畜産環境問題とは
ここでは、畜産環境問題とは何か、その発生要因と家畜排せつ物との関係、問題解決にあたっての基本的な考え方などについて紹介しています。
1.畜産環境問題の発生
我が国の畜産は、食生活の高度化等を背景として大きな発展を遂げてきました。
しかし、農家当たりの飼養規模の拡大や地域における混住化の進行、環境問題への関心の高まり等を背景として、家畜排せつ物による悪臭や水質汚染といった環境問題の発生がみられるようになりました。
このように畜産経営に伴って発生する環境問題を「畜産環境問題」と呼んでいます。
畜産環境問題の発生は苦情の発生状況と深い関係があります。
畜産経営に起因する苦情の発生件数は、近年ほぼ横ばい傾向で推移しています(令和5年_畜産経営に起因する苦情発生状況(PDF : 661KB))。
2.主な発生要因
畜産環境問題の最も大きな発生要因は、固形状の家畜排せつ物を単に積み上げて放置するといった「野積み」や、地面に穴を掘り液体状の家畜排せつ物を貯めておくといった「素掘り」など、家畜排せつ物の不適切な処理や保管にあるとみられています。
(「処理」や「保管」のことを「管理」と呼びます。)
特に、近年、硝酸性窒素による地下水汚濁やクリプトスポリジウム(原虫)による水道水源の汚染など人の健康に影響の大きい問題と家畜排せつ物との関わりが懸念されるようになり、畜産環境問題への適切な対応が急務となっています。
3.家畜ふん尿と家畜排せつ物
家畜ふん尿の成分や性状は、家畜から排せつされた後、乾燥したり微生物の分解を受けたりすることで徐々に変化していきますが、微生物分解によってできたたい肥のことを「家畜ふん尿」と呼ぶことは一般的にありません。
では、家畜ふん尿の成分や性状が変化した場合、どのようなものまでを「家畜排せつ物」と呼ぶのでしょうか?
畜産環境問題の発生要因は、排せつされて間もない家畜ふん尿だけではなく、成分や性状が変化したものを含め、それらの不適切な管理が要因となるということは上記したとおりです。
このため、家畜排せつ物法をはじめ畜産環境問題への取り組みに際しては、家畜から排せつされて間もないふん尿だけではなく、乾燥した状態のものや、微生物の分解を受けたものを含めて「家畜排せつ物」と称し、一括して取り扱うこととしています。
*家畜ふん尿を原料としてできたたい肥は、「家畜ふん尿」とは呼ばれないが、「家畜排せつ物」と呼ばれる場合があるということです。
*ただし、炭や灰のように、その成分や性状がもとの家畜ふん尿の成分や性状とかけ離れた状態になっている場合は、「家畜排せつ物」には含めないのが一般的です。
*「家畜排せつ物」には、価値の高いたい肥や乾燥物なども含まれますので、「家畜排せつ物」であることがいわゆる「廃棄物」であることを意味するのではありません。
*「家畜排せつ物」を適正に管理することで利用価値の高い「家畜排せつ物」に変換し、その利用を促進することが、畜産環境対策の基本となっているのです。
4.問題解決のために
「家畜排せつ物」は、上記のように畜産環境問題の発生要因となる一方で、土壌改良資材や肥料としての利用価値が大きい貴重なバイオマス資源でもあります。
このため、畜産環境問題の解決には、家畜排せつ物の管理の適正化により環境問題発生の未然防止と軽減を図ること、さらに、家畜排せつ物の利活用を促進することにより資源の有効活用を図ることがまずもって重要であり、このための具体的な取り組み、すなわち畜産環境対策が急務となっています。
このような取り組みの推進によって、畜産業の持続的な発展、環境保全型農業の推進と同時に、循環型社会構築に向けた取組みへの貢献が期待できるものと考えられます。
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