<地域の概要>
水害にめげず、田畑を守り続けた滋賀県大津市堂町
滋賀県大津市にある堂町は、田上(たなかみ)山の麓に位置
する農村です。同地区には龍谷大学瀬田キャンパスが隣接し、
かつての地域の里山の一部は、同キャンパス内の「龍谷の森」
となっています。同地区には家内安全・五穀豊穣を願うお祭りが
多く残り、農業を中心とした四季を感じる暮らしがあります。
田上山は、表土が流出しやすい花崗岩質であることに加え、
古くは飛鳥時代の藤原京の造営にはじまる木材の伐り出しや
燃料採取等により、江戸時代後期は、ほとんど木がない荒れ
果てた山でした。そのため、堂町を流れる大戸(だいと)川は、
大雨のたびに氾濫し、水害が起きました。人々は度重なる
災害にもめげず、田畑を守り、地域の歴史をつないできたのです。
近年は、農家の高齢化が進み、サラリーマン家庭も増える中、
田畑の耕作放棄が増えつつあります。それを何とか喰いとめて
いきたいと、地域の人々は、集落営農に取り組んでいます。
<地域の課題>
地域とつながり、地域の暮らしを支えるために
堂町では集落営農とあわせて、「環境こだわり農産物認証
制度」に先進的に取り組んでいます。この制度は、美しい
琵琶湖や河川を守るため、化学合成農薬や化学肥料を減らし、
濁水の流出防止も含む、環境への負荷を削減する技術で
生産された農産物に対して認証する滋賀県独自の制度です。
手間と根気のいる農業に、集落が一丸となって取り組んで
います。その結果、田んぼの横を通る水路には毎年のように
ホタルが現れます。現在は龍谷大学の活動メンバーが中心と
なり、地元堂町の「環境こだわり米」や「環境こだわり
農産物」を学内で広める取り組みを行っています。
堂町の人が作った美味しい野菜やお米を、地元の大学生が
食べて、地域とつながり、地域の暮らしをみんなで支える。
地域の生産者と消費者が助け合いながら、地域の環境を守る
道を模索しています。
<当NPOの取り組み>
「地域」「世代」「大学」をつなげる
私たちは2004年の夏から、堂町での活動をスタート
しました。「里山と人とのつながり」をテーマに、
おばあちゃんに堂の昔からの暮らしを「聞き書き」
したり、森の定点観察をしたりと、地域を知るところ
から始まり、「お隣さんになろう」をモットーに掲げ
つつ、活動をしています。
現在は集落の農業に関する取り組みについて学び、
食と地域の暮らしについて考えつつ、水路清掃など、
地域の共同作業にも参加しています。
また、2009年からは、耕作放棄地の新たな活用方法と
して、地域の人とともにソバの栽培を行っています。
種播きから刈り取り、ソバ打ちまでを龍谷大学の学生や
堂町の方々と一緒に行い、また、地元の小学校では、
ソバ打ちの出前授業を開催。また、堂町の祭礼や
行事にも積極的に参加しています。
子ども神輿を引っ張っている子どもたちが大人になっても、
堂町の農業やお祭り、風景を大切に思い、この地域の
暮らしが続いていくように、私たちは「地域」と「大学、
そして「次世代」をつなぐ活動を続けていきたいと考えて
います。
●本地区における協力団体・関係者: 龍谷大学有志の会「お野菜大学」