子どものスマホ利用、制限する? しない? 親のお悩みを専門家と考えた|LINEヤフー株式会社

子どものスマホ利用、制限する? しない? 親のお悩みを専門家と考えた

インタビュー

LINEヤフーストーリー編集部は、悩む人も多い「子どものスマホ利用との向き合い方」について、2児の父親でもあるライターのヨッピーさんに、LINEみらい財団と共同で独自の情報モラル教育教材の開発を行っている、静岡大学の塩田先生にインタビューしていただきました。

「春休みから子どもにスマホを持たせる」というご家庭もあるのではないでしょうか。この機会に一度、「子どものスマホ利用との向き合い方」について考えていただければと思います。

ヨッピー(写真右)
大阪生まれ東京都在住のライターで2児の父。「ウェブライター」という言葉ができた頃からずっとインターネットで活動しているのでだいぶ古参になってしまった。子どものスマホ利用についてはお悩み中。

塩田 真吾先生(写真左)
早稲田大学大学院博士課程修了、博士(学術)。千葉大学特任研究員、静岡大学教育学部助教、講師を経て、2015年より現職。専門は、教育工学、情報教育。第4期・第5期静岡大学若手重点研究者に選定。2021年より文部科学省 ICT 活用教育アドバイザーを務める。

というわけでこんにちは。ヨッピーです。 最近、子どもが歯ブラシを投げ捨てたので「コラ! ダメでしょ!」と怒ったら「パパきらい。あっちいけ」と言い放たれて泣き崩れました。

子どもができると「言う事を聞かない」とか「ご飯を食べてくれない」とか「兄弟げんかがすごい」とかあれこれ悩みごとがたくさん出てきますが、その中でも今日のお悩みがこれ。

いやーー、これは本当に悩みますよね。

我が家の2歳児もすでに操作方法を覚えており、スマホを渡すとスワイプを上手に使いながら延々動画を見ちゃうので、新幹線や飛行機の中など、「ちょっと静かにしててね......!」っていうタイミングでしか持たせないようにしているのですが、ゆくゆくは「周りが持ってるから」とか「塾に通うから」とかそういう理由で持たせる日が来るだろうし、今からすでに悩んでるんですよ......!

例えばこちら、内閣府の「青少年のインターネット利用環境実態調査」によると、令和元年度から令和4年という、たった4年間の推移を見ただけでもインターネット利用率が急増している事がわかりますし、

こちらの表によるとスマホを利用している層は10歳くらいから「子ども専用のスマホ」の利用率が急激にあがり、12歳になると約80%が「自分用のスマホ」を持つようになる。小学校の高学年くらいで子どもに専用のスマホを持たせる家庭が多いんでしょうね。

出典:令和4年度 青少年のインターネット利用環境実態調査 調査結果(速報)内閣府

しかしながらスマホを持たせることで、

・依存するかも
・勉強しなくなるかも
・イジメ問題が起こったらどうしよう
・SNSのトラブルに巻き込まれるかも

などなど、親の心配事はどんどん出てしまいます。

そこで本日は情報モラル教育に詳しい、静岡大学の塩田先生に、子どものスマホ利用にまつわる親の悩みのあれこれを相談しにやって参りました! よろしくお願いします!

昔ファミコン、今スマホ

今回、先生にお話をお伺いするにあたって、子どもがいる親たち40人にアンケートを取ってきたんですよ。「何歳からスマホを持たせましたか?」とか「子どものスマホ利用で心配な事はなんですか?」とか。

例えばこういう回答があります。

さすがにたたき壊しちゃダメですよね!?

まあ、感情的になるのは良くないですね(笑)

やっぱり、親の悩みで圧倒的に多いのがこの「使いすぎ」っていう問題なんですよね。スマホばっかりで勉強しないとか運動しないとか、夜更かししちゃうとか。

高校生を対象にしたわれわれの調査で、「余暇」について調査したんですよ。「自由な時間に何をしてますか?」って。そしたら、

1位 スマホで動画を見る
2位 スマホでSNSを見る
3位 スマホでゲームをする

だったんです。

うわー! 全部スマホだ!

そうなんですよ。それだと余りにも世界が広がらないので、「スマホ以外に楽しい事を見つけよう」というアプローチが大事じゃないかと思っています。

でもあれですね。こういう親の悩みとかを見ていると、われわれの世代(※)だと「ファミコンの時と同じだ~!」って思いますね。

※ヨッピー43歳、塩田先生42歳

それは本当にそうですね。ファミコンの時と全く同じ!

ファミコンだって「あんまりやらせたくない親」と「絶対にやりたい子ども」の闘争の歴史ですからね。アダプターを隠されたり散々しましたもん。

「1日1時間まで」とかありましたね~。

スマホにしろファミコンにしろ、子どもへの悪影響みたいな研究って進んでるんですかね?

いろんな影響については盛んに言われていますよね。「ゲーム脳」みたいな事が一時期言われましたが今では否定されていますし、「脳への影響」という明確なものはないので難しいところです。

ただ、ゲームやスマホをやる事の影響より、ゲームやスマホによってできなくなるものの影響を考えた方が良いと思うんですよ。

勉強もして、外で元気に遊んで、それでも空いた時間にスマホで遊ぶのであれば別に問題ないわけじゃないですか。その「スマホのせいで何ができなくなっているか」というのを考えて、「できなくなったもの」が特に無いのであれば目くじら立てる必要はないんじゃないかと考えています。

なるほど。「やるべきことができているなら別に良いんじゃないか」っていう考え方ですね。じゃあ、「1日1時間まで」とか機械的に決めちゃうのも良くないのかな。「1日1時間まで」っていうのを守ってても、勉強しないし夜更かしするしだと意味無いですもんね。「宿題終わってお風呂に入ったら、寝るまでの時間はやってても良いよ」とかそういうアプローチのほうが良さそう。

そうですね。まず「24時間をどう使うか」というタイムマネジメントの考え方から、「じゃあ勉強はこれくらいで寝るのはこの時間。残った時間はどれくらいあるかな?」っていうのを子どもと一緒に考えるのが良いですね。私の家では子どもに時間を決めさせてるんですよ。「じゃあゲームは何時までにする?」って。そして子どもが言った時間はちゃんと守らせます。

インターネットでつながる怖さ

あと、他にも多かったのはこういうお悩みです。

似たようなもので、「イジメにつながったらどうしよう」とか「仲間外れにされたらどうしよう」とか。

これは学校でも頻発するトラブルですね。こういうのを問題視して、学校から貸し出すタブレットにチャットアプリを入れるのを禁止してる学校もあるんですけど、タブレットの中にパワポの共有ファイルが入ってて、それを更新しながらみんなで授業中にチャットしてたのが先生にバレて怒られた、っていう事例をX(旧Twitter)で見かけたんです。

すげえ。逆に感心してしまう。

どうしたって抜け道はありますし、こういうのでリテラシーがつくといえばつくじゃないですか。だからどこまで制限をかけるのかっていうのは難しいところですね。「あんまり心配しすぎるのも良くないのかな」と個人的には思います。われわれも子どもの頃からいろんなエラーを起こしながら成長してきたじゃないですか。

実際、トラブルを恐れて一律に禁止するのも怖いですよね。「LINEなどのSNSでトラブルに巻き込まれるのが怖いから」でスマホを一切禁止にして友達同士のコミュニケーションが取りづらくなったらそっちの悪影響の方が多そう。

そうですね。これからの時代、スマホはどうしても必需品で使いこなさないといけないものですし、早い内から持たせておくのは悪い事じゃないと思います。もちろん、スマホを持たせる前に、親自身がいろいろ情報を持って対処するのが大事ですが。

※参考リンク
お子さんのインターネット利用の注意点について

内閣府のデータだと小学4年生くらいから専用のスマホを持たせる家庭が増えてくるみたいですね。

そうですね。私の周りでも4年生くらいからが多い感覚はありますね。早い子はもっと早いですけど。あとは「小学校の卒業でみんなバラバラになっちゃうから、その時にLINEでつながりたい」みたいな動機で小学校の卒業前に持たせる家庭も多いです。

なるほど。これは友達が言ってたんですけど、子どもが小学校の時に転校させたから、「かわいそうなことしたな~」って思ってたらしいんですけど、元いた小学校の子どもたちと普通にLINEでやりとりしてるから、今でもその子たちと土日に遊んだりしてるらしくて。そういうのは今の子たちが羨ましいです。

本当に便利になりましたよね。

僕らの時代は家の電話にかけて「〇〇くん居ますか?」ってやってたじゃないですか。

でもそれも進化して「昔はLINEのグループっていうのがあったんだって~!」「なんか、文字をわざわざ打ってたらしいよ!」みたいな時代になるんでしょうね。

20年後に生まれた子どもは、こうやって、電話している写真を見て「手に持ってる四角いやつはなんだろう?」みたいな。

「えー、昔の電話ってこんなにデカいんだ~! チップじゃないのウケる~!」みたいなね。

いやでも、そういう時代が来るんでしょうね本当に。

そう、時代の移り変わりとともに、新しいものが出てくるじゃないですか。そういう時にトラブルやエラーはつきものなので、あんまり怖がり過ぎるのも良くないと思います。

例えば今回の話で言うと、

・スマホを使いすぎる
・LINEでケンカになる

みたいな事って、別に致命的なトラブルではないじゃないですか。

あー確かに。それより「知らない人に会いに他県に行っちゃった」とかの方が怖いですよね。

そうですそうです。SNSで大炎上しちゃうとか、知らない大人についていくとか、1発で取り返しのつかない事は本当に事前にブロックしなければいけない

そういう意味では大人のリテラシーもだいぶ問われますよね。「SNSでこういうの投稿するとまずい」とかわかってなきゃ止められないし。

そうですね。リテラシーも大事ですが、柔軟性みたいなものも大事ですね。親が「私が正しいから言うことを聞け!」みたいなスタンスなのは良くないです。

僕はわりとそっち側かもしれない......。

このテーマにぴったりの、LINEみらい財団と私が共同で開発した教材があるのでちょっとやってみましょう。

1~5まで項目があるんですが、「自分がされたら嫌なこと」を嫌な順番に並べてください。差があるものはそのぶんだけ間を空けていただいて。

※ぜひ皆さんも考えてください

えー、僕全部別に嫌じゃないけどな......。

僕は、写真を勝手に載せられるのが嫌なのでこういう感じです。

僕はまあ、ほぼ嫌じゃないけど強いて言うならこうかな......。

実は、一番トラブルを起こすのってヨッピーさんみたいな人なんです。

えーーーー! うそーーーーー? インターネットでメシ食ってる人間である僕が?

いや本当にそうなんですよ。ヨッピーさんみたいに「僕は別に嫌じゃない」っていう人は、他人の気持ちに対して鈍感なんですよ。

ああ......、なるほど......。確かにそれは自覚あるわ......。「なんでこんな事くらいで怒るの!?」みたいな......。

この教材の面白いところは、人によって嫌な事がぜんぜん違うというのが可視化される事なんですね。だから親子でもこういうのをちゃんと話し合うべきなんですよ。さっき言ったトラブルの話も、親は深刻に捉えてるのに子どもはそうじゃないとか、子どもは深刻に捉えてるのに親はそうじゃないとか、そういう違いをちゃんと認識しないといけないですね。

グゥの音も出ない......。

例えばこれはSNSの投稿を想定しているんですが、これで起こりうるトラブルを考えてみよう、とか。

※皆さんも考えてみてください

これは結構わかりますよ。仮にもプロですから! 1は「後ろに写ってる人の顔が出てる」とかですよね。5は「家主に写真を載せる許可を得たのか」とか。4は「いつものお店が特定されると怖いでしょ」とか? 2はなんだろう......?

2は、「呼ばれてない人がどう思うか考えよう」ですね。

あーーー、なるほど。「えっ、みんなでバスケしたんだ。私呼ばれてない」っていう。

そうですそうです。あと、良く見ると「4」のトレイに乗ってるスマホケースと、「3」で写ってるスマホケースが同じなんですよ。なのでこういうので個人を特定されかねませんよ、っていう。

なるほど......。

ヨッピーさんみたいに、インターネットの仕事をしてるからって「俺は大丈夫」みたいに思ってる人ほど危ないです。

もうカンベンしてください。

でもこの教材、「すごくいいな」と思ったのが、親から「こういう事しちゃダメ!」って言われても、子どもは言うことなんて聞かないじゃないですか。でも「こういう事すると、友達に嫌われるよ」っていうのは物凄く刺さると思う。なるほど......。

そうなんです。「肖像権の侵害だよ」とか言ってもわからないですから「友達に嫌われるよ」の方が子どもたちにとっては刺さるでしょうね。

親たちの心構え

トラブルとかリスクって、グラデーションなんですよ。言った通り、夜更かししちゃうとかそのくらいであればただちに問題になる大きなリスクではないんですけど、SNSで知り合った人に会いに行っちゃった、とか闇バイトに応募した、みたいな事は命の危険さえあるリスクじゃないですか。

だから親も、そういうリスクのグラデーションを理解して対応する必要があるんですよね。十把ひとからげに「全部ダメ!」っていうのも現実的ではないですし、そういう意味での親のリテラシーはやはり大切です。

今回、その40人のアンケートから抜粋したものがこちらなんですけど、わりとみんな同じような事で悩んでるんですよね。

埼玉 教育関係 長男16歳 長女12歳
・フィルタリングをかけても抜け穴を探して突破してしまう
・直接言いにくい事をLINEで言ってくるようになった

東京 サービス業経営 長女12歳 次女7歳
・明らかに子ども向けではないSNSの広告が流れてきて困る

東京 モデル事務所・動画制作事業 長女17歳 次女8歳
・BeRealの通知が飛んでくるんじゃないかとソワソワしてて集中しない

鳥取 美容師 長男18歳 長女16歳 次女14歳
・とにかく夜更かしがひどい。長期休みの期間は特に

大阪 人材業 長女12歳
・話をしている時にスマホをいじるなど、話をちゃんと聞いていないことがあり怒った

とはいえ、こんな風に良い点もあるんですよね。

熊本県 教育サービスの広報 長男15歳
・わからない事を自分で調べるようになった

神奈川 スタイリスト 長男17歳 次男14歳 長女11歳
・はるかに自分より使いこなしているので、僕の人生にもフィードバックしてくれたらうれしい

東京 福祉 長男19歳 長女17歳
・かわいいLINEスタンプを送り合ったり、動画を編集してもらったり、親子の良いコミュニケーションになっている

などなど。そもそも、インターネットのおかげで子育てもめちゃくちゃ助けられてますしね。ウチの子も保育園から帰ったら「新しい学校のリーダーズ」の映像見ながらずっと踊ってくれてますもん。

そう。こういうのはスマホの良い面ですよね。だからなんでもかんでもダメ! って言わないのも大事ですし、ダメならなぜダメなのかを子どもと話し合って納得させてほしいですね。

そうですね。例えば「Youtuberやりたい!」って子どもが言い出したら、「炎上するからダメ!」って言うんじゃなく、「やっても良いけどアカウントはお父さんが管理して、投稿もチェックした上でお父さんがやるからね」みたいな。

そうですね。「どう使いこなすか」という点と、「どうリスクを避けるか」という点についてはちゃんと親子でコミュニケーションを取ったり、先ほどご紹介した教材を使ったりしながらちゃんと話し合ってほしいです。

親のリテラシーと、あとは当たり前だけど親子のコミュニケーションが大事、っていうことですね。春休みだし「この春から子どもにスマホを持たせた!」っていう人も多いでしょうから、この機会に一度ちゃんと考えてほしいですね。

塩田先生が作った「スマホやタブレットとの上手な付き合い方を考えよう」チェックリスト(PDF)

そこで今回、先生が作ったこのワークシートを埋めていただきながら、「何ができてる」「何ができない」みたいな部分について親子で話し合ってみると良いかもしれません!

LINEヤフーでは、LINEみらい財団を通して子どもたちの情報モラル・デジタルリテラシー向上のための活動を行っています。「子どもとスマホの向き合い方」について親子で一緒に学べる教材などを無償で提供していますので、ぜひこの機会に活用ください。

LINEみらい財団について

LINE株式会社(現LINEヤフー株式会社)は2012年より青少年のインターネット利用環境の整備に取り組み、CSR活動の一環として、学校や企業、自治体、政府機関などと協力し合いながら、主に情報モラル教育活動を展開してきました。

これら一連の教育活動から得られた知見やノウハウを、個社のCSR活動に留まらず広く社会に還元し、より広域的・永続的な活動とするため一般財団法人LINEみらい財団を2019年に設立しました。

これまでインターネットとの上手な付き合い方やコミュニケーション方法について"自ら考える"ことを目的に、静岡大学教育学部准教授 塩田真吾氏と共同で、独自の情報モラル教育教材の開発を行っています。
全国で実施しているオンライン出前授業で活用しているほか、ウェブサイトで公開しています。

2022年には学校向けに情報モラルと情報活用を合わせて学べる教材「GIGAワークブック」を開発し、子どもたちの情報活用能力(情報モラルを含む)の育成に取り組んでいます。

関連リンク

取材日:2024年3月21日
※本記事の内容は取材日時点のものです
ライター:ヨッピー
編集:酒井栄太(ヒャクマンボルト)
撮影:佐藤暢(ヒャクマンボルト)

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