2012年 | 国連大学キリンフェローシップ卒業生一覧 | キリンホールディングス

国連大学キリンフェローシップ卒業生

リさん(Li Fengjuan)中国出身

出身国での所属 天津科技大学 食品工程・生物技術学院 准教授長
研究テーマ 伝統発酵食品中の血圧に関与する成分の研究
研究室 栄養機能ユニット
アドバイザー 八巻 幸二 ユニット長

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中国農業大学で博士号を取得しました。心血管疾患、特に高血圧の予防や治療に役立つ機能性食品、食物発酵に含まれる微生物、そして生物活性物質の分離技術に特化した研究を行っています。
国連大学キリンフェローシップの研究員として、ここNFRIで研究できることを誇りに思いますし、この機会をとても大切にしています。私の現在の研究目的は、中国味噌におけるアンギオテンシン I 変換酵素/レニンの阻害効果を検証し、関連する生物活性物質を特定することによって、血圧を下げる特性を持つ機能性食品の開発に貢献することです。
ここに来て数か月、素晴らしいプログラムと研究環境、静かで美しい周辺環境に非常に満足しています。 NFRIでの日々は、研究者としての自分の能力を向上させ、結果につながると確信しています。また、私の出身国である中国の研究所における機能性食品開発研究プロジェクトを強化してくれるでしょう。

日本を訪れるのは今回が初めてですが、一番に気になったのは街がとてもきれいだということです。また、研究以外でも、日本語や日本の食べ物、文学、映画など、日本の文化にとても興味があります。春に桜を鑑賞して、その美しさにすっかり魅了されました。また、滞在中に日本語を上達させられたらと思っています。

ウイッチャさん(Witcha Treesuwan)タイ出身

出身国での所属 カセサート大学 Institute of Food Research and Product Development (IFRPD) Thai Food Revolution (TFoR) 研究員
研究テーマ 機能性食品成分を内包した単分散マイクロ・ナノ分散系の作製と特性評価に関する研究
研究室 先端加工技術ユニット
アドバイザー 小林 功 主任研究員

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国連大学キリンフェローシッププログラムは、博士号取得後のスカラシップの中で最も素晴らしいもののひとつです。プログラム内容が素晴らしく、来日当初から、生活と研究の環境づくりをしっかりサポートしてくれます。お腹を空かせて到着した初日の夜、夕食をどうしようかと考えていたら、歓迎の夕食会が催され、そんな心配は消え去りました。事務的な手続き上のわずらわしさもなく、思いっきり仕事に打ち込めます。
私は、「科学」の解釈と、「エンジニア」による設計が、将来新しい技術を生み出すと信じています。「機能性食品成分を内包した単分散マイクロ・ナノ分散系の作製と特性評価に関する研究」という研究課題の下、ナノスケールのエマルション液滴の中に油溶性の機能性食品成分や部分的な水と油に溶けにくい機能性食品成分を内包する方法を見つけ出すことが大きな目標です。長期的な目標としては、分子ガストロノミーに関連した分子レベルでの研究です。
食品分散系を料理へと変化させるという先進的な手法は、Thai Food Revolutionグループ(TFoR)にとっても、期待のおける未開拓分野です。

素晴らしいもてなしとフレンドリーな人々のおかげで、この穏やかな街での生活を満喫しています。アドバイザーはいつでも議論に応じてくれますし、研究室のメンバーは私が申し出る前に手を差し伸べてくれます。参加しているバドミントンクラブは、週の中での大きな楽しみです。 このプログラムが毎年継続され、若い世代の科学者を支援し、アジアにおいて強固な科学技術ネットワークが形成されていくことを願っています。

エディさん(Nugraha Edhi Suyatma)インドネシア出身

出身国での所属 ボゴール農業大学 講師・研究員
研究テーマ D青果物MA包装における微生物管理
研究室 食品包装技術ユニット
アドバイザー 石川 豊

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国連大学、キリンホールディングス、そしてNFRIに、このプログラムでの研究機会を与えていただけたことを感謝しています。NFRIの食品包装技術ユニットでの研究は、私にとって素晴らしい経験です。
私たちの研究における主な目的は、酒石酸とZnOナノ粒子を結合させたペクチンから作られた抗菌性フィルムを開発することと、貯蔵庫に存在すると見られるエチレンガスを吸収するエチレン捕集剤を作ることです。これらの研究は、生食用のブドウの貯蔵や輸送時に起こる、水分の損失や、ボトリティス・シネリアによる灰色カビ病の発生、エチレンにさらされることによる収穫後の病気の発生などの抑制を可能にすると期待されています。私たちの研究が実を結び、ここでの貴重な経験と知識を、帰国後に大学の同僚や生徒たちと分かち合えることを願っています。

私はこのプログラムで、輸送中の食品包装に関する振動・衝撃テストなど、多くの貴重な経験をすることができました。日本は自分が訪れた初めての先進国ではありませんが、清潔なこと、静かなこと、環境にやさしいこと、秩序が保たれている点が、とても印象的です。日本人の勤勉さはもちろん、やさしさと、寛容さ、ホスピタリティーに感動しました。
NFRIでの日々の研究では、アドバイザーや研究室の仲間たちが、私をあたたかく受け入れ、研究を全面的にサポートしてくれています。

ミャオさん(Miao Lili)中国出身

出身国での所属 中国科学院微生物研究所 研究員
研究テーマ 複合酵素系を用いた高付加価値糖質調製
研究室 酵素研究ユニット
アドバイザー 北岡 本光 ユニット長

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イノシトールは生体内に多く含まれる成分です。イノシトールの生産には、さまざまな方法が試みられており、高コストで時間を要する、植物からの抽出などの例がありますが、私の研究の目的は、低コストで環境にもやさしい方法でのイノシトールの生産を実現することです。安価な材料であるでんぷんをもとに、ひとつの容器内で酵素を用いて行います。

国連大学キリンフェローシップの研究員として、NFRIで研究する機会を得ることができたのは、この上ない喜びです。NFRIの同僚はとてもフレンドリーで、公私ともに助けられています。施設や設備は先進的ですし、周辺環境は静かで穏やかです。また、先輩研究員の方々や、コーディネーターの六角先生、キリンホールディングスのあたたかな歓迎とサポートには感動しました。日本での研究と経験により、この1年が実り多きものになるであろうと、期待がふくらんでいます。

カーンさん(Mahejibin Khan)インド出身

出身国での所属 国立中央食品研究所 Central Food Technological Research Institute (CFTRI) 研究員
研究テーマ 大腸菌の耐酸性に関する研究
この研究の目的は、mnmE(trmE)とmnmG(gidA)遺伝子によって支配される tRNAの修飾によるgadA遺伝子の翻訳制御を解析することです。
研究室 生物機能解析ユニット
アドバイザー 岡本 晋 ユニット長

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異国の地での研究は、通常かなり気の重くなる経験です。しかし私は、国連大学キリンフェローシッププログラムに参加できたことを、本当に幸せに思っています。当初抱いていた、新しい文化や研究環境への恐れや不安はすぐに和らぎました。施設や研究室の皆さんは、とてもフレンドリーで、あたたかく自分を受け入れてくれました。優れた設備、高度な専門技術、信じがたいほど素晴らしい研究環境、そして、サポートを惜しまないスタッフに、心から驚かされました。

見知らぬ国でまったく異なる文化や生活習慣に接することに、ワクワクすると同時に不安を感じ、嬉しいような、悲しいような、複雑な気持で胸をいっぱいにしてここにやって来ました。家族も友だちもいない日本で、買い物に行った時に最初のカルチャーショックを受けました。文字はまるで読めませんし、棚に陳列してある商品も知らないものばかりでした。数日の間、なんとかわかるものを選ぶようにしましたが、やはりたびたび失敗しました。けれど、それが新しいものを知り、馴染んでいくことなのだと思います。時間と共に私の不安はすっかり消え去りました。環境にやさしく、高齢者を敬い、どこに行っても安全で、交通機関は便利、そして風景は息をのむほど美しい日本がどんどん好きになりました。時間が経つにつれて、たくさんの人と知り合い、友だちもでき始めました。日本人は概して非常に親切で、親しみやすく、寛容で、規則正しいです。また、お互いを尊重し合っています。自分の興味のある分野で研究を行う傍らで、新しい文化に親しむこともできる。私はここで今、言葉にしがたい体験をしていると思います。