2016年 | 国連大学キリンフェローシップ卒業生一覧 | キリンホールディングス

国連大学キリンフェローシップ卒業生

ウディン ムハマド ナジムさん(M. Nazim Uddin)バングラデシュ出身

出身国での所属 バングラデシュ農業研究所 園芸研究センター 技師
研究テーマ 生鮮果物や生鮮野菜の細菌混入に対する高静水圧(HHP)処置の効果
研究室 食品加工流通研究領域食品品質評価制御ユニット
アドバイザー 山本 和貴 ユニット長

コメント

バングラデシュ農業研究所(BARI)はバングラデシュで最も大きな公的国立研究機関です。私は今回、BARIとバングラデシュを代表して国連大学キリンフェローシップに参加しています。研究目標は実践を通して食品安全性や品質評価に関する知識や能力を高めることです。得られた専門性は母国の研究所の食品安全性の研究力向上に役立てたいと考えています。日本は先進国であり、研究施設も世界トップレベルです。加えてNFRIの研究者の皆さんの積極的な指導、活動のダイナミックさ、フェローへの優しさに触れるにつけ、日本の人々の親切心と礼儀正しさを感じているところです。

ラナトゥンガ マハセン アチンティヤ バンダーラさん(Mahasen Achintiya Bandara Ranatunga)スリランカ出身

出身国での所属 スリランカ茶研究機構
研究テーマ 分光技術を活用した茶の非破壊品質評価方法の確立
研究室 食品分析研究領域非破壊計測ユニット
アドバイザー 池羽田 晶文 主席研究員

コメント

スリランカと日本は茶の生産で世界を牽引している国です。スリランカは高品質で伝統的な紅茶、日本は高品質の緑茶の生産国として世界中でよく知られています。紅茶も緑茶も、市場価格は最終生産物の品質によって決まるため、茶の品質を効率的かつ効果的に評価する新たな仕組みを確立することが最も重要です。 近年、分光技術の領域において、食品の品質を検査する技術が飛躍的に発展しています。速さ、比較的安いコスト、非破壊による測定などのいくつかの点で優位性が確認されているからです。このような背景から、私の研究は茶の品質を評価する新たな分光技術を開発することに焦点に置いています。研究では計量学的アプローチを用いつつ、非破壊的手法により品質を予測する際のいくつかの分光技術の精度の分析を行います。研究結果は今後の製茶産業の発展に寄与するものになるでしょう。

研究はNFRIの食品分析研究領域非破壊計測ユニットで行っていますが、プロジェクトをこのユニットで行えることは光栄です。同じユニットの皆さんは和やかで熱心に研究活動を行っており、私にとっては日本の第二の故郷といった感じです。今後、日本の研究者との研究で得られる知識や経験は、帰国後、母国の研究所で新たな研究プロジェクトを実施する際の自信にもつながるものと思います。

私は今回、国連大学キリンフェローシップに参加できることに大きな喜びを感じています。それは、日本という美しい「さくらの国」を訪れることは私の長年の夢であり、願いであったからです。この場をお借りして国連大学とキリンに、このような素晴らしい機会を与えていただいたことに感謝するとともに、私を受け入れてくれたNFRIにも感謝の気持ちを述べたいと思います。日本での滞在を通して、日本のおもてなしの心や文化に触れ、富士山、五箇山、洞爺湖などの美しい場所を訪れ、寿司、ラーメン、やきいもなどの素敵な日本の食に触れることを楽しみにしています。

グエン シ レ タインさん(Nguyen Sy Le Thanh)ベトナム出身

出身国での所属 ベトナム科学技術院 バイオテクノロジー研究所 酵素生化学技術部門 研究員
研究テーマ 納豆菌発酵に関する細胞密度情報の制御法
研究室 微生物機能ユニット
アドバイザー 木村 啓太郎 ユニット長

コメント

納豆(大豆を原料とした発酵食品)は日本で一般的な伝統食ですが、納豆菌を使って発酵させた大豆食品はインドネシアのTauco、ベトナムのTuong、中国の豆鼓、韓国のDoenjangなど、他の国々にもあります。私は以前、奈良先端科学技術大学院大学(NAIST)へ留学したことがあり、様々な種類の納豆を食したことが大変印象に残っています。ベトナム帰国後の2014年、私の所属するバイオテクノロジー研究所に現在のアドバイザーである木村先生がお越しになり、私は先生の納豆に関する講義を聴講しました。これがきっかけとなり、幸運にも国連大学キリンフェローシップによって日本で再び研究する機会を得ました。木村先生の研究ユニットの一員になれたことは本当に幸運であると感じています。木村先生やユニットの皆さんは大変親切で、私の研究をサポートしていただいています。

国連大学キリンフェローシップでは、食品添加物や医学にも応用されるアミノ酸の高分子化合物であるγ-ポリグルタミン酸(γ-PGA)を作る枯草菌について研究しています。γ-PGAの生成は細胞レベルの信号伝達経路によって制御されています。より多くのγ-PGA生産を可能にする経路を見つけ、納豆菌の飛躍的改良に結び付けたいと考えています。 YxyZタンパク質の単一アミノ酸置換変異は細胞内信号伝達経路において細胞外γ-PGAの生産調節に決定的に重要ですが、信号伝達経路におけるYxyZタンパク質の機能はまだ解明されていません。そのため、国連大学キリンフェローシップによってYxyZタンパク質の生物学的機能に関する研究ができることは大変貴重な機会です。

先進的な分析ができる最新の設備を備えたNFRIの微生物機能ユニットで研究ができることに大変感謝しています。また、この日本滞在という貴重な機会に、いろんな種類のラーメン(少なくともつくば市内のラーメンは制覇したいです。)、寿司、刺身、そしてキリンビールやキリンの商品も「研究」したいと思います。

スティウィジットプクディ ナタポーンさん(Nattaporn Suttiwijipukdee)タイ出身

出身国での所属 カセサート大学 カセサート農業・農産品改良研究所 農産品非破壊品質評価研究ユニット 研究員
研究テーマ 遠紫外分光法および近赤外分光法を用いた農業材料の褐変反応評価
研究室 食品分析研究領域非破壊計測ユニット
アドバイザー 池羽田 晶文 主任研究員

コメント

研究内容は人の食生活、特に食品加工において重要な役割を果たす褐変反応です。褐変反応は非酵素的褐変と酵素的褐変に分類されます。私たちは前者についてはメイラード反応に関して、後者についてはポリフェノールオキシダーゼ活性について研究していますが、これらの反応の分析は非常に複雑で理解は容易ではありません。私の研究目標は、褐変反応時において生理学的および化学的な成分変化を、より迅速に、より簡便に、そしてより少ない準備で見つけられる方法を確立することです。褐変反応は食品の品質に大きな影響を与えることから重要な研究だと考えています。

今回、NFRIで褐変反応評価の研究ができる機会を与えてくれた国連大学キリンフェローシップに大変感謝しています。NFRIで感じたことは、研究員やスタッフの皆さんの卓越した研究レベルと親切心です。また、NFRIは高度な実験器具を備えており、研究環境としてはとても素晴らしい場所だと感じています。日本は食品技術で先進的な役割を果たしており、このプログラムで得られる知識や研究実績は、将来タイと日本で共同研究を行う際にも大変役に立つものと確信しています。帰国後は、得られた知見を食品や農産品の品質のさらなる向上に向けて母国の学生などにも共有するつもりです。