アルコール依存症 | お酒のリスク | キリンホールディングス

アルコール依存症

アルコール依存症とは

お酒は依存性のある物質「アルコール」を含む飲みものです。長期にわたり多量飲酒を続けると、お酒を飲まずにはいられない状態になります。これがアルコール依存症で、社会生活や人間関係に支障をきたす恐れがあります。
過去には、アルコール依存症をアルコール中毒(アル中)と呼び、意志の弱い人やだらしのない人が陥るものという誤った認識を持たれ、治療の機会を遅らせていました。しかし、アルコール依存症は脳の仕組みに関する「病気」であり、お酒の飲み方を誤ると誰にでも起こりうるものです。

アルコール依存症の症状

探索行動・精神依存

依存性のあるアルコールを飲み続けることで、飲みたい欲求が強くなり、どんな状況であっても飲み続けようとする様々な工夫や努力といった行動に現れます。この行動を「探索行動」と呼び、この行動が起こることを「精神依存」があると言います。初期の精神依存では、飲酒の言い訳や理由付け(医師の禁酒の指示に対して勝手な理由を付けて飲酒する)などです。

これが繰り返され、探索行動が高度になると、仕事中など、飲んではいけない状況をかいくぐって飲酒する(隠れ酒)、飲酒のために嘘をつく、家族を脅かしたり、暴言・暴行といった粗暴な行為に出ます。 「止めるからかえって飲みたくなる」などと家族の制止を逆手にとって飲酒の口実にしたり、子供の貯金箱を壊して飲み代にしてしまったりするのも、精神依存が高度になったときの探索行動です。探索行動が軽いうちにアルコール依存症に気付くことが大切です。

退薬症状・身体依存

アルコールには脳の神経活動を抑える働きがあります。アルコール依存症になると、アルコールの影響下に置かれる時間が長くなり、その分だけ脳の活動は長時間抑制されます。

このような人が断酒すると、抑制効果に対抗していた神経の過剰活動が現れ、不安感やいらつきが生じたり、吐き気や嘔吐、動悸や発汗、あるいは寝汗や不眠などといった症状が起こります。これを「退薬症状」と呼びます。

退薬症状が重くなると「身体依存」が現れ、細かな文字を書くと手や指が震える(手指振戦)、てんかん発作のように、全身が硬直して意識を失う全身けいれん発作が起こることもあります。

また、実際には目の前にいない虫が見える、人の声が聞こえるなどの「幻覚」症状、さらには、酔いから覚めて2、3日経って、全身に震えが起き、日時や場所を取り違え、幻覚(幻視や幻聴)で精神の異常興奮が起き、周りの制止も聞き入れない「振戦せん妄」のように特殊な意識障害につながることもあります。

お酒がきれたときのアルコール依存症患者の主な症状

軽い症状
  • 睡眠障害、寝汗、大量の発汗、動悸(自律神経症状)
  • イライラ感、不安(情動症状)
重い症状
  • 手足や全身の震え
  • けいれん発作
  • 幻覚(幻視、幻聴)
  • 振戦せん妄(手足の震え、錯覚、幻覚、日時や場所の見当識の障害などの複合症状)

早期発見と対処法

アルコール依存症を未然に防ぐには、原因となる多量飲酒を自覚することが重要です。お酒を飲む人は、まず「飲酒習慣スクリーニングテスト」で、自分の飲酒習慣がどの程度なのかチェックしましょう。

多量飲酒の習慣があっても、アルコール依存症までいたっていない人には「ブリーフ・インターベンション(簡易支援)」という減酒支援が有効だとされています。「ブリーフ・インターベンション」は、短時間のカウンセリングで減酒へと導くプログラムで、医療センターなどで受けることができます。
一方、アルコール依存症と診断された場合の治療法は断酒です。断酒中に1滴でもお酒を飲むと元の状態に戻ってしまうため、生涯断酒を続けることになります。
お酒を飲めなくなる前に、多量飲酒を早い段階で本人が自覚すること、また、周囲が認識し、サポートすることが大切です。

相談先一覧

飲酒による健康障害についてのご相談先として、次のような専門機関があります。

独立行政法人 国立病院機構 久里浜医療センター アルコール依存症全体にわたる臨床研究、教育研修、予防活動および情報発信を軸とした政策医療を提供する、アルコール関連問題における日本最大の治療・研究・研修機関です。
独立行政法人 国立病院機構 肥前精神医療センター 肥前精神医療センターは、アルコール依存のほか、現代の精神科医療に求められるほとんどの機能と専門領域毎の専門医や専門外来、専門病棟を有するわが国でも数少ない多機能(オールラウンド)型精神科医療機関です。
特定非営利活動法人アスク(アルコール薬物問題全国市民協会) アスクは、アルコールをはじめとする依存性薬物問題の予防にとりくんでいるNPOです。アルコール依存症、イッキ飲み・アルハラ防止、飲酒運転防止、妊娠とアルコールなどのコーナーで、それらの実態や対策などを掲載しています。
AA(アルコホーリクス・アノニマス) AA(アルコホーリクス・アノニマス)は、アルコール依存症の治療を行っている自助グループです。
全日本断酒連盟 全国断酒連盟はアルコール依存症の方やその家族がお互いの体験談を語らいあうことで回復に結びつけていく運動をしています。