汗腺は全身に分布していますが、いっせいに同じように汗をかくわけではありません。
汗をかく量は部位によって異なりますが、そのわけは、最も大切な脳と中枢神経を守ることを優先しているためと考えられ、とても合理的なシステムになっています。
また、性別や年齢によっても汗のかきかたに違いがあるようです。
汗は全身で同じように出るのではなく、部位による違いがあります。
一般的に、胸や背中のような体幹部のほうが、腕などの末梢部よりも汗の量が多いのです。
体幹部でも特に脊柱近辺では汗の量が多くなります。また、カラダの中で最も多く汗をかくのは額です。
これは、生命を維持するために最も大切な器官であり、なおかつ熱に弱い「脳」の温度を一定に保つために重要な仕組みだと考えられます。
男性と女性で比べると、どの部位でも、男性のほうが女性よりも汗をかく量が多いようです。
一般的に、汗の量は加齢によって減る傾向にあります。
汗の量の低下は、下肢→体幹後面→体幹全面→上肢→頭部の順に進み、頭部での低下が最も遅いようです。
ここでもやはり、大切な脳の温度を守るために、最後まで頭部の温度調節機能を維持しようとしていると考えられます。
出典:Smith C. Regional sweat rates in Humans.
PhD Thesis in Loughborough University, 2009
自動的に出てしまう汗を人為的に止める方法はなかなかありませんが、人には不思議な反射が備わっています。
「半側発汗」と呼ばれるもので、皮膚を押したときに起こる反射の一種です。
カラダの上下左右のワキを圧迫すると、圧迫した側の発汗が止まるのです。
たとえば、カラダの左上半身のワキを圧迫すると、顔を含む左半身の汗が止まります。
このような反射が起こる理由としては、壁にカラダの片側をつけているような場合、皮膚を圧迫されている部位は汗の蒸発が妨げられる可能性があるため、汗を出しても無駄だと判断して止めている可能性が指摘されています。
ヒトのカラダの中で50~60%と最も多い割合を占めている水分を、無駄に使わないための工夫なのかもしれません。