土曜日。今日はサカナクションのライブなのでポートメッセなごやへ。前回のライブっていつだったかと遡ったら2021年12月11日らしい。およそ2年半ぶり。
NHKスペシャルの山口一郎(以下、敬称略。)の回、みなさんは観ましたか? 私は観ました。うつ病を抱えながら再起を向ける様子を追ったドキュメンタリー。背負っている仕事の重さははるかに違うけれど、番組内で語られていた症状のつらさにはとても共感した。本当にあんな感じだったし、一度なってしまうともう元に戻れないという実感にもその通りその通りと頷けた。「『倦怠感』というけれど怠けているとか、そんなものではない」的なことを言ってくれたのもうれしかったな。
偏見の多い病気だから、著名な人がこうやって発信してくれるのはうれしい。一方、本人にとって発信することが一つの自己承認になっているならいいけれど、あまりロールモデルとしての役割を背負い過ぎないといいな、と思う。
この番組では、郎山口一の復帰を待つメンバーやスタッフの様子も負っていたのはすごくいいなと思った。最近の世間は「無理しないで休んでいい」という風潮が少しずつ増しているけれど、実際は決めないといけないことが滞ったりして調整に追われる。これが現実だよね、と感じた。あるメンバーの「言っちゃだめなことだけど、『いつまで休んでんだよ』と言ってしまいそうになる」という言葉も、リアルだった。そういう部分も含めて、変にきれいごとにまとめず両者の様子を淡々と放送してくれたのがよかった。
今回のライブは新譜を引っ提げてのレコ発ツアーではなくて活動再開の復活ツアーの意味合いが強いもので、こういうライブはきっと物凄い記憶に残るだろうなと思う。開演を待っている間、近くにいたおそらく初めてサカナクションのライブに来る人が「こういう特別な意味合いのライブに来てよかったのか」と言っていて、分かるな~と感じて立っていた。私が復活的意味合いのあるライブに行ったのは、星野源がくも膜下出血から復帰した際のツアーくらいだ。
星野源とサカナクションといえば、12~3年前、東日本大震災後に、星野源と山口一郎で組んだ「サケノサカナ」というユニット(?)があった。ふたりは友達同士で、Ustream番組で対談したりいろいろしていたのだ(楽曲づくりをして音源化がしたいと言っていたが、実現しなかったのは残念。)記憶があいまいだが、山口一郎は星野源と出会ったことで、「これまでテレビに出るとか積極的にしない派だったけれど、(星野源の音楽活動に触れて)そう言うのも大事だと思った」みたいなことを言っていたのを思い出す。あの頃の山口一郎は、今のような陽気なキャラクターがお茶の間に浸透していなかった。
NHKスペシャルを見て、山口一郎はテレビで見ていた陽気でひょうきんなキャラクターは自分がやりたかったことではなく音楽活動のためだったことが明らかになり、ファンの間では動揺が広まっていた。でも当時のサケノサカナのトークを見ると、同時代のミュージシャンの活動姿勢に触れて自己表現を変えてったという話だと思うので、今のリスナーは素直に、山口一郎が提示するキャラクターを楽しんだらいいんじゃないかなと思ったりする。
ライブ。まだツアー中だから詳しいことは書けないけれど、ベストアルバムみたいな選曲だった。MCがほぼなくぶっ通しでやっていてすごかった。昔のクールな感じに原点回帰するのかな?と思っていたら、アンコール後のMCでいつものようにたくさんしゃべっていて、なんかすごく安心した。よかったと心の底から思った。
そのMCで、前日名古屋市内で行ったサイン会の話をしていたんだけど、ふと会場名が言えなくなってしまって、言い淀み、スマホを取り出したところでドラムの江島さんがすかさず「オイオイ、完全復活じゃないのかよ~」と突っ込んで笑い飛ばしたの、すごくよかった。あんなイジりを咄嗟にできるくらいの付き合いということなんだろう。自分だったら、ああやってイジってもらえることで救われたと思う。
(グッズ買った。)