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ライフコーチの視点から 現代を生きる子ども・若者のリアル【第21回】

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論説・コラム

どうせ死ぬのに、なんで生きているんだろう(続き)

 前回に引き続き、大阪市の児童自立支援施設併設校である、大阪市立弘済小中分校で行った講演会と自己理解ワークショップの生徒の声をお届けしたい。

 前半の講演テーマは、「自分の人生を生きる」。後半の自己理解ワークショップテーマは「幸せな人生を生きるためのグループワーク」。

 後半のグループワークでは、普段自分のことを話すことが苦手な生徒も話しやすいように、2~4人ほどの少人数グループをつくり、コーチにファシリテーターとして入っていただく。
 児童自立支援施設で暮らしている生徒たちは、施設に入所したきっかけを口外できない。そのため、日常的に個人的な話をすることが禁止されているという。
 その中でも、可能な限り自己理解を深められるような問いやワークを用意して対話を繰り返すことで、初めは話しにくそうにしていた生徒たちも、最後の方には身振り手振りも加えて話していたことは先生方も驚いたそう。明らかに表情が変わっていく様子も、見てとれた。

「何ができたら幸せを感じられるのか?」
「自分の強みは何か?」
「本当はどうしたいのか?」
「どんな気持ちでいたいのか?」
 そんな問いを設けながら、まずは自分を知る。それをグループでシェアすることで、他人を知ることもできる。そしてその願いを叶えていくプロセスも一緒に取り組んでみた。

 終了後の感想ではこんな声が挙がっている。

「人はみんな違う感じ方や捉え方があり、そんなに違うんだと思った。」

「自分の気持ちを知る自己理解は、自分にとって大切なのだと改めて思った。」

「みんな色々違った考えもあれば、似ている考えとかもあって面白かった。」

「人の気持ちとか色々考えるきっかけになったし、普段やっている当たり前のことが人によってとか、場合によっては当たり前ではないことに気付きました。」

「捉え方を変えるトレーニングで、自分の短所を長所に変え、見方を逆転させるという考え方がいいと思ったので日常生活で使えるようにします。」

「人の感情とか人の生き方とかは人の数だけあるということを知りました。」

「自分の気持ちや考えをグループの人に言えて良かった。少しは自分にも自信がついたと思います。」

「自分と向き合うことができ、今まで気づけなかった自分のことに気付けた。」

「感情は自分を知るヒント。大切なことを教えてくれるもの。ネガティブな気持ちも含めて、全部大切な自分の気持ちということを知ることができました。」

 自分を知ること、そしてそれをシェアしあうことで、互いを理解し合うきっかけとなる。
 言えなかったことが言えた喜び、聴いてくれる人がいる喜び、話してもらえた喜び。それは「自己信頼」と「他者信頼」を育むことになり、自分の心を表に出せない「孤独感」から解放されるきっかけになると感じた時間だった。

 最後に、2022年から3年連続で伺うようになった経緯をお話ししたい。
 同校の生徒たちは、過去に否定され続けて生きてきた子が多く「どうせ自分なんて…」と自己否定をしていて、自己肯定感の低い子どもが多いという。そこで、同校の教員である柴田好生教諭は、キャリア教育の一環として「夢授業」を立ち上げ、プロスポーツ選手など外部から大人を招き、挫折や困難から立ち上がった経験などを生徒に聴いてもらう機会をつくってこられた。柴田教諭とは共通の知人を通して知り合い、柴田教諭が立ち上げた「夢授業」の目的や願いが、まさしく筆者が教育現場を通して子どもたちに伝えたいことと一致し、感銘を受けたことから、同校に足を運ぶようになった。

 どんな過去があったとしても、人は変われる。いつからだってやり直せるということを、自らの体験をもってリアルに伝えることが、生徒たちの可能性をひらくきっかけになればと願い、継続的に訪問している。

中高生の心を開く専門家/ライフコーチ三橋亜希子
各地の小・中学校、高校、幼稚園などで児童・生徒向け、教職員向けの講演を続ける。幼少期に父親から虐待を受け、学校では、いじめの標的になった経験を持つ。成人後も、自分の思うような生き方ができなかったが、東日本大震災をきっかけにコーチングを学び、独立。3兄弟の母。ホームページ(https://mitsuhashiakiko.com/)に情報多数。

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