スローの直線勝負を制す
得意の舞台でJpnI・2勝目
関東地方の梅雨入りが発表されたばかりで、どんよりとした空模様の大井競馬場。しかしこの日は1万9千人以上のファンが訪れ、曇天を吹き飛ばすような熱気に溢れていた。
上半期のダート総決算レース帝王賞JpnIに、今年はJRAから7頭、地方から6頭が出走。昨年の東京大賞典GIを制したウシュバテソーロは不在だったが、この1年で力をつけてきた実力馬が集結し混戦ムードだ。
最終的に1番人気に推されたのは昨年のチャンピオンズカップGI、東京大賞典GIのいずれも2着だったウィルソンテソーロ。2番人気は3月のダイオライト記念JpnIIを快勝したセラフィックコール、3番人気は昨年のJBCクラシックJpnIの覇者キングズソード、前走の名古屋グランプリJpnIIを圧勝し、右回りが得意なノットゥルノが続き、この4頭が単勝5倍以内にひしめきあっていた。
地方勢では、川崎記念JpnIでJRA勢をねじ伏せたライトウォーリア(川崎)や、南関東重賞を3連勝中のサヨノネイチヤ(大井)が注目を集めていた。
ゲートが開くと予想通りライトウォーリアが先手を取り、2番手にバーデンヴァイラー(川崎)、キングズソードが8枠(12番)から外目3番手につけた。前10頭が密集して最初のコーナーを回り、ウィルソンテソーロは5番手で前をマーク、その直後にサヨノネイチヤ。ノットゥルノは中団を追走していた。
スローペースで進んだが向正面で一気に動く馬はいない。3コーナーでさらに馬群が固まり、4コーナーでは各馬が横に広がってスタンドからは大歓声。ここからどの馬が抜け出すのか?と激戦模様に見えたが、直線に入るとキングズソードが先頭に立ち力強く伸びた。ウィルソンテソーロが追いかけるもキングズソードは止まらずそのまま先頭でゴールを駆け抜けた。
1馬身3/4差でウィルソンテソーロが2着。1馬身差の3着には大外から良い脚で伸びた9番人気のディクテオンが入った。
キングズソードは昨年の大井・JBCクラシックJpnI以来となるビッグタイトル獲得。今年に入ってからの2戦は1600メートルで結果が出ていなかったが、実績のある舞台で巻き返した。「JBCの時と同じ枠(8枠)だったので良いイメージでレースができると感じました」と寺島良調教師。
デビュー戦以来の騎乗となった藤岡佑介騎手は「ものすごく首が太くなっていて、オープン馬らしくなった、と厩務員さんに話しました」と久々の印象を語り、「ダートのチャンピオンホースらしい馬になりましたし、すごく強い競馬だったのでまだまだ活躍してくれると思います」と成長を喜んでいるようだった。
その藤岡騎手も騎乗していたキングズソードの兄キングズガードは、寺島厩舎に所属し9歳まで現役を続け、重賞も勝っている実績馬。それだけに、キングズソードのこれからの活躍も期待十分だ。「今回、藤岡騎手で勝てたのは嬉しいです。お兄さんも長く活躍してくれたし、この馬はまだまだ5歳なのでこれからさらに飛躍してくれると思います」と寺島調教師は笑顔で話した。この後は夏休みに入り、秋以降のレースはこれから考えていくとのことだ。
1番人気のウィルソンテソーロは3度目のGI/JpnI・2着となった。「具合は良くなっていたし、ひとつ大人になった感じがしました。スムーズに競馬ができましたが、今日のところは勝ち馬が強かったです」と川田将雅騎手。
3着のディクテオンはスタート後のスタンド前では最後方だったが、巻き返して上がっていく豪快なレースぶりで好走した。横山和生騎手は「良い流れになりました。少し動くのが早かったのかもしれませんが、砂をかぶって良いタイプではないのでリズムよく走ることを選びました。大井コースは合っていますね」と振り返った。
そして地方最先着は5着のサヨノネイチヤ。「良いポジションだったとは思いますが、もう少しレースが流れてくれればよかったですね。それでも力があるところは見せられたと思います」と西啓太騎手。坂井英光調教師は「力はまだ足りないです。でも良く走ってくれたし、これでもっとレベルアップできると思います」と前向きな表情だった。初めてのJRA馬との対戦で一線級相手ではあったが、直線は最後まで伸びて4着のグランブリッジにアタマ差なのだから悲観することはないだろう。この経験を糧に今後のさらなる成長と挑戦を楽しみにしたい。
取材・文秋田奈津子
写真いちかんぽ(早川範雄、国分智)
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寺島良調教師
前走の疲れもなく、調教もかなり攻めましたがへこまずに良い状態で臨めました。スタートから1コーナーのコース取りが良かったので安心して見ていられました。流れもこの馬に向いたと思います。今日のような馬場も合いますね。良い意味で大人になって落ち着いてきましたし、体も完成されてきました。
藤岡佑介騎手
作戦としては、できれば3番手、あわよくば2番手のイメージでした。ペースは相当遅いと感じましたが向正面で上手く息も入ったので待たないでスパートしようと考えました。4コーナーで後ろにウィルソンテソーロが見えましたが突き放すような反応でしたし、止まらないでくれと思って乗っていました。