2016年6月4日
和菓子の事前学習をした後、いよいよ学外でのフィールドワーク、堀川今出川の京菓子の老舗「鶴屋吉信」さんでの和菓子制作と西陣織会館等の見学に出かけました。
京菓子作りの見学は一昨年に続いて2回目ですが、今回のメンバーは全員初めてです。玄関のショーウインドには「糖芸菓子」による紫陽花が飾られ、お菓子とは思えない見事な作品に感動、季節感あふれる和のおもてなしの世界、菓子職人さんの技術と美意識を感じ、見学がスタートしました。
お店の横には「舟橋の由来」との立札があり、今は大通りとなっている堀川通の東隣に細く流れる堀川が、その昔に氾濫した時に船を繋いで橋としたことからこの地名となった、また足利尊氏の執事の高 師直の邸があり、泉殿の下に舟橋を浮かべ結構を尽くしたことから などと書かれています。「応仁の乱の際に…」とか、ずいぶん昔のことを記した立札などが目立つことなくさりげなくある。。。京都の辻ではよく見かける光景ですが、歴史の勉強にはとても役立つ貴重なもの、メンバーもちゃんと撮影していました。
お店の2階の「菓遊茶屋」では落ち着きのある琴の調べが流れ、打ち水に涼しげな中庭の景色が広がり、賑やかな通りから一瞬の内に「日本の伝統美」の世界へ誘われました。
カウンター越しに職人の方から和菓子の「意匠」「季節感」「吉祥」などについての説明と、目の前で和菓子作りの工程を見せていただき、見事に美しいお菓子にでき上がっていくその技術の素晴らしさ、美しさにため息。また、職人の方たちの和菓子への深い愛情を知り、これからは小さなお菓子一つひとつに込められた職人さんの思いを感じて食したいと思いました。できあがったのは「あじさいきんとん」と「ばらの園」。季節を感じるお菓子とお抹茶をおいしくいただき、心静かなひと時に、また一つ和の文化の素晴らしさを学ぶことができました。
続いて隣接する「西陣織会館」へ。ここでも入口には「村雨御所跡」と「西陣」の石碑がありました。村雨御所は豊臣秀次の母が秀次の菩提を弔うために創建した寺院で、昭和37年に滋賀県近江八幡に移築されたとのこと。西陣あたりは、以前は白雲村・村雨村と呼ばれており、平安時代に朝廷の役所「織部司」のもとに絹織物技術者を集めて組織したのが起こりとなって日本の高級織物の中心地となったとか。応仁の乱で焼け野原となった後も、避難していた職手が西軍の陣のあったこの地に戻って座を復活して再興したとのこと。幾多の苦難を乗り越え、伝統を守り、次代へつなごうとする古人のパワーと使命感…。日本の伝統産業を守ってきた街の人たちの熱い思いを感じました。
会館の中では、さまざまな織物の制作の様子や着物のショーを見学、特に高齢の女性が機織り機で実演しておられるのを見られたのがとても勉強になりました。経糸を足踏みで上下に動かし、その間に横糸を滑らせる動作が基本ですが、手加減、足加減、柄の糸の動かし方など、熟練の技術があってこそのもの。気の遠くなるような細かな作業で時間をかけて大切に作られた織物は、子から孫へと何十年も使え、高額であっても価値のあるものと納得しました。
女子大生が和の伝統文化を学びに来たとお伝えするととても喜んでくださり、ぜひ若い人たちに日本人の感性と技術をつないでほしい、良いものを観る目をもってほしいとおっしゃっていました。ぜひ、その期待に応えられる女性になってほしいですね。
さらに静かな民家の一角にあるお洒落な落雁(和三盆糖でつくる和菓子)のお店「UCHU」へ。動物やキューブ形など、可愛い落雁が、小さなお店のテーブルにインテリア感覚でディスプレイしてあり、見ているだけでも癒される空間です。一緒に飾ってあった木型についてHPでは「新しい発想や創造を形にしてくれるのが木型です。古くから脈々と受け継がれ、和菓子には無くてはならない木型。職人が長年培った技をもって、丁寧に仕上げられる木型は、まるで命を吹き込まれたかのような存在感を持ち、それだけで芸術と呼べるものです。」と書かれていました。和菓子の伝統的な技術を守りつつ、進化していることを感じるお店でした。
次は、今出川通に戻り、西に少し行った京都考古資料館へ。平安京の南にあった羅生門屋根の両端につけられた鴟尾(しび)のレプリカの大きさに、幅40mもあったこの門の迫力を感じました。展示室に入ると、ベテランガイドの方が京都で出土した埋蔵文化財一つひとつについて楽しく説明をしてくださり、古代のくらしや文化の一端を知る機会となりました。
最後に、堀川今出川を東へ行った白峯神社を参拝、境内にそびえ立つ樹齢800年の小賀玉の木は京都市の天然記念物に指定されています。応仁の乱よりはるかに前から生き続けている古木は、京都の歴史とその変遷を見続けてきたのだなあ・・・と思いながら、帰路に着きました。
堀川今出川交差点を中心に、少し歩いただけでこんなにも多くの日本の伝統文化と歴史に触れることができました。参加したメンバー全員の実家は畿外、これからもさまざまな角度から、京都ならではの日本の伝統美を学んでいきましょう。