価値創造を加速するICT | 組織能力 | キリンホールディングス

価値創造を加速するICT

2024年5月31日

キリングループのデジタルICTの強み・特徴、全体方針

不確実性が増す社会でキリングループが持続的な成長を実現するには、デジタル技術の活用が不可欠です。KV2027においても、イノベーションを実現する組織能力の一つとして「価値創造を加速するICT」を掲げ、DX推進に取り組んでいます。DXによる価値創出として、AIを用いた商品開発やシミュレーションなど、部門や領域を横断してバリューチェーン全体での生産性向上を目指す①「業務プロセスの変革」、顧客理解の高度化や既存プロダクト/サービスの開発工程・顧客接点のデジタル化を進める
②「既存事業の価値向上」、従来のビジネスモデルにとらわれず、デジタルを活用した新サービスの立ち上げを目指す③「新規ビジネスの加速・開発」の3つの方向性を掲げています。

  • キリングループのDX戦略。DXのゴール 全ての事業・機能部門で自律的にデジタル技術を活用してプロセスの変革やビジネスの創造を行えている。DXによる価値創出 既存事業の価値向上、業務プロセス変革、新規ビジネスの加速・開発。DXを推進する組織能力 人財、体制、ICT基盤。 

  • キリングループのDX戦略。DXのゴール 全ての事業・機能部門で自律的にデジタル技術を活用してプロセスの変革やビジネスの創造を行えている。DXによる価値創出 既存事業の価値向上、業務プロセス変革、新規ビジネスの加速・開発。DXを推進する組織能力 人財、体制、ICT基盤。 

課題と去年からの進捗

2022年中計では、DXを推進する組織能力の強化を最優先課題として定め、人財育成や基盤構築に取り組んできました。現場主体のデジタル活用に向けた、従業員向け人財育成プログラムである「DX道場」や、各事業のDX推進者の意見交換を目的とした「グループDX推進委員会」を実施。さらには、ChatGPTの社内環境構築や生成AIを活用したPoCなども進めており、重点領域としてきた業務プロセス変革の取り組みが多く生まれ、社内業務の高度化・効率化につながっています。

しかし、既存事業の価値向上や新規ビジネスの加速・開発を通じた成果創出は道半ばです。次のフェーズとして、お客様への提供価値の最大化を目指し、事業部門とデジタル専門部署双方で高いケイパビリティを獲得します。

戦略、取り組みの柱、成果

2024年は、①「DX人材育成プログラムの進化」、②「変革を推奨する風土醸成」、③「デジタル専門能力の強化」をさらに進めることで、競争優位なDX推進の組織能力を獲得します。

まず①についてはDX道場受講者は2023年末までに1,800人を超え、当初計画を1年前倒しで達成。今後は生成AIなどの新技術に対応して講座を見直し、ビジネスの価値向上や新規事業開発に特化したコースも開設するなど、成熟度や世の中の変化に合わせてブラッシュアップさせます。また、②は海外事業会社も含めて、優れたDX取り組みの表彰制度として「DXアワード」や、ビジネス変革へのマインドセットを促す「DX FES」も開始し、誰もがDXの取り組みに挑戦できる組織風土醸成も進めています。さらに③では専門能力向上に向け、人財戦略の「機能軸タレントマネジメント」とも連動し、新卒・キャリア採用問わず高度なデジタルスキルや異業種のバックグラウンドを有する人財獲得を進めています。先端テクノロジー活用などの新領域では、大学やベンチャー企業と積極的な協業をしています。

このように専門性と多様性を有する人財、組織を掛け合わせることで、既存の枠組みにとらわれず、デジタル技術を活用した提供価値の最大化を推進します。

事例

自動販売機ビジネスのDXにより人手不足解決や廃棄ロス削減へ

キリンビバレッジは、当社グループが管理する自動販売機に、ソフトバンクが新たに開発したAI活用による自動販売機のオペレーション最適化サービス「Vendy」を2024年10月から順次導入します。自動販売機ビジネスのDXにより、オペレーション業務効率化と、設置先に応じた商品ラインアップの最適化を実現し、自動販売機業界の課題解決を図ります。

キリンビバレッジの自動販売機は全国に約18万台設置されており、お客様との重要なタッチポイントの役割を担っています。一方で、お客様ニーズの多様化や生活様式の変化に伴い、収益改善が必要となっており、継続的な構造改革を進めています。自動販売機の維持に不可欠な管理を行うオペレーション業務では、商品ラインアップや巡回ルートなどの計画を熟練した担当者が経験に基づいて行っておりました。その属人的な業務プロセスにより、担当者の経験によって判断にばらつきが生じ、設置先ごとの商品ラインアップのミスマッチのほか、品切れや廃棄ロス、不効率な巡回訪問が発生していました。キリンビバレッジは、このような課題を抱えていた自動販売機ビジネスのプロセス変革、価値向上を目的に、AIやビッグデータなどの最先端テクノロジーに知見が深いソフトバンクが開発中であったVendyの導入に向けた本格的な検討を2022年に開始しました。

本プロジェクトは、ビジネスに精通したキリンビバレッジ営業部の人財がDX道場などを活用し、デジタルスキルを習得したうえで牽引しました。また、AI活用の知見を有するキリンホールディングスデジタルICT戦略部も参画することで、多様な専門性を掛け合わせながらプロセス変革に取り組みました。Vendyの機能検証においては、当社グループが管理する自動販売機のオペレーション現場でソフトバンクと共同実証を実施し、有効性や汎用性を確認したほか、現場からのフィードバックを基に、機能改善に協力しました。また、実務導入に向けては、当社グループのAI活用に関する知見をもとに、キリンビバレッジの業務に最適化したビジネスプロセスの確立に至りました。

Vendyにはキリンビバレッジの自動販売機の販売データや巡回に伴うコスト情報などのデータを学習させ、これらのデータをAIで分析し、設置先ごとの最適な商品ラインアップのほか、効率的な訪問タイミングや巡回ルート、補充本数まで一連の計画を自動生成します。生成された計画は担当者や管理者がスマートフォンの専用アプリで確認できます。共同実証の結果を踏まえ、Vendy導入によって自動販売機オペレーションに関わる業務時間の約1割の削減と、約5%の売り上げ増を見込んでいます。削減により創出された時間は自動販売機の新規設置先の開拓に充てることで、お客様に質の高いサービスを提供します。加えて業務の属人性を解消し、人財配置の柔軟性を高めることで人財育成を促進します。

本取り組みは人手不足や廃棄ロスの課題解決にも貢献するため、キリンビバレッジだけでなく、自動販売機オペレーション業務を行う他の企業にも有益なシステムとなります。キリンビバレッジは業界に先駆けてVendyの導入を決定することで、ソフトバンクと共に業務効率化やサービス向上に取り組み、持続可能なオペレーションの実現を目指します。