坂元裕二のドラマ映画好きなんですけど、特に「カラオケ」のシーンが死ぬほど好きです。
どのシーンもあまりにも曲の歌詞と物語がリンクしすぎている。一瞬で作品のための曲にしか聴こえなくなる。そしてなんと言っても歌う俳優の絶妙さ。選曲、声、ルックス、その全てが「ブッ刺さり」としか言いようがない。
最高の離婚
倦怠期の夫婦が離婚する、しないで一生揉めるドラマ『最高の離婚』。スペシャル版を合わせると「6曲」もカラオケシーンが存在します。もはやタイトル「最高のカラオケ」でいい。
特に性癖ブチ抜かれたのが2話。結夏(尾野真千子)の実家に出向いた光生(瑛太)が半ば強引にコブクロの『永遠にともに』を歌わされるんですが、離婚した2人に
共に歩き 共に探し 共に笑い 共に誓い
共に感じ 共に選び 共に泣き 共に背負い
共に抱き 共に迷い 共に築き 共に願い
はマジで酷。悪夢。しかし、その直後の
「そんな日々をォ………描きながらァァアアアア………!」
と歌う光生の異常な美声。光生のキャラクターからして「絶対に歌下手だろこいつ」と思わせておいて、このギャップ。どんなキモい行動をされようがこんなもん聞かされたら一撃で惚れ直してしまう破壊力でした。
さらにその直後に結夏がちあきなおみの『星影の小径』を歌うんですが、
静かに 静かに 手をとり 手をとり
あなたの 囁やきは アカシヤの香りよ
アイラブユー アイラブユー
しっとりと丁寧にそう歌う姿は、普段の豪快な結夏のキャラクターとまるで真逆。そのギャップが生み出すとんでもない魅力。こんなもん聞かされたらどんなガサツな態度を取られても、それが全てプラスになってしまう。2人がなぜ夫婦だったのか、どこを好きになったのか、それが少し垣間見える名シーンでした。
さらに最終回でも、離婚報告に訪れた結夏の実家で再び光生が沢田研二の『君をのせて』という曲を歌わされるシーンがあります。
全員ベロベロで誰も光生の歌を聞いていないんですが、結夏だけはそれに気づき、お互い見つめ合う。
君のこころ ふさぐ時には
粋な粋な歌をうたい
君をのせて 夜の海を
渡る舟になろう
この歌詞、そして2人の視線、死ぬほど「恋」なのでぜひ見ていただきたい。
カルテット
こじらせド痛音楽家4人の共同生活を描いたドラマ『カルテット』のカラオケシーンは2話。別府(松田龍平)と同僚以上恋人未満の関係を続けていた九條(菊池亜希子)がSPEEDの『White Love』を熱唱します。
何も言わずに別府にマイクを渡すところから毎回の定番曲になっているのは想像つくんですが、
果てしない あの雲の彼方へ
私をつれていって
その手を 離さないでね
この歌詞からの九條の「私、多分結婚する」というセリフがヤバすぎる。ずっと都合の良い関係でいられると思ってた相手が急にハンドル切ってきた時の絶望。
そして直後に流れるX JAPANの『紅』。白が赤で塗りつぶされてしまう。なんという残酷なシーンなのでしょうか。
しかし中盤、再び2人はカラオケに。そこでも『White Love』が流れるんですが、歌っているのは別府。そう、なんとこの歌詞は別府の気持ちを表していたのだ…
「もう終電だよ」と帰ろうとする九条。しかし別府は「九條さん家泊まるんで」「なんでそんなつまんない男と結婚するんですか」とダダをこね…
ベッドシーン……
こうして2人はエロエロの一夜をともにするんですが九條の意思は固い。
そして九條の結婚式で演奏することになった別府。退場時、アヴェマリアの途中で九條への祝福、いやある種「呪い」のように『White Love』を弾く別府…
そして最後にはカラオケで別府が『紅』を歌い、再び白を赤に染め、終わりを迎える。「紅に染まったこの俺を 慰める奴はもういない」と熱唱し、3人(松たか子、高橋一生、満島ひかり)が「X」の文字を作り、「それこの曲じゃないから」という別府のツッコミ、全てが完璧の回。
花束みたいな恋をした
毎秒「ムカつく…ムカつくこいつら…犬のウンコ踏め…」とイライラでケツから血が出るシーン連発の最悪最高映画なんですが、特に、2人が出会った日のカラオケシーンはその全てが殺意。
絹「山根さん…わたし…カラオケ屋さんに見えるカラオケ屋さんに行きたいですっ…♡」
と、上目遣いで麦(菅田将暉)を見つめる絹(有村架純)。死ぬほど可愛すぎて逆に腹立ってくる。マジで地球滅ぼしたい。
そして終電もとっくになくなったド深夜、カラオケ屋に見えるカラオケ屋に行った2人が歌う、きのこ帝国の『クロノスタシス』
コンビニエンスストアで350mlの缶ビール買って
きみと夜の散歩 時計の針は0時を差してる
“クロノスタシス”って知ってる?
知らないときみが言う
時計の針が止まって見える現象のことだよ
「外野なんて関係ない今この世界には2人しかいない」と言わんばかりに見つめ合いながら歌う麦と絹。こんなにも恋の「痛さ」と「キモさ」と「羨ましさ」を同時に眼球にブチ込んでくるシーンはありません。
絹「クロノスタシスって知ってる?♡」
麦「しらな〜い♡」
絹「時計見たらたまたま誕生日と同じ数字であっ!って思う現象のことだよ〜♡」
麦「あははは♡イエーイ!かんぱ
俺「あ゛ァァァあああ〜〜〜〜〜!!????あ゛っ ???!あ゛っあ゛っあ゛あ゛ァァァあああ〜〜!!?!?しっ死ね〜〜〜〜!!!!」
初恋の悪魔
坂元裕二カラオケの集大成と言えるのがドラマ『初恋の悪魔』
5話で、鹿浜(林遣都)、馬淵(仲野太賀)、小鳥(柄本佑)摘木(松岡茉優)がカラオケでYUIの『CHE.R.RY』を大熱唱するんですが、互いが互いを「なんだこいつ…変なやつ…キモ…」と思っていた4人の心が、少しずつ繋がっていく最高のシーン。
小鳥「ウソでも信じ続けられるの 好きだからアーッアーッアーッアーッ」
鹿浜「恋しちゃったんだたぶん気づいてないでしょうーーーーッッ!!!?星のッッッ……このサビをスルーできる人間はこの世に存在しない」
全員「cherry〜〜〜〜〜!!!!!!!!指先で送るキミへのメッセージ!!!!!!!
甘くなる果実がいいの〜〜〜〜〜〜〜!!!!!!何気ない会話から育てたい〜〜〜〜〜〜〜〜〜アーッアーッアーッアーッ!!!!!!」
馬淵「恋の始まりぃ………胸がキュンとせまくなるぅ……いつまでも待っているからぁ春の冷たい夜風にあずけてメッセージ……」
全員「「恋しちゃったんだたぶん気づいてないでしょうーーーーッッ!!!?」
このシーンを泣かないで見られる人間はこの世に存在しないcherry〜〜〜〜〜!!!!!!!!とりあえず誰か俺とカラオケ屋に見えるカラオケ屋に行ってくれ俺にとっての絹…