原作:髙見啓一(日本経済大学准教授)
イラスト:高木ak2_04

統領による株式会社のレクチャーは続く。統領いわく、株式とは「木」であり、そこから「実」をならせるのが会社経営であるという。

統領 「『木』の話の次は『実』の話をしよう。木を上手に育てれば実がなる。これは、木のオーナーのものじゃ。」
戦闘員B 「それが『配当金』ってことなんすね。俺も欲しいっす。」
統領 「まあ、慌てるな。決算時点ですぐには配当金にはならん。3級で当期純利益や決算繰越の学習をしたじゃろ?」
戦闘員B 「あ~、そういえばそんな論点あったっすね。」
戦闘員A 「そこに到達するころには、精算表でヘトヘトで、適当に流してました・・・。」
戦闘員C 「簿記3級あるあるだな(笑)」

-ここは連結会計を学ぶ上で非常に大事なところである!3級でおろそかになっていた諸君は、決算時の仕訳を統領と一緒に復習されたし!!

統領 「損益計算書の要素である『費用』と『収益』は次年度に繰り越すことはできん。」
戦闘員A 「損益計算書は『当年度』の経営成績を明らかにするためのものですもんね。」
統領 「たとえば決算の段階で、収益と費用が『売上100』と『給料70』しかないとしよう。まずこの損益計算書項目を『逆仕訳』でゼロクリアするのじゃ。これが損益計算書のもととなる。」
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戦闘員B 「この『損益』ってのが『当期純利益』ってことっすね。精算表でやりました。」
統領 「そう。収益の方が多い場合は右に来るので利益。費用の方が多い場合は左にくるので損失となる。この損益も次年度には繰り越せんから、貸借対照表に移す必要がある。」
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戦闘員B 「あ、純資産が増えた!」
戦闘員A 「純資産は株主にとっての持ち分ですから、これで『実』が増えたわけですね。」

-決算以降にも繰り越されるから「繰越利益」。まさに名は体を表すである。3級のテキストも適宜参照するとよいだろう。

戦闘員C 「んで、肝心の配当金はどうするんだよ。」
統領 「決算後の『株主総会』っていう会議で配当金の金額を決めるのじゃが、30のうち20を株主に配当するとしよう。」
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戦闘員B 「現金が会社から流出し、株主に払ったってことっすね。」
統領 「そして、純資産である繰越利益が減ったじゃろ?株主自身が自分の持ち分を引き出したということじゃ。ちなみに株主さえ合意すれば、現金のところを商品や備品に変えた『現物出資』も可能じゃ。」
戦闘員B 「ZAIM製品はいらないっす(笑)ところで、残りの10はどうなるんすか?」
統領 「残った10はまさに『剰余金』すなわち『利益の余り』じゃ。」
戦闘員A 「確かに、実を全部食べてしまっては次年度以降、木を大きくしていくことができませんもんね。だから『繰越利益剰余金』なんですね。」
統領 「そして、会社の元手は株主だけでなく、銀行などからも出してもらっておるし、イザというときの返済のための利益も残しておかんとな。」
戦闘員C 「てめえ前回、さくらんぼぜんぶ食べちゃったじゃねえか。」

-利益と配当の仕組みが分かったところで、読者諸君のために、2級商簿の難関のひとつ「配当金のルール」に触れておこう。

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戦闘員A 「これ、僕も苦手で・・・『配当金の1/10を利益準備金として積み立てる』でも『資本金の1/4まででよい』・・・ああややこしい。」
統領 「なんでそういう数字になったかは置いといて、『剰余金は全部配当せずに、準備金として残しておけ』っていうルールがあるのじゃ。」
戦闘員B 「あ、つまり銀行とかの支払いに備えて、実を全部食うなってことっすか?」
統領 「そのとおり!『準備金』は『剰余金』と違って、自由に配当に回すことができないルールになっておる。」
戦闘員C 「これからはお土産も、戦闘員に1/10残すルールを設定しておこうぜ。」
戦闘員A 「あー、ようやくスッキリしました。」

-読者諸君も学習のはじめは、細かい数字を追いかけるのではなく「なんでこういうルールになっているのか」を理解しながら進めるとよい。

戦闘員B 「で、ZAIMの配当金はどうなってるんすか?」
統領 「以前は損失ばかりで利益が出ていなかったから『無配当』じゃった(笑)まあ、出資者には毎年の決算期ごとに怒られたわい。」
戦闘員C 「だろうな(笑)」
戦闘員A 「伝説の勇者株式会社に株式を買われた今はどうですか?」
統領 「勇者様は『正義=利益』という主義、正義のためなら手段をえらばぬ。子会社となったいまのZAIMは、武器・禁輸製品の横流しから瀬取りまで、正義のために健全に経営を続けておる。」
戦闘員B 「そこ、突っ込むところっすよね(笑)」

次回予告

伝説の勇者株式会社の「支配力」の恐ろしさ。改めて思い知らされる戦闘員Aたちであった。
次回 子会社とは? ~伝説の勇者(株)に支配される(株)ZAIM~