自然と買いたいと思っていただけるような価値観、世界観を持ったブランドというのを、やはり作っていかないといけないかなとも感じております。
あと、環境対策にも配慮しつつ、我々の牛肉販売拡大にもつながるような、効率的な創意工夫をどんどん積極果敢に取り組んでいくこと。商品の積載効率を上げていくためにも航空便よりも海上便を利用したり、包材を可能な限り共通化していったりと、無駄を省く、ロスを省くといった取組が非常に必要になってくるかなと思っております。
あとやはり、これは我々グループだけでなくて日本全体の牛肉輸出を考えた際に、施設はやはり、よりいいもの、より新しいものをそろえていき、輸出認可をたくさん増やしていけば、牛肉輸出は確実に拡大に向かうのではないかと思っております。その先駆けとして我々も十和田の方に新しい施設を造りましたし、今後もその辺りは模索していきたいなと考えております。
次、お願いいたします。
こちらは、政府等への期待事項と書かれていますが、まず、当たり前ですが、牛肉輸出可能国を今後も増やしていただきたいという点でございます。
次に、正に毎日毎日輸出の業務は滞りなく進めておりますが、これは弊社だけではなく、輸出に関わる業者の皆様が思われているかと思いますが、輸出に関わる手続、書類等はまだまだ非常に煩雑で、デジタル化できていない部分が多くございます。それがゆえに、やはり時間が掛かったり、トラブルのもとになったり、コストが掛かったり、無駄が生じることがございます。この辺りをやはり一歩ずつ改善していただければ、更なる牛肉輸出への後押しということも見えてくるかなと思います。
あと、市場としましては、やはり昨今、ハラル市場が注目されておりますし、実際、ハラル市場への輸出が伸びております。ただし、統一化の部分や煩雑性の部分でまだハラル市場に輸出できる認可のハードルが若干高いというところも現実問題としてございます。その辺りを円滑に参入できるように、いろいろと働きかけいただければなと考えております。
あとは、政府目標もありますが、環境というのは毎日毎日、月を追うごとに、年を追うごとに変わっておりますので、その辺りもやはり世界の情勢をにらみながら、柔軟な目標設定の対応もしていただければなと考えております。
あと最後に、先ほどのハラル市場と同様にEU市場というのも、既に重要な市場になっていますが、EUの市場というのは重要な市場であると同時に、非常に規制ルールが厳しく、ハードルの高い市場でもございます。これから先も益々、今の日本の中ではハードルが高いなと思われる決め事、交渉事等々が始まっていくと聞いておりますので、この辺りの輸出に余り影響が出ないような解決といいますか、交渉をよろしくお願いしたいと考えております。
次、お願いいたします。
最後になりますが、弊社がこの先も目指す輸出ビジネスですけれども、先ほど御説明しました青森県の牛肉を輸出できる新しい工場の建設、稼動開始が本年ですが、これを我々は、更なる輸出ビジネス拡大の転機と捉えております。同時に、いよいよ我々、社名にも付いていますハム・ソーセージに代表される加工品、加工食肉の方も輸出をしていくことも輸出ビジネスの転機と捉えております。もちろん精肉も拡大していきますが、加工品も総合的に更に輸出に取り組み、まだまだ大きくなる世界市場に向けて我々は攻めていくというふうに捉えております。
今日の発表は以上になります。ありがとうございました。
〇小針部会長
宮城様、ありがとうございました。
それでは、御質問等ある方は挙手にてお願いいたします。
大山委員、お願いします。
〇大山委員
御発表をありがとうございました。神戸大学の大山と申します。
伊藤ハムグループさんは、2006年から輸出を着手されたということで、国内の状況を見れば、多分BSEが発生してしばらく経ったぐらいの非常に厳しい時期に取り組まれてきたのかなという点で感慨深いというか、非常に先見の明を持たれてやってきたんだなというふうに理解いたしました。今日のお話の中で、例えば輸入相手国の多様なニーズという言葉であったり、あるいは海外顧客目線でのブランドであったりというような、そういうようなキーワードをお話しいただいたと思いますが、具体的にどういうものを想定していて、どういうものが重要になっているとお考えでしょうか。
〇宮城様
様々な点で、海外からのお客様のニーズというのは、我々と異なる部分がございます。
例えばブランド名とか、そのブランドでうたえることというのも、日本的な何か特徴を我々はアピールするんですけれども、海外の方々がイメージできないこと、海外の方々が同意できないような日本的なことは言っても響かないので、そのブランドを最終的にはあまり魅力と感じていただけないということがございます。翻って、日本としてはあまり重要ではない、ささいなことでも、海外の人に刺さるものがあれば、そのブランドや商品というのは、自然と海外の方から非常に価値を感じていただける。
海外用の商品には、文化の違いとか世界観の違いというところをうまく取り込んで、理解して、当て込んでいくことが重要ではないかなと感じております。それは、お肉自体だけではなくて、商品形態や表示、ラベル、箱、とにかく輸出するものに関わる全てにおいて、その海外目線、海外の事情、海外の都合というのを取り組めば、あちら様は価値観として認識してくださるというところを早く取り入れれば取り入れるほど輸出拡大につながるのではないかなと考えております。
〇大山委員
であれば、かなり幅広いブランドというか、幅広いところに可能性があるということだと思うのですが、例えば生産者が何かこう取組んでいるようなこともブランドとして、あるいは海外の人に刺さるものとして、やはりあり得るのでしょうか。
〇宮城様
十分あり得ると思います。
〇大山委員
そうなったときに、なかなか生産者一人一人がそういったことに取り組んでいくことができるのかどうか。例えば、海外から輸出してくるお肉屋さんでは結構多いと思うのですが、農家にとってかなりリスクになるかもしれないですけれども、極端な話、輸出を専門にやっている農家さんという位置づけ、日本の農家もそういうふうに、例えばこの地域にこういう形で輸出するためにやっていく農家とか、そういうものがあるというのはいかがでしょうか。
〇宮城様
地域に特化するのがいいかどうか分かりませんが、世界目線で、世界の輸出市場に向けて作る牛に特化するという部分では、いい着目点かなと思います。例えばアメリカだけとか、そこまでは絞らなくていいと思いますが、日本ではなくて海外のお客様に認めてもらえることをやる牧場・農場という切り口でのビジネスモデルはありかなと思います。
〇大山委員
ありがとうございました。
〇小針部会長
小椋委員、お願いします。
〇小椋委員
北海道の小椋です。よろしくお願いします。
今ほど宮城部長さんの方から伊藤ハムさんにおける輸出の事業内容についてお話しいただきました。、青森県に自社工場を造って輸出拡大に向けた動きをされているというお話を聞きましたし、昨年610トンの肉を輸出したという実績もお話頂きましたけれども、前回の畜産部会のときもお話ししましたとおり、やはり輸出を取り進めるというのは、と畜場の衛生条件等々や国に対する要望・要請、衛生条件が整わなければ、幾ら輸出を考えても相手国に受け入れていただけないといった国対国の問題もあります。いかに衛生条件が整ったと畜場を国内で幅広く造っていくかというのが、更なる輸出の拡大につながるのかなと思いますし、また、そういう衛生条件をクリアしながら、伊藤ハムさんとしては、今現在の輸出の実績に更なる輸出拡大というものを考えていると思うのですが、将来的に部長としては、どれだけまだマーケットがあるという認識をお持ちなのか、お聞きしたいと思います。
〇宮城様
どれだけマーケットがあるか、数値的にはなかなか難しいとは思うのですが、先ほど少し御説明しましたように、既に輸出実績がある国ですら我々日本の業者がまだまだ行き切れていない現地のマーケットというのは数多く残っていると思います。
あと、部位的にも、徐々には広まっていますが、まだまだ輸出はロースに偏重しています。このロースに偏重している部分を、ロースの部分は減らさずにほかの部位にまで広げていけば、その分、マーケットは広がると思います。
数字でなかなか示すことはできないと思いますが、正直、輸出市場は底がないビジネス規模を持っていると私は認識しております。
〇小針部会長
ほかに御質問ある方、いらっしゃいます。
小山委員、お願いします。
〇小山委員
繁殖和牛を飼っております小山と申します。ありがとうございます。
今お話をお聞きして、例えば神戸ビーフとか銘柄牛を食べてみたいなど、そういった理由で輸出してほしい、輸入したいという要望はあるのでしょうか。それとも、先ほどお聞きしたように、いろんな部位とか、カットによってどこの県の牛でも、肥育牛でも、今後チャンスがあるということなんでしょうか。
〇宮城様
ありがとうございます。
まず、いわゆる、神戸牛でありますとか一部の有名和牛というのは、それこそ車のBMWや化粧品のイブ・サンローランみたいなものです。確実に皆様に伝わっているブランド名で、海外でも食べていただいている和牛というふうに認識していただいていいかと思います。
ただし、ちまたにあふれる車や化粧品もそういった名前だけのものではないと思いますし、お客様目線で価値観を感じていただけるものに関しては、いわゆる生産地の都道府県とかそういうことではなくて、育て方や餌、特色などといったところで価値を見いだしていただいて、付加価値として認識していただけるチャンスは無限にあると思っております。
〇小山委員
よくストーリーを付けて物を売るという感じでしょうか。
〇宮城様
正にそうだと思います。そのストーリーを作っていくというよりも、お客様がいいなと思っているようなことを見つける。それはもう既にあるかもしれません。我々がささいだと思っていることでも、お客様が「いや、これ面白いね」と感じるようなことを拾えれば、それをうたい文句にストーリーにすれば、それが価値観になると思いますので、そこはお客様とのコミュニケーションだと思います。
〇小針部会長
宮城様、ありがとうございました。
続きまして、株式会社前田牧場取締役の齋藤様より発表いただきますので、事務局より御紹介をお願いいたします。
〇新井畜産総合推進室長
それでは、資料7を御覧いただければと思います。
株式会社会前田牧場様ですが、栃木県大田原市で、交雑種と乳用種を合わせて2,000頭以上飼養する肥育経営を行われております。また、米や麦、大豆、野菜の生産も行う複合経営となっております。粗飼料に関しては自社及び近隣の耕種農家との連携により100%を調達されており、堆肥の販売などにも取り組まれておるところです。
それでは、齋藤様、御発表をお願いいたします。
〇齋藤様
株式会社前田牧場の取締役・管理獣医師をしております齋藤と申します。本日はどうぞよろしくお願いいたします。座って失礼します。
スライドをお願いします。
まず、私どもの会社につきまして、簡単にお話をいたします。
株式会社前田牧場と申しまして、栃木県北部の大田原市にあります。代表の前田昭は私の父でございます。私で4代目の農家でして、株式会社化して17年目となります。私自身は入社して11年目です。
従業員数について、役員等々5名おりまして、従業員が33名ほど。牧場部門、農業部門、販売部門、販売部門はちょっと小さいんですけれども、そういう形で部門を分けて運営しております。私と夫が牧場で、父と母が農業部門、姉が販売の管理をしているという家族経営の牧場でございます。
牧場部門では、ホルスタイン種去勢及び交雑種、大体2,350頭を飼養しております。
飼料作物は26ヘクタールとありますが、これは自社分で、ほかにWCSの収穫受託と、稲わらと堆肥の交換が大体35ヘクタールぐらいあるという状況です。
次、お願いします。
次に、牧場のある栃木県大田原市の立地状況を御紹介いたします。
まず、大田原市は全国的に見ても田んぼの面積が多くて、隠れたお米の産地となっています。雪も余り降らず、秋に風が吹くので稲わらがよく乾いて、いい稲わらを回収することができます。従来より、結構昔から耕畜連携が自然と行われてきたような地域であります。
次に、大田原市の隣に那須塩原市というところがあるんですけれども、こちらは北海道に次ぐ生乳生産量がありまして、たくさん子牛が生まれております。私の会社で肥育している牛は全て、生乳生産の言わば副産物として、酪農家さんで生まれた子牛です。和牛の素牛の有名な市場が、矢板にございますが、交雑種やホルスタインを扱う市場が那須塩原市にございまして、これが牧場から20分程度の場所にあります。
さらに、県境には八溝山系の山々が広がっておりまして、ここの製材所から出る杉の木の皮、バークやおがくずを私どもでは牛舎の敷料として利用しております。
この図を作りながら、私どもの牧場は地域の副産物を活用して運営しているなと感じたところであります。
次のスライドをお願いします。
このような状態で堆肥を上手に作って田畑に還元させれば、生産物を生み出しながら地域で資源が循環していく循環型の農業が成立するという図式かなと思っております。
次のスライド、お願いします。
ごく一部でありますけれども、私どもで精肉を自社で販売をしております。「前田牧場の赤身牛」として、大田原市のブランド認定を頂いております。
また、自動販売機の設置ですとか、バーベキュー場、あと、農業体験の受入れですとか、堆肥をペレット化したりですとか、いろんな取組を行っております。
このように私たちは、牛のお世話をしつつ、牛にお世話になりながら、農業のすばらしさを体感する日々を送っておりました。
しかし、2015年に国連サミットで持続可能な開発目標の採択、また、2017年国連総会で指標の採択などがされて以降、主にメディアを介して、牛は環境に悪いですとか、牛肉を食べるなですとか、そういう風評を耳にする機会が増えてまいりました。
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この円グラフは、2022年度の日本における温室効果ガス排出量の内訳です。
私はこれを見まして、畜産由来の温室効果ガスの排出量は日本全体から見ると決して多い数字ではないじゃないかと正直感じたところではあったんですけれども、でも、次に考えましたのは、飼料の多くを海外に依存している日本の牛肉は、やはりライフサイクル全体の排出量を見ると、これよりも多くなるだろうということは明らかだなと思いました。
メディアの見出しには牛は環境に悪いといった短絡的な文章が並びますし、SDGsという概念についても、私たちが知るより先に子供たちが学んできています。それまでは、牛を飼うことで人間が利用できない資源を良質なタンパク質に変えて、堆肥も供給してと、世の中にいいことをしてきたつもりでありましたけれども、手のひらを返すような風潮に、ちょっと背筋が寒くなるような思いがしたのが正直なところです。
胸を張って牛飼いを続けるために、何か少しでも私たちできることはないのかなと考えていた矢先に、栃木県の畜産酪農研究センターさんから、GHG削減を目的とした飼料の実証試験先を探していると御連絡を受けました。
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その試験飼料が、このアミノ酸バランス改善飼料というものです。飼料中で不足しがちなアミノ酸を補って、アミノ酸レベルでバランスを整えることで飼料効率が上がり、たんぱく質原料の配合割合を減らすことができる。その結果、無駄な窒素排出量が減って、堆肥から排出するGHGを削減できるという飼料です。豚や鶏の飼料については、このようなコンセプトで作られている飼料が既に流通しているものです。
今回の飼料は、牛にとっての必須アミノ酸のバランスに着目しています。具体的には、大豆かすをトウモロコシとアミノ酸に変えています。これにより飼料中のたんぱく質を2%ほど削減しています。
また、牛の場合は、リジンをそのまま給与しても第一胃の微生物に利用されてしまって牛本体に届きませんので、脂でコーティングして腸まで届くように加工したバイパスアミノ酸を用いています。
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この飼料の給与試験は既に基礎的なものが行われておりました。農研機構さんでは増体や枝肉重量に差がないこと、窒素排泄量が削減されること、栃木県畜産酪農研究センターさんでは温室効果ガス発生量の削減を既に確認されておりました。
こういった結果が出ていたので、ほぼ不安なく取り組めたと思います。私たちの牧場で行う試験は、より多い頭数で、実際の畜産農家の飼育環境において生産性に影響がないかを確認することが目的でありました。
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試験では、実際の牛舎内の2つのペンを使用して、期間は出荷前の6か月間としました。試験に用いるアミノ酸バランス改善飼料は、現状与えている飼料をもとに設計をしていただきました。
ただ、私どもは通常ペレット状にした飼料を給与しておりました。試験飼料は脂でコーティングされたバイパスアミノ酸を添加するという都合上、ペレット状に成形することができなくて、マッシュの状態で給与するということになりました。マッシュの飼料は、経験的にペレットの飼料より食べる量が約1割程度多いなと思っておりまして、試験の時点では、コストは試験飼料の方が高い計算になっておりました。
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試験結果ですが、体重の増え方や健康状態にも飼料の影響はなく、肉の付き方にも差は認められませんでした。アミノ酸バランス飼料に変えても牛の肥育には問題がないと結論することができました。この結果を見て、非常にほっとしたことを覚えております。
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この試験を行っている最中に、いよいよ出荷という段階で、この精肉を販売してみたいと思い立ちました。実際にそれを選んで食べる消費者の方々がどのような反応だろうかと、興味を持ったのが理由の一つです。
また、調べてみますと、今までにも環境に配慮した牛の飼料というのは研究されておりまして、結果も出ているのに、給与の継続や生産物の販売につながっていない気がしました。その広がらない訳を知りたかったことがもう一つの理由です。
急いで販売の許可を頂きまして、精肉を販売してみました。価格は、実情に沿いまして、1割程度飼料コスト分を上乗せしました。店頭やネット販売で頂いた御意見は、牛肉が大好きな方々がほとんどだったので、環境負荷低減の取組を非常に評価してくださって、好意的に買ってくださろうとするものが大半でした。たくさん応援のメッセージを頂きました。
また、2年前の栃木で行われた国体でも、ブースの設置と出店をさせていただき、アピールと試食を行うことができました。この際には、日本の牛肉生産全体について興味を持ってくださった方が非常に多かったと聞いております。このような牛肉を世に出すことで心が動いた消費者の方がいれば、うれしく思います。
価格に関してですけれども、味や赤身具合が同じであれば安い方がいいなという声も結構たくさんありました。正直なところ、これは私も同感だなと思うので、今後は価格を上乗せしないでどう取り組んでいけるかなということも考えていきたいなと思います。
そんな中で一番、一番というか、少し気になったことは、この取組に関して飼料会社さんや精肉の卸先さんなどが全く興味を示してくださらなかったことです。農家戸数の問題とか、あとは流通時の価格帯、ホルスタインの肥育ということもありますし、流通時の価格帯とかから、販売してもメリットがないだろうときっと判断されていることなのかなとこちらでは推測しているんですけれども、この点に関しては、できれば本日御出席されている委員の方々に、是非率直な御意見をお聞きしたいなと思っているところではございます。
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現在は、牛舎13棟あるうちの1棟、約120頭のホルスタイン種去勢牛にアミノ酸バランス改善飼料の給餌を継続して行っております。飼料は、試験時は20キロの紙袋で来たんですけれども、現在はバルク車で配送してもらってタンクからの自動給餌、通常の給餌と同じように給餌することができております。
枝肉の成績ですけれども、試験のときの結果とほぼ同様で、従来の飼料と差は認められないような状況です。
また、現在の飼料価格で今回改めて計算してみたんですけれども、枝肉1キロ当たりの飼料費で出すと、現在のところはアミノ酸バランス飼料給与の方が若干安いという結果になっていました。これは、飼料価格とのバランスとか、あとは給与期間とかに関係してくるかなと思っております。
また、このアミノ酸バランス改善飼料を給与した「地球にやさしいお肉」については、慣行飼料を給与したお肉と同じ扱いで流通されているのが現状です。一部買戻しや、1頭ずつと畜して、自社の精肉販売店で扱う程度になっております。
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以上、アミノ酸バランス改善飼料給与の取組を行ってみてのメリットと、今後の課題をまとめてみました。
メリットとしては、GHGなどの環境負荷が削減できる、無駄な飼料が減る、牛の成長や質にも影響がない、既存の設備で利用可能というところはメリットです。
あと、私どもの牧場のメリットとしては、消費者の方々の反応をじかに知ることができました。様々な反応を頂いて、これは生産物が世に出て初めて起きたリアルな反応だったかなと感じています。
また、6番ですが、環境負荷低減の取組を事業計画として認定する、みどり認定を取得することができました。設備投資のときの税優遇とか、あとは補助金採択の加算になるなど、実施者にメリットがある認定です。実情、まだ私どもでは恩恵を受けてはいないんですけれども、有り難い制度だなと思っております。
また、今回試験に関わることで、私どもの肥育に対する考え方が変わりました。アミノ酸バランス飼料には大豆かすが全く入っていないということが、個人的には結構な衝撃でした。これまで牛を飼うのには大豆は必ず必要だと思っておりまして、世界の大豆の市況に一喜一憂してきましたけれども、飼料中に大豆は必須ではないということ。ひいては、今まで与えている配合飼料も牛が健康に肥育される分には必須じゃないんじゃないかと、そういうことを考え始めました。そこからは、地場産の粗飼料を第一に考えた肥育方法に自信を持って変更することができました。現在では、自社で野菜も作っているんですけれども、その野菜のくずなども全部もう全く気にせず牛に与えて、牛たちは喜んで食べています。
続きまして、課題です。
1番は、今回の試験に関してですが、試験の対象牛がホルスタイン種の肥育ということで、日本の肥育農家さんの大半は黒毛和種を扱っている方々なので、ホルスタイン種の肥育は畜産農家の戸数が非常に少ないということが取組が広がらない要因だろうなと思っております。ただ、現在、黒毛和種や交雑種でも同様の試験が行われておりますので、結果次第では取り組もうとする方は増えると思っております。最近は飼料会社さん主導でクレジット化に取り組むという事例も出てきておりますので、今後広がる可能性があるなと思っております。
続きまして、飼料価格。飼料のコストに関してはよく質問を受けるんですけれども、実際、各農家さんの飼料の調達状況ですとか給餌の方法など、さまざまな事情によって異なるので、単純な比較はできないと思っております。私どもの牧場でも、試験のときは試験飼料の方がコストが高いと試算しましたけれども、現状はやや安い状況になっているということは、やはり状況次第なのかなと思います。ただ、世界的にも飼料用の大豆の高騰ですとか、たんぱく質の奪い合いと言われる状況ですので、こういったコンセプトで作られる飼料は、日本においては非常に有用ではないかと感じました。
以下は私どもの会社の話になるんですけれども、3番の、設備の改修ということは、前に御紹介したとおり、現状の飼料と形状が異なりますので、これ以上給与の頭数を広げるためには給餌機の改修が必要になってきて、これもコスト増の原因になっているかなと思っています。
4番目です。実際に精肉を販売してみますと、やはり食品にコストを上乗せするのが非常に難しいんだなということを思い知りました。イトーヨーカ堂の川田さんがおっしゃっておりましたように、まして牛肉というのは、価格が余りに高いと豚肉・鶏肉に取って代わられる状況です。クレジット化というのも調べたんですけれども、やはり個人で取り組むには金銭的なメリットが全くなくて、あとは海外のクレジットというのはそもそも方法が登録されておりませんので、全く申請ということにはならない。それでも「地球にやさしいお肉」が欲しいと言われれば増産したいという気持ちは大いにあるんですけれども、私たちは自社の牛肉を全て直接販売するということは現状できる状況ではありません。消費者との間に介在する企業さんが必ずあって、誰かにお願いして販売しなきゃいけないという立場である以上は、その販売側の方々とも一緒に取り組む必要があるのかなということを考えています。
そのためにも、取組に関するアピールを続けていく必要があるかと考えています。国としての目標ということもありますが、計算上、環境負荷が大きいと発表されてしまう畜産に携わっているので、消費者の皆様の御理解を得るために、環境に配慮した飼養方法を積極的に持続的に行っていく必要があるんだろうなと感じました。そして、それを皆様に周知することで、日本で畜産を行うという必要性や、国産のより良い食品を流通させる、又は買う意義を認識していただいて、販売や消費の行動につながることを期待しております。
基本的には、やはり経営のプラスになること、また、販売側や消費者から求められ続けることというのが継続の鍵になるかなと思っております。
次のスライドをお願いします。
最後に、私どもの今後の展望についてです。アミノ酸バランス改善飼料の給与は引き続き継続したいと思っております。機を見て、増頭も視野に入れております。
また、現在、交雑種への給与試験を私どもの牧場でも行っておりまして、それの結果が楽しみでもあります。
また、この「地球にやさしいお肉」をより積極的に流通させていきたいなと思っています。一農家の微々たる取組なんですけれども、少しでもできることは続けていきたいなと思っています。
牧場運営に関しましては、地場の粗飼料を最大限に活用した肥育を進めます。
また、堆肥をペレット化する機械を導入しまして、こちらの流通も軌道に乗りつつあります。
そして、今年から有機農業も少し試し始めました。
私の父であります社長を筆頭に、何でも挑戦したがりの会社なので、正直いろいろと大変な部分もあるんですけれども、情勢の変化に柔軟に対応できるというのが私どもの牧場の強みだと思っております。今後は、より魅力のある、地域に必要とされる牧場であるために、環境に優しい農業の取組は続けていきたいと思っています。そして、胸を張って牛飼いを続けていきたいと思っております。
以上で発表を終わります。ありがとうございました。
〇小針部会長
ありがとうございました。
それでは、御質問等ある方、挙手にてお願いいたします。
大山委員。
〇大山委員
いろんな試験をされているということで、研究成果の発表のようなところもあって、その辺りは個人的にはいろいろと聞きたいことがあるんですけれども、発表の中で触れられていたところで感じたのは、前田牧場さんのところは平均的な肉牛農家から比べるとかなりの大規模でやっておられますが、それでもなかなか自分たちで販売にまで自分たちの取組を伝えていくということが難しいんだなというのは改めて感じました。例えば、基本的には市場を通して出荷しているということですよね。
〇齋藤様
そうです。
〇大山委員
だから、食肉市場の中で、そういった個人の努力であったり、あるいは買手の方が知りたい情報、あるいは消費者が知りたい情報でということが、何か欠けているのかなと少し感じました。また、その辺のことを今日御意見いただきたいとおっしゃっていたんですけれども、今日は特に流通の方がたくさん来られて発表されていますので、そういう方にお伺いするのが一番いいのかなと思います。私の感想で、申し訳ないですが、御意見を聞いていただけたら有り難いなと思いました。
〇小針部会長
庄司委員、お願いします。
〇庄司委員
前田牧場様、どうもありがとうございました。飼料会社の方からコメントをというご要望がございましたので、私から少しコメントをさせていただきます。
まず、養牛をされている方々に対する飼料メーカーの取組ですが、例えば、粗飼料を自前で収穫できる土地の面積の大きさとか、近隣で副産物を供給してくれる業者の有無など、夫々事業環境が異なるので、皆様の状況に合わせて有利な原料を利用した配分設計をアドバイスするのが一般的な形かと思っています。
飼料メーカーの方向性として、環境への配慮は将来の畜産にとり重要だと考えています。日本の皆様に良質なたんぱく質を供給しているのに、GHGを排出している悪い業界だといわれるのは甚だ心外で、GHG削減の為色々な取組を行っています。
かつての栄養過剰気味でも成長・成績を最重視した製品から、生育速度は落ちても適正なCPレベルでコスト面や環境負荷でメリットがありバランスの良い製品も出てきており、その様な方向の研究が各社で進められていて、フィード・ワンでも進めています。その中で、大きな話題になっている牛のげっぷやふん中の窒素量の低減や、排泄物を土地に還元してゼロエミッションにするというのは非常に良い取組であり、前田牧場様の取組は評価されるべきものと考えています。
農林水産省の方に申し上げたいのは、Jクレジットについてですが、いろいろな畜産の現場でGHG削減の取組をやろうとしていますが、事業者の経済的なメリットにまだ繋がり難く、今後、牛由来のメタンや、糞中の窒素やリンの低減にインセンティブが働くように制度がもっと拡充し、より利用しやすくなれば良いと思います。ただ、そのためには科学的データも当然必要で、配合飼料メーカーの出番でもあり、一緒に進めていければ良いと考えていますので、御協力をお願いしたいと思います。
私からは以上です。
〇小針部会長
もしよろしければ、青木様、流通からの御意見というお言葉がありましたので、お願いできますでしょうか。
〇青木様
すみません、私、肉に関しては全くの素人なので、コメントがなかなか難しいんですが、要は環境に優しい育て方や、飼料の活用をしていて、コストもそんなに変わらないということで、それをお客様にどうやって伝えるかですよね。先ほどイトーヨーカ堂の川田さんも言っていましたけれども、若い人ほど、こういうことに関心があるのは事実ですので、どのようにして若い層にそれをうまく伝えていくのかというのが一つポイントなのかなと思います。すみません、素人なのであれなんですが、そのような感じですね。
〇齋藤様
ありがとうございます。
〇小針部会長
ありがとうございます。
あと、宮城様も、もし何かありましたらお願いします。
〇宮城様
先ほど私が申した点と少しリンクするのかもしれませんが、それを分かってくださる人は日本人だけではないと思いますので、そういう海外の方も見つけることができれば、それは付加価値、お金に変わっていくのではないかと思います。なので、縁とか運とか言っている場合ではないですが、日本にこだわる必要はないのかなとは思います。
〇齋藤様
ありがとうございます。
〇小針部会長
ほかに御意見、御質問ある方いらっしゃいましたら、挙手、挙手ボタンにてお願いします。
それでは、齋藤様、ありがとうございました。
〇齋藤様
皆様、ありがとうございました。御意見ありがとうございました。
〇小針部会長
ヒアリングは以上になりますが、農林水産省より生乳の需給等に係る情報交換会に関して報告がございますので、牛乳乳製品課長の須永様、よろしくお願いします。
〇須永牛乳乳製品課長
ありがとうございます。
資料の最後を御覧ください。
農水省では、生乳流通の多様化を踏まえまして、主要な生乳流通事業者との間で、生乳の需給などについて情報交換を行う場を設けております。先日、第5回目を実施しまして、第4回目までの参加者の議論を踏まえまして、生産者乳価の安定、それと牛乳の安定供給に向けて必要な取組について、我々農林水産省の考え方を示して意見交換を行いました。
それぞれ項目を御説明いたしますと、1点目は、個体乳量の季節変動に応じた生乳の年間安定取引です。牛の生態上、冬に生産が増えますが、牛乳の需要は冬に落ちます。このため、冬でも牛の生態に応じた生乳を引き取る契約を結ぶことが生産者にとって必要だと思っております。
2つ目は、不需要期を中心とした加工仕向け先を確保・拡充するということです。通年で牛乳を安定供給しようとしますと、不需要期である冬には牛乳で消費し切れない余乳が発生しかねません。これを牛乳に仕向けてしまうと、投げ売りにつながりかねないという問題があります。牛乳仕向けで生じる余乳は加工に仕向けるということが重要だと考えています。
3点目が、脱脂粉乳・バターの跛行性、さらには牛乳の消費減少などの構造問題についての対応です。脱脂粉乳の在庫対策や牛乳の消費拡大対策といった全国的な課題への対応については、この業界の関係者の皆さんに参加いただくということが重要だと考えています。
我々農水省としては、こうした全国的な見地から必要な取組については、例えば、毎年補給金と併せてALIC対策も組んでおりますけれども、今年どうなるかはわかりませんが、こうした国の様々な施策ツールを使って促していきたいと考えています。
以上の考え方に対して出席者からは、賛同又は特段の反対はないというような反応でございました。
幾つか情報交換の場で出た意見を紹介しますと、1つ目の項目については、委託契約の精度をこれまで以上に高めて、出荷状況を確認していく必要があるというような意見。それから、分娩頭数で調整していきたいというような意見。
それから、2番目については、牛乳消費が最も落ちる年末年始の調整は各社の協力が不可欠だという意見。それから、加工仕向けについては、海外市場も視野に入れていく必要があるというような意見がございました。
最後の3番目については、全国的な対策には関係者全員が参加するのが本来の姿だといった意見を頂きました。
以上でございます。
〇小針部会長
ありがとうございました。
それでは、御質問等ある方は挙手にてお願いいたします。
小椋委員、お願いします。
〇小椋委員
北海道の小椋です。
今、須永牛乳乳製品課長さんの方から説明がありましたけれども、私ども生産者サイドからも、以前から国・農水に要請・要望をしてございます。系統、系統外、自主流通を問わず、生産者が同一的な目線といいますか、平等な対応をしていかなければなりませんし、やはり一部の飲用牛乳が端境期には安売りされております。市場の価格を壊している現状もありますので、ここは、説明があったように、飲用と加工のすみ分けは当然必要ですし、全国の生乳が全て飲用で消費・処理されるわけではありませんから、ここはやはり自主流通の皆さんにも理解していただいて加工の割合を持っていただく。これを取り進めていただくのはやはり農水省の皆さんでありますから、是非今後とも国の主導の下、この牛乳の流通、また飲用・加工の仕向け、これを是非取り進めていただいて、平等性が取れるような取組にしていただきたいと思いますので、よろしくお願いします。
以上です。
〇小針部会長
ほかに御意見、御質問ある方、挙手若しくは挙手ボタンにてお願いします。
ありがとうございました。それでは、本日の議事はここまでといたします。
ヒアリングに御協力いただいた皆様、本日は本当にありがとうございました。
最後に、事務局から連絡がありましたら、よろしくお願いします。
〇新井畜産総合推進室長
改めまして、本日は誠にありがとうございました。
これまで、3月からヒアリング、3月、4月、5月で、今回6月とやってまいりましたけれども、今回で予定しておりました各テーマのヒアリングを行うことができました。御協力いただきました皆様に改めてお礼を申し上げます。
次回の畜産部会の開催につきましては改めて連絡をさせていただきますので、委員の皆様方におかれましては、引き続きどうぞよろしくお願いいたします。
事務局からは以上です。
〇小針部会長
それでは、本日の議事は以上で終了になります。お疲れさまでした。
お問合せ先
畜産局総務課畜産総合推進室
担当者:請川、河田、松山
代表:03-3502-8111(内線4888)
ダイヤルイン:03-6744-0568