著しく複雑化するVLSI
システムをどう設計するか?
大規模集積回路(VLSI)の進歩に伴って複雑化する設計過程を、論理設計・回路設計・レイアウト設計に階層化し、製造工程から切り離す新たな方法論を提案・推進した。また各設計過程を自動化するCAD技術の確立にも多大な寄与をなし、VLSIを基盤とするエレクトロニクス技術と産業の発展に大いに貢献した。
何百万個ものトランジスタを搭載した複雑な集積回路を設計し、その製造に必要なマスクパターンを生成することが実用上可能になるまでには、数多くのイノベーションが必要でした。まず、半導体製造関係者が、トランジスタが極めて小さくなっても正常に機能するということをはっきり認識しなければなりませんでした。次に、機能設計、アーキテクチャ設計、論理設計、回路設計、マスクの図形パターン設計など、設計の全ての過程を人手ではなく、コンピュータプログラムにより記述する設計上の枠組みが必要でした。また、そのような枠組みでは、各過程の相互関係を包括的に捉える方針に沿って、設計の全過程が進められていくのです。それから、コンピュータによって精密なマスクパターンを作り出すための、パターン生成コードを作成するコンピュータツールも必要でした。このような設計上の枠組みにより、実際に使えるVLSIチップを作り出せることが示された後は、専門家でなくても理解できるような、実際の集積回路に関する統一した見方が形づくられ、それまでの蓄積が全て大学教育に取り入れられることになったのです。その結果、世界は変わっていったのです。
問題はもはや「どのようにしてより優れたトランジスタを作るか」ではなく、「1000万個の可動部品があるものを作って、どうやって動作させるのか?」だったのです。
※ プロフィールは受賞時のものです