令和6年度第1回畜産部会議事録
1. 日時及び場所
日時:令和6年4月12日(金曜日) 14時00分~16時30分
会場:農林水産省 第2特別会議室(web併催)
2. 議事
〇新井畜産総合推進室長それでは、定刻になりましたので、ただいまより令和6年度第1回食料・農業・農村政策審議会畜産部会を開催いたします。
委員の皆様におかれましては、御多忙中にもかかわらず御出席を賜りまして、ありがとうございます。
それでは、小針部会長に議事を進めていただきたいと思いますので、よろしくお願いいたします。
〇小針部会長
部会長の小針でございます。本日もどうぞよろしくお願いいたします。
それでは、初めに渡邉畜産局長に御挨拶を頂きたいと思います。渡邉局長、お願いいたします。
〇渡邉畜産局長
どうもありがとうございます。
本日は、年度初めの大変お忙しい中に畜産部会に御出席を頂きまして、誠にありがとうございます。また、部会のメンバーの方に加えまして、本日発表いただく方々にも御参加を頂き、誠にありがとうございます。
畜産部会では、前回から畜産・酪農政策の現状と課題を整理するために、畜産現場の第一線で御活躍をされている方々からお話を伺っております。取組や課題について、いろいろ勉強させていただいてきたところでございます。
前回は、酪農関係の皆様方に発表いただいたところですが、本日は肉用牛生産、あるいは配合飼料に造詣の深い計4名の方々に御参加を頂いてございます。それぞれの深い御経験に裏打ちをされた貴重なお話を伺える機会と考えておりまして、本日も前回同様に活発な議論が行われることを期待してございます。
最後に、我が国畜産・酪農の更なる発展に向けまして、引き続き御協力を賜りますことをお願い申し上げまして、私の挨拶とさせていただきます。
本日は、どうぞよろしくお願いいたします。
〇小針部会長
ありがとうございました。
報道の方はここで終了といたしますので、御退室ください。
(報道退室)
〇小針部会長
それでは、議事を進めます。
まず、本日の配付資料の確認、委員の出欠状況の報告などについて、事務局からお願いいたします。
〇新井畜産総合推進室長
まずは、本日配付しております資料について確認させていただきます。
会議資料、会場の委員の方は、お手元の端末に資料一覧、資料1から7、参考資料の全部で9つのシートが表示されているかと思いますので、これらが開かれていることを御確認いただければと思います。パソコンの使用等で不明点等ございましたら、近くにいる職員に遠慮なくお問合せいただければと思います。
次に、資料2に委員名簿がございますが、本日は15名の委員の皆様に出席いただいております。このうち、椛木委員、二村委員、小椋委員、駒井委員、里井委員がリモートにて御参加となっております。二村委員は途中退席、里井委員は途中からの御参加と伺っております。また、本日、宮島委員、大山委員、川田委員、松田委員におかれましては、御都合により欠席との連絡を受けております。審議会に関する規定では、委員及び議事に関係のある臨時委員の3分の1以上の出席がなければ会議を開き議決することができないと定められておりますが、本日規定数を満たしておりますことを御報告いたします。
以上です。
〇小針部会長
ありがとうございました。
本日の畜産部会の趣旨ですが、先ほど渡邉局長の御挨拶にもありましたように、肉用牛関係の生産者、飼料に関わる有識者からヒアリングを実施することとしております。御参加いただいている4名の方におかれましては、お忙しい中、誠にありがとうございます。
それでは、本日お招きした皆様を御紹介いたします。資料3を御覧ください。
お一人目は、株式会社上鶴畜産代表取締役の上鶴広己様です。上鶴様には、省力化と高所得率を実現した堅実な繁殖経営という観点で発表いただきます。
お二人目は、株式会社野元牧場取締役会長の野元勝博様です。野元様には、肥育期間の短縮に取り組む経営という観点で発表いただきます。
3番目に御発表いただくのは、株式会社蔵王ファーム代表取締役の髙橋勝幸様です。髙橋様には、家畜の生産から牛肉販売まで一貫した体制の経営という観点で御発表いただきます。
最後は、株式会社岩﨑食料・農業研究所所長の岩﨑正典様です。岩﨑様には、これまで穀物の輸入業務や市場調査に関わられた御経験から、専門的な観点で配合飼料をめぐる情勢や今後の見通しについて発表いただきます。
本日は、どうぞよろしくお願いいたします。
それでは、議事に入ります。
それぞれの御発表の前に事務局から御発表者を御紹介した後、お一人10分から15分程度で有識者の皆様から御説明をお願いいたします。御説明の後、15分程度の質疑応答時間を設けますので、御意見や御質問がある方は挙手にてお願いいたします。
それでは、株式会社上鶴畜産の上鶴様より御発表いただきますので、事務局より紹介をお願いいたします。
〇新井畜産総合推進室長
資料4を御覧いただければと思います。
資料1枚目に記載しておりますとおり、株式会社上鶴畜産様は、鹿児島県で繁殖雌牛200頭以上を飼養し、稲WCSなどの自給飼料生産にも取り組んでおられます。また、計画的な規模拡大を行う中で哺乳ロボットなどのICT機器の活用により、省力化なども実現しつつ堅実な和牛繁殖経営をされております。
なお、資料の1点だけ、表の中で購入飼料、ロール(青刈りとうもろこし)とありますが、ここの12トンは、120トンの誤りですので、恐れ入りますが、訂正させていただきたいと思います。
それでは、上鶴様、御発表お願いいたします。
〇上鶴様
こんにちは。鹿児島県錦江町で和牛繁殖経由をしています株式会社上鶴畜産の上鶴広己です。
次、お願いします。
初めに、経営の概要をお話しします。
中山間地のこの場所に牧場を開いて40年になります。現在、繁殖牛240頭、総頭数400頭ほどを飼育しています。しかし、飼料生産面積は10ヘクタールもなく、経営の課題となっています。
労働力ですが、家族は4人、雇用は3人の7人です。その中に女性が3人いますが、子牛の哺育や体調確認などの仕事の担当をし、女性ならではの細かい気配りで子牛も元気に育っています。
次、お願いします。
経営の推移をお話しします。
昭和60年、農大を卒業し、就農し、繁殖牛5頭から和牛経営を始めました。
平成21年、鹿児島県指導農業士に認定され、励みになりました。
平成30年、個人経営から会社経営へ、雇用の定着や経営移譲を目的に法人化に取り組みました。
次、お願いします。
私の取組についてお話しします。
牛の繁殖管理について、主な取組は発情発見から受胎までと母牛の分娩です。
まず一つ目の発情発見から受胎までについてです。
経営を始めて、牛の発情発見や牛の状態を確認するため、夜を中心に牛舎の見回りを始めました。10年後、農大で取得した家畜人工授精師免許を生かし、自ら人工授精を始めました。牛舎は自宅から5分程度のところにありますが、受精の適期を把握するのに必要なので、見回りは一日も欠かしたことはありません。この情報は毎日記録し、パソコンの表計算台帳に入力処理しています。
次、お願いします。
母牛の分娩は、今は牛温恵と分娩監視カメラを使っています。夜の牛舎の見回りや記録データで分娩予定は分かるのですが、長引くことが多く、分娩まで毎日、夏も冬も牛舎まで往復したり、牛舎に泊まったり大変でした。牛温恵は、分娩前の体温変化をセンサーが感知し、スマートフォンに通知されるので、分娩の兆候の確認や準備ができ、分娩監視カメラは画像がスマートフォンに送られてきます。
次お願いします。
夜間見回りの観察や台帳管理で、人工授精の適期を把握しています。牛温恵と分娩カメラは、母牛や子牛の事故防止が図られ、省力化や従業員を含めた情報の共有に大変役立っています。このことで、繁殖成績は目標とする年1産に対して、分娩間隔12.7か月と、ほぼ達成しました。
次、お願いします。
取り組んだことの二つ目は、子牛育成です。
経営を始め15年がたった頃、100頭規模になったとき、子牛に人工哺育を実施しました。それまで取り組んでいた自然哺育では、哺育スペースが必要になり、母牛の繁殖機能の回復が遅れ、子牛の哺乳量が把握できず発育のばらつきが課題でした。人工哺乳に取り組むと、子牛を1か所に集めて哺乳し、母牛の発情回帰や子牛の発育向上という効果が期待されました。しかし、人工哺育は準備や哺乳作業、後片付けなどの担当者が必要で、規模を拡大し、哺育子牛が増えると手飲ませに限界を感じ、固定式哺乳ロボットを導入しました。これは地域でも先駆けた取組でした。
次、お願いします。
哺乳ロボットは、哺乳作業の時間が短縮されるなどの省力化が図られた一方、子牛が人工乳頭に慣れず、発育が停滞するなどの課題も生まれました。そこで、5日目までは母乳で、14日目まではケージによる人工哺育で馴致させるようにしました。しかし、哺乳の競争による発育のばらつきや疾病の蔓延防止は、群飼育の課題として残りました。
次、お願いします。
固定式哺乳ロボットの導入の14年後、疾病の蔓延防止のため、移動式哺乳ロボットを導入し、スマート農業プロジェクトにおいて海外製の乳牛用に開発されたロボットを改良して和牛子牛の個体ごとの哺育管理を可能としました。これで哺乳作業の効率化や疾病の感染防止、子牛の発育の斉一化が図られるようになりました。
次、お願いします。
哺育ロボット等の効果ですが、哺乳作業の効率化で空いた時間を観察や従業員の休憩時間に活用し、疾病の感染予防では、ロボットの導入前後で疾病が41.4%減少しました。子牛の発育の斉一化については、スライドのグラフで示したとおり、発育が改善し、ばらつきが抑えられるようになりました。今は、人工哺育ケージと固定哺乳ロボット、移動式哺乳ロボットを組み合わせて活用しております。
次、お願いします。
次に取り組んだことの三つ目で、経営管理です。
これは主に妻が担当しており、子牛の競り市で発生した収入が入金された後、支出管理を行うなどして借入金のない経営を行っています。制度資金や補助事業の活用で規模拡大するなど堅実経営に心がけ、資金繰りを確認した安全経営で所得率33.4%を実現しています。
次、お願いします。
スライドに私が取り組んできた規模拡大のタイミングを挙げました。
飼養規模は50頭を超え、70頭になると、家族経営や人工哺乳の取組は分岐点で、次のステップが必要になります。今は240頭なので、飼養管理にICT機器の導入を検討する時期と考えています。将来は、飼料生産、粗飼料の購入やコントラクターなどの活用が必要になってくるものかと思います。平成30年度に法人化に取り組んだ結果、雇用が確保され、女性でもやりがいを持って楽しく働ける環境を整備してきました。従業員も含め、休憩時間のミーティングなど情報の共有に努めています。
次、お願いします。
その他、株式会社上鶴畜産では、地元主催の中学校の畜産に関する出前授業や、指導農業士として新規就農者への助言指導、農業高校生や農業大学校生の研修を毎年受け入れ、堆肥の供給源としての役割を担ったり、農福連携の取組で社会福祉士法人利用者の受入れを行い、地域一丸となった和牛作りなどを行っています。
次、お願いします。
今後の上鶴畜産です。
私は今年60歳になります。会社を設立する前から60歳定年を目標にしてきました。今、息子に経営を移す準備をしています。会社の株を持たせ、取締役に、そして生産技術をスムーズに伝えていくところです。
今後、規模拡大は、自給飼料の確保やICT技術の導入、安定した経営計画など課題を一つ一つ解決する必要があります。また、息子の受精卵移植技術を生かし、時代に合わせた受精卵の取組も考えているところです。
次、お願いします。
我が家の経営を振り返って、課題と対応をまとめてみました。
始めに話しましたが、中山間地で経営しているため、自給飼料の生産確保にはいつも苦労しており、堆肥の畑地への還元も限られているため、6~7割を堆肥センターを通し園芸農家へ供給しています。代わりに、WCSのロールサイレージを無償で交換という形で、耕畜連携の取組をしています。
次に、これからの繁殖管理には、ICT技術の活用を考えています。発情が微弱で見回りなどで分からない繁殖牛が多くなったと感じています。省力的に、また効率的に繁殖成績を向上させることと、データの共有化を一層図っていきたいところです。
また、大隅半島は台風の災害の多い地域で、畜産も電気なくしては経営できないので、停電の際の発電機などの備えは必須です。あわせて、いつも災害復旧の際は、早めの復旧に尽力いただいた各関係機関の方々には大変感謝しております。
今後の経営規模の拡大は、自給飼料の確保が必須で、農地の集約や相続未登記地問題は、中山間地域の課題でもあります。
最後に、本日はこのような私の経営の取組と将来の方向を話す機会を与えてくださり、感謝申し上げます。そして、今日の話が審議会のヒントになり、少しでもお役に立てれば幸いです。
御清聴ありがとうございました。
〇小針部会長
ありがとうございました。
それでは、御質問等がある方は挙手をお願いいたします。
馬場委員、お願いいたします。
〇馬場委員
今、飼料価格が大変高騰して子牛価格が下落している状況の中で、借金もなく、所得率33.4%という、すばらしい経営だと思いました。
御夫人による経営管理もあろうかと思いますが、現在の所得率を実現した一番のポイントは何か、教えていただければと思います。
また、最後に自給飼料の確保を課題として挙げられました。中山間地での自給飼料の拡大について、今後どういう施策が必要かといった御意見等あれば、お聞かせいただければと思います。
以上です。
〇上鶴様
所得率について、うちの場合は牛舎とか施設、機械にあまりお金をかけないようにして、コストを少しでも安くするようにしています。また、購入飼料も入札をして、少しでも安く入れるように頑張っているところです。
それと、自給飼料とか耕畜連携で入れた飼料などを少しでも多く与えて、濃厚飼料の給与を少しでも下げるようにして、あとは子牛を少しでも高く売って所得を上げるために、種雄牛とか様々組合せを検討して、子牛市場に出して、価値を高めるようにしています。
あと、自給飼料をこれから確保するには、、ここら辺はたばこ産地だったんですけれども、今たばこが撤退し始めて、ちょっと畑が空いてきたりするので、その辺を少し活用したりとか、あとは、耕畜連携でもう少しWCSなどを増やして、それを自給飼料の方に向けていきたいと考えております。
以上です。
〇小針部会長
ありがとうございます。
それでは、ほかに御質問がある方は挙手をお願いいたします。
庄司委員、お願いいたします。
〇庄司委員
どうも御説明ありがとうございました。飼料に携わる身からしても、非常にすばらしい経営をされているなと思いました。
今、上鶴さんのところは専業で、繁殖としては大きな規模でやられている。さらに、この規模を拡大していこうという今の取組ですけれども、例えば繁殖農家はもっと規模が小さい方や兼業の方も多くいます。やはり規模を拡大しないと難しいと思われているかという事と、規模を拡大できない方は、この先どのようにしていけば良いのか、思うところがあればお聞かせいただければと思います。
〇上鶴様
規模を拡大して、もうかるかというと、今は経費が上がり過ぎて、飼料価格も1.5~1.6倍に跳ね上がってきています。今は少し増頭は控えているんですけれども、うちはまた、ゆくゆくは増頭していきたいと思っています。息子が大体400頭ぐらいに増頭して、一日一頭、年間365頭出荷できるような形に持っていきたいと考えております。
また、飼養頭数100頭以下とか、それぐらいで経営するのも、これからはいいのかなと思います。人をあまり雇わなければ、そのぐらいの頭数でいいのだと思います。雇用が増えてきたら頭数を増やしていかないと採算が合わないものですから、そこはやはり考えて経営していかないといけないのですけれども、少ない頭数で飼うのも今この時代では一つの策かなとは思っています。
〇庄司委員
ありがとうございました。
〇小針部会長
ありがとうございます。
では、二村委員、よろしくお願いいたします。
〇二村委員
御説明どうもありがとうございました。
私がお伺いしたいことは二つあります。一つは、法人化されていますが、法人化をされたことのメリットがすごくよく分かりました。一方で、法人化をされるときに苦労をされた点があれば是非、教えていただきたいと思います。
それから、哺乳ロボットを活用されていて、これからこういうものは本当に必要だなと思ったのですけれども、一方で、メンテナンスなどが大変ではないのかと思いました。使われていて、課題などがもしあればお話しいただきたいと思いました。
よろしくお願いいたします。
〇上鶴様
1番目の質問の法人化をするときの苦労について、規模を大きくするには、やはり信頼性などもあり、法人化した方がいいのかなということ、また、息子に経営を譲るときのためにも、やっぱり法人の方がいいのかなと思って法人にしました。
その際の苦労については、会社を立ち上げるときに手伝ってくれる県の事業があって、それに参加したので、そんなにありませんでした。
それと、哺乳ロボットのメンテナンスについて、今使っている固定式のロボットというのは、そんなにメンテナンスは要らないんですけれども、後から入れた移動式ロボットが3年に1回、ホースを全部入れ替えたりとか、外国製なものですから、修理が必要になったときなど、いろいろ最初のうちは分からなくて、今はもう大体分かってきたんですけれども、ありました。
それで、中のホースなどを替えるときに100万円近く、メンテナンス料がかかるようです。でも、それ以上の省力化の効果などにより、そういうコストは取り戻せると考えています。
〇小針部会長
ありがとうございます。
〇二村委員
すごくよく分かりました。ありがとうございます。
〇小針部会長
ほかに質問や御意見のある方がいらっしゃいましたら、挙手をお願いいたします。
もしよろしければ、小山委員、繁殖経営ということでお願いしていいですか。
〇小山委員
とてもすばらしい経営だなと思いました。
私は少し年上なんですけれども、和牛の繁殖経営に切り替えてから30年になります。酪農経営から和牛繁殖経営にしたときにまず何をしたかというと、財布を小さくする必要がありまして、ちょうど切り替えた頃、牛の価格はまだまだ安くて、子供が4人いるので、子供たちの学費だけでも手一杯だったんですけれども、とてもうらやましいなと思いました。もしそうでなければ、私もこういう経営はできたのかなと思いながら、夢を見て聞いておりました。ありがとうございました。
〇上鶴様
ありがとうございます。
〇小針部会長
すみません、椛木委員から手が挙がっていますので、お願いします。
〇椛木委員
お話どうもありがとうございました。
私は北海道で酪農家をやっている者なんですけれども、私も和牛受精卵を導入して、年間何頭か和牛の子牛を産ませています。酪農家さんが和牛を産ませるときに御苦労するところというのが、子牛の管理。やはりホルスタインは結構強いというんですかね、和牛よりは強いと言われていて飼いやすいんですけれども、和牛の子牛を産ませると結構病気とか、下痢をしやすいとか、そういうので苦労している農家さんも結構います。何かそういう子牛の管理で御苦労されているところとかがあるのかと気になったので、教えていただきたいと思います。
〇上鶴様
言われたとおり、黒牛は乳牛と比較すると、弱くて下痢とかが多いんです。特に、うちの場合は昔からの牛舎で飼っているので、やはりそこに常在菌がいて、すぐ下痢をしてしまうんですけれども、親牛から5日ぐらいで離してゲージに入れて、そこでまたミルクをやったら下痢もすぐ止まって、今は子牛へのダメージもそんなにありません。
昔、まだ70頭程度以下のときは、分娩室で親に付けていたんですけれども、そのときはやはり下痢がひどくて、またそれに気づくのも遅くてこじらせて、肺炎になって駄目になったりしたんですけれども、今は大学の先生たちも月2回来てワクチン接種などをしてもらったりなど、いろいろな取組をして下痢も少なくなって、肺炎なども出なくなったり、RSも出なくなりつつあって助かっております。
黒牛は、やはり弱いというか管理の仕方が難しいんですけれども、慣れてしまえばいいと思います。
〇椛木委員
ありがとうございます。
〇小針部会長
よろしいでしょうか。
それでは、上鶴様、ありがとうございました。
〇小針部会長
続きまして、株式会社野元牧場の野元様より発表いただきますので、事務局より御紹介をお願いいたします。
〇新井畜産総合推進室長
それでは、資料5を御覧いただければと思います。
株式会社野元牧場様は、長崎県壱岐市で繁殖肥育一環経営を営む肉用牛農家でございます。
繁殖雌牛約300頭と肥育牛約400頭を飼養されております。また、御自身が代表を務める飼料生産組織において、自給飼料生産ですとか地域の担い手としての作業受託にも御尽力をされております。また、肥育期間の短縮にも取り組まれております。
それでは、野元様、発表をお願いいたします。
〇野元様
座ったまま失礼させていただきます。
長崎県の壱岐島から参りました野元勝博といいます。壱岐島は御存じでない方もいらっしゃると思いますが、博多港から船で1時間の場所にございまして、対馬、韓国との間でございまして、周囲が東西、15~16kmの小さな島です。その中で家畜を管理して販売までしております。
まず自己紹介ですけれども、ただいま申し上げましたように、肥育を始めたのが平成7年でございます。それまでは、繁殖農家として、私も農協に勤めながら肥育、繁殖を行っておりましたけれども、平成7年から肥育の事業に取り組みました。
写真は、第11回全共の宮城大会に出品した牛の写真でございます。総合評価群(第6区)の肉牛の部に出品いたしまして、2位になりました。交雑脂肪の形状賞ということで特別賞も頂きました。
次のページ、お願いします。
野元牧場の概要です。代表取締役が野元久志ということで、私の次男でございます。彼に代表を譲っております。従業員数が、役員4名、社員11名、うち女性が4名おりまして、管理委託しているところが2名おります。
規模に関しましては、飼料の作付面積、夏作は主にソルゴーですけれども、26ヘクタール、冬作は主にイタリアンですけれども、27ヘクタール作っております。
それから、稲のWCSに関しましては、耕畜連携として10ヘクタール作付していただいたものを頂いております。それから、麦わらに関しましても23と書いてありますけれども、大体32ヘクタールぐらい麦を収穫した後の麦稈の収穫をいたしております。
次、お願いします。
我が社は、安全と安心な食を提供し、農地を守り、人と牛を大切にし、持続可能な農業を目指すという経営理念を設けております。
肥育期間の短縮に取り組んだ経緯としましては、平成20年頃に飼料価格が高騰しまして、そのときに自分たちでできることは何かということで、子牛の生産に取り組んでおります。そのことによって、一貫経営の幅が広くなり、6か月からの肥育を始めたところ、結果20か月飼育しても26か月で出荷することができたという結果でございます。
そこの下にミルクをやっている女性従業員がいますけれども、これはIT機器といいますか、スマート農業といいますか、ミルクシャトルという、ミルクを混ぜてそのまま子牛のところまで持っていって授乳できるという新しいシステムでございます。
次のページをお願いします。
大体、壱岐は離島ということでございまして、事故があるとなかなかすぐに出荷できないという欠点もございますので、できるだけ早い時期に出荷するということで、大体27か月齢前後での出荷が多い傾向にあります。当社も多分に漏れず、導入したものは27か月程度で出荷しておりましたが、自家産の牛に関しましては、26か月齢になると危なくなりますので、結果的に出荷が早くなったというような状況です。
早期出荷することによるメリットとしましては、起立不能や死亡などの事故が減少したことと、飼料のコストが下がったということで、大きなメリットではなかったかと思っております。
課題としましては、雌の枝肉重量がなかなか大きくならないことと、最近になりまして、流通業者から、せめて26か月は飼ってくれということで、26か月の飼育に変えようと思っております。
左下の表を見ますと、結果的に令和4年になって枝肉重量は上がっておりますけれども、これも給餌の関係と、それから種牛の能力が上がっておりまして、最近の種牛は子牛の増体にかなり関与していると思っております。結果的に、大きい牛が生まれますし、また、長崎県は「金太郎3号」というすばらしい種牛がおりまして、これが他を引き離して枝肉重量を大きくできるということで、結果的に重量も上がっております。
次のページをお願いします。
そこにお示ししましたとおり、肥育牛1頭当たりの生産コストでございますが、月齢ごとに出しております。現在、24か月で出しておりますけれども、生産コストが約40万円前後で推移しております。
次のページをお願いします。
エコフィードの利用ということで、経産牛の肥育にも取り組んでおりますけれども、その中には廃菌床といって、キノコの菌床を使った混合飼料、発酵飼料を給与し、出荷もしております。結果はどうかといいますと、最近はそれを多量にやって残りの仕上げに配合飼料を少しやるというような給与方法でやっておりますけれども、結果、歩留り基準値が上がってきました。60%を超える経産牛が多く出てきました。
以前は、配合飼料のみでやっておりましたが、なかなか60%を超える牛がいなかったということでございますが、最近になって、歩留り基準値が上がってきて、肉質そのものも上がってまいりました。
キノコ菌床を使った餌の単価が56円で、そんなに安くはないんですけれども、これまでの配合飼料と比べると40円近く安くなっております。
廃菌床を使うことによるメリットは、発酵飼料ですので肉のうまみを向上させることができております。それから、あとにも御説明しますけれども、安全安心な飼料ということで付加価値を付けてブランド化も検討できるなと思っております。
それから、通常の肥育に関しましては、今後の取組と現在の取組でございますけれども、ビール粕の発酵飼料を給与しております。これはキロ単価26円で、前期飼料として非常に腹作りにもってこいの餌でございまして、これに加えて配合飼料を仕上げに給与するということで、かなりいい腹ができており、牛も大きくなってきております。
それから、今後の取組としましては、今まで技術的には可能だったと思いますけれども、肥育牛への青刈りとうもろこしを発酵させたサイレージの給与を計画しております。これは、以前、地元の先輩である肥育農家が一時期とうもろこしサイレージを牛に与えて、見事な牛ができておりました。それがどうしても忘れられないので、我々もやってみようということで計画し、いろいろな飼料を集めながらとうもろこしのサイレージの発酵飼料をやった肥育牛はどうなのかなということで、かなり発育も良く、サシの能力もあるし、肉のうまみも向上するのではないかと思っております。
次、お願いします。
それから、次のページに農場HACCPの取組ということで挙げております。我が社が農場HACCPに取り組んだきっかけといいますか、いわゆるHACCPをしている農場が1か所あります。その牛舎は、牛舎内の整理整頓ができていなくて牛の事故率も高かったということで、令和元年に農場HACCPの申請をして認証を頂いたんですけれども、結果、整理整頓をすることができて事故率が減少し、おまけに、その農場の従業員だけでなく会社全体の従業員の衛生管理に対する取組意識が高まったというメリットがあったと思っております。
先ほど申しました経産牛の販売に関しまして、農場HACCP認証を受けた牛舎でございますので、今後、その肉に認証シールを付けて販売することで付加価値を更に高めていこうと考えております。
次のページをお願いします。
令和5年度に設立しましたエヌプロ株式会社でございます。
令和5年5月に設立しまして、役員3名、社員2名でやっております。これも、壱岐の中で耕作者が減ってきているという状況を踏まえ、農地が空いてくる可能性が高いということで取組を始めました。稲刈り作業や削蹄の受託、それから畦畔の雑草の除去、堆肥の運搬・散布の受託という取組を進めていこうと、もう既に始まっておりますけれども、やっております。本年度におきましては、運送事業への取組をして、家畜の運搬や、飼料の搬入搬送のお手伝いを事業として取り組みたいと思っています。
次のページ、お願いします。
先ほどから言っておりますように、壱岐の地域では、特に小規模兼業農家が多いということで、生産組合でさえ労働力の不足が深刻化しておりまして、離農する農家も増えております。
それから、農業の持続性を確保するため、ニーズに合った農作業受託を行っていこうと考えております。そこにある左下の写真が、コンバインの改造をしまして、WCSの収穫専用機にしております。収穫には本来、専用機がございますけれども、非常に高いので中古のコンバインを収穫機として活用しております。
通常はモアと言って、トラクターのアタッチメントとして使う機械もあり、それを使っておりましたが、1年間に10ヘクタールのWCSを収穫すると、2年で使えなくなってしまいますので、やはりこういった専用機械が要るのではないかと思っております。普通の牧草ですと、モアコンディショナーでも使えますが、やはりWCSは硬くて量がありますので、普通の機械ではまず無理だということで、うちの社長もいらついて、こんなのは嫌だということで、こういった形のものにしました。
右の真ん中の写真は、これも農家のお手伝いということで、稲刈りをするコンバインを入れております。その右は今年の3月に取得しました青刈り麦の収穫です。これも早期前の後になかなか牧草を作ってくれないところがございまして、早期前作付けする裏作というのがなかなか活用できていなかった現状を踏まえて、麦でいいから作らせてくれとお願いしまして、ここで5ヘクタールぐらい作らせていただいております。水田裏を利用した耕作は、私の受託で15メーターぐらいは裏作として期間借地という形で作らせていただいております。
それから、エヌプロの今後について、中間管理機構の御支援もございまして、農家から集約させていただいております。そして自己作付けをし、販売等拡大していきたいと思っております。
島外から壱岐に来たいという方がたくさんいらっしゃるんですけれども、なかなか住むところが確保できません。うちも募集して応募があるんですけれども、住むところがないので来ていいよとなかなか言えない状況があって、空き家等の利活用をもっと進めていただきたいなと思っております。
最後のページなんですけれども、肉用牛経営では、一戸当たりの飼養頭数が拡大しております。少頭数の農家はだんだんやめていっていますし、また、少頭数の農家は基本的に高齢の方が多くて、大規模農家が増えてきている状況です。その状況に合わせて、作付面積もなかなか増える状況ではないものですから、そういったことも踏まえて、自分たちで作って応援してやろうと考えております。
それから、先ほどから申しますように、飼料用のとうもろこしの作付けを増やしていって、配合飼料に一部代わる餌として利活用していきたいと思っていますので、今後、皆様方の御協力をお願いしたいと思っております。
以上で説明を終わります。御清聴ありがとうございました。
〇小針部会長
ありがとうございました。
それでは、質問等ある方は挙手をお願いいたします。
彦坂委員、お願いいたします。
〇彦坂委員
どうもありがとうございました。
御説明していただいた中で、廃菌床を飼料に使われているというお話について、それに取り組み始めた経緯やきっかけだとか、あとは、例えばそういうものを使った農業技術センターとかでの試験結果など、そういうものを参考にされて取り組まれたのか、その辺の取り組まれるきっかけについて、お話しいただければと思います。
〇野元様
お答えします。
以前から廃菌床を使った餌というのがございました。なかなか場所が遠くて仕入れることができなくて、自社のトラックもないし、運搬に関しては海上運賃も含めて運賃も高くなるので、なかなか手に入れることができなかったわけですけれども、最近になって、ある飼料メーカーさんから、「こういったものを作りました、肥育の前期にどうですか」とか、「肥育の経産牛にどうですか」という御相談を受けました。僕の友達も使っているという経過もあり、良かったという話を聞いて、やってみようということになったわけです。
さらに進化したのが、この廃菌床の中に一部、配合飼料といいますか、単味とうもろこしを入れておりまして、そのことが更に肉を充実させる結果につながったのかなと思っております。
〇彦坂委員
どうもありがとうございました。
これを質問させていただいた背景について、私は神奈川なんですけれども、地元でお付き合いのある生活協同組合が農福連携で、ハンディキャップがある方たちとシイタケを栽培する取組を始めているんですね。その中で、菌床をどうするかという話が出ていて、その菌床は肥料にして何とか堆肥にして使ってもらおうということなんですけれども、行き先もまだはっきり分からなくて、もしも飼料として有効であれば、神奈川県内の肉牛をやっている方も存じ上げているので、飼料という形で、こういう菌床のものが出てくるんだけれどもという、つなぎができればと思ったものですから。
〇野元様
ありがとうございます。
菌床の原料そのものにも一つ工夫がございまして、のこくずを使った菌床では少し厳しいという話です。牛も食える原材料というのがございまして、コーンコブだとかふすまだとか、そういったものを使ったキノコ菌床を使っております。
〇彦坂委員
分かりました。どうもありがとうございます。
〇小針部会長
それでは、ほかに御質問、御意見のある方はお願いいたします。
小山委員、お願いいたします。
〇小山委員
宮城県で繁殖和牛を飼っております小山と申します。
宮城全共のときにいらしたんですね。私は長崎全共では補欠で行けなかったので、とてもうらやましいなと思いました。
島で粗飼料を随分生産しておられますけれども、牧場全体の自給率はどのぐらいでしょうか。
〇野元様
今は端境期という時期でございまして、もう少しすると、収穫したイタリアンを給与できるようになります。3月末に収穫したものが、恐らく4月末には給与することができるので、端境期の2月、3月、4月の3か月間不足するぐらいで、あとはほぼ自給飼料でいけています。この3か月間をクリアできるような体制を作りたいなと思っています。
だから、12分の9か月は自給できていると思っております。パーセントでいいますと少し分かりませんけれども、そういうふうにパーセントに変換していただけばと思います。
〇小山委員
暖かいところなので、うらやましい限りでございます。焼酎もありますしね。
〇小針部会長
ありがとうございます。
二村委員、お願いいたします。
〇二村委員
ありがとうございます。
担い手のことで、島外からの方を積極的に呼びたいというお話があったのですけれども、住居が余りないということをおっしゃっていました。茨城の方でも同じようなことを聞いて、私たちからすると、もう少し移住が進められないのかと思ったりするわけですけれども、そのあたりの事情をもう少しお話しいただけるといいなと思いました。それから、島外から担い手の方に来ていただくことを考えたときに、先ほどの住居以外に、こういう地域の課題があるとか、そういうことがあればお話しいただきたいと思いました。
よろしくお願いいたします。
〇野元様
ありがとうございます。
住居について、空き家はあるんですよ。空き家はあるんですけれども、壱岐の人はなぜか知らないですけれども、貸したがらない、売りたがらないというところがございます。
あと、小学校等も少なくなっておりまして、県の公舎も空いている部分があります。県の公舎も空いているので、県の振興局に貸してくれよと話をするんですけれども、なかなか上が動かないということで、壱岐の振興局さんは、そういった取組をしないといけないなということで、動こうとしている状況です。
ですから、そういったところも活用できれば、もっと人も集めることができるのかなと思っています。
〇小針部会長
ありがとうございます。
それでは、小椋委員、お願いいたします。
〇小椋委員
北海道の小椋です。よろしくお願いします。
コスト低減に向けた繁殖から肥育までの一環経営についてお話しいただきましたけれども、何点か御質問させていただきます。エコフィードやサイレージを飼料として食べさせながら、短期肥育に心がけてコスト削減をされているということで、大変すばらしい理想的な肥育をされております。枝肉の重量が直近では440キロというデータが出ておりました。枝肉の格付、等級等々は平均してどの程度なのか、お尋ねしたいと思います。
〇野元様
お答えします。
最近では、やはり種牛の能力が高いのか、24か月齢でもA5の10番などが出ます。確率的に言いますと、4等級以上が7割は出ます。今の和牛では2等級はほぼ出ません。2等級が出るのは経産牛ぐらいでして、出荷できるなという判断をした牛だは、ほとんど4等級になっていると思います。こいつはやばいけれども、出せそうかなという牛は、3等級になる可能性が高いですが、7割から8割近くは4等級以上ということです。
〇小椋委員
なるほど、7割から8割ですね。
あと、もう一点、肥育牛にとうもろこしサイレージやエコフィードを食べさせておられますけれども、一般的には穀類が中心になるかと思います。このサイレージを食べさせたお肉について、これが全く肉として白身が黄色身になるですとか、うまみを向上させるということが資料にも書かれておりますけれども、肥育牛に対してサイレージを食べさせても全く問題ないものなのでしょうか。
〇野元様
全く問題ないとは思います。
というのは、経産牛の肥育をして分かるんですけれども、経産牛を肥育すると、自家産の餌をやった牛は、ほぼ脂肪の色が白いです。白過ぎるくらいなので、困っている部分はあります。妊娠牛を飼うときに青い草を主体的に給与している農家の牛を買った場合は、6か月肥育しても脂肪の色が抜けず、黄色いままで単価が落ちることが多いです。
サイレージのベーターカロテンの量がどのくらいあるかは判断はしていないんですけれども、サイレージそのものをやったときに、青い餌でも脂肪はそんなに黄色くはならないと思っています。逆に、白過ぎなくて、ちょうどいいぐらいの色になるんではないかと思っています。
〇小椋委員
分かりました。ありがとうございます。
〇小針部会長
それでは、ほかに御質問、御意見のある方、挙手をお願いいたします。
井上委員、お願いいたします。
〇井上委員
北海道で肥育をやっています、井上と申します。
業界でも推奨されている短期肥育ですよね。24か月齢はすばらしいなと思います。そこそこの大きさもできるんでしょうし、今の和牛の血液ですから、そこそこのサシも入る。みんながなかなか踏み切れないのは、やっぱり問題は販売価格なんですよね。これは市場に持っていくと、どうしても競り負けてしまう。その辺はどういうような販売戦略を練っているのかということが1点です。
〇野元様
おっしゃるとおり、競りでは負けます。だから、取引は相対取引でやっています。これでいいというところに売って回るようにしています。競りですと、やはり買いたたかれる可能性が高いといいます。だから、買う側も26か月は飼ってほしいという話になってくるんですね。
〇井上委員
全頭、相対でやっていらっしゃるんですか。
〇野元様
一部、競りも出しています。自家産の牛は相対で取引して、一部市場導入した牛がおりまして、市場導入した牛は27ヶ月齢で出しています。上手に二通りやっています。
〇井上委員
分かりました。
もう一つ、よろしいですか。肉牛経営をしていますと、どうしてもマルキン制度、それから子牛基金制度などの恩恵を被ったり影響を受けますよね。今期6年、また新しい制度が価格その他で改正されたんですが、子牛基金について言えば、今回55万6,000円の和牛と、それと臨時経営支援というのも出ましたよね。
あと、優良和牛子牛生産というのがあるんですが、今ここにいる農水の先生方が一生懸命知恵を絞って作ってくれたものなのです。その子牛基金、それからマルキンに対する思いとか感想があれば、同業者としてお聞きしたいです。
〇野元様
子牛やマルキン制度ですね。マルキンはおっしゃるとおり、大変有り難く感じております。
ただし、北海道と長崎県でマルキンで出るお金の差は、かなりあると思います。ですから、なぜ長崎県はこんなにマルキンが低いのかなと考えると、子牛が安い影響だと思います。長崎は九州でも一番安いんですけれども、皆さん努力して安い牛を飼っているんだなと思っていますし、恐らく北海道と比べると10万ぐらい差があるんじゃないのかなと思います。ですから、不利な立場で生産しているというのは、もう間違いないのかなと思っています。肉用子牛生産者補給金に関しましても、やはり高く売らないともうからないが、一律ですよね。いわゆる兵庫県の牛は、平均80万から90万していますよね。長崎県はやっと55万か58万ぐらいになったところですけれども、それでも補塡金は一律ですね。55万6,000円か、上がったかもしれませんけれども。その差というのはどこでどうやって生まれるのか。高く売った方が余計もうかることになっている、安く売ったところはもっとやりなさいよと言われているような気がするんですけれども、あれはどういう感じで皆さんは考えているのかなと、こちらから聞きたいなと思っています。
〇小針部会長
よろしくお願いします。
〇猪口食肉鶏卵課長
食肉鶏卵課長でございます。
先ほどお話の出た子牛の、例えば肉用子牛生産者補給金、全国平均価格が保証基準価額を下回った場合にその差額を出すということで、正に全国一律でございます。
全国一律であることの考え方として、一つは、まずそもそもこの仕組みが輸入自由化対策で、輸入自由化の影響は全国一律ということで一律でやっているということ。もう一つが、やはり一律に出すことによって、より高く売れたところが報われる。それぞれ皆さんが高く売る努力をしている中で、安く売られた分だけ補塡するとなると、より高く売ろうとする努力が阻害される部分も出てくる。そういう観点から全国一律でやっておりますが、一方で、かなり地域別の価格差も出てきておりますので、肉用子牛生産者補給金に上乗せする臨時経営支援事業につきましては、全国を4ブロックに分けてブロック別の価格で見るようにしておりますし、また、先ほどお話の出た兵庫県が高いというような話についても、昨年末の仕組みの見直しの中で、標準偏差が2を超えるような、極めて高く売れているようなところはブロック算定から外すとか、そういった見直しをしながら運用しているところでございます。
〇小針部会長
ありがとうございます。
ほかに質問、御意見のある方、いらっしゃいますでしょうか。
それでは、野元様、ありがとうございました。
続きまして、株式会社蔵王ファームの髙橋より発表いただきますので、事務局より御紹介をお願いいたします。
〇新井畜産総合推進室長
それでは、資料6を御覧ください。
株式会社蔵王ファーム様ですが、山形県を拠点としました髙髙橋畜産グループの生産部門を担っており、繁殖及び肥育農場を有しております。同グループ内で食肉加工も行っておりまして、生産、製造、小売まで一貫した販売体制を実現しているところです。
それでは、髙橋様、御発表お願いいたします。
〇髙橋様
こんにちは。山形と宮城で牛を飼っております蔵王ファームの髙橋勝幸と申します。よろしくお願いをいたします。
次、お願いいたします。
弊社は、私の父が昭和23年に創業いたしました。当時、戦後の混乱期の中で、お肉を食べたときのお客様の笑顔というのが、この会社の原点となっております。当時から生産と販売をしておりました。
次、お願いいたします。
昭和24年にお店を開店いたしまして、私は昭和60年にこの会社に入社しました。63年に、当時一つの会社だったものから生産部門を分けて、蔵王ファームとして分割をさせていただきました。
平成13年には、その蔵王ファームの宮城県側をまた分割しまして、蔵王高原牧場ということで、現在3社、一つの会社が三つに分かれて運営をしているということでございます。規模としては御覧のとおりでございます。
では、次、お願いいたします。
この会社の一番の特徴は、種付けからお肉の小売まで一環して自分たちの手で行っているということでございます。と畜業務だけは自社ではやっておりませんが、それ以外の全ての工程を私たちの手でというのが、取組の一番のポイントでありまして、我が社の強みにもなっていると思います。
では、次、お願いいたします。
今、生産は大中小合わせて6か所で行っておりまして、宮城県側、蔵王高原牧場の川崎育成牧場では、繁殖母牛が530頭ほどの繁殖を行って、ほかの牧場に雄牛の供給を行っています。蔵王高原牧場、宮城側の宮城蔵王牧場では、交雑の一貫と黒毛和種の肥育、あと、経産牛の肥育を行っています。
山形側の山形蔵王牧場、山形第2農場では、山形牛となるような黒毛和種の生産、あと米澤農場、米澤第2農場では、米沢牛となるような黒毛和種雌の肥育を行っておりまして、全農場で農場HACCPを取得しております。
では、次をお願いいたします。
アニマルウェルフェアを当初から意識していたわけではありませんが、どうすれば子牛の事故や肥育の事故が減るかということをいろいろ試行錯誤している中で、1頭当たりの面積もかなりゆったりしたものにしたり、暑さ対策、寒さ対策、あるいは鼻環なども牛が痛がりますし、装着する人間も余りやりたくない仕事ですので、廃止しました。いろんなことをやりながら、今となってみると、そういうものがアニマルウェルフェアにも配慮したやり方になっているんだなというところです。
山形蔵王牧場は、JGAPも取りました。ほかの牧場ではまだ認証は取っておりませんが、同じような考え方で運営をしております。
次、お願いいたします。
その結果の一つですが、山形はもともと肥育県でありまして非常に成績がいい県だと思いますけれども、それと比較しても、黒毛和種、交雑種共に上物の比率がそれを上回るような状態になってきております。
また、食味分析なども行ってみますと、山形県米沢はおいしいお肉ということで評判も高いんですが、その平均よりも上回るような数値も出ております。ただ、これがどういう理由によるものかというところは、まだ推測の域は出ておりませんので、これからいろいろ研究をしていきたいと考えております。
次、お願いいたします。
一貫でやっているということで、種付けの状況、子牛の状況、あるいは肥育、あるいは枝肉の格付や骨を抜いたときの状況、あるいはスライスしたり小売で売ったり食べたときの状況、いろんな状況を同じ会社でやっているということで、その情報を一つのデータにまとめて、どういうことが起きると結果がどうなるのかというのを分析できるような、そういう仕組みを構築して、いろんなデータをどんどん蓄積してビッグデータにしようとしております。その中で、よりよい肉作りにどう生かすかということを考えていきたいと考えております。
次、お願いいたします。
飼料高騰対策といたしましては、一番は粗飼料、わらの利用ということで、山形、宮城は稲作が盛んですので、地元のわらを農家さんと連携しながら、あるいはわらをロールにしてくださる方々と連携しながら、ほぼほぼ100%に近いぐらい、わらを一生懸命集めまして、それを粗飼料にするというのが一番の飼料高騰対策になっています。
あわせて、コントラクターで牧草を取ってもらったり、あるいは北海道から牧草を購入したりなどということをしたり、次のページで御紹介しますが、人が食べるときに出てくる副産物というか、未利用資源を有効に活用して、エコフィードとして食べさせるようなこともやっております。ここに書いてあるように、国産飼料としては4割程度を何とか実現できるところまで来ております。
では、次、お願いいたします。
今集めている資源としては、ここに書いてあるようなビール粕や菌床も使っております。やっぱりこういう飼料はあまり遠くから運ぶとコストが高くなってしまいますので、地元というか近隣の工場などからできるだけ集める。ただ、なかなか産出量が安定しないところがありますので、都度都度、飼料計算をしながら産出量に合わせて飼料を作って食べさせているということです。どちらかというと、このエコフィードは、育成と肥育前期で主に使われておりまして、量がそんなに集まらないので、中期、後期はかなり少ない量になっているという状況です。
次、お願いいたします。
DXの取組としては、先ほどいろいろな情報を一元にするということも紹介しましたが、あとは牧場が6か所に分かれて、他の部門も入れると、かなり多岐にわたるので、ビジネス版のLINEを使って、全ての部署の人間が例えば枝肉の画像など、何でもお互いに見る。あるいは会議をすると議事録や、稟議はこれで稟議書を出すとか、いろんなことをしながら、いろんな部署に分かれている人間が情報を共有して一体となってよりよいものを作れるような取組をしております。
次、お願いいたします。
SDGsについて、今いろいろ牧場が取り組んでいることはSDGsにつながるものが多いと思っており、各部署ごとに自分たちができるSDGsの取組は何なのかということを検討して、それを年間目標として捉えながら、みんなで少しずつ取り組むということをやっております。
次、お願いいたします。
環境保全は、やはり稲わらをできるだけ集めることによって国産比率も上げられるし、粗飼料単価も下がるというところがあって、子牛を買う方と連携をしながら、ふすま、わらを集め堆肥も使っていただけるような方向にしたいと思っておりますが、ただ、東日本大震災以降、堆肥の使用量が少し下がっておりまして、今、牛ふんを使ってバイオマス発電ができないかなどということも関連している会社と協力しながら実験をしています。
次、お願いします。
働きやすい職場ということで、法人でもありますし、そういった改革を少しずつ実現しながら、女性の方にも活躍できるような職場作りというのも心がけております。自動給餌機とかで、重労働をできるだけ軽減できるように、また、やはり女性の視点というのは、特に子牛のお世話のところでは非常に重要でありまして、女性の方々が出されたアイデアをいろいろ取り入れながら牛作りもやっておりますし、肉の部門の方では商品作りもしております。
次、お願いします。
牧場はいろいろな地域の方に支えられて成り立っておりますので、いろいろな形で地域に少しでも還元できるように考えながら、持続可能な牧場にしていきたいと考えているところです。
次、お願いいたします。
ここからは、今、消費者がどういうお肉を求めているかということですが、霜降りが大好きという方は、私の肌感覚では10人中3人ぐらいはいらっしゃると思いますが、6人、7人ぐらいは赤身のお肉を食べたいと考えていらっしゃるのではないかなと思っています。
ただ現状、やっぱりA5が一番市場相場も高いですし、お客様のニーズと市場相場があまり連動していないというところがあると思います。現状、A5、つまり以前の格付で言うと極上、特選というのは、大体、脂が40%ぐらいだったと言われていますが、今のA5の霜降りの多いものは、60%を超えるようになってきていて、実際食べてみてもやはり脂が多く、好まれていないのかなと思っています。
ただ、なぜA5が市場相場でいい値段が出ているかというと、やはりロースとか肩ロースは脂が多くて少し使いづらい部分はあるんですが、それ以外の部位は、A5の方が霜降りも入ったりするので、非常に見栄えもよくて売りやすいということもあります。あとは、やはり商品にもA5と書くと、お客様にいい肉だなと認知していただけるので、A5の方が市場では高い価格が形成がされていて、生産者が市場を利用するとなると、やはりA5を目指すことが求められてしまっています。
次、お願いします。
早期出荷という話が先ほどからも出ています。同じ牛舎のスペースで早期出荷すると、回転が速くなって、その分多くの頭数を販売できるので売上げも上がるということ、一頭当たりのコストが下がるというメリットがありますが、デメリットとしては、どうしても肥育月齢を気にする購買者もいますし、長く飼うと脂の質もよくなるということもあります。味にこだわったり、あるいはブランドを付けて販売されたい方は、なかなか早期出荷した牛を評価していただけないということがあるようです。
次、お願いいたします。
あと、早期出荷とはまた別なんですけれども、交雑という品種もありますが、今非常に、交雑は人気があると思います。黒毛和種は少し高くて、なかなかテーブルミートとしては…という一方で、交雑種は小売業者が取り扱いやすい価格帯であるということ、また消費者からしても国産牛で味もそこそこおいしくて、買いやすいというメリットがあります。
ただ、同じ餌を食べた黒毛和牛だと単価が2,000円台ですが、交雑種だと1,000円台にしかならないということで、単価が低い。本当にいいものがたまたま出ても、交雑種の場合は値段が頭打ちになって、いい値段に飛び跳ねるということがほぼない。また、やはり酪農家さんが何を種付けするかで交雑種の頭数が決まるので、なかなかその辺が不安定であるようです。
次、お願いします。
その中で、どういう解決策があるのかという事についてまとめてみましたが、市場売りをしてしまうと、早期出荷はなかなか難しいので、環境への配慮など、いろいろなところでブランドを作って、生産者が流通業者や消費者を巻き込んで連携していくことが必要だと思います。それによって、短期肥育の牛でも安定的に買っていただけて、うまく再生産ができる。先ほどの発表でも相対取引をされていらっしゃるということでしたけれども、やはりそれが一つの解決策だと思います。
次、お願いいたします。
あともう一つは、やはり脂が多いロースや肩ロースを、日本ではなくて海外にいい値段で買っていただき、残りを日本で販売するマーケットというのも、一つの解決策になるのではないかなと思います。ただ残念ながら、輸出ができると畜場というのはまだまだ限られております。特に東北は対米基準的なところに輸出できるのは本当に限られたと畜場しかなくて、なかなか輸出が伸びていかない状況にあります。
その施設を県で建てようとしても、あまりにも予算的に難しい状況がありまして、現在、山形県でも検討していますが、なかなか自力では難しいという結論になっております。様々な国に輸出できるようなと畜場を、運営も含めてどのように造っていくかというところに、国にもう少し関与して考えていただけると、和牛の売り先も増えていくのではないかなと感じております。
どうもありがとうございました。
〇小針部会長
ありがとうございました。
それでは、御質問等ある方は挙手にてお願いいたします。
石田委員、お願いいたします。
〇石田委員
髙橋さん、すばらしい経営内容の発表ありがとうございました。
神奈川県で酪農業を営んでおります石田陽一と申します。
髙橋さんの各農場は農場HACCP認証を取得されていて、一部の農場ではJGAPも受けられているということで、弊社も農場HACCPとJGAPに取り組んでいるんですけれども、農場HACCPの方は、うまくPDCAが回るシステムとして、自分としても経営改善を非常に実感していますが、JGAPの方が、なかなか価格転嫁やブランド化にうまく活用し切れていないという課題を感じております。
髙橋さんの取組について、JGAPを取られている農場と、まだ取られていない農場の方で、商品力やブランド力というところで、実際に効果的な形で有効な差が出ているのかという質問が1点と、JGAPの取組について、どこをメリットとしてお感じになられているかということをお伺いしたいなと思っております。
〇髙橋様
弊社が、農場HACCP、JGAP取得を目指したのは、一つは工場の方でISO22000に取り組んでおりまして、そのマネジメントシステムが非常に運営のレベルや社員のレベルを上げたという経験を踏まえて、是非牧場でも取り組みたいという事です。
また、取り組んだ当時は東京オリンピックを控えておりまして、何とか東京オリンピックに私たちの牧場で作ったお肉を選手村等で取り扱っていただきたいという目的というか目標があって取り組みました。
今、1か所だけJGAPを取得している状況ですが、そのほかの農場でもJGAPの考え方を取り入れながら、認証は取っておりませんけれども、同じような形で進めております。JGAPに取り組むメリットとしては、一つは、やはり外国の方には非常に納得性があり、アピールができるかなということです。
あとは、やはり労働安全や働く方々の視点についても、これまで気づかなかったところが出てきて、より事故の少ない牧場を目指せているかなというのが二つ目です。
三つ目は、アニマルウェルフェアについて、先ほど申し上げたように、アニマルウェルフェアを意識していたわけではありませんが、しっかりと牛の事故や健康管理をしていく上では、そういう考え方もちゃんとベースにあると、より牛の健康を守れるのかなということもあり、そういうことを社員がしっかりと知った上で働いている事が重要かと思いましたので、そういう考え方を持ちながら、社員一体となって取り組めるというのは、非常に価値のあることだと思っています。
ただ、ブランドとして差が出ているかということですが、正直まだJGAPも農場HACCPも、一般の消費者にはあまり知名度がない状況ですので、やはりそれは実際我々が販売するときに、もっともっとお客様に伝えていかないといけないことだと思います。我々は小売もやっているものですから、農場HACCPのマークや、JGAPのマークもありますので、そういったシールをちゃんと貼ったり、JGAPがどのようなシステムなのか、農場HACCPはどういうことをやっているのかというのをもっと伝えて、お客様にしっかり価値を認識していただくことで、我々のお肉のブランドがもっと高まっていくのではないかなと思いますので、これからそれをもっともっと伝えていきたいと考えているところです。
〇小針部会長
ありがとうございます。
それでは、ほかに御質問、御意見のある方は挙手でお願いいたします。
前田委員、お願いいたします。
〇前田委員
すばらしいお話ありがとうございました。
髙橋様のところは、生産の取組やSDGs、それから加工・販売や地域との取組など、規模も大きく、本当に非の打ちどころがないようなすばらしい内容だと思って聞いておりました。その中で、生産も加工・販売もどちらも苦労があると思いますが、今日は特に加工と販売についてお尋ねしたいと思います。
私たちも最近、加工・販売に取り組み始めたばかりで、前途多難な気分もしております。髙橋様のところは、昔から肉屋さんをされていて、かなり有利なのかなと思いますけれども、よく、加工はなかなかもうからないとかという話もあります。実際その辺のところはどうなのか、分かる範囲でいいので教えていただければ。また、今小売もされていますけれども、自社の販売以外に、ホテルやレストランなど、そういったところにも販売されているのかということ。私たち生産者がそういうところに売る場合に、精神的な負担も大きいのかなと思ったりしますが、その辺のところも含めて教えていただければ有り難いです。お願いします。
〇髙橋様
ありがとうございます。
私どもは、自分たちが生産した商品を相場に左右されずに、うんと付加価値を付けて販売をしたいと考えて、牧場で作った交雑種には蔵王牛、黒毛和種には蔵王和牛という名前を付けて販売をしています。
私たちが作ったものを自分たちで全部売るというのは、非常に大変だとは思いますけれども、コツコツとそれを目指しながら生産を拡大し販売力を付けて、また生産を拡大するということを少しずつやってきました。
やはり加工品などについても、こだわりの商品や自分たちの取り組んでいることをしっかり伝えながら販売すると、うちの商品に対するファンもついてますし、相場に影響を受けない価格で買ってくださるお客様も増えてくると思います。やはり皆様は、こだわりを持って生産されていらっしゃると思いますから、それを伝えながら、自分たちで販売する取組というのは、大変だとは思いますけれども、やる意味と価値はあるのではないかなと私は考えております。
お答えになりましたでしょうか。
〇前田委員
すみません。ありがとうございます。具体的に……
〇髙橋様
質問がありましたね。
弊社では、まずと畜した枝肉から骨を抜いて部分肉にして、それを食肉の専門店さん、特に米沢牛とか山形牛を販売している専門店さんや、こだわりのある量販店、スーパーさんに卸しております。
あとは地元の旅館さんとか、焼き肉店さんとかそば屋さんとかに卸す部門もありますし、ギフトにして蔵王牛のギフトパッケージや蔵王和牛のギフトパッケージなど加工品のものを全国に発送するような部署もあります。
あと、あわせて山形市内でmoh’zと元気市場という2店舗のスーパーを経営して、そこで自分たちの作った牛肉をお客様に販売をしております。
〇前田委員
ありがとうございました。
〇小針部会長
ありがとうございます。
それでは、椛木委員、手が挙がっておりますのでよろしくお願いいたします。
〇椛木委員
お話どうもありがとうございました。
先ほどの髙橋さんのお話で、今、消費者の方々はおいしい赤身を好んでいるというお話があったんですけれども、農場の方では血統的に脂肪が少なめとか、そういう特徴のある牛をどんどん増やすような動きがあるのかなということと、消費者にお肉の赤身が好まれるということについて、農水省とか国の方々もどう捉えているのかなというのは正直思っていて、生産者の方々は、やっぱりA5がいいお肉だと思っていて、そういう血統の牛が高く取引されたりとかしているし、そういう血統のいいものをこちらも移植しようとか授精しようとかしているけれども、実際そういったお肉を消費者の方が、そこまで好まれないということであれば、これからどうなっていくのがいいのかなというのは、個人的にすごく気になるところなんですけれども、農水省としての考え方もお聞きしたいなと思います。
〇髙橋様
まずは私からでよろしいでしょうか。
残念ながら、霜降りが入らない生産ということを目指してはいませんが、先ほど申し上げたように、今はA5のBMS10番以上が付いているものが、やっぱり価格も評価も高いというところがありますので、それを全く目指さないで作っているということではありません。ただ、弊社の蔵王和牛としては、どうすれば霜降りが飽きたという方でもおいしいと感じていただけるか、赤身のおいしい和牛というのは一体何なのかということを日々を考えながら、いろいろな取組もしています。
先ほど申し上げたように、霜降りが多いというのは、部位でいうとロースと肩ロース辺りなんですね。あと、もちろんバラの霜降りの入るところなんかもあるんですけれども、ももとか腕とか、それ以外の部分というのは、やっぱりA5の方が商品としては価値があって、その辺を用途としてどのように使うか、どのように召し上がっていただくかということによって、その辺も解決できるところはあるんだろうと。霜降りの肉と赤身肉それぞれのおいしい食べ方があるんだろうと思います。
今は100%のうち6割以上が脂になってしまっているということも、やはり問題だと思いますので、やはり少なくとも脂は4割程度に抑えながら、いい霜降りをどう作れるかなどというのも一つポイントなのかなという思っております。どうすれば赤身がおいしい、和牛のいい味が出せるかというのが我々のテーマでもあります。
以上です。
〇椛木委員
ありがとうございます。
〇小針部会長
髙橋様、ありがとうございます。
お願いいたします。
〇郷畜産振興課長
畜産振興課長でございます。
国としてどういう和牛を目指していくのかという御質問だったと思います。今、髙橋髙橋社長もおっしゃいましたけれども、どういう部位をどういう人に売るのかということは、ニーズが結構異なると思います。例えば外国に売るのであれば、やはりロースや肩ロースのすばらしい和牛で霜降りの入っているものが好まれているという事実がある一方で、国内の方には、今、蔵王牛の話もありましたけれども、買いやすい値段でおいしいものが求められるということで、ニーズが分かれているんだろうなと認識をしております。
また、生産者側から見ますと、髙橋社長のところは、競りで売らないで相対で売るんだというお話もされていらっしゃいました。やはり、市場で評価される牛を作るという見方と、自分で売るときに売りやすい牛を作るというのは、必ずしも一致しないんだろうと考えております。
そのような中で、私どもは5年に1回、家畜改良増殖目標を出しておりまして、直近では令和2年に出したところです。その中では、霜降りの度合いは現状程度でいいという目標を定めさせていただきました。また、増体については、より少ない飼料でしっかり大きくなるようなものを、という目標を立てさせていただいているところです。
これからの方向性についても、そう遠くない将来しっかり皆さんで議論していただいて決めてまいりたいと思いますので、いろいろな方のお話を伺いながら検討してまいりたいと考えております。
以上でございます。
〇小針部会長
ありがとうございました。
それでは、本日欠席の大山委員から質問がありますので、事務局よりお願いいたします。
〇新井畜産総合推進室長
大山委員より質問を頂いておりますので、代読いたします。若干関連するかと思います。
資料では、消費者は赤身のおいしい肉を求めていると書かれています。肥育期間を短縮することで、今よりも赤身の程度は向上するでしょうし、現在の黒毛和種の素質を考えれば、それでも十分なサシが得られるのではないかと考えます。
ただ一方で、早期出荷のデメリットとして、味への影響を挙げておられます。これは一定の肥育期間を経ないと得られない味があるということでしょうか。また、表現が可能であれば、具体的にどのようなものを指しておられるのでしょうか。味に肥育期間が必須なら手が出せませんが、肥育期間が短くても十分に味のある牛肉があると分かれば、改良に取り組む価値があると思いますし、肥育開始月齢を早めることで達成できる可能性もあります。消費者が求める牛肉に適切な価値が付く市場となるためにも、出荷月齢以外の指標が必要だと感じています。
以上でございます。よろしくお願いします。
〇髙橋様
肥育期間が長くなることによって、不飽和脂肪酸というしつこくない脂の質が増えていくというデータがあるようです。どうしても、やはり長い方を好んで買われることもあります。
あとは、やはりブランド牛として販売する際に、消費者にとっては、肥育期間が短いものよりも長いものの方がいい肉だというような、分かりやすさがあるのかもしれません。肥育期間を売りにして、ブランドを付けていらっしゃるブランド牛や生産者もいらっしゃるというのも事実です。
あと、肥育期間が長くなれば当然重量は増えます。ただ、最後の方は、特に雌などは脂が増えていくということで、正肉歩留りは悪くなるという傾向もあるようですが、枝肉で販売される生産者にとっては、やはり枝肉重量かける単価で売値が決まるので、やっぱりそこも肥育期間を長くして重量を取りたいという考え方もあるんだろうなと思います。
今の御質問にあったように、期間をもう少し短くしながら、もっとリーズナブルな値段で食べられる和牛というものもニーズとしてはあるんだろうと思いますが、生産者としては、やはり販売金額を考えると、その選択肢を選ばれる方は少ないというのが現状なんだろうと思います。価格がやはりネックになってくるということだと思います。
それを解決するためには、先ほどちょっと発表させていただいたように、市場売りではなく相対により、ストーリーをしっかり伝えながら再生産できる価格で買ってくださるところとコラボしてやっていく、そういう肉でいいよという消費者をしっかりつかむということが必要だと思っています。
以上です。
〇小針部会長
髙橋様、ありがとうございました。
それでは、次の発表に移りたいと思います。
続きまして、株式会社岩﨑食料・農業研究所の岩﨑様より発表いただきますので、事務局より御紹介をお願いいたします。
〇新井畜産総合推進室長
それでは、資料7を御覧いただければと思います。
岩﨑様は、これまで海外駐在などもされながら穀物の輸入業務などに従事をされまして、市場調査にも携わられた後に岩﨑食料・農業研究所を設立されました。農産物取引やシカゴ穀物市場の解説に従事され、これまで数々の寄稿や講演などの活動をされております。
それでは、岩﨑様、御発表お願いいたします。
〇岩﨑様
皆様、今、御紹介にあずかりました岩﨑でございます。
今日のお話は、普段皆さんがお聞きになっている話とは少し違うかもしれません。
まず一番最初にお話ししたいのは、穀物の国際需給の現状について、去年から今年にかけての動きのまとめを簡単に申し上げます。
実は、去年からマスメディアが大変だと言っていたのは、2年前のウクライナ戦争が始まって供給がおかしくなったとか、エルニーニョ、ラニーニャの問題があるとか、地球温暖化による天候異変など穀物需給は大変な時代に入ったんだというようなことが言われていましたが、実は、去年のアメリカのとうもろこしは過去最高の豊作に恵まれました。
去年の8月1日時点の干ばつモニターの図によると、コーンベルトの中心が真っ赤になっており、これだけ干ばつが深刻化していた。しかし、秋に収穫してみましたら、なんと単収は史上最高になっていたというのが、このトレンドのラインより僅かに上になったグラフです。
そうなりますと、下のチャートのように、実はシカゴの穀物相場は動いていておりまして、このチャートの形をを相場の表現で言いますと、ヘッド・アンド・ショルダーといいまして、こういうシカゴ定期の三大穀物であるとうもろこし、大豆、小麦がほぼ似たような動きでここまで落ちてきました。最近は、これよりもう少し一段下のレベル、これは2月中旬までのチャートなので2か月足してやりましても、実はこのあたりに今の値位置があるということになります。では、一体何を騒いでいたんだろうかという話になるんですね。
ここで、シカゴの穀物取引所なんかでよく言われている格言を紹介しますと「3日天井に100日底」という、高いのは3日だけで、だらっとした低迷相場が100日続くということわざがあります。
それから、「高値が高値を癒やす」ということわざもあるんですね。この格言は、物が高くなりますと、生産者は喜んで出荷する、ないしは、その次の年のものに対して増産しようとすることです。最近は、北半球だけではなく南半球、要するに、アメリカだけではなくて、ブラジルが大きな産地となっていますから、アメリカが不作だったら、半年後にとうもろこしや大豆が出来るブラジルは、よしやってやろうということで増産していくと。逆にブラジルがおかしくなると、半年後になるアメリカやヨーロッパの農家が、よし、ブラジルがずっこけたから北半球の出番だなということで、、増産に向かってくれるということになります。そういうことで、今は高値が高値を癒やしたという状況になっています。
もう一つの言葉は、相場で使われる言葉です。「1割2割は物の変動、3割4割は人の変動」ということわざがあります。これは何かといいますと、1割2割は作柄の変動、つまり、天気がなせる業だけれども、3割4割は、大変だと騒ぐ人間心理、市場心理がとんでもない高値を作るということであり、だからこそ少し冷静に考えないといけないというような戒めのようなものです。
ちょうど今が、こういった三つの格言で一番よく示しているのではないかなと思います。
次のページにいきましょう。
もう一つ、毎回国際需給で大変だと言っている人達がいまして、頻繁に、とうもろこし、小麦、大豆などの期末在庫のチャートを使って、需給が引き締まっていますと言うのですが、実際に並べてみると、このような推移となります。需給は期末在庫はたっぷりあり、対消費在庫率という目安で測っても、以前のレベルからかなり改善されているため、そんなに心配することもないと言えます。
次のチャートです。
理由を話す前に、今、とうもろこしの世界は五大産地ということでくくって見ているのですが、上からアメリカ、中国、中国も北方、東北三省と言っている旧満州地区と四川省や華中、華北広東省なども含めた南部産地、これらの栽培時期がずれることを示しています。それから、ブラジルは特徴的ですが、南部産地の一期作とうもろこしと大豆の後に裏作になる二期作とうもろこしという二つの大きなグループに分かれて、だんだん二期作のウェイトが大きくなっています。その他ヨーロッパとアルゼンチンがあります。
割合は、それぞれの生産比率を記載していますが、御覧いただきますと、北半球と南半球では作付けの時期や収穫時期が違うことが分かります。つまり、それぞれの国の端境期が異なり、端境期の段階の在庫が一番低くなるため、。それを集計できると良いのですが、実は、世界である一定の日を基準とした在庫を集計した統計は今のところないのです。
日本の場合、会計年度はありますが、米穀年度とは違うというように、世界中の穀物年度は統一されていないのです。たまたま北半球が多いとか、小麦だけでみるとかなり統一されていますが、とうもろこしや大豆等を含めますと、全く集合体という数字は当てにならないということになります。
次に行きましょう。
そうしていきますと、飼料穀物はどういうことになるのかということで、これを並べてみました。
まず、とうもろこしの生産量を記載しておりますが、消費量、そのうちの飼料用途の部分を輸出しても世界全体ではきちんとまとまった期末在庫の確保ができることを示しており、いろいろな国で見ましても、大体消費に見合う生産ないしは供給は確保されているというのが実態です。
粗粒穀物という穀類にくくりになりますと、これはとうもろこしとそれに代替できる大麦やマイロ、エン麦、オーツ麦といったものの集合体なのですが、それを見ても需給は均衡している、ないしは供給が消費を上回っている状態になっています。
実は、小麦の飼料用途というのは、消費の2割ぐらいを占めており、非常に大きなものです。これは、ユーラシア大陸の西側、つまり、ヨーロッパやロシアのような小麦がたくさん取れるところで小麦が飼料穀物化しているからです。
したがいまして、全体として見る限り、飼料穀物全体の需給は、そんなに心配をすることはなく、世界全体でいろんな国の状況を見ますと、その土地その土地で手に入る一番安価な穀物が飼料穀物になるという状況です。
私の海外駐在は2か所、アメリカとオーストラリアですが、オーストラリアはとうもろこしがないため、畜産業では、ソルガムやマイロが代替になっており、格落ち品の小麦や大麦が飼料穀物としてフィードロットで肥育牛に与えられています。それ以外はグラスフェッドという牧草育ちになります。アルゼンチンですと、とうもろこしや大豆の畑の横に牧草がありまして、大体1ヘクタールに1頭程度で放し飼いしています。それが輪作の中に組み込まれているような農業をやっておりました。
ということで、必ずしも特定の何かの商品に対して、その需給を取り上げて大変だということではないのではという気がいたします。
次のぺージですが、これは商品代だけではなくて、海上運賃もここ3年ぐらい、だんだん落ち着いてきましたということを示しております。あれは何だったんだろうというふうなことが、今から振り返ると起こっていたということになります。
その次に、今、大問題になっているのが円安です。突如として為替が円安に振れた。2年前から日米金利差が大きくなりました。アメリカの経済が良くなり、インフレが起こる。インフレは大変だということで、アメリカの中央銀行であるFRBが高金利でインフレを抑えにかかる。日本はなかなか景気が回復できないので、内外の金利差が大きくなる。そうすると、高金利のアメリカに、日本だけじゃなくて世界中から高い金利のところで運用したいということで、皆さんの退職金や年金を預かっている世界中の年金ファンド、これが資金を動かして移行させていくわけです。
その中に、一部日本も加わって、強烈な円安という格好で今動いています。日銀だとか財務省というんですか、金融当局は投機だとよく言うんですけれども、投機ではなくファンダメンタルズがそうさせているということに、もう少し注意を払うべきじゃないかなという気がいたします。
それで、次に行きましょう。
時間がないので、もっとゆっくりこの関係のことを御説明申し上げたいのですが、こういった状況に置かれている中で、日本の農業界が置かれている現状について少し考えますと、今は日本のビジネスモデル、特に農業界の立場の前提条件が急激に地殻変動を起こしていると考えます。
私どもが育った子供の頃から考えますと、僕が大学に入った頃の1968~1969年頃ですが、高度経済成長ということで人口が1億を突破し、高度経済成長で食生活がどんどん洋風化・近代化し、需要が伸びていきました。こうした中で、、日本の景気がよかったこともあり、日本に外貨がどんどんたまる。アメリカから見ると、けしからんということで、外圧が強まった時代でした。
こういった時代を、為替で見ると、私が会社に入る直前にニクソンショックで360円の固定相場制度がなくなり、308円にと、そこから円高が始まったわけです。三陸沖の津波の震災のときは、100円を割って80円までになりました。ということは、だんだん円高の流れがピークに達したのは、80円ぐらいまでなんです。それだけの円高の流れの中で、日本の畜産業もあったということです。
ということは、日本で作りにくい農産物を作らなくても、海外から買えばいいじゃないかという議論が大半を占めていたと思うんですよね。自由化の波の中で、牛肉も自由化され、そして、運悪く、93年に日本の米に平成の大不作が起こりまして、そのタイミングでウルグアイ・ラウンドの農業合意ができたという経過がありました。
この中で私が思うのは、農業界に円高と同じ生産性を求めても、3倍ぐらいに円高になっているわけですので、それと同じだけ農業の生産性が高くならないと競争力は維持できないわけですから、それはちょっと無理だろうと思うわけです。
今は、農業の外で起こってきたものの流れが、マクロの社会では歯車が逆転しているのです。マクロ経済は、ここのチャートで示しましたように、急激に円安にシフトしている中で、我々はものを考えないといけないんじゃないかなと思います。
それで、最近の人口統計を見ますと、日本の人口が1億人を割れる時代がもうすぐ目の先に見えているという中で、日本の将来像を考える必要があるんじゃないかと思う次第です。
そういう見方の中で日本の畜産業を私の経験値から見ますと、今日お話になられましたお三方の話は、繁殖牛や肥育牛ということで、ブロイラーや養豚など比較的飼料の輸入依存度の高い畜種ではないため、少し話が違うのではないかと受け止められるかもしれませんが、日本は畜産業と穀物生産が分離されていたということで、私どもが子供の頃、20世紀は日本の飼料原料に頼らない方が有利だという時代が続いておりました。ところが、今はそれが裏目に出ているということで、海外の農産物に依存したことがかえって日本農業を成り立たせにくくしていると理解した方がいいんじゃないかと思うんです。
どのように円安の効果が出ているのかというのを、次のチャートで御覧になると分かりやすいのではないかと思います。この点線で示したのが円安の動き、つまり為替の動きです。為替の変化の推移と飼料原料、とうもろこし、大豆ミールといったものがほぼ並行して動いている、ないしは、円安ファクターの方が大きいということは、海外のドルベースの価格が下がっても、結果として円安が円建ての輸入価格を押し上げていると、こういうふうに推移をしているのが、ここ2~3年の特徴ではないかなと思うのです。
その次のチャートをお願いします。
こういった輸入価格の推移をとうもろこしで見ると、大体こんなイメージだということになるのですが、この表で説明し切れていないのは、実は資金の負担の問題なのです。私ども輸入業者の消費者に対する仕事というのは、例えばアメリカのとうもろこしを船に積むとなると、すぐ現金を払わないといけないのですが、実際にお金を頂けるのは、日本に持って帰ってきて、港で上げてどこかのサイロに収めて、数量、品質を確認して、初めて、あと何日後にお支払いしましょうという話になるのです。つまり、かなり資金の負担の期間がかかるということです。
その後、飼料会社が飼料工場で配合飼料にして、それを畜産農家に渡していく。畜産農家は、それを例えばブロイラーは8週間、養豚が26週間、肥育牛は20か月でしょうか、給餌しないとお金にならないですよね。とんでも長い期間が資金の面からかかっており、それと同じだけの期間、マーケットにおいて価格が変動するリスクにさらされているということです。その先でしかお金にならないというのが、この畜産業の宿命といいますか、懐妊期間の長い農産物の特徴なわけです。
米とかとうもろこしでも、120日クロップという言い方をするのですけれども、種をまいて収穫するまで120日かかり、120日後に市場に持っていったら金になるものです。昔の農家では、獲れ秋に出荷が集中して供給過剰となり価格が暴落することがありましたが、そうではなくて、前もって幾らになりますという値段を提示してあげれば、自分の自家サイロに置いておいて、3か月後、半年後に市場に持っていけば、金利、保管料込みの少しは割高な値段が手に入るかもしれない、そういう機能をどこかで持たせようとして始まったものがシカゴの穀物取引所というわけです。
それはいつ始まったかというと、ペリーが日本に門戸開放を言ってきた頃に、実はすでにシカゴでそういう農家と実需家との問題を解決しようという動きがあったということなんです。
そうしますと、今回の見直すべきところは何かという問題に対する答えは、マクロの経済が置かれている日本の問題点を農業だけに押しつけるのは、まず無理だろうということです。そうではなく、全体として、30年後、50年後を見据えた少子高齢化時代に、どういう農業が日本に必要なのかというビジョンを皆さんで御検討していただいて、もっと経営計画が安易に、有効に機能できるような、販売と購入の先をヘッジでき、先に約束できるような仕組みを作って差し上げることが重要だと考えます。
私は専門家じゃないのでよくわかりませんけれども、今の所得保障の仕組みというのは、後から何かが起こったときに損失を補塡するような仕組みのように聞こえるのです。そうではなくて、経営計画の段階など、物事を始める前に、こうすれば収益計算が成り立つというものを作れて、それが具体的に約束できる場所、売れる場所、買える場所、そういう手段を用意してあげることが、もっと思い切って取り組める方法になるんじゃないかなと。そういった仕組みを検討することも一つのアイデアじゃないかと考えます。
何か知恵を出せと言われてもあまりありませんので、アメリカで見聞きしていた作物保険の制度や民間の所得補償型保険などを参考にして、ちょっとアイデアだけで申し上げた次第でございます。
以上、雑多な話をして誠に申し訳ありませんが、あと時間の許す限り御質問にお答えしたいと思います。
どうも御清聴ありがとうございました。
〇小針部会長
ありがとうございました。
それでは、御質問、御意見のある方は挙手でお願いいたします。
馬場委員、お願いいたします。
〇馬場委員
御説明ありがとうございました。
結局のところ、今高騰している飼料価格について、海外依存度が高い中で、以前のような水準まで下落する可能性はどうでしょうか。結局、為替次第ということでしょうか。
あわせて、資料の最後にありますが、価格安定制度の見直しを提起いただきました。今の配合飼料価格安定制度や、マルキンのような畜種別の経営安定対策について、評価や御示唆いただけることがあれば教えていただきたいと思います。
以上です。
〇岩﨑様
まず御質問の前半の部分の穀物価格の見通しですけれども、これは最初に申しました高値が高値を癒やすという言葉に対して、安値が安値を癒やすということわざがございまして、これは「もうこんな値段ではばかばかしくて作っていられないよ」という農家が、実はブラジル辺りで出てきている。ということは、市場価格に反応して、世界の農家はそれに反応していきますので、そういった意味での底値感というのが次第に出てくるのではないかなと思います。
ただ、一つ悪さをしているのは、アメリカのドル高なんです。このドル高は日本に対してだけじゃなくて、世界共通に働きます。アメリカだけが関係ないわけです。だから、南米やヨーロッパから見て、国際取引がドルベースで行われている限り、ドル建てが幾ら安くなっても、自分の手取り通貨でもらえるのであれば、こんなうれしい話はないのです。日本でも、円安により農産物輸出が伸び、採算が良くなったと皆さんおっしゃいます。それと同じことが世界で起こっているとお考えになったら良いと思います。
その他御質問いただいた、現在の畜産の価格制度については、私は全くの素人で知見がないということで、そういったことに対してコメントできる能力はございませんので、控えさせてください。
〇小針部会長
ありがとうございました。
ほかに御質問、御意見は。彦坂委員、お願いします。
〇彦坂委員
どうもありがとうございました。
神奈川で採卵養鶏をやっている彦坂といいます。
とうもろこしの生産のことを聞くと、やはり作付けの面積や需要の面でいろいろ考えられますが、専門の方にお聞きすると、アメリカのとうもろこしの生産は、びっくりするほど制度に守られている中で、市場の価格だけで勝負するのではなく、国の制度の中で、様々な価格保証制度や融資に対する制度がある中で行われているというのを聞きます。ちょっとびっくりするんですけれども、そういう形の中で、本当に自給だけで高いからたくさん作るだけではなくて、国として農業生産をしっかり守るために、価格が合っても合わなくてもコストとして、国が負担するという考え方はあるんじゃないかと思うんですね。
もう一つは、全体的な需給について、例えばエタノールの政策がアメリカで出てきたときに、当初はエネルギー政策だよねとみんな言っていたけれども、後で畜産をやっている仲間に聞くと、あれは農業政策だよと聞きます。とうもろこしの今までなかった需要を作り出すための政策だったんじゃないのかと、素人考えで話したりするんです。
あわせて、ブラジルのとうもろこしについても、ブラジルはエタノールを基本的にサトウキビから作っていたが、法律によりとうもろこしで作ったエタノールの使用割合を上げていくようなこともあると飼料メーカーの方からお聞きしました。
そうすると、単純に需給だけではなく、国の制度や政策によって方向が左右されていくような中で、畜産をやっていかなきゃいけないのかなと思ったりもします。
今お話ししたこともある中で、トン当たり3万円ぐらいのとうもろこしの時代を過ごしていましたが、そういう相場にはもうならないですよね。エタノールの事業が出てきた時は、上がったり下がったりしましたが、、もう次のステップに移っててしまっている。今後、上がり下がりはあるけれども、また違う世界で畜産をやらなきゃいけないのかなという覚悟はしているところなんですけれども、もう昔みたいなトン当たり3万円のとうもろこしが来る時代はないんだろうなと、僕自身はもう観念しているんです。その辺の価格についての考え方や感度についてちょっとお話しいただければ有り難いです。
〇岩﨑様
まず、どなたにお話をお聞きになったのか存じ上げませんけれども、1996年にアメリカの農業法は大改造し、それまでの飴と鞭の減反制度から足を洗いまして、世界全体で農業に対する財政支出はもう持たないよというのがコンセンサスになりました。ヨーロッパや日本も一部そういった流れを酌んで、農業政策を見直して、価格メカニズムにいかに合わせた形で自国の農業を改革するかというのが大ブームになりました。そうした流れの中で、はたと困ったのが、余剰農産物化したとうもろこし、砂糖といったものをどうするかということ。アメリカの場合は、大気汚染をどのように防止するのかということで、エタノールを活用しようということで、余剰農産物がエタノールで吸収され、今やアメリカのとうもろこし需要の4割近くまで占めることとなりました。
これは、アメリカの国の政策としてやっていっていることで、ブラジルは御指摘のように、とうもろこしをエタノールに使うのか、砂糖をエタノールに使うのかというのは非常に難しい問題で、どちらかというと、砂糖については世界的に甘味離れをしていますので、エタノールにバイアスがかかり、とうもろこしをエタノールに使うことにはならなかった。
ただ、とうもろこしの産地は山の中であり、山の中で作ると港まで輸送距離があるため、国際価格が低下しますと、輸出用のとうもろこしは競争ができなくなります。こうした場合、作ってしまったとうもろこしをどうするんだということになるため、ブラジルでとうもろこし由来のエタノールが増産せざるを得なくなるかもしれない。これは非常に面白いところで、今後は綱引きが出てくると思います。
とうもろこしが昔の3万円に戻るかということなりますと、3万円というのはC&Fですから、仮に100円の為替であれば300ドルということになり、300ドルというのはあり得ますが、為替が100円に戻れるかというと、皆さんの実感としていかがでしょうか。今のキシダノミクスが100円に戻るようなマクロの運営をしていると、皆さん、お感じになりますかね。
今日は153円でしたか。ここが今、非常に大きな問題で、単に日本経済全体の問題ではなくて、農業界だけが負担せざるを得ないのかというと、そうじゃないと思います。国全体でもっと考えてどうするのかということを検討する時代が来ているんじゃないでしょうかという問いかけをしているわけなんです。
〇彦坂委員
どうもありがとうございました。
〇小針部会長
ありがとうございました。
それでは、本日のヒアリングはここまでといたします。ヒアリングに御協力いただいた皆様、本日は本当にありがとうございました。
最後に、事務局から連絡をお願いいたします。
〇新井畜産総合推進室長
本日は、長時間ありがとうございました。
次回の畜産部会ですけれども、畜産物の需給や流通をテーマにヒアリングを実施してまいりたいと考えております。日程については、これから調整させていただきますが、5月に開催したいと考えておりますので、引き続きどうぞよろしくお願いいたします。
事務局からは以上です。
〇小針部会長
それでは、本日の議事は以上で終了となります。
お疲れさまでございました。
お問合せ先
畜産局総務課畜産総合推進室
担当者:請川、河田、松山
代表:03-3502-8111(内線4888)
ダイヤルイン:03-6744-0568